ここにもいた。
”俺”を倒してくれる好敵手が・・!!
赤司の中のもう1人の人格は歓喜していた。キセキの世代以外にはおそらく自分は倒せない。そう思っていた。しかし、まだ1人いた。キセキの世代をも越える資質の持ち主。”努力の天才”黒金瑠璃。しかし、まだだ。まだ足りない。この赤司はまだ本気を出していない。
…
赤「玲央。あの石田という選手を完全に倒すのは無理なようだ。ここからは、五将全員にパスを回す。いいね?」
実「ええ。彼は強い。私もその意見に賛成よ。」
洛山は実渕一辺倒の攻撃を変えた。
赤「次は!!」
赤司は根武谷にパスを出す。
根「ナイスパス!!」
鶴「くっ。こいつ、なんてパワーだ・・!」
根武谷は鶴野を強引に押しのけ、シュートを決める。
瑠「鶴野、大丈夫か?あいつとお前じゃ、パワーの差がありすぎる。きつかったら、灰崎と変わってもらえ。」
瑠璃は味方にも容赦なしに言う。お前では無理だと。無理なら代われと。
鶴「ああ、大丈夫だ。もう少しやらせてくれ。」
瑠「負けるなよ。やるからには勝て。」
福田総合は洛山に答えるように、Cである鶴野にパスを出す。
瑠「鶴野には、この角度・スピードだったな。」
瑠璃は現在、オフェンス時にだけゾーンに入っている。ゾーンのon/offを切り替えることのできる瑠璃ならではの戦い方だ。ゾーンに入っている瑠璃のパスを止めることのできるものなど洛山にもいない。
鶴「ナイス。」
鶴野ボールをもらった瞬間に、跳ぶ。根武谷はいきなり跳ぶ鶴野に出遅れたが、追いつく。
根「なめんな!!」
鶴「いいや、そんなんじゃ俺の”フック”は止められない。」
鶴野はそのままフックシュートを打つ。
鶴「五将だろうが、なんだろうが俺は負けない。福田総合のCは俺しかいないんだからな・・!!」
根「いいな、お前。いいぜ、そういう熱いの。次は俺とお前のC対決としようや!!」
…
実「あら、手が滑ったわ。」
「リバウンド!!」
根「おおーー!!マッスル!!」
鶴「まだまだ!!」
鶴野はいつもより腰を落とし、根武谷に対抗する。それは、スタミナの消費を考えない鶴野らしくない行為。
鶴野は冷静沈着なプレーをするタイプの選手である。そのためディフェンスがうまく、皆から頼りにされている。
その鶴野がムキになっている。
鶴「(負けられない。チームのために、俺は勝つ。)」
今年は石田にとって最後の年。石田に憧れている鶴野にとっては、ここで勝てないなどありえない。
鶴「おおーーー!!」
リバウンドは両選手の手によって弾かれる。
瑠「ナイスっ。」
それを瑠璃が取り、カウンターを仕掛ける。
実渕がそれに食らいつくが、ゾーンに入った者を止められるのはゾーンに入った者だけ。
瑠璃は実渕をかわし、ダンクを決める。
これで点差は、16対17。福田総合の有利である。
…
青「あいかわらずだな、瑠璃さんは。」
今「しかし、黒金はゾーンに入っとるのにパスが多いのう。自分で決めたほうが楽やろうに。」
青「ああ、瑠璃さんのゾーンは俺のゾーンとはタイプが違う。」
今「タイプ?ゾーンにがタイプがあるんかいな?」
青「感覚的な話になるけどな。前戦った時も思ってたんだ。瑠璃さんの本領を発揮できるのはPGなんじゃないかってな。俺や火神のような、自分の性能をただ上げるいわゆる”自己強化”のゾーン。対して、瑠璃さんのゾーンは味方の動き仕草、次に味方がどのように動くかが分かる”状況把握”のゾーン。」
今「なるほどな。そのゾーンによってあの完璧なパスを出しとるんか。」
青「おそらくな。ったく。あの人見てると退屈しないぜ。」
…
試合は第1Q終盤。
瑠「ここは絶対取る!!」
瑠璃はこの時、灰崎の動きが分かった。おそらくゾーンに入っていなくとも分かっただろう。その動きは昔の自分そのものだったのだから。
瑠璃のパスは絶妙なタイミングで灰崎の手に収まる。
灰「完璧だぜ。」
灰崎はいつもよりワンテンポ速いドリブルで葉山を抜く。
そしてすぐさま実渕がヘルプに入る。
実「いなせない!!」
灰「このシュートにそんなもんは関係ねえよ」
灰崎はブロックに跳ぶ実渕の手の先端にボールを当てる。
石「あのシュートはっ!?」
そのボールはそのままリングを潜る。
以前の瑠璃の最大の切り札。ブロック不可の究極のシュート。
灰「”予測するシュート”《プレディクトシュート》」
もう少ししたら、過去編をやる予定です‼︎