試合終了の笛が鳴った後、青峰は呆然としていた。
青「負けた。そうか、負けたのか。俺は。やっと負けられたんだな。」
瑠「こらこら。負けたことを嬉しがるなよ。次も俺に負ける気か?」
青「はっ。いーや!次は俺が勝つ!!」
瑠璃はそんな青峰を見て笑う。
青「ん?なんだよ、瑠璃さん?気持ち悪いぜ?」
瑠「いや。昔の大輝はこんな奴だったなと思ってよ。」
青「かもな。あんがとな。」
瑠「ああ。」
審「113対125で福田総合の勝ち!互いに礼!」
選「ありがとうございました!!」
パチパチパチ
観客はその試合のすさまじさに無意識に拍手を送る。
客「すげー試合だったぞ!!福田総合!今大会優勝候補じゃないのかー!?」
選手たちは控え室に戻る。
監「よし!!一回戦突破だ!!各自今日は試合の疲れをとってくれ。」
選「ういーす。」
灰「あれ、瑠璃さん?帰らないんすか?」
選手達は皆帰りだすが、瑠璃はその場から動こうとしない。
瑠「ああ。もうちょっとここにいるわ。先に帰ってくれ。」
灰「んー。分かりました。それじゃ、また明日。」
灰崎も控え室から出ていき、瑠璃は1人となった。」
福田総合の選手達は今日の試合について皆で話ながら廊下を歩いていた。
石「いやー。今日の試合はギリギリだったな。また瑠璃だのみになっちまった。」
望「そうですね。キセキの世代との試合はやっぱりこういう展開になりますね。」
そこで、ある1人の男とすれ違う。
灰「!?」
石「どうした、灰崎?」
灰「いや。知り合いの顔にそっくりで。気のせいすかね。」
石「?誰に似てたんだ?」
灰「帝光中学元主将。虹村修造。」
…
コンコン。
瑠璃のいる控え室をノックする音が聞こえる。
瑠「ああ?だれだ?もうみんなかえったはずだよな。」
瑠璃が思考を巡らせるが、分からない。
瑠「どうぞー。」
そして扉が開く。
虹「よお。久しぶりだな。瑠璃!」
瑠「なっ!?お前なんでここにいるんだよ!?」
虹「今日はお前が出る試合で、青峰と対戦っていうからみにきてたんだよ。」
瑠「そうかよ。で、どうだった?試合の感想は?」
虹「お前。あんな試合してたら体壊すぞ?あのゾーンの使い方はもうやめろ。帝光時代にも散々忠告しただろ。あのゾーンは危険過ぎる。」
瑠「そんなことはわかってるんだよ。でもあのゾーンを使わないと大輝には勝てなかった。」
虹村はため息をつき瑠璃の前に腰を下ろす。
虹「そう言うと思ったよ。だから俺がきた。」
虹村は瑠璃の足を触り、マッサージをする。
瑠「わりい。さすがスポーツトレーナーの息子だな。」
虹「瑠璃。お前が次に戦うキセキの世代はおそらく黄瀬だ。その試合、お前は出場するな。本当に足がぶっ壊れるぞ。」
瑠「だろうな。試合中にも違和感はあった。あと手首もすげーいてえし、とてもじゃないが黄瀬とはやり合えねえわ。」
虹「そのために灰崎をチームに入れたんだろ?お前がいなくても戦えるように。」
瑠「ばれてたか。黄瀬は灰崎に頼むわ。」
虹「よし。じゃあ、俺は帰るよ。体がいたんだら、はやく俺の家にこいよ?」
瑠「はいよー。」
…
次の日
監督から瑠璃についての報告があった。
監「みんな、聞いてくれ!瑠璃はこのまえの桐皇戦で足をいためたから、次の二回戦はもちろん三回戦も出場できない。いまいるメンバーで戦い抜いてくれ。」
石「やはり痛めていたのか。キセキの世代相手にするのはそれほどまでにダメージがあるのか。」
望「2回戦はともかく3回戦はキセキの世代、黄瀬涼太だ。瑠璃抜きでなんとかするのか。」
選手達は一応に3回戦について話している。
そんな中、灰崎は考えていた。瑠璃がいない今、黄瀬の相手をするのは自分であると。そして自分は黄瀬に勝てるのだろうか。確かに昔は黄瀬に負けたことなどなかった。しかし、今はどうだろうか。もし黄瀬が青峰と同格だとしたら100%勝つことは難しい。
監「では、今日は軽く練習をして明日の2回戦に備えてくれ。」
石「よし!練習始め!!」
選「はいっ!!」
…
石「来い!!灰崎!!」
今は3対3のミニゲームをしている。
灰「ふう。遅い。」
灰崎はまるでなんの苦もなく石田を抜く。石田は高校でも屈指の選手である。その石田でさえいまの灰崎の相手にはならない。
この時石田はある可能性を考えていた。その可能性にかけるとしたら、黄瀬涼太に勝てるかもしれないと。
灰崎祥吾。キセキの世代になりそこねた男の成長が今試される。