【凍結】問題児たちにチートが紛れ混んだそうですよ?   作:夜叉猫

31 / 59
書き上がりましたが、最近【デート・ア・ライブ】の案が出てきて【問題】の案が浮かばない夜叉猫です……。

本当にスランプなのです……。
高校もあと少しで始まるので早く書き上げたいのですが……



ともかく、本編をどうぞっ♪


~ゲーム再開までだそうですよ?~

Side 飛鳥

 

「あすかっ!あすかっ…………!」

 

幼い声と、冷たい雫が頬を伝った。

動かない私の身体を、小さな力で揺さぶっている。

 

「ひ、ぃっく…………!

あ、あすか……あすかぁ…………!」

 

背には固い地面。温もりの感じられない土の匂い。

少し湿ったそれは、私の体温を容赦なく奪う。

 

「…………。大丈夫よ。だから、泣かないで?」

 

私がそう言うとひっく、としゃくりあげるとんがり帽子の精霊が、顔にしがみついて来た。

余程心配させてしまったようね……。

顔が涙で濡れてクシャクシャじゃない……。

 

「ごめんなさいね?心配かけて」

 

とんがり帽子の精霊の頭を優しく撫でてあげる。

そして、身体を少し起こすと辺りを見渡した。

境界壁の空洞だろうか?展示会場に似た材質の壁に囲まれた私はそう予想した。

 

「それにしても私はなんでこんな所に……」

 

私は気を失う前後を少し思い出してみた。

 

(確か……十六夜君たちと分かれて……あれ?私、どうしたのかしら?)

 

記憶が曖昧だ。

こんなことは今までなかったのに……。

 

「……ともかく出口を探さないといけないわね。

皆が心配しているでしょうし」

 

私はとんがり帽子の精霊をつまみあげて肩に載せると、辺りを散策し始めた。

人工的な場所なのか、所々に灯りとなる松明が壁に差し込まれているのが分かる。

念のため一つ手に取ると進路を照らしながら洞穴を進んで行った。

 

しばらくすると、私の目の前に天井高くまであるような巨大な門が現れた。

 

「こんな所に門……?それにこの紋章…………何処かで見たような…………」

 

巨大な扉には、旗印と思われる細工が施されている。

光の届かないこの地下でこれ程巨大な鉄の門に、旗印の細工を刻む巧緻な技術。

覚えがあるとしたら……展示会場だ。

 

「…………あすか」

 

とんがり帽子の精霊が、静かな声音で私の名を呼び門の中心を指さした。

私が目を凝らしてそこを見てみると、其処には一枚の羊皮紙が貼られていた。

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

『ギフトゲーム名【奇跡の担い手】』

 

・プレイヤー 一覧

久遠 飛鳥

 

・クリア条件

神珍鉄製 自動人形(オートマター)【ディーン】の服従。

 

・敗北条件

プレイヤー側が上記のクリア条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗の下、【 】はギフトゲームに参加します。

 

【ラッテンフェンガー】印

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

「これって……【契約書類(ギアスロール)】?まさか、」

 

「あすか」

 

【契約書類】を読み終わると、とんがり帽子の精霊は私の肩から飛び降り、手頃な岩壁の突起に立った。

その幼い表情には寂しそうな、切ないような、でも何処か嬉しそうな、そんな瞳でとんがり帽子の精霊は―――

 

『わたしから、あなたにおくりもの。

どうか受け取ってほしい。

そして偽りの童話―――【ラッテンフェンガー】に終止符を』

 

その声は四方八方から聞こえてきた。

目の前のとんがり帽子の精霊ではなく、洞穴の虚空から、岩肌から。

この場に居るのは彼女だけではない。

そして私は、彼女が何者なのかを思い出して―――そして直感した。

 

(……此処に貴女の仲間が居たのね……)

 

「【群体精霊】。貴方たちは、大地の精霊か何かなのかしら?」

 

『はい。私たちはハーメルンで犠牲になった一三十人の御霊。

天災によって命を落とした者たち』

 

「…………。私を、試していたの?」

 

『いいえ。この子と貴女の出会いは偶然であり、私たちにとっての最後の『奇跡』。

そこに群体としての意識的介入は一切ありません』

 

このとんがり帽子の精霊が私に惹かれたのは、故意ではなく。

ただ運命的に惹かれたのです、と群体は語った。

 

『貴女には全てを語りましょう。

一二八四年六月二一六日にあった真実を。

そして偽りのハーメルンの正体を』

 

『そして捧げましょう。

我々が造り上げた最高傑作。

【星海龍王】より授かりし鉱石で鍛え上げた、最後の【贈り物(ギフト)】を』

 

『最早叶わぬ願いと思っておりました。

しかし、一三一人目の同士が、貴女を連れてきた』

 

『【奇跡の担い手】と成りうる貴女を。

幾星霜(いくせいそう)の旅路は、決して無駄ではなかった…………』

 

私の前の巨大な門が音を立てながら開く。

ひらりひらりと空を舞った【契約書類】は静かに私のもとへと落ちてきた。

 

『決断は貴女に委ねましょう。

我々のギフトゲームを…………受けてくれますか?』

 

「………………」

 

【契約書類】に視線を落とす。

其処にはまだ、私のコミュニティのサインが入っていない。

このギフトゲームを受けるか否かの選択は私のサイン次第のようだ。

私は瞳を閉じてしばし考える。

 

(私は…………弱い……)

 

未だに私はみんなに助けて貰ってばかりだ。

 

(まだ………何も御礼をしていないわ!)

 

私はそう心の中で叫ぶと瞳を開きスッ、と顔を上げる。

 

「一つだけ確認するわ。

貴方達が造った【ギフト】があれば…………皆の力になれる?」

 

『貴女が使えば』

 

『貴女が従えれば』

 

『貴女が担うのなら』

 

『『『貴女を、必ずや満足させましょう』』』

 

群体の声が空洞に反響する。

ならば断る道理は全くない。

私は頷くと、【契約書類】の空欄に筆を走らせてサインをする。

 

「【ノーネーム】出身、久遠飛鳥。

貴方達の挑戦、心して受けましょう」

 

光り始めた【契約書類】は門の中へと飛んでいき、導のように軌跡を残していく。

私はその軌跡を辿るように小走りで門の中に入っていった。

門の奥に進むと、ドーム状に開けた大地の中心に遠い空から太陽の光が差し込んでいる。

そして、その中心に佇むのは、身の丈三十尺はあろうかという紅い鋼の巨人。

 

「これは………展示会場にあった?」

 

紅と金の華美な装飾に加え、太陽の光をモチーフにしたと思われる抽象画を装甲に描いているその姿は、例えようもなくド派手だ。

加えて人間の倍はあろうかという巨大な拳と足。寸胴な頭と体。

その姿を唖然と見上げていると、群体の声が響く。

 

『決戦までの七日間。それまでに彼―――【ディーン】を服従させること』

 

『それがこのギフトゲーム。貴女の【威光】で鋼の魂に灯火を』

 

刹那、伽藍洞の巨驅に熱が灯る。

鳴動する鋼は地響きを上げて、不気味な一つ目を輝かせる。

紅い巨人は天地を震撼させるような産声を上げた。

 

「―――――DEEEEEeeeEEEEEEEN!!!」

 

私は笑みを浮かべた。

その紅き鋼の巨人『ディーン』が私の力になることを想像して。

 

Side Out

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

―――境界壁・舞台区画。大祭運営本陣営、隔離部屋個室。

 

閑散とした空気が立ち籠める部屋の中で眠っている耀。

俺と十六夜はそのそばに座っていた。

 

「まさか春日部が発症するとはな」

 

十六夜は眠っている耀を見ながらそう呟いた。

ペストたちとの交渉から六日が経った。

【ノーネーム】の同士の中で耀だけが黒死病を発症し、今もなお苦しんでいる。

 

「治療したいけど……ね……」

 

俺が自傷気味に言った。

確かこの【ギフト】にもそういった効果を持ったモノがあったはずだが、しっかりとは把握していない。

いつもならば【全知の司書官(ミュージアム・オブ・オーディン)】を使って知識を取り込むのだが、現在俺は二つ以上の【ギフト】の使用を禁止されている。

故に治療したくともできないのだ。

そんな俺を見た十六夜は軽めの雰囲気で口を開いた。

 

「やはは。明日勝ちゃいいんだよ」

 

「ふふふっ……確かにそうだね。

ありがとう十六夜」

 

俺は十六夜の言葉に対して微笑みながらそういった。

 

「……別に当たり前のこと言っただけだ」

 

十六夜はそっぽを向きながら呟くようにそういった。

俺は寝苦しそうに寝返りをうった耀の頭を優しく撫でる。

 

「ぅん…………よ……づるぅ…………すぅ……」

 

寝言なのか、俺の名前を呼ぶ耀。

一体どんな夢を見ているんだろうか。悪夢でないことを願いたい。

 

「にしても、考えてみりゃ簡単なことだったんだな。

謎解きっつうほど考えてねぇ」

 

十六夜はその手に【契約書類】を一枚握りながらそういった。

 

「まぁ、ヒントを貰ったのは情けなかったけどな」

 

軽い笑いを含んだ表情の十六夜。

やっぱりヒントをもらったのが十六夜のプライド的に許せなかったんだね……。

俺は椅子に戻り腰を掛けながら十六夜を苦笑気味に見詰めた。

 

「いやいや、十六夜じゃないと俺のあのヒントで分からないと思うよ?

何せ、ほんの一単語だったしね」

 

「そうだったとしてもだよ」

 

十六夜はそう言うと椅子に浅く腰掛けて背もたれにより掛かる。

それを境に俺と十六夜は無言になった。

別にこれと言った理由はない。

ただ何故か会話が途切れてしまった。

 

「………………」

 

「………………」

 

しばらくすると、十六夜が天井を見ながら呟くようにして静かに口を開いた。

 

「……なぁ、夜鶴」

 

「何かな?」

 

「……お前……気づいてて何もしねぇのか?」

 

「……何をかな?」

 

俺はなんとなくだが十六夜が聞きたいことは分かっていた。

しかし、敢えて聞き返す。

 

「ハッ。わかってるくせに聞き返すのか……。

……春日部たちの気持ちだよ」

 

その声はいつに無く真剣さが滲みでていた。

俺は息を一つゆっくりと吐くと、答えた。

 

「……気づいているよ」

 

「へぇ~……やっぱりか」

 

十六夜はさして驚く訳でもなく、淡白にそう言うと頭に両手を回し、寝っ転がるようにする。

 

「……で?その答えはどうなんだよ。

俺が気づいただけでも春日部、黒ウサギ、白夜叉、店員、あとお嬢様もか?お前に好意を抱いてんぞ?」

 

十六夜は五人の名前を上げて俺に聞いてくる。

 

「嫌いじゃないさ。むしろ好きの部類に入るよ皆。

耀も黒ウサギも白夜叉ちゃんも店員さんも飛鳥も……みんな可愛いしね」

 

「じゃあ、なんで告白しねぇんだよ。

お前が告白すりゃ全員ハッピーエンドだろうが」

 

十六夜はそう言うと椅子にきちんと座りこちらを見詰めてくる。

その目は十六夜らしくないといったら失礼だけどとても真剣な目だった。

俺は椅子に深めに座りなおすと十六夜の方を見ながら口を開いた。

 

「……十六夜も知ってるだろうけど俺は【神様】だよ?

何億年も何兆年も何京年もずっと死なない。

もし、俺の傍にいるのなら俺と同じ不老不死を与えることになるだろうね」

 

十六夜は何も言わずに静かに話を聞いてくれている。

 

「……でも、不老不死ってことは【死なないし死ねない】。

自分と近しい者たちの死を変わらぬ姿で見送らないといけないんだ。

それを何回も体験してごらん…………壊れるよ」

 

俺はまだ体験したことはない。

が、俺だって壊れるだろう。

 

「俺は自分が好きな相手にそんな思いはして欲しくない」

 

「んなのお前の勝手な事情だろうが」

 

俺の言葉を十六夜はまるで関係のないことのようにバッサリと切り捨てた。

 

「……まぁ、それは分かっているよ。

だから俺は、決めていることがあるんだ」

 

「……なんだよ」

 

「『俺から告白はしないけど、告白されたらしっかりと返す』……まぁ、ただの小心者みたいな考えだけどね」

 

自傷気味に笑いながらそういった。

すると、十六夜はいきなり笑い始めた。

 

「あはははははは!!!

なんだよそれ!マジで!!

最強の神様が小心者すぎんだろ!」

 

「……むっ……悪かったね小心者で」

 

俺は拗ねたようにそっぽを向いてみた。

すると、十六夜はお腹を抱えながら再び口を開いた。

 

「悪ぃ悪ぃ。ちょっとツボに嵌ってな。

まぁ、それは置いとくとしてだ……。

―――いんじゃねぇか?それ。

返事はきちんとしてやるんだろ?」

 

「勿論。嫌いなら嫌い。好きなら好きだと伝えるさ。

まぁ、そこからどうなるかは相手次第だけどね」

 

「十分だ十分」

 

十六夜はそういうと立ち上がってパン、と柏手を打った。

 

「と、まぁこの話は終わりだ。

俺もらしくない話をしたもんだぜ」

 

頭を掻きながら十六夜は笑った。

俺はそんな十六夜に優しく微笑みながら

 

「ありがとう十六夜」

 

意図せず相談に乗ってくれた十六夜に御礼を言った。

そして、椅子から立ち上がると見回りを名目に部屋を出ていったのだった。

 

(なんか恥ずかしくなっちゃったよ)

 

内心赤面だったのは気づかれていないはずだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

Side 十六夜

 

 

部屋を出ていった夜鶴を見送り、しばらくしてから俺は口を開いた。

 

「告白したらチャンスがあるらしいぜ?なぁ、春日部(・・・)

 

俺がベッドの方を向くと寝ているはずの春日部がびくん、と体を震わせた。

 

「……いつ気がついたの?十六夜」

 

ゆっくりとベッドの上で体を起こす春日部。

 

「最初からだ。起きてんのに気がついたからあの話題にしたんだぜ?

ともかく聞けて良かっただろ?」

 

俺が春日部に向かってニヤニヤと笑うと春日部は顔を赤く染めた。

本当に夜鶴が好きなんだなコイツ。

 

「……ま、ここまで俺が状況を整えてやったんだから成功させろよ?」

 

「……ん。わかってる。ありがとう十六夜」

 

小さな声だったが春日部は御礼を言ってきた。

 

「やはは♪感謝しろ感謝しろ。

御礼は春日部の胸タッチで良いぞ」

 

「前言撤回。感謝した私が馬鹿だった」

 

そういった春日部は俺をジト目で睨んで来た。

睨める位の元気があるなら大丈夫だな。

俺は冗談だというと部屋の出口に向かった。

 

「ともかく、明日はサクッと勝ってくるから、告白の言葉でも考えとけよ」

 

「な……ッ?!うるさいよ十六夜!」

 

一瞬で赤面した春日部を一瞥した俺はそそくさと部屋を出ていった。

背後から衝撃音が聞こえて来た時は本当にビビった。

 

(春日部のやつ何を投げたんだよ……)

 

 

 

 

 

 

―――俺たちのゲームは明日に迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




飛鳥の【ディーン】取得イベントを忘れていてちょっと無理やり入れて見ました(∀`*ゞ)テヘッ

早くバトルを書いていきたいのでちょっと手抜きに感じられた人がいたのならすみませんでしたm(_ _)m

さて、次回は夜鶴の無双回!?
どうぞお楽しみにです♪

感想などお待ちしていますね♪


では、また次回お会いしましょう♪

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。