【凍結】問題児たちにチートが紛れ混んだそうですよ?   作:夜叉猫

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久しぶりの投稿です……(泣)
本当にスランプに陥ってしまいました……

これから本調子に早く戻しますので、どうか皆さん暖かい目で見守って下さいませっ!

それでは、本編をどうぞっ♪


~審判決議だそうですよ?~

―――境界壁・舞台区画。大祭運営本陣営、貴賓室。

 

「―――ただ今より、ギフトゲーム【The PIED PIPER of HAMELIN】の審議決議、及び交渉を始めます」

 

厳かな声で黒ウサギが告げた。

参加者側からは、黒ウサギ、サンドラ、マンドラ、ジン君、十六夜、俺が交渉のテーブルにつき、主催者側からは、ペスト、ラッテン、ヴェーザーがついている。

黒ウサギは咳払いを一つするとペストたちを見詰めた。

 

「まず、【主催者(ホスト)】側に問います。

此度のゲームですが、」

 

「不備は無いわ」

 

ペストは黒ウサギの言葉を遮るように吐き捨てる。

 

「今回のゲームに不備・不正は一切無いわ。

白夜叉の封印も、ゲームのクリア条件も全て調えた上でのゲーム。

審議を問われる謂われはないわ」

 

静かな瞳とは裏腹に、ハッキリとした口調で話すペスト。

ちらりとこちらを視たがその理由はよく分からない。

 

「…………受理してもよろしいので?

黒ウサギのウサ耳は箱庭の中枢と繋がっております。嘘を吐いてもすぐ分ってしまいますよ?」

 

「ええ。そしてそれを踏まえた上で提言しておくけれど。

私たちは今、無実の疑いでゲームを中断させられてるわ。

つまり貴女たちは、神聖なゲームにつまらない横槍を入れているということになる。

―――言ってること、分かるわよね?」

 

「不正が無かった場合…………主催者側に有利な条件でゲームを再開させろ、と?」

 

「そうよ。新たにルールを加えるかどうかの交渉はその後にしましょう」

 

「…………わかりました。黒ウサギ」

 

「は、はい」

 

ペストのハッキリとした態度に少し動揺したように頷く黒ウサギ。

黒ウサギは天を仰ぎ、ウサギ耳をピクピクと動かす。

 

しばしの瞑想の後に黒ウサギは気まずそうに顔を伏せた。

その態度で不備・不正が無かったということが分かる。

 

「……。箱庭からの回答が来ました。

此度のゲームに、不備・不正はありません。

白夜叉様の封印も、正当な方法で造られたものです」

 

ギリッ、と奥歯を噛む音が聞こえてきた。

おそらくマンドラと十六夜辺りだろう。

これで参加者側は一気に不利になるのだから。

 

「当然ね。じゃ、ルールは現状を維持。

……問題は再開の日取りよ」

 

日取り(・・・)?日を跨ぐと?」

 

サンドラが意外そうな声を上げた。周りの人も皆同じような反応だ。

明らかに劣勢である参加者に、時間を与えるというのだから当然の反応なのだろう。

状況的にはこの場でゲームを再開されてもおかしくはなかったのだから。

 

「ジャッジマスターに問うわ。再開の日取りは最長で何時頃になるの?」

 

「さ、最長ですか?ええと、今回の場合だと………一ヶ月程でしょうか」

 

「じゃ、それで手を―――」

 

「待ちな!」

 

「待ってください!」

 

ジンと十六夜は二人揃って声を上げた。

おそらく日を跨げば危険だと分かったのだろう。

―――しかし。

 

「分かったその案を呑もう」

 

俺は敢えてその案を呑む。

 

「……えっ?」

 

俺の言葉に対して声を漏らしたのは黒ウサギでも、マンドラでも、サンドラでも、十六夜でも、ジン君でも無かった。

その声を漏らしたのは―――

 

「どうしたのかな?そんな『予想外だ』みたいな声を詰まらせる上げて」

 

提案したペスト本人だったのだ。

 

「……いえ、なんでも無いわ。

それより本当に良いの……?」

 

ペストは心底疑問だという表情で俺を見詰めた。

 

「あぁ。勿論だよ。

ルールはそのままでゲームの再開は一ヶ月後……だよね?」

 

「え、えぇ。それで間違いないわ」

 

「なら、何の問題も無い。

一ヶ月みっちりと修行でもして待ちかまえようじゃないか」

 

俺は頬を吊り上げながらそういった。

―――しかし、その俺の言葉に待ったをかける者が一人だけいた。

 

「ま、待ってください夜鶴さん!

一ヶ月なんて無茶です!

彼女は―――」

 

「【黒死病(ペスト)】だって言いたいんだよね?」

 

ジン君の言葉に被せるように俺がそう言うと、参加者側の人間は十六夜とジン君を除き全員が目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。

 

「ペストだと!?」

 

そして、マンドラの叫びと共に全員が、ペストを見詰める。

 

「そ、そうですよ!夜鶴さんはそれが分っていて一ヶ月も待つというのですか?!」

 

ジン君は俺を見詰めながら緊迫した様子でそういった。

 

「分っていて待つ……いや、分っているからこそ待つんだよ」

 

「……どういう事ですか?」

 

怪訝そうな目で俺の言葉を聞くジン君。

 

「ジン君は考えなかったのかな?既にペストちゃんが病原菌を潜伏させているという可能性を……ね?ペストちゃん」

 

俺が話をペストに振ると笑いながら口を開いた。

 

「えぇ、そうよ。

私は既に参加者の一部に病原菌を潜伏させている。

【ロックイーター】のような無機生物や悪魔でもない限り発症する、呪いそのものをね……でも、夜鶴。貴女いつ気がついたの?」

 

「ただの勘だよ。

そもそも俺が参加しているのに日を跨ぐなんて愚行だよ?普通。

俺の実力を知らないならまだしも君たちは俺に完膚無きまでに叩きのめされているよね?」

 

俺の言葉に黙り込むペスト。

それに対してジン君が騒ぎ始める。

 

「た、叩きのめしたってどういう事ですか夜鶴さん!?」

 

「ジン君落ち着いて?

叩きのめしたっていうのはそのままの意味だよ。十六夜なら分ってくれるかな?」

 

俺が十六夜に顔を向けると愉快そうに答える。

 

「確かに叩きのめしてたな……いや、むしろ半殺しだっただろ。しかも開始早々に」

 

「なっ?!ならば何故ゲームがクリアされない!!」

 

十六夜の言葉を聞いたマンドラが俺に問い詰めて来た。

俺は少し押されながらそれに答える。

 

「何故って、それは俺がクリアしないようにしたからさ」

 

「夜鶴……お前何故そんなことをッッ!!」

 

テーブルをダンッ、と殴りつけ俺を睨むマンドラ。

 

「ごめんね?マンドラ。

あれは俺の気まぐれ(・・・・)

そんな事でクリアしても意味が無いんだよ。

……それに―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――いつでもクリア出来るよ。

 

俺がさも当然のようにそう続けるとマンドラは目を見開き、仕方がないと言った風に席についた。

俺の実力をそこまで信用してくれるとは嬉しい限りだ。

しかし、俺のその言葉にペストは眉を顰める。

 

「……いくら夜鶴が強くとも貴女も一ヶ月もあれば―――」

 

「俺に【黒死病】は意味をなさない。

そして、君の潜伏させた【黒死病】も発症する人間は一人たりともいないよ」

 

俺がきっぱりとそういった。

すると、ペストは驚愕の表情を張り付かせた。

 

「そ、それって……どういう……」

 

掠れたような声で俺にそう問い掛けるペスト。

 

「……俺はそもそも【不死】だし、【黒死病】を治療する【ギフト】も所持している。

一ヶ月日を跨ぐのを許可したのはその間に全員を治療して修行させるためだしね」

 

俺がそう言うと絶望の表情を浮かべるペスト。

おそらく俺に勝つための策はその潜伏させている【黒死病】だったのだろう。

その策が通じない今、ペストはどうするのかな?

俺がそんなことを思っていると、ペストはその表情を引き締めて提案を始めた。

 

「……夜鶴の【ギフト】に制限をかけるわ」

 

「……【ギフト】の制限というと?」

 

ジン君は真剣な表情でペストに問い掛けた。

 

「夜鶴が使える【ギフト】は一つだけ。

そして、その制限はギフトゲーム終了までよ」

 

ペストの言葉に十六夜が反応する。

 

「その場合再開はいつになるんだ?」

 

「勿論一ヶ月後よ」

 

なるほど……俺が治療のための【ギフト】を使わせないようにしてから【黒死病】の効果を待つということか……。

しかも、この制限をかけられると治療の為には不死の【ギフト】である【曖昧な生と死(エターナル・ライフ)】を切らないといけなくなる。

その場合は俺が【黒死病】で死ぬ……か。

中々考えているようだ。

しかし……

 

「「良いの(かい?)(か?)」」

 

俺と十六夜の声が重なった。

俺は十六夜にお先にどうぞ、という視線を向けて口を閉じた。

 

「なぁ、魔王様。お前たちは俺たちが欲しい(・・・)んだろ?」

 

「……何のことかしら?」

 

少しの間を開けてペストは答える。

その間に十六夜はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「オイオイ、別に隠さなくてもいいんだぜ?

お前たち【グリムグリモワール・ハーメルン】は新興のコミュニティなんだろ?

なら人材は喉から手が出る程欲しいはずだ、違うか……?」

 

「…………」

 

「沈黙は是と取るよ?ペストちゃん」

 

俺は十六夜を援護するかのように発言をした。

十六夜は切り口を見つけた為か挑発的な笑みを浮かべている。

ペストは眉を顰めて十六夜を睨んだ。

 

「だったら何?

もしそうだとしても私たちが譲る理由は無いわ」

 

ペストの冷たく言い放った言葉に答えたのは意外にもジン君だった。

 

「いいえあります。

もし、一ヶ月後に再開となる場合おそらく僕たちは死んでしまいます。

死んでしまえば僕たちは手に入らないですよ?」

 

その自信に満ち溢れた物言いは今までのジン君とはひと味もふた味も違った。

しかしペストは、それでもなお憮然として言い返す。

 

だから何(・・・・)

私たちには再開の日取りを自由にする権利がある。

一ヶ月で死んでしまうのなら…………二十日。二十日後に再開すれば、病死前の人材を手に入れることが出来るわ」

 

もはや、人材が欲しいということを隠さなくなったペスト。

おそらく、ここが交渉のタイミングだとみたのだろう。

 

「では発症したものを殺す」

 

いきなりのマンドラの言葉にその場にいた全員がギョッとマンドラに振り向いた。

その瞳には冗談だという色は一切無く、真剣そのものだった。

 

「例外は無い。たとえサンドラだろうと【箱庭の貴族】であろうと私であろうと夜鶴であろうと殺す。

【サラマンドラ】の同士に、魔王へ投降する脆弱なものはおらん」

 

その内容に絶句する一同。

もし、ブラフだったとしても過激すぎる宣言であることからだろう。

さぁ、ここからは俺の仕事かな?

もしかしたら十六夜の仕事を取っちゃうかもしれないけどね。

 

「黒ウサギ。ルールの改変はまだ可能なのかな?」

 

「へ?…………あ、Yes!まだ可能ですよ!」

 

黒ウサギは何かに気がついたようにピン!とウサギ耳を伸ばした。

 

「交渉しようかペストちゃん。

俺たちはルールに【自決・同士討ちを禁ずる】と付け加える。

だからゲームの再開を三日後にしてくれないかな?」

 

「……却下。二週間よ」

 

ペストは少し考えるようにするとそういった。

俺は更なる交渉材料を探す。

そこで目に入ったのは黒ウサギ。

 

「じゃあ、黒ウサギも参加者にして勝てば手に入れることができる、これでどうかな?」

 

「……十日。これでどうかしら?夜鶴」

 

「ちょ、ちょっとマスター!?

夜鶴ちゃんだけでも手一杯なのに【箱庭の貴族】まで参加者にしちゃったら…………」

 

「だって欲しいもの。ウサギさん」

 

ラッテンの焦ったような声に素っ気なくそう答えたペスト。

俺は十六夜の方を見て十日でどうかな?という視線を送った。

しかし、十六夜は首を横に振った。

十日じゃ長い。そういう意味なのだろう。

しかし、俺にはこれ以上交渉材料が見当たらない。

どうしようか……そんな思考を巡らせている時、ジン君が立ち上がって緊張した面持ちで言った。

 

「ゲームに…………期限を付けます」

 

「……なんですって?」

 

「再開は一週間後。

ゲームの終了はその……二十四時間後。

そして、ゲームの終了とともに主催者側の勝利とします!」

 

「…………本気?主催者側の総取りを覚悟するというの?」

 

「はい。一週間というのは僕たちのギリギリ耐えられる瀬戸際の日数です。

だから、このゲームに参加している全コミュニティは無条件降伏を呑みます」

 

その皆からは無謀だと言われるであろう答え。

しかし、ジン君の瞳にはまるで【敗北】という言葉は無かった。

 

「それに……主催者側の総取りを覚悟する、という言葉が出ましたが…………僕たちにそんな覚悟は必要ありません」

 

ジン君のその言葉にピクリと反応したペスト。

おそらく気に障ったのだろう。

なにせ負けは無いと言われたようなものなのだから。

 

「僕たちにはたくさんの仲間が、そして何より―――夜鶴さんがいます」

 

制限をつけられてもなお、俺を信じて頼ってくれるジン君。

俺はジン君の頭を優しく撫でると笑顔を向けながら一言言った。

 

「……ありがとう。ジン君。

俺を信じて頼ってくれて」

 

「……夜鶴さん……頼ってばかりですみません……」

 

申し訳なさそうにそう言うジン君。

俺は良いんだよ、と呟くと立ち上がった。

 

「ジン君に頼られてるみたいだし……

―――本気で頑張ってみようかな……?」

 

そう言いながらクロムブラックの【ギフトカード】をその手に出現させる。

そして、そこからひとつの【ギフト】を選択した。

これは前々から創っていた奥の手のひとつ。

 

「俺は【ギフト】が制限されるからね。

ここで決めてしまおうか」

 

俺の右手にある紋章が浮かび上がる。

これはこの【ギフト】を使用する時に現れる目印みたいなモノだ。

 

「俺が使うのは―――――ギフトネーム【創作・妖精の尾(ギフト・オブ・FAIRY TAIL)】……魔法の【ギフト】だ」

 

俺は尽きる事の無い【魔力】を放出しながらそういった。

 

ペストはそんな俺を見ながらにっこりと、華が咲いたかのような笑顔を浮かべると、力強く言葉を発する。

 

「やっぱり……強いわね夜鶴。

でも負けないこれは私たちのゲーム。

負けるわけにはいかないわ」

 

その声にはまるでペストの意気込みが現れているようだった。

 

ペストが口を閉じると激しい黒い風が吹き抜け、一同が顔を庇う。

その風が止むと主催者である、ペスト――【黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)】――の姿は消え、一枚の黒い【契約書類】だけが残った。

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

『ギフトゲーム名

【The PIED PIPER of HAMELIN】

 

・プレイヤー一覧

現時点で三九九九九九九外門・四零零零零零零外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ(箱庭の貴族を含む)。

 

・プレイヤー側・ホスト側指定ゲームマスター

太陽の運行者・精霊 白夜叉(現在非参戦の為、中断時の接触禁止)

 

・プレイヤー側禁止事項

自決及び同士討ちによる討ち死に。

休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ずる。

休止期間の自由行動範囲は、大祭本陣営より五百メートル四方に限る。

 

・特別ルール

プレイヤー【不知火 夜鶴】はゲーム終了までの八日間の間に【ギフト】を二つ以上使ってはならない。

 

・ホストマスター側 勝利条件

全プレイヤーの屈服・及び殺害。

八日後の時間制限を迎えると無条件勝利。

 

・プレイヤー側 勝利条件

一、ゲームマスターを打倒。

ニ、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

・休止期間

一週間を、相互不可侵の時間として設ける。

 

宣誓

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

【グリムグリモワール・ハーメルン】印』

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

 

 

 

 

 

 




本編はどうでしたでしょうか?
感想などお待ちしています♪

ちなみにですが、夜鶴の使うギフト……一体どんなものか予想がつきますよね♪
いらないヒントですが、そのままです!


では、また次回お会いしましょう♪

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