【凍結】問題児たちにチートが紛れ混んだそうですよ?   作:夜叉猫

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正直言わせていただきますが……

やり過ぎました。
しかも、急展開……。

暖かい目で読んで下さると助かります……。


それでは、本編をどうぞ♪


〜前哨戦だそうですよ?〜

Side 三人称

 

―――境界壁・上空2000m地点。

 

遥か上空、境界壁の突起に四つの人影が揺れていた。

一人は露出が多く、布の少ない白装束を纏った女性。簡単に言えば水着にマントを羽織った感じなのだろうか。

白髪の二十代半ば程に見える女性は二の腕程はあろう長さのフルートを右手で弄びながら、騒然となる舞台会場を見下ろしている。

 

「プレイヤー側で相手になるのは………【サラマンドラ】のお嬢ちゃんを含めて四人ってところかしらね?ヴェーザー?」

 

「いや、三人だなあのカボチャには参加資格がねぇ。

特にヤバイのは吸血鬼と火龍の階層支配者(フロアマスター)

―――あぁ……あと事のついでに、偽りの【ラッテンフェンガー】も潰さねぇとな」

 

白装束の女性の言葉に答えたのは、対照的に黒を基調とした軍服を着る、黒髪短髪のヴェーザーと呼ばれた男性。

その手に握られた笛は白装束の女性のモノとは違い、比較的長身の男性と同等……いやそれ以上の長さである。

明らかに楽器としては常軌を逸する長さであり、もはや鈍器である。

 

そして三人目は、外見が既に―――

―――人ではない。

陶器のような材質で作られた滑らかなフォルムと、全身に空いた大小様々な風穴。

全長五十尺はあろうかという巨兵のその姿を安易に例えるとするのなら、擬人化した笛といったところだろう。

顔面に空いた特に巨大な風穴は、絶えず不気味な鳴動を周囲にばらまいていた。

 

最後にその三体に挟まれるような形で佇む、白黒の斑模様のワンピースを着た少女。

斑模様のワンピースを着た少女は自らを囲む三体の顔をそれぞれ一瞥すると、無機質な声で宣言した。

 

「―――ギフトゲームを始めるわ。

貴方たちは手筈通り御願い」

 

「おぅ。んで、邪魔する奴は?」

 

「……殺して良いよ」

 

「イェス、マイマスター♪」

 

白装束の女性、軍服を着た男性は境界壁から飛び降りて行った。

その姿を見ていた斑模様のワンピースを着た少女はふと、舞台会場を見下ろす。

すると、明らかに少女を睨んでいる一人の人間がいた。

 

「―――へぇ……」

 

斑模様のワンピースを着た少女はその人間を興味深そうに見つめた。

よく見ると睨んでいる人間の口が動いている。

斑模様のワンピースを着た少女は読唇術の要領でそれを読み取っていく。

 

「『わ・る・い・こ・に・は・お・し・お・き・だ』……。

ふふっ……。『悪い娘にはお仕置きだ』……ね……」

 

斑模様のワンピースを着た少女は愉快そうに笑った。

そして、少女を睨んでいる人間に向かって聞こえるはずもないが呟いた。

 

「―――やれるモノならやってみなさい」

 

そして、斑模様のワンピースを着た少女もワンピースの袖を翻しながら何処かへ向かった。

 

しかし、そのせいか少女は見ることはなかった。

 

 

 

―――睨んでいる人間が獰猛な笑みを浮かべていた事を。

 

 

Side Out

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Side 十六夜

 

最初の変化は俺たちのいるバルコニーから始まった。

突如として白夜叉の全身を黒い風が包み込み、周囲を球体状に覆ったのだ。

 

「な、何ッ?!!」

 

「白夜叉様!??」

 

サンドラはそんな白夜叉に向かって手を伸ばすが、バルコニーに吹き荒れる黒い風に阻まれた。

黒い風は更に勢いを増し、白夜叉を除く全ての人間が一斉にバルコニーから吹き飛ばされた。

 

「きゃ…………!」

 

「お嬢様掴まれ!」

 

俺は空中に投げ出され、体勢を崩しているお嬢様を抱き抱えて着地する。

上空を見上げれば遥か上空に人影がある。

 

「……ちっ!【サラマンドラ】の連中は観客席側に飛ばされたか!」

 

辺りを見回すと綺麗に【ノーネーム】所属のメンバーは舞台側に飛ばされていた。

 

「十六夜さん!夜鶴さんを知りませんか?!」

 

舞台袖から出てきた御チビ様はそう叫んだ。

その後に続く春日部とレティシアも慌て気味なのがわかる。

 

「なんだ夜鶴がいねぇのか?」

 

「私が少し目を離してたら居なくなってた」

 

春日部が三毛猫を抱えながらそういった。

それにしても夜鶴が誰にも告げずにきえるねぇ……

 

「……珍しいな……」

 

俺は顎に手を添えて考えるように呟いた。

しかし、考えていても始まらない。

俺は黒ウサギの方を向くと念のため確認を取る。

 

「魔王が現れた。…………そう言う事で良いんだな?」

 

「……はい」

 

黒ウサギは真剣な表情を浮かべながら頷く。それをみたメンバーに緊張が走った。

辺りの観客席は既に大混乱に陥り、誰もが我先にと逃げようとしていた。

『阿鼻叫喚』まさにその通りだ。

俺自身、魔王とのゲームに好奇心が刺激されているが正直余裕が無い。

 

「……白夜叉の【主催者権限(ホストマスター)】が破られた様子は無いんだな……?」

 

「はい。黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きません」

 

っつー訳は……連中はルールに則った上でゲーム盤に現れたってことか……。

 

「ハハハッ!流石は本物の魔王様。

……期待を裏切らねぇなぁ……オイ!」

 

「どうするの?此処で向かい撃つ?」

 

「ああ。たが全員で迎え撃つのは些か具合が悪い。

……それに【サラマンドラ】の連中も気になるからな」

 

俺は観客席の方をチラリと見ながらそういった。

 

「では、黒ウサギがサンドラ様を探しに行きます。

その間、十六夜さんとレティシア様の二人で魔王に備えてください、ジン坊ちゃん達は白夜叉様をお願いします」

 

「了解」

 

俺は一言呟くと上空に見える人影を睨み付ける。

 

「お待ちください。魔王襲来となれば我々【ウィル・オ・ウィスプ】も協力致します」

 

声の聞こえた方を見てみるとそこには、ジャックとアーシャが舞台上に上がってきていた。

 

「良いですね?アーシャ」

 

「う、うん。頑張る」

 

緊張しているのかアーシャは強ばりながら頷いていた。

 

「では、御二人は黒ウサギと一緒にサンドラ様を探し指示を仰ぎましょう」

 

俺たちは視線を交わして頷き合う。

そして、各々の役目遂行のために走り出した。

 

―――逃げ惑う観客が悲鳴をあげたのはそんな時だった。

 

「見ろ!魔王が降りて来るぞ!」

 

俺は落下してくる人影を一瞥すると、レティシアの方を振り返って叫んだ。

 

「んじゃ行くか!黒い奴と白い奴は俺が、デカイのと小さいのは任せた!」

 

「了解した主殿」

 

レティシアの単調な返事を聞いた俺は体を伏せそのまま地を砕く勢いで境界壁に向かって跳躍した。

 

そして、その勢いを一切殺さず黒い奴に突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――はずだった(・・・・・)

 

 

「『不動(うごけず)―――我はその身の自由を許さず』」

 

その言葉が聞こえた瞬間俺は体が一切動かなくなり跳躍した勢いそのままで境界壁に激突した。

 

「痛ってぇ……なんだよ夜……づる……」

 

土煙が晴れ、視線を上へと移動させる。

そこには夜鶴が立っていた。

何時も通りのその風貌。

……しかし、俺はその夜鶴の姿をきちんと視界に入れた瞬間背筋が凍った。

何故なら―――

 

 

―――――夜鶴は三人を既に半殺しにしていたのだから―――

 

 

Side Out

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Side ???

 

「……何?此処……」

 

つい先程まで境界壁のそばを落下していたはずの私たちはいつの間にか舞台上にいた。

 

「マスター……これは一体」

 

ラッテンが私に心配そうな声を出しながらそういった。

 

「分からないわ……そもそも此処……私たち以外の気配が感じられない(・・・・・・・)

 

先ほどまであれほどいたはずの人間が一瞬にして消えていた。

まるで夢でも見ていたようだ。

 

「オイオイ……なんの冗談だ?これは」

 

ヴェーザーは笛に寄り掛かるようにしながら辺りを見回している。

私も可能な限り辺りを探してみるが人間どころか鳥などの動物すらいない。

 

「……一体何が……」

 

私が訳もわからずにそう呟く。

すると―――

 

「こんにちは。魔王御一行様?」

 

―――突然背後から聞きなれない声が掛けられた。

 

「誰ッ……!!?」

 

私が振り向きざまに死を運ぶ黒き風を飛ばす。

しかし、そいつは半身になることでいとも簡単によけてみせた。

私が完全に後ろを振り向き、そいつの顔を見てみると、それはつい先程見た舞台会場から私を睨んでいた人間だった。

 

「!?……貴女さっき私を……」

 

私は不意に声を上げてしまう。

まさかこんなところで出会うなんて……

 

「なんです?マスターの知り合いですか?」

 

「マスターに知り合いなんていたんだな」

 

そんな私の言葉にこれでもかと憎まれ口を叩くラッテンとヴェーザーだったが、二人も振り向き戦闘体勢に入っていた。

 

「……違うわよ。その娘、私たちが境界壁の上で話している時からこちらを睨んでいたのよ」

 

私が面倒臭気に呟くと僅かだがラッテンとヴェーザーが息を呑んだ。

それもそうだろう。私たちはあの時限りなく気配を希薄にしていたのだ。

なのに彼女は気がついた…………。

 

「―――貴女良い手駒になりそう」

 

私は笑みをうかべながらそう口にすると彼女は声を出して笑い始めた。

まるで私たちを嘲笑っているようで不愉快だ。

 

「……何がおかしいのかしら?」

 

「いやいや……俺が何も話して無いのに話が進むからね……。

ちょっと仲間外れにされた気分になっただけだよ」

 

「……そう」

 

私が彼女の言葉に淡白にそう答えると彼女は微笑みながら一つの輝く羊皮紙を取り出した。

 

「……ところで魔王御一行様」

 

彼女はその輝く羊皮紙を片手で弄びながら私たちの方へ一歩踏み出すと比較的穏やかな優しい声で言った。

 

「―――俺とギフトゲーム……しない?」

 

 

Side Out

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「…………貴女何を言っているの?」

 

斑模様のワンピースを着た少女は理解不能だといったように首を傾げた。

まぁ、確かにいきなり過ぎたのは頷ける。

 

「だから、俺とギフトゲームをしないかい?」

 

俺が再びそう言うと腕を組みながら斑模様のワンピースを着た少女は考えるようにした。

そして、何かを企んだような笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「受けてもいいけど……ひとつ条件があるわ」

 

「何かな?」

 

斑模様のワンピースを着た少女は俺を指さしながらニヤリと笑った。

まるで、悪巧みをしている少女のような小悪魔的な笑みだ。

 

「―――そのギフトゲームに負けたら貴女私に隷属しなさい」

 

「あぁ。良いよ」

 

俺が迷いもせずに即答するとヴェーザーと呼ばれた男性とラッテンと呼ばれた女性がずっこけた。

それはもう芸人さんかと言わんばかりに見事に。

 

「い、良いのか?!」

 

「魔王のコミュニティの私が言うのもなんだけどそれでいいの?!」

 

ずっこけた二人はいきなり起き上がるとそう叫んだ。

斑模様のワンピースを着た少女は自ら条件を提示したのにも関わらず目を見開いている。

俺はそれに少し気圧されながらも口を開いた。

 

「う、うん。まぁ…………俺が―――」

 

 

 

 

 

 

 

―――負けることは無いしね。

 

少し間を空け自身あり気に俺が続けると三人は目を細めて睨んできた。

一人は驚いたように。

一人は疑うように。

一人は面白いモノを見たように。

三者三様の反応。

 

「……あははは!良いわ!貴女面白い。

……ギフトゲームしましょうか」

 

斑模様のワンピースを着た少女は、真面目な表情でそう言う。

するとラッテン、ヴェーザーも気合を入れ直したように手に持つ得物を構えた。

 

「……ふふふっ。

じゃあ始めようか…………俺が初めて【主催者(ホスト)】を務めるギフトゲームを」

 

俺は指をパチンッ、と一度だけ鳴らし三人の元へあらかじめ用意しておいた【契約書類(ギアスロール)】を出現させた。

 

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

『ギフトゲーム名【神の気まぐれ】

 

・プレイヤー 一覧

【ノーネーム】

不知火 夜鶴

 

【グリムグリモワール・ハーメルン】

ペスト

ラッテン

ヴェーザー

 

・プレイヤー側 勝利条件

ホストマスターの打倒。

ホストマスター側の降参。

 

・ホストマスター側 勝利条件

プレイヤー全てを打倒。

プレイヤー側の降参。

 

・特別条件

プレイヤー側ホストマスター側両者ともに降参することが出来る。

ホストマスター側の敗北が確認された場合、ホストマスターはコミュニティ【グリムグリモワール・ハーメルン】に隷属すること。

ギフトゲームの制限時間は三十分とし、制限時間が過ぎても決着が着かない場合は引き分けとする。

ゲーム開始の合図はコイントスとする。

 

宣誓

上記を尊重して【不知火 夜鶴】、【グリムグリモワール・ハーメルン】メンバー両者はギフトゲームを行います。』

 

○○○○○○○○○○○○○○○○

 

 

【契約書類】に目を通した三人は俺を睨む。

 

「貴女……まさか……。

いえ……そんな訳が無いわよね……」

 

独り言のように呟く斑模様のワンピースを着た少女――おそらく彼女がペストなのだろう――。

頭を振り考えを捨てたようだ。

それを見た俺はニコリと笑って宣言した。

 

「……さぁ……ギフトゲームスタートだ」

 

ポケットから取り出したなんの変哲もないコインを親指で弾いた。

 

―――キンッ!

 

その音はどこか甲高いモノだった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後付けの説明ですが、
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
は、少し時間が戻っています。

少し、夜鶴の挿絵を書いてみました……///
下手くそですが、少し気分転換にでも見ていただけると幸いです。


【挿絵表示】


今回は【夜叉猫の料理話】お休みです!
楽しみにして頂いてる皆様すみませんm(_ _)m


では、また次回お会いしましょう♪

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