【凍結】問題児たちにチートが紛れ混んだそうですよ?   作:夜叉猫

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ペルセウス編に突入しましたが……

何故か夜鶴の影が薄くなっているような……

ともかく、そんなことには気を取られず頑張っていきます!!

皆さん感想お待ちしていますよ!!


~襲撃されるそうですよ?~

俺は、あの【打倒魔王】宣言が終わり【ノーネーム】に帰って来ると、十六夜たちとしばらく別れ、【月光庵】に来てくつろいでいた。

しばらくすると、耀が訪ねて来たのが分かった。

 

「夜鶴今大丈夫?」

 

「うん。大丈夫だよ丁度暇してた所だしね」

 

俺は耀を中に入れ、ひとつの部屋に案内した。

この部屋は白夜叉の私室の造りに似ているが、細部は違っている。

耀に座布団を渡すと、俺は畳みに直接座った。

それを見た耀は座布団をひきながら座りだす。

 

「夜鶴……今日はありがとう」

 

「どういたしまして。

怪我はもう大丈夫かい?耀ちゃん」

 

「うん。夜鶴が治してくれたから……ほら大丈夫だよ?」

 

耀がそういいながら自らの服をはだけさせて怪我をしていた部分を見せて来た。

 

「ちょ!……耀ちゃんそんなことしたら駄目だよ!

男の俺に見られるなんて嫌でしょう?」

 

俺が少し慌てた風にそういうと、耀は、はだけさせた服を元に戻して座り直した。

 

「……別に夜鶴なら良いのに……(ボソッ」

 

「ん?何か言ったかい?」

 

「ううん。何でもない」

 

耀がどこからともなくあらわれた三毛猫を抱きながらそう言った。

ふふふ……実は聞こえてたんだけど……

可愛いなぁ……なんで、飛鳥といい耀といいこんなに可愛いのかなぁ……

俺は一瞬そう考えたが、雑念だと頭を振って消し去った。

 

「耀ちゃん飲み物何かいるかい?」

 

俺は立ち上がりながら、耀に質問した。

 

「緑茶あるかな……?」

 

「勿論あるよ。此処にはそういう飲み物類は一杯あるからね」

 

俺はそういいながらニコリと笑って飲み物を淹れに行った。

……全く……最近は雑念が多いなぁ……

 

 

 

「お待たせ。三毛猫にはミルクを持って来たけど良かったかな?」

 

「『ホンマか?!ありがとうなぁ旦那~』」

 

「あははは。どういたしまして。

はい耀は緑茶ね」

 

俺は三毛猫にミルクの容器をあげると、耀には緑茶の入ったマグカップを渡した。

 

「ありがとう夜鶴」

 

お礼を言ってきた耀にまたニコリと笑った。

耀は両手でマグカップを持つと、熱い緑茶を冷やしながらちびちびと飲み始めた。

 

「耀ちゃんは猫舌なのかい?」

 

「うん……熱いのはちょっと苦手かな」

 

俺はその話を聞きながら、自分のマグカップに入っているコーヒーを口に含んだ。

うん。我ながら良いコーヒーを淹れたな。

 

「夜鶴は何を飲んでるの?」

 

「俺はコーヒーだよ。

ただしブラックだけどね」

 

耀の方に香りが行くようにマグカップを傾けた。

 

「良い香りだね……」

 

「ふふふ。これは俺のお気に入りだよ」

 

俺と耀はこのような雑談をまぜながら、お茶を楽しんだのだった。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「……ん?誰か来たみたいだね」

 

十六夜が居るであろう大広間におおよそ【ノーネーム】では、感じたことのない感覚を持つ者が侵入している。

 

「耀ちゃん……って寝てるみたいだね……」

 

耀も連れて行こうかと思い先程から静かだった耀に声を掛けると、そこには三毛猫と並んで寝ている耀の姿があった。

 

「全く無防備だなぁ……耀ちゃんは男の家に居るのを分かってるのかな……?」

 

あまりの耀の無防備さにため息が出てくる。

さっきは俺に服をはだけさせて肌を見せて来るし……俺が鈍感だとでも思ってるのかなぁ……?

少なくとも今分かるのは、【黒ウサギ】【耀】は俺に少なからずの【好意】を持っている。

 

某幻想殺しなら「○条さんは男として見られてないんでせうか……」「○条さんも素敵な出逢いが欲しい!!」などと言えるのだろうが生憎俺はあそこまで鈍感ではない。

 

「――まぁ、俺の勘違いって可能性の方が大きいけどね……」

 

苦笑しながらひとり誰に言うわけでもなく呟いた。

俺は耀に薄手の毛布を掛けてあげると、軽くメモを置いて、十六夜たちの所へ向かって行った。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「十六夜俺も交ぜてよ」

 

俺は大広間のドアを開けながらそう口にした。

 

「おぉ夜鶴じゃねぇか。

なんだ春日部とのお楽しみは終わったのか?」

 

十六夜はニヤニヤしながら俺の方を向く。

 

「十六夜死すべし」

 

十六夜の言葉が終わるのと同時に何故か隣にあった木の枝を十六夜めがけて(手加減しながら考えうる限りの)全力投球した。

これは別に【ギフト】で強化した物ではなく素の身体能力である。

 

「うぉっ?!!!」

 

十六夜はその枝に対して右拳を全力で振り下ろした。

しかし、枝はその拳で減速したものの十六夜の頭にクリティカルヒットした。

十六夜の頭にはギャグ漫画のようなタンコブが作られていた。

 

「夜鶴……冗談に決まってるだろうが……」

 

十六夜は痛そうに自らのタンコブを撫でていた。

心なしか涙も見えている気がする。

 

「十六夜の自業自得だよ。ねぇ?黒ウサギ」

 

しばらく空気と化していた黒ウサギに話を振るとハッとした表情をしながら俺と十六夜の頭をハリセンで叩いた。

 

「こんのお馬鹿様方っ!!!

屋敷の中でなんてことをしているんですかっ!!

そして夜鶴さんっ!!!」

 

「何かな?黒ウサギ」

 

「もっと手加減して下さいませっ!!

十六夜さんが死んでしまいますよっ!!」

 

「ごめんあれでも一割行かない位なんだけど……」

 

「「「規格外だっ?!!!」」」

 

今までのやり取りに三人は心底驚いたようなかおで叫んだ。

……三人……?

あ……忘れてた。全く十六夜がふざけるから俺も目的を忘れてたよ。

 

「……所でそこの綺麗な金髪をしたお嬢さんは誰なのかな?」

 

「す、すまない。名乗り遅れてしまったな。

私の名は【レティシア=ドラクレア】だ。

君が【夜鶴】だな?」

 

俺が先程感じたのは、彼女だったようだ。

その綺麗な金髪は赤い大きなリボンで留めており、赤いレーザーコートに独特なデザインのスカートを身に付けている。

見掛けはジン君と変わらない位だが彼女にはどことなく高貴さが感じられた。

 

「あれ?俺の名前を知っているのかい?」

 

「勿論だ。白夜叉からは【規格外】だと聞いているよ」

 

「やっぱりその認知の仕方をしているんだね……」

 

苦笑いをする俺。

しかし、俺は彼女が何者なのか詳しく知らない。彼女を観察するように見ていると、

 

「どうした?私の顔に何かついているか?」

 

不思議そうな顔で俺にそういった。

 

「いいや。可愛い娘だからね目の保養にしてたんだよ」

 

社交辞令のごとくしかし、事実を口にする俺に彼女は嬉しそうに笑った。

 

「ふふ……ありがとう。

しかし、美人というなら君もその部類に入るだろう?」

 

俺の近くで十六夜が笑っているのがわかった。

ともかく俺は十六夜の頭に軽い手刀を叩き込むと再び口を開く。

 

「あはは……俺は男だからね……

美人の部類に入ってもなんら嬉しく無いんだけど……」

 

「なっ?!……そんな馬鹿な!?

彼女が言っていることは本当か?!黒ウサギ!十六夜!!」

 

彼女――レティシア――は慌てながら十六夜たちに尋ねる。

黒ウサギは苦笑しながら、十六夜は楽しそうに答えた。

 

「Yes、夜鶴さんは男性の方でいらっしゃいますよレティシア様」

 

「ヤハハ!!最高に面白かったぜ!!

その質問なら答えは『Yes』だな」

 

「……にわかには信じがたいな……」

 

レティシアは納得いかないような顔で俺を見てきた。

 

「あははは……。

所で彼女は何者なの?黒ウサギ」

 

「そういえば夜鶴さんには言っていませんでしたね……。

レティシア様は以前の同士でいて、黒ウサギの先輩でございます」

 

黒ウサギは嬉しそうに楽しそうに話してくれた。

なんだ……レティシアは元・仲間だったのか……

 

「そうだったんだ……

じゃあ、その元・仲間のレティシアちゃんがここにいるの?」

 

「それについて今話そうとしてたんだよ」

 

十六夜がそう答えた。

どうやら俺の乱入のせいで聞くに聞けなかったようだ。

 

「まぁ……用というほどものではない。

【新生ノー ネーム】がどの程度の力かを見に来たのだ。

先程黒ウサギに言った、ジンに会いたくないというのは、合わせる顔がないからだ。

あの【ガルド】とのギフトゲームではお前たちの仲間を傷つける結果になってしまったからな……」

 

レティシアは悲しそうな、申し訳なさそうな顔で謝罪の言葉を口にした。

 

「あの変な樹木はレティシアちゃんの仕業だったのかい?」

 

「あぁ……あれは私が【鬼化】させたのだ」

 

「【鬼化】?」

 

十六夜は聞き慣れない言葉に対して疑問の声をあげた。

 

「レティシア様は吸血鬼なのですよ!」

 

「黒ウサギ。それでは説明になっていないよ。

……私から簡単に説明させてもらうと、体液の交換による強制的な【鬼種化】だ。

君たちなら『噛まれたら吸血鬼になる』でわかるのかな?」

 

「大丈夫だぜ……しかし、黒ウサギマジ駄ウサギ……」

 

十六夜はやれやれと首を振りながら聞こえるような声で最後まで口にした。

 

「十六夜さん!!だから言うなら聞こえないようにしてくださいっ!!

本気で凹みますよっ?!黒ウサギダウンですよっ?!」

 

若干涙目な黒ウサギは十六夜に情けない声で訴えた。

 

「やはり黒ウサギは弄ばれているんだな」

 

「あははは……レティシアちゃんもなかなか酷いね」

 

「夜鶴も助けないのだから私と同じだろう?」

 

「……だね。否定出来ないよ……」

レティシアと俺は互いに弄ばれる黒ウサギを静観するのだった。

 

~~~~~~~~~~

 

「それにしても金髪ロリが吸血鬼とはなんつう『王道(ベタ)』さだよ……」

 

「十六夜それは俺も思ってたけど言葉にするのは我慢しなきゃ……」

 

十六夜の言葉に俺は呆れたような声で言った。

黒ウサギたちは首を不思議そうにかしげていたが、俺たちがなんでも無いよと言うとレティシアが再び話を始めた。

 

「……私は今日、黒ウサギ達が【ノーネーム】として再建を掲げたと聞き、コミュニティを解散するように説得しに来たのだ。

【ノーネーム】……【名】無し【旗印】無しという状況のコミュニティの再建がどれだけ茨の道なのか……お前が分かっていないとは思えなかったからな黒ウサギ……」

 

黒ウサギはレティシアのその言葉に黙り込みながらうつ向いた。

確かにそれは苦しく長い道程なのだろう。

 

「……しかし、ようやくお前たちと接触できる チャンスを得た時、看過できぬ話を耳にした。

神格級の【ギフト】保持者が黒ウサギの同士としてコミュニティに参加したと」

 

レティシアの言葉に、一斉に十六夜へと視線が集まった。

 

「そしてもうひとり……白夜叉に【規格外】と言われる程の強さをもつ男……」

 

レティシアは鋭い視線で俺を見詰めた。

……これから自己紹介に【規格外】っていれようかなぁ……何故か俺といえば【規格外】みたいになってるし……。

 

「――そこで私は一つ試したくなった。

その新人達がコミュニティを救えるだけの力を秘 めているのかどうかを」

 

「……結果は?」

 

黒ウサギは真剣な表情で質問すると、レティシアは苦笑しながら首を振った。

 

「ガルド程度では当て馬にもならなかったよ。

ゲームに参加した彼女たちはまだまだ成長の余地がある青い果実で判断に困る。

一番見たかった君たちはゲームに参加すらしていなかったからね……」

 

残念そうなレティシアを見た十六夜はニヤリと笑うと、ひとつの提案をした。

 

「俺の実力が見たいならアンタが試せば良いだろう?

むしろこっちの方が簡単だ。

そうだろう?――【元・魔王】様?」

 

その時の十六夜の顔は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「……なるほど……それは思い付かなかった……。

実にわかりやすい……

下手な策を弄さず最初からそうしていればよかったかもしれないな……」

 

レティシアもまた、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「ちょ、ちょっと御二人様……?」

 

「ゲームのルールはどうする?【元・魔王】様?」

 

十六夜の挑発する言葉に眉ひとつ動かさないレティシア。

なんて大人な対応なのだろうか……どこぞの蛇神とは全然違うよ……。

 

「どうせただの力試しだ、手間暇をかける必要も ない。

双方が共に一撃ずつ撃ち合いそして受け合う。

……どうだ?」

 

「ヤハハ!地に足をつけて立っていた奴の勝ちってか?

良いじゃねぇかシンプルイズベストって奴だな」

 

二人が会話を交わし終わると、窓から飛び降りて行った。

 

「……黒ウサギ俺たちも行こうか……?」

 

「……そうですね」

 

俺と黒ウサギは疲れたような声を出しながら下に向かった。

 

 

 

「――へえ、箱庭の吸血鬼は翼が生えてるの か?」

 

「ああ、翼で飛んでいるわけではないがな……

……なんだ、制空権を支配されるのは不満か?」

 

「いいや、ルールにはそんなのなかったしな。

文句はねぇよ。

そんなのは【空を飛べない俺】が悪いんだからな」

 

そこには、空に静止しながら話すレティシアと地に立ちながらそう話す十六夜がいた。

 

「なかなか面白いな……」

 

レティシアはフッと笑うとその手に金、紅、黒により彩られたカードを出現させた。

予想するにあのカードは【ギフトカード】だろう。

 

「れ、レティシア様!?その【ギフトカード】は……」

 

「……下がれ黒ウサギ……力試しでもこれは【決闘】だ」

 

レティシアの【ギフトカード】が輝くと、その手には長い柄の槍が握られていた。

 

「さて、ルールの確認だ。

互いにこのランスを一度づつ投擲し受け手は止められねば敗北。

……悪いが先手は譲ってもらうぞ!」

 

「お好きにどうぞってか!」

 

おそらく投擲専用のランスに分類されるであろうその武器をレティシアは構えた。

フゥ、と息を吐いたレティシア。

身体をしならせながら打ち出したランスには紅黒いオーラが纏っており、空気の尾を引いて十六夜めがけて一直線に落下していく。

それを獰猛な笑みを浮かべて睨むと、十六夜は拳を握り締めた。

 

「ハッ!――――しゃらくせぇ!!!!」

 

「「――――はあっ!!?」」

 

落下して近づいたランスを十六夜は殴りつけた。

一瞬拮抗したかと思いきや、十六夜の力が勝りランスはひしゃげ鉄塊と化した。

そして、鉄塊と化したランスは十六夜の力により再び打ち出される。

しかし、その攻撃がレティシアに当たる寸前に飛び出した黒ウサギがその身を助けたのだった。

 

レティシアの身を抱く黒ウサギは【ギフトカード】を掠め取ると体を震わせた。

 

「ギフトネーム【純血の吸血姫(ロード・オブ・ヴァンパイア)】……。

やっぱりギフトネームが変わってる……。

【鬼種】はかろうじて残っているものの【神格】が全く残って無い……」

 

「っ…………!」

 

黒ウサギの言葉に目を背けるレティシア。

十六夜は呆れたような顔で二人に近づいて行く。

俺も三人に近づいて行くように歩いて行く。

 

「……もしかして【元・魔王】の【ギフト】って【吸血鬼のギフト】しか残ってないのか?」

 

「はい……武具は多少残してありますが、ご自身に宿る【ギフト】は……」

 

黒ウサギは悲しそうに語った。

その話を聞いている十六夜はとても不満そうだ。

まぁ、十六夜の性格からして弱いレティシアと戦ったのが不満なのだろう。

 

「……通りで歯ごたえがないわけだ……

なんだ、他人に所有されたら持っている【ギフト】も奪われるのかよ黒ウサギ?」

 

「いいえ……魔王がコミュニティから奪ったのは【人材】であって【ギフト】ではありません。

武具などの顕現しているギフトとは違い【ギフト】は様々な神仏、精霊などから受けた【奇跡】であり云わば魂の一部……。

……いくら隷属させた相手だとしても、同意無しに【ギフト】を奪うことなど……」

 

「じゃあ、レティシアちゃんは自ら【ギフト】を差し出したってことかな?」

 

レティシアは俺の問いに何も答えない。

極めつけは、一番長い間一緒にいた黒ウサギからの視線から逃げている。

……図星なのだろう。

 

「レティシア様は【鬼種の純血】と【神格】の両方を備えていた為【魔王】と自称するほどの力を持っていたはずです……

……今の貴女はかつての10分の1にも満たない力しかありません……。

……一体どうして……」

 

「……それは……」

 

レティシアは黒ウサギの問いに答えようと口は開くが声が出ない。

そして何度かそれを繰り返すと結局沈黙した。

その表情には哀しみが浮かんでいた。

 

「まあ……あれだ。

話があるならとりあえず屋敷に戻ろうぜ黒ウサギ?」

 

「外じゃ話せるモノも話せないだろうしね」

 

「……そう……ですね」

 

黒ウサギとレティシアは沈んだような雰囲気を出しながらコクリと頷いた。

 

「ったく……ほら行くぞ」

 

十六夜は頭を掻きながら黒ウサギとレティシアの背中を押して行く。

何故か十六夜が良いお兄さんに見えるな……

俺もそんな三人についていくように屋敷へ足をむけた。

 

――そんな時、十六夜たちの背後から褐色の光を放つ柱が迫ってきた。

 

 

「あの光……【ゴーゴンの威光】っ!!?

まずい!!見つかったか!!」

 

いち早く気付いたのはレティシア。

その目には焦りの色が見える。

 

「横に跳んで三人ともっ!!!」

 

俺の声に反応出来たのは十六夜のみ。

十六夜は持ち前の身体能力を使い全力で横に跳んだ。

しかし、レティシアと黒ウサギは反応が出来なかったらしく、その身を光の柱の前に晒していた。

 

「っ!!黒ウサギっ!!!」

 

「レティシア様っ!!!」

 

互いが助かるには、逃げる時間が遅かったのを悟ったのか、二人は互いに互いを突き飛ばそうと手を伸ばす。

しかし、目前には褐色の光が迫っており、もの凄い早さで近づいている。

――間に合わない。

黒ウサギとレティシアは目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俺がそんな理不尽を許すわけがない。

 

「……【時を司りし者(クロノス)】」

 

使用するのは【時間停止】。

停める時間は五秒。今はそれで充分だ。

 

「【停まれ(アビィヤンス)】」

 

『世界は静止し、時を刻むのを止めた』

 

―― 一秒 ――

 

俺は素早く黒ウサギとレティシアに近づいた。

 

―― 二秒 ――

 

二人を抱き抱える。

 

―― 三秒 ――

 

光の通過する道から移動し、

 

―― 四秒 ――

 

二人を安全な所へ避難させた。

 

―― 五秒 ――

 

そして何喰わぬ顔で元の場所に戻った。

 

『世界は静止を止め、淡々と時を刻み始めた』

 

黒ウサギとレティシアはしばらく目を閉じていたが、予想していた【ギフト】の衝撃が無いのを不思議に感じたのかゆっくりと目を開いた。

 

「……黒、ウサギ……?」

 

「……レティシア……様……?」

 

互いの名前を呼び、ツゥと涙を流した。

何故助かったかより、互いが助かったことへの歓喜が大きかったようだ。

 

「……敵さんのご登場みたいだぜ?」

 

いつの間にか着地していた十六夜が空を見ながら呟いた。

その声に反応し、上を向くと翼の生えた靴を装備した物騒な男たちが空を飛んでいた。

吊られるように上を向いた黒ウサギは男たちを見ると、その表情を驚愕に染めた。

 

「あれは……コミュニティ【ペルセウス】!!」

 

……何やら怪しい臭いがしてくるコミュニティの登場だった。

 

 

 




今日は、学校で調理実習をしたのですが……

主婦だと言われました……

これも花嫁修業のおかげかなっ!!(笑)

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