転生してフレイム一家に拾われてから六年近く経ちました。偶に兄さんは不思議な力を使っていますが転生前と比べたら『普通』な生活をしていると思えます。
「兄さん、こっちは終わりました。」
「お、おう…。相変わらず仕事が早いな。」
「まぁ、こういうのは慣れましたから。お陰様で」
とっっても、『普通』な生活を送らせていただいております。兄さんが騒動を招き入れたりしなければの話しですけど。
変なボールに追われたり、浅黒い肌の人に誘拐されかけたり、エクソシストなる人に刀を突きつけられたりと…まぁ、最後の一つは兄さん関係ないですけど前世を考えたらマシな方ですよ。母さんの料理の味が濃すぎる以外は。
「母さん!!薪と街で売れそうな物は集めてきました。兄さんはサボリましたけど。」
「あら、いつもありがとね。あと、ネイルはたまには働きなさい。」
「…最低限は働いてるぞー」
それって“超”のつく最低限じゃないですか。
まぁ、
「って…兄さん、また持ってますね?」
「ぐっ!?な、なんのことやら」
あからさまな態度、ありがとうございます。キラキラと輝く謎な物体を此方に渡すのを渋る兄さん。しかし、僕は容赦しません。力ずくで奪います。
「たくっ、嘘下手なんだからさっさとよこせよなぁ。兎も角、隠し持っていた割りにはただのビー玉のように見えますが、兄さんが拾ってくる時点でアレと同じ類でしょう。長く持っていると危険なのでさっさと捨てますね?」
「そ、そんなっ!?」
あー…、兄さんが母さんに差し押さえられてる。
もがく兄さんと嬉々として関節を曲げていく母さん。あれの矛先が僕に向かってこないことを祈ってさっさと投げ捨て────
《──ぃ─ァ…》
…ようとした。しかし、ノイズの掛かった声が頭に響き、バリンッと音を立てビー玉のような硝子の玉は僕の手の中で砕け散ってしまったのだ。
「なっ!?」
砕け散った…という割には痛みがない。
僕は慌てて手のひらを見てみるが最初っからなにも握っていなかったかのように傷も、硝子の欠片でさえもなかった。僕はそう、不思議がっていると兄さんが慌てて駆け寄って来て心配してくれました。まぁ、僕に怪我がなかったのですぐにいつもの笑顔で「母さん!ご飯!!」とお皿を取りにいってしまいました。そして、もちろん僕も、いつも通り兄さんを追いかけようと歩きだした。しかし…
「───ぁ、ッ」
僕の口から漏れたのは痛みによる悲鳴。
ただの頭痛…と、いうには痛すぎる。まるで何かの記憶を無理矢理思い出そうとした時のような。
僕の異変に気がついた兄さんと母さんは慌てて駆け寄ってくれましたがごめんなさい。これ以上意識を保つのは無理そうです。おやすみなさい。