「…だいぶ歯が生え揃ってるな、離乳食からすこし固形物を食べれるあたりか?」
「うん、そうだろうね。丁度切り替わりの時期だし…言葉も少しなら言えるんじゃないかな?」
まぁ、転生してすぐにペラペラ話せたら気持ち悪いですよね。それに未だに口は上手く動きませんし、話せるとしたら…「まんまっ!!」くらいでしょう。
「おかわりね。あーん?」
少量のとろけた野菜をスプーンにのせて僕を拾ってくれたネイル兄の母さんが口元まで運んでくれたので僕はパクリと口に入れた。
「美味しい?」
「うー!!」(うん!)
味は全く変わっていないんですけど、まぁ食べれないものではないです。もう少し大きくなったなら美味しく頂けるんですけどね。
それにしても…望んでいたこととはいえ、あんな血生臭い場所で1人泣いている僕を拾う気になりましたね。幼いとはいえ寝首を掻かれると考えたりしないんでしょうか?経済的余裕があるようにはみえませんし…世間で言う『ご都合主義』でしょうか?正直、ネットなども使えませんでしたからよくわかりませんが…クラスの皆は結構僕にいろいろ教えてくれましたからね…。
「あっ、そういえばネイル…?貴方、黒の教団の方達と一緒に行ったんじゃなかったの?まぁ、この子をつれている時点であれだけど。もう『二度と帰って来れない』って…言ってたじゃない?」
「あー、実は途中で襲われたんだ。アイツ等の言うAKUMAつーヤツにさ。まぁ、母さんも知ってるだろ?運悪く襲われたんだ…俺、怖くて……そんな死が間近にある世界に飛び込むなんて…」
「なら、どうするの…。ここにいたってきっとまた襲われるわよ?AKUMAは伯爵と繋がっているからここに留まったら……殺されるわよ?少なくても私は貴方を守ることはできないから」
「…っ…」
『伯爵』に『AKUMA』か…。
伯爵といえば思いつくのはドラキュラだが…どう考えても悪魔ならまだしもAKUMAなんて…。可能性があるのは……僕の御先祖様が残した殺人兵器と酷似したものだろうか…。
「…とりあえず、今日のところは部屋で休みなさい。部屋はそのままにしてあるから…」
ぴしっと、母さんは部屋の奥を指差すとネイルは軽く頷きふらふらとした足取りで自分の部屋であろう暗闇へと消えていった。
「あーぁ、ほんと憎らしいほどあの子はあの人にそっくりなんだから…。」
ふと、母さんの顔をみるとそれは『愛情』と『憎悪』の混じった複雑な表情だった。同時に母さんは僕が自分を見ていると気づきパッと表情を変え優しく微笑んだ。
*
朝日が登り始めた時間僕は不思議な揺れを感じて目を覚ました。
流石にいきなり目を開くと太陽の光が眩しすぎて暫く視界が利かなくなってしまう可能性があるのでゆっくりと目を開いた。
「あら、マコト起きたの?」
「うにゅ…」
あれ…なんで僕は薄暗い森の中、荷物と一緒に運ばれているのでしょうか。お散歩…って感じではありませんよねぇ?えっ…まさか……
「ふふっ、ネイルならそこに居るわ」
ネイル兄の意志で共に逃げ出すことになったんですか!?僕は母の示した方をみるとそこには巨大なタンコブを頭に作り出されたネイル兄が僕と同様に荷物と化していました。
…あぁ、どうやらこの状況は母によって作り出されてネイル兄も僕も巻き込まれたようです。