転生して初めて目を覚ました場所はまるで直前まで戦地とかしていたかのような鉄の匂いの強い荒野でした。ここはどこでしょう?立ち上がり、キョロキョロと周りを見ようとしても立ち上がることもできませんでした。
せめて、何か言葉を言えれば生き残れる可能性は上がる。そう、思い口に出したのが…。
「だぅあ!!」(誰か!!)
駄目でした。
どうやら僕は完全に赤ん坊に転生してしまったようで上手く喋ることもできません。まぁ、あの発音のしかただともう少し意識すれば言葉にすることは可能なようです。
とりあえず、殺されてしまうリスクも有りますが恥を捨てて赤ん坊らしく泣き叫びましょうか。それくらいしか今の僕にできることは在りませんからね。
より赤ん坊らしく大きな声で泣き叫ぶと何処からか鳴き声に釣られてきたのか足音が近づいてきました。足音から来てくれた人は男性のようです。男性は僕の姿を目視すると慌てて駆け寄り抱き上げてくれました。
「こんな所に…なんでガキがいるんだよ。よーしよし、泣かないでくれよ。まったく、可哀想に…怖かったろう?親は死んじまったのか…」
軍人さん…には見えません。
彼はやけに小綺麗な身なりで武器と思えるモノを持っている気配はありません。でも、抱き上げられたことで先程まで見えなかった風景を確認することができました。
「うぁっ?う…っ」
「…よしっ、いい子だ。お兄さんがなんとかしてやるから安心しろよ?」
ニコッと自称お兄さんは笑いかけ大きく翼を広げ空へ羽ばたきましt……エッ!?空飛んで、るんですか?まさかカラス天狗かなにかの子孫なんですか!?
「おや、泣きだすと思っていたんだが…?案外お前図太いな…。あっ、目見開いて驚いていたのか…。」
凄い…。雲の上をヘリと同じような速さで飛んでいるというのになぜか息苦しさも重力の重みも全く感じません。最新技術…?いや、機器を使っている様子は見えません。なんという
「いつまで固まってんだコイツは…。空がそんなにすごかったのか?」
人が空を飛ぶなんて…。
それこそ魔法を使わない限り飛べないと思ってたのに…。
「着いたよ。」
彼は僕にそう声をかけると飛ぶ時と同じように翼をバサリと羽ばたかせゆっくりと地上に降り立ち民家…と、いうにしてはヤケに廃虚的な建物の戸を叩いた。
「母さん?いる?」
すると、その扉から出てきたのは彼の母とは思えないほど若々しい女性だった。女性は外を確認した後、彼に怪我がないかすぐに僕に目を向けた。
「あら、ネイル?その子はどうしたの?」
「あの人がいたと思われるところにいた赤子だよ。そのままにしていたら可哀想だから連れてきたんだ」
彼、ネイルは僕を彼女に僕を渡そうと手を伸ばすと…彼女は僕を見た瞬間に「可愛いじゃん!」と、叫び興奮したのかそのまま僕を強く抱きしめた。
しかも、強く抱きしめるだけではなくグルグルと彼女を中心に回りだす世界。
「ウウゥ───っァアア──っ!!」
グルグルグルグル同じ風景が回り、前世の時から乗り物に弱かった僕は今世もそういうモノに弱かったようで吐き気がこみ上げてきてしまいました。しかし、そんな状態の僕に気づかない女性は現在もグルグルと回り僕を追い詰めます。
「決めたこの子の名前はあの人と同じマコト!!私と同じ苗字を入れてマコト・フレイムに決定!!」
さらに興奮したのか僕を追い詰めている回転の速度が更に上がる。必死に耐えて真っ青になっていると今までニコニコしていたネイルが慌てて自身の母を止めようと声をかける。「マコトが死にそうだぞ?」と…。
「えっ!?キャアァァアッ!!ま、マコトッッ!!」
そう、彼の一言はこの状態を悪化させ…更に増すことになった彼女の回転と僕の吐き気。
「マコト───!!」
───ガシッ!
そんな時に手を助けを出してくれたのは先ほどこの女性の回転速度を上げてしまった原因となった
「いい加減に止まれっての…!!これ以上回ったらマコトが吐いちまうだろ…?全く、テンションが上がった時に回るのは悪い癖だぞ?いい加減直せよなぁ…」
うぅ…、まだ視界がグラグラしてます。
吐き気はだいぶマシになりましたが、別の気持ち悪さが僕に襲いかかってきましたよ。
───くぅ…
「ぷっ、母さん?マコトが腹減ったってさ」
「そうねぇ…でも、ミルクになりそうなものはないから…はいっお口アーンしてごらん?」
(´□`)アーン
パクリッとスプーンを咥えてモグモグと噛んでみる。
うーん、塩味濃くて赤ん坊な僕に食べさせていいお味な感じではないかなぁ…。まぁ、文句は言えないですし…。
「おいっ!今何食わせた!!」
「えっ、昨日の晩御飯のあまりの原形のないニンジンだけど?」
モグモグ…。
晩御飯にこんな味濃いものを食べてるのか。少なくとも日本文化ではないね。まぁ、顔的に日本人じゃないから察してはいたけど…うぅん、いつか日本に辿り着けるといいけど…。
「まだ歯があるかわからないし赤ん坊には味が濃いモノを食べさせるなよっ!!」
うん、ネイルの言うことは正論ですね。まぁ、様子からしてこれくらいしか食べるものはないのでしょう?
ゴクンっ。
「飲み込んじゃったわよ?しかも普通に抵抗なく」
「たぇれたー」(食べれた。)
「消化とか大丈夫かよ?」
「さぁ?」
「おいおい…」
うーん、たぶんネイルさんは苦労人でしょうね。
できる限りノリに乗らないように頑張りましょうかね。