炎城寺誠…いや今はマコト・フレイムだったかな…
プレゼント箱をイメージして作られているこの空間には既に“心に寄生しているイノセンス”を破壊して再起不可能であろうマコトがオレの傍に寝かせてある。
恐らく…死んでしまったんだろう。
「くく…く…」
自分で破壊したくせに…
なんで…オレはこんなに悲しいんだ…
憎かったはずなのに…殺したかったはずなのに…
「ごめんな…」
オレはいつの間にかそんな言葉を口にしていた。
涙が…止まらない…
なんで…なんでなんだ…?
自分で…自分のこの手で…マコトの神の結晶を破壊して殺したんじゃないか!!
オレはマコトの手に触れてみ……
「えっ?」
動いた…とかではない完全に冷えきっていたマコトの体温が戻ってきている…。
徐々に顔色も元に戻ってきている。
今のマコトの状態はイノセンスをすべて破壊したおかげで“偽物のノア化”が完全に解けている。
だから…わかりやすい。
さっきまで青白い顔をしていたマコトが…
さっきまで呼吸すらしていなく脈がなかったマコトが…
「いき…かえった…のか?でも…」
でも…きっと…マコトは目を覚まさない。
心の破壊された人間はたとえノアであっても目を覚ますことがない。
ロードに頼めばマコトを普通の人間と同じように操ることが出来るだろう…。
だけど…ソレではただの人形になってしまう。
今までのオレの元にいたいつの間にか狂い感情が消滅した玩具と同じになってしまう。
ならオレは…どうすればいい…?
どうすれば…神の結晶を使わずにマコトの心を元に戻せる?
唯一…オレを認めてくれた…
オレをひとりの人間と見てくれていた…
炎城寺誠をどうすれば…取り戻せる?
オレだけをみてくれた…炎城寺誠を…
ドウスレバトリモドセル?
「なぁ…誠?お前に取り憑いた奴らは全部破壊した…なぁ…起きてくれよ…オレだけをみてくれよ…兄貴ではなく…オレを愛してくれよ…お前は…いつも…いつも…」
なんで…愛の兄貴しか……なんで……愛の兄貴を選んだんだよ……オレだって…誠を愛していたのに…なんで…なんでなんだ…いつもいつも…なんで誠はオレではなく兄貴を……選ぶんだ…なぁ…
オシエテクレヨ…誠…なぁ…
「ない…てる……の?」
「誠!?」
「ま、こと?キミだぁれ?誰なの??」
記憶がない…!?
破壊したのは“心”のハズ…
「あれ…なんで…?なんで泣くの!?」
でも…良かった…
「泣かないで…泣かないで…」
あぁ…初めてオレと出会ったときの誠だ…
「大丈夫だよ…何があったの…?」
同じ…あの日な誠と同じ…
「僕でよかったら…話して?」
なのに…なんで…こんなにも……誠の表情が冷たいんだ…。もっと暖かかったはずなのに…
もっと優しい温もりがあったはずなのに…
今の…誠にはその…『なにか』が足りない。
決定的な…『なにか』が…足りない。
その『なにか』が…わからない。
「僕で役に立つなら…」
『なにか』が足らない…
ソレのせいかオレは…このマコトが誠だと思えない
「お前は…誰だ?」
マコトは今にも泣きそうだ。
「僕は…零沙…。炎城寺零沙…」
零沙?誠じゃない?
「…僕は零沙…だよ…」
まさか…ありえない…。
「お前…歳はいくつだ?」
「12歳…」
ッ…!?
こちらに来る前の歳とも…現在の歳にも合ってない…
「ここ…どこなの…?お兄ちゃんは誰なの?」
「…オレは貴琉…天鈴貴琉だ…」
「お兄ちゃんは……まこねぇと…知り合いなの…?」
「あぁ…」
そう…答えた瞬間…マコト…いや零沙は泣き出してしまった。
「なっ!何で泣く!?」
「だって…っ!!僕のせいで…まこねぇは愛くんを追って死んじゃったの…っ!僕がどんくさいせぃで愛くんが僕を庇って…!それで…まこねぇは…」
思い出した…12歳といえば…誠や兄貴があの事件に巻き込まれた…あの年だ…。
確か…生き残ったのは……『炎城寺誠』とその双子の『炎城寺零沙』だけ…。
そして…その事件のショックで片方は自殺…。
自殺してない方は自分から『炎城寺誠』と名乗った…
誠と零沙は元々一卵性の双子…。
例え…零沙が誠に成り代わったとしても…
オレは…もしかして…やってはいけないことをしたんじゃないか?
あの3つの神の結晶の中に…『本物の誠』の意志があって…それが…コイツを守ってくれていたんじゃないか?あの3つの神の結晶はどれも戦闘用というより守る為のものだった…。
オレは…もしかして…
誠の守っていた『なにか』を破壊しかけてるんじゃないか?
途中で自分でも何かいてるのかわからなくなった件について…。
私って馬鹿だなぁ…って思う。
はぁ…。