Fate/Avenge   作:ネコ七夜

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嘘プロローグ

これはあり得ないFate

 

 

 

 

 

 

 

登場(召喚)人物も魔術師すら破綻した物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体は剣で出来ている。

 

血潮は鉄で―――心は硝子

 

幾度の戦場を超えて不敗

 

ただの一度も罪はなく

 

ただの一度も正義は無し。

 

 

彼者は常に悪、剣の丘で処刑を待つ。

 

故に生涯に善など無く

 

この世界は――――――――

 

 

 

 

 

 

 

素に銀と鉄

 

 

時は満ちた。召喚は聖杯の力を借り行う。

 

 

礎に石と契約の大公

 

 

呼び出すのは歴史に名を残す英雄。

 

 

祖には我が大師シュバインオーグ

 

 

エーテルが渦巻く地下室に熱気が立ち込める。

 

 

降り立つ風には壁を

 

 

思い描くは一筋の光、どんなモノにも屈せぬ強靭な刃。

 

 

 

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

閉じよ(みたせ)

 

閉じよ(みたせ)

 

閉じよ(みたせ)

 

閉じよ(みたせ)

 

閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度

 

ただ、満たされる刻を破却する

 

 

さあ、始めようか。

 

 

――――Anfang(セット)

 

 

 

告げる

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

誓いを此処に

 

我は常世総ての善と成る者、

 

我は常世総ての悪を敷く者

 

 

さあ姿を現せ。私につき従う最強の使い魔。

 

その手に掴め、最高の勝利を。

 

 

 

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ

 

 

 

 

 

赤い暴風ははじけ飛び、視界が晴れていくが

 

 

「………え?」

 

目の前はさっきと変らぬ地下室の風景。

 

何も変わらぬ地下室の質量。

 

「ちょ、ちょっと…冗談でしょ!?」

 

せっかく秘蔵の宝石まで使って執り行った召喚の儀式でまさかの失敗か。

 

やはり綺礼の言うとおり触媒もなしに英霊を召喚するのは無理があったか。

 

未だ青ざめたままその場に膝をついた瞬間

 

 

 

ベキバキベギギーーーーーーードゴン!!!!

 

 

 

上の方から明らかに我が家が損壊する音を聞いた。

 

 

 

 

大急ぎで立ち上がり階段を駆ける。

 

何がどうなったと言うのか?

 

解らない、判らない、分からない。

 

 

歪んだ部屋のドアを蹴破り見た先には

 

 

「ゲェャアアアアアアアアアアアアアアアアアハハハハハハハハハ!!!!」

 

馬鹿みたいな笑い声?を上げる男がひとり。

 

「ヒャハハ!!大ハズレぇ、んんん?ぅんにゃ当たりなのか?1等当選籤で宝くじを買うもんか?中々ぶっ飛んだ発想じゃないかよオネーサン!!」

 

赤い布を額や腰、手足に巻きつけた全身奇妙な刺青を施した黒髪の少年――――サーヴァントは一人ハイテンションだ。

 

なんて無様。

 

見た限り、目の前のサーヴァントは剣の英霊とは思えない。

 

となるとまだ召喚されていないのはアサシンかアーチャーということになるが……

 

「ヒュー!いきなり上空に召喚された時はどこの馬鹿だよぶっ殺してぇと思ったけど、見てみりゃなかなかイカス小便クセぇねーちゃんじゃん。萎えてきちまったよ。ヒャハハ!!」

 

どちらにしてもマトモな思考回路の持ち主ではなさそうだ。反英霊に違いない。

 

「確認するわよ。あんたが……私が呼び出したサーヴァントで間違いないわ…よね?」

 

「ヒヒヒ、素敵な疑問形ありがとよ。ああ、間違いなく俺はオネーサンに呼び出されたサーヴァントだ。」

 

ニヤニヤと邪悪な笑顔で、まるでチンピラのような態度を取る全身刺青の英霊。

 

「なら次の質問よ。クラスと真名を教えなさい、今すぐ。」

 

「うわ、いきなりお堅い態度。円滑な人間関係無視かよ。」

 

何と言うか目の前の男が英霊であろうとムカつく態度だ。

 

「ま、いいか。別に隠すつもりもないしな。」

 

面白がる顔は至極、面倒くさそうに頭の後ろで手を組み―――――― 一瞬。その顔は何処かで見た覚えが……

 

彼は一層口元を釣り上げ人をバカにするかのような態度で言い放った。

 

 

「アヴェンジャー(復讐者)のサーヴァント、アンリ・マユだ。」

 

この世全ての悪って言った方が解りやすいか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰か――――――――タスケテ……」

 

いやだ、イヤだ。

 

カリヤおじさんを思い出す。姉さんを思い出す。おじい様を思い出す―――――センパイを忘れる。

 

体が疼く、魔術回路は黒く私を汚して行く、間桐が私を犯して往く。

 

誰でもいい、先輩にこんな私を見て欲しくない。

 

先輩の隣に居たい。

 

 

「助けて………先輩。」

 

 

地下室に充満する風に鉄の匂いを覚えた瞬間、何かが私の頬の涙を斬り払うように通り過ぎ――――

 

 

「――――――■■■■■■■■■■■ッ!!!!■■■■■■■■ーーーー!!!!!」

 

剣に貫かれたおじい様の体が燃え上がり悲鳴を上げている。

 

 

「  投影(トレース)開始(オン)  」

 

地下に響く鋼の声は次の瞬間、辺り一面に剣の雨を降らせる。

 

突き刺さる剣に床は砕け、砕けた場所にまた剣が突き刺さる。

 

埋め尽くさせる剣はそのどれもが名剣、魔剣、聖剣の類だと一目で知れた。

 

「確認する。君が私のマスターに相違ないな?」

 

「え――、は、はい!」

 

呆然としていた私に赤い外套を着た長身の男性、サーヴァントが近づいてくる。

 

 

ああ、このまま私も――――――

 

 

 

「安心したまえ、……必ず君を救ってみせよう。私用は一時休止だ。」

 

 

後ろに流した白髪に褐色の肌、何一つ類似点など無いのに―――

 

 

 

「まずはここを離れようか。醜悪な匂いはそれだけで君のような女性には不釣り合いだ。」

 

 

そう言ってサーヴァントは私を抱きかかえるとゆっくりとした足取りで階段を上り、地下室を出ると。

 

 

 

 

下から大きな爆発音が連鎖しながら響いた。

 

 

「サーヴァント、アーチャーだ。よろしく頼む、マスター。」

 

 

 

――――そのサーヴァントと愛しい誰かの頬笑みが重なって見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、集うがいい。聖杯と運命に選ばれし英霊よ。

 

 

今度こそ君の願いは――――。

 

 

 


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