第4十刃が異世界に来るそうですよ?   作:安全第一

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やっと更新出来た……!
8000文字はキツイです(汗



変更点があります。
原作ではペルセウスは挑戦権を受け付けるギフトゲームを開催していましたが、ここではルイオスの代になってすぐに廃止されたという点です。


15.ペルセウス

 “サウザンドアイズ”ニ一○五三八○外門支店

 

 その中は一人の破面の放つ強大な霊圧で支配されていた。

 

「カハッ……!? ァ、ガ……!」

 

 その霊圧の前に呼吸困難に陥っている亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た線の細い男。彼は現在、あまりの重圧に押し潰されその身体は床に這いつくばっていた。それと共に身体の自由を全て奪われ、心臓を鷲掴みされているかの様な感覚に襲われている。それは彼だけでは無く、他の者達も同じ事が言えた。

 どうやら霊圧の対象をコントロール出来るのか流石にルイオスほどでは無かったが、皆一様に呼吸が上手く続かない状態だった。唯一対応出来ている白夜叉ですら冷や汗が止まらない状態にあった。

 

 破面、ウルキオラ・シファーが放つ強大な霊圧にひれ伏している亜麻色の髪の男“ペルセウス”のリーダー、ルイオス・ペルセウスは戦慄し恐怖していた。

 

 何故、この様な状況になったのか。それは現在の状況になる前の話へと遡る───

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 “ノーネーム”本拠に侵入した兵士達を翠の閃光で再起不能にしたウルキオラと十六夜達は、一先ず“サウザンドアイズ”の支店へと赴く事になった。

 レティシアの話によると、この兵士達はコミュニティ“ペルセウス”に所属している者らしい。その“ペルセウス”も“サウザンドアイズ”に属しているコミュニティだとか。そしてレティシアはその“ペルセウス”に所有物として囚われているらしい。

 だったら話は早いと十六夜が言い、サウザンドアイズの支店に乗り込んでやろうと言う事になったのだ。レティシアを回収する目論見こそ失敗したが、ペルセウスはノーネームに何かしら言いたい事が有る筈であり、それはノーネームも同じであった。その際に十六夜の計らいで飛鳥とジンも同伴させた。ただジンは耀の看病の為に残ると言い、飛鳥だけが着いて行く事になったが。

 

 そして四人は現在、サウザンドアイズの門前に到着していた。その支店の前にはあの無愛想な女性店員が待っており、どうやら事情は把握済みの様だった。

 

「お待ちしておりました。中でオーナーとルイオス様がお待ちです」

「黒ウサギ達が来る事は承知の上、ということですか? あれだけの無礼を働いておきながらよくも『お待ちしておりました』なんて言えたものデス」

「……事の詳細は聞き及んでおりません。中でルイオス様からお聞き下さい」

 

 店員の定例文にも似た言葉を聞き憤慨しそうになる黒ウサギだが、ここは我慢だ。店員に文句を言っても仕方が無いし、何よりレティシアはこちら側に匿ってある。ノーネームの敷地に勝手に侵入した“ペルセウス”の兵士達はウルキオラによって全て撃退されたものだから、怒りも半減している。それでも仲間に手を掛けようとしたペルセウスに対しての怒りは収まらないのだが、この文句はペルセウスのリーダーであるルイオスとやらにぶつけよう。そう思いながら店内に入り、中庭を抜けて離れの家屋に向かう。

 そして中で迎えたルイオスは黒ウサギを見て盛大に歓声を上げた。

 

「うわお、ウサギじゃん! 初めて実物見たし! 噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった! つうかミニスカにガーターソックスって随分エロいんだな! ねーねー君、ウチのコミュニティに来いよ。 三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ? 」

 

 地の性格を隠す素振りもせず、黒ウサギの全身を舐め回すように視姦するルイオス。それに嫌悪感を抱いた黒ウサギは脚を両手で隠し、飛鳥が壁になるよう前に出た。

 

「ふぅん、随分と分かりやすい外道ね。でも残念、先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ」

「そうですそうです! 黒ウサギの脚は、って何を言っているのですか飛鳥さん!?」

 

 ズバリと言い放った飛鳥の黒ウサギ美脚所有宣言。堂々過ぎて一瞬肯定しそうになる黒ウサギ。

 それを見ていた十六夜は呆れながらもため息をついて言う。

 

「そうだぜお嬢様。この美脚は俺達のものだ」

「そうですそうですこの脚は、って黙らっしゃい!」

 

 黒ウサギ美脚所有宣言に十六夜も賛同し、またもや肯定しそうになる……訳が無いか。

 しかし二度ある事は三度あると言い……

 

「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で」

「売・り・ま・せ・ん! あーもう、真面目な話をしに来たのに話が進まないじゃないですか! いい加減にしないと黒ウサギも本気で怒りますよ!」

「おいおい馬鹿だな黒ウサギ。怒らせてんだよ」

「うぅううぅうぅう〜!!! こんのおバカ様ああぁあぁあぁあぁあああぁあぁあぁあぁああッッッ!!!」

 

 涙目になりながらハリセンで一閃。心労がマッハで襲い掛かって来る(主に胃に)。その内、胃潰瘍にでもなるのかも知れない。哀れ黒ウサギ。

 そんなやり取りの一部始終を見ていたルイオスは突然大笑いし始めた。

 

「あっははははははは! え、何? “ノーネーム”っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめてこっちに来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるのが性分だからね。生涯面倒見るよ? 勿論、その美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」

「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません」

 

 そう嫌悪感を吐き捨てる黒ウサギなのだが、彼女の着ている衣装を見る限り説得力は低い。

 

「へえ? 俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」

「ち、違います! これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しにすると言われて嫌々……」

「ほう? 嫌々そんな服を着させられてたのかよ。……おい白夜叉」

「何だ小僧」

 

 キッと白夜叉を睨み付ける十六夜。そのまま両者は凄んで睨み合う。そして十六夜が右手を掲げると、

 

「超グッジョブ」

「うむ」

 

 見事なまでの意思疎通。両者とも良い笑顔をしている辺り、八割方悪意全開なのは間違いない。

 

「うぅ〜……、話が全然進みましぇん……」

 

 ウサミミをペタリと萎れさせながら項垂れる黒ウサギ。ますます心労がマッハで進む一方である。

 それを見兼ねたウルキオラは静かに口を開く。

 

「……おい餓鬼共、俺達は此処へ話をする為に来た。巫山戯に来た訳では無い。さっさと場所を移せ。話はそれからだ」

 

 ウルキオラの言葉にお巫山戯ムードだった空気が一瞬にして霧散する。十六夜が肩を竦めて仕方ないなと言った表情をした。

 

「あー、分かったよ。全くこれから黒ウサギを弄りに弄りまくる予定だったんだがな。おい白夜叉、場所を移すぞ」

「うむ、仕方ない。そろそろ来客も増えて来た所だ。此処で話し合っては周りの迷惑になるからな」

 

 一度仕切り直しとして、部屋を客間に移す一同。手に負えなかった空気を一瞬にして変えたウルキオラに、黒ウサギは感謝の念が絶えなかった。主に心労面で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 客間に場所を移した一同。ノーネームの四人はサウザンドアイズの幹部二人と向かい合う形で座る。その間にもルイオスは黒ウサギを舐め回すような視線で見続けていた。

 その視線に悪寒を感じつつも、黒ウサギは白夜叉に事情を説明した。

 

「───ペルセウスが私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけましたでしょうか?」

「う、うむ。ペルセウスの所有物・ヴァンパイアが身勝手にノーネームの敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における石化のギフトによる無差別の攻撃。確かに受け取った。謝罪を望むのであれば後日」

「結構です。ギフトゲームも無しにノーネームのメンバーごとお構いなしに攻撃するなど、無礼にも程が有ります。ペルセウスに受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

 

 黒ウサギの台詞を聞けば分かる通り、彼女の狙いは両コミュニティの直接対決だ。

 当然ながら、レティシアが敷地内で暴れ回ったというのは捏造だ。しかし彼女を取り戻す為にはこれぐらいの事をしないとなりふり構っていられないのだ。使える手段は全て使わねばならなかった。レティシア自身もそれを承認しているから問題ないだろう。

 

「サウザンドアイズにはその仲介をお願いしたくて参りました。もしペルセウスが拒むようであれば主催者権限な名の下に」

「いやだ」

 

 ルイオスが唐突に口を開き、そう言った。

 

「……それはどう言ったおつもりで?」

「だからいやだって言ってるんだ。ついでに聞くけど、あの吸血鬼はともかく、僕の兵士が其処で暴れ回った証拠があるの?」

 

 だがルイオスもコミュニティの長。若いながらもその座に着いた彼は少なくともコミュニティを纏める能力があり、話し合いにしてもこちらを有利に進める交渉術も持ち合わせている。

 話し合いの中で最も重要なのは第三者である。裁判においても加害者が被害者に犯罪行為を加えた瞬間を第三者が目撃していれば、それは決定的な証拠となる。第三者が嘘を吐いている可能性も捨てきれないのだが、ありのままの事実を話す割合が高いのも第三者であるのだ。それに加えて証拠品まで揃えば完全に加害者が敗訴となるだろう。

 ルイオスは黒ウサギの話に嘘が混じっている事を看破していた。実際に吸血鬼にノーネームを襲えなどと言う命令は下していないし、兵士達には吸血鬼を捕縛しろとしか言っていない。

 だが兵士達がそこで暴れ回ったとなれば話は別だ。それが紛れもない事実で黒ウサギ達ノーネームに晒されているのならば仕方のない事だろう。

 だがルイオス本人は兵士達が黒ウサギ達を襲った瞬間を見ていない。従って兵士達がそこで暴れ回ったという証拠には確実性が無いのだ。

 ルイオスはそこを衝き、黒ウサギを黙らせ逆に此方に引き込む手段を頭の中で確立していた。黒ウサギを引き込む手段としてレティシアと交換する等が有る。絶対的有利は此方に有ると思っていた。

 

 だが黒ウサギ達にはその証拠が揃っていた事をルイオスは知らなかった。

 

「証拠ならあります」

「……なんだって?」

「これがその証拠です。ウルキオラさん」

「……ああ」

 

 ───解空(デスコレール)

 

 ウルキオラの指に触れた空間に裂け目が現れ、其処から雪崩れ込む様にして兵士達が現れたのだ。

 その光景にルイオスは驚愕した。

 

「な、何……!?」

「これだけではありません。この石は石化のギフトで石にされた土と彼等が持っていた旗印です」

 

 そう言って黒ウサギの懐から取り出したのは灰色の石とゴーゴンの首を掲げた旗印。それは石化のギフトで一部を石にされた土を削ったものと、ウルキオラによって戦闘不能に追い込まれた兵士達が掲げていた旗印を拝借したものだ。

 そして第三者である白夜叉は星霊。この灰色の石を見れば、どのギフトで石化されたのかぐらい簡単に判別出来る。それが理由で石化された石を態々削り取って持って来たのだ。

 

「これは……確かにゴーゴンの威光のギフトで石化された石だの」

「その通りです。そしてこれだけの証拠が揃っています。これでも貴方のコミュニティの兵士達が暴れ回った証拠が無いとでも仰るつもりですか?」

 

 黒ウサギはハッキリとルイオスに言い放つ。レティシアが暴れ回ったという捏造もルイオスがこの問い掛けをして来るだろうと踏んで巡らせた策だった。つまりルイオスはまんまとその策に乗せられたのだ。

 だがルイオスはそれでも余裕の笑みを崩さなかった。

 

「ハハハ……成る程ね。ここまで証拠が揃っちゃあ何とも言えないね。参った参った」

「ならば私達とのギフトゲームを受けるという事ですか?」

「うーん、君達が必死に証拠を集めたのは褒めてあげるよう。だけどそれでも言っておくよ。───いやだ」

「なっ……!」

 

 ルイオスは露骨にノーネームとの決闘を拒否した。その言葉に黒ウサギは憤りそうになる。

 

「あの吸血鬼は既に箱庭の外のコミュニティに売り払うって決めているんだ。そのコミュニティと既に契約を終えているのに、吸血鬼を賭けてギフトゲームを「ハイします」って言う馬鹿はいないんだよ」

「あ、貴方という人は……!」

 

 黒ウサギはウサ耳を逆立てて叫ぶ。だが黒ウサギにはそれを咎める事が出来なかった。

 基本的にギフトゲームはお互いの承認で始まる。それは逆に言えば片方が承認しなければいつまで経ってもギフトゲームが始まらないのだ。そのコミュニティのギフトゲームに挑む挑戦権を用意しているギフトゲームをクリアされたのならば何を言おうとその挑戦を受けなければならないのだが、生憎ペルセウスはそのギフトゲームを最近廃止したばかりだ。故に黒ウサギにはペルセウスにギフトゲームを挑む為の手段が無いのだ。

 それが理由で、こうしてお互いに会談を開いたのだが、話は平行線のままになってしまっていた。そしてルイオスはある話を持ち掛ける。

 

「そうだねぇ、レティシアを取り返したければ取引をしよう」

「……何ですか」

 

 黒ウサギがそれを聞き、ルイオスはとんでもない事を言い出す。

 

「なに、簡単な事さ。吸血鬼をノーネームに戻してやる代わりに君が僕のものになれば良いのさ」

「なっ、」

「僕は君が欲しいし、君を隷属させたい。ま、一種の一目惚れって奴? それに箱庭の貴族という箔も欲しいしね」

 

 その条件を聞き、黒ウサギは絶句する。飛鳥もこれには堪らず長机を叩いて怒鳴り声を上げた。

 

「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ! もう行きましょう黒ウサギ! こんな奴の話を聞く必要は無いわ!」

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 

 飛鳥は黒ウサギの手を握ってさっさと出て行こうとする。だが黒ウサギは座敷を出なかった。その瞳には困惑の色が混ざっていた。この申し出に彼女は悩んでいるのだ。

 

「ほらほら、君は“月の兎”だろ? 仲間の為に煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ? 君達にとって自己犠牲って奴は本能だもんなあ?」

「………っ」

「ねえ、どうしたの? ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ? 安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!? 箱庭に招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!? ホラどうなんだよ黒ウサギ

黙りなさい(・・・・・)!」

 

 我慢の限界が来た飛鳥が叫ぶ。

 ガチン! とルイオスの下顎が閉じ、困惑した。飛鳥の威光の力だ。

 

「っ……!? ………!!?」

「貴方は不快だわ。そのまま地に頭を伏せてなさい(・・・・・・・・・・)!」

 

 混乱しているルイオスを追い込むように体が勝手に前のめりに歪む。

 だがルイオスは命令に逆らって強引に体を起こす。飛鳥のギフトを理解した彼は閉じられた口を強引に開いて言葉を紡いだ。

 

「おい、メスガキ。そんなのが、通じるのは格下だけだ、───馬鹿が!!」

 

 激怒したルイオスは懐からギフトカードを取り出し、光と共に現れた鎌を柄を掴み、それを飛鳥に向けて振り下ろす。

 十六夜はそれを見て飛鳥の前に立ちそれを受け止めようとした。

 

 

 

 

 

 ───だが、その前に“死”がルイオスを押し潰した。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 そして現在に戻る。

 今まで目を閉じて静かにしていたウルキオラの口が開く。

 

「……貴様は受ける必要の無い勝負を態々受ける莫迦はいないと言っていたな」

「……ッ!?」

「ならば此方からも言わせて貰おう」

 

 閉じていた目を開き、翠の双眼の視線がルイオスに突き刺さり、恐怖感を助長する。それは正に蛇に睨まれた蛙だ。

 

 

「───相手が勝負を受けないと解っていて何もしない莫迦はいない」

 

 

 その言葉の後に、ルイオスの目の前にギアスロールが出現する。

 だが、そのギアスロールは唯のギアスロールではなかった。

 

 

 

 黒。

 

 

 

『!!!?』

 

 ウルキオラの除くこの場に居た者達が全員驚愕する。特に白夜叉や黒ウサギ、ルイオスが驚愕していた。

 この三人はそのギアスロールについて良く知っている。

 

 白夜叉は過去に自身が掲げていた。

 

 黒ウサギは三年前にそれを見た。

 

 ルイオスはある者を隷属している故に知っている。

 

 そう、その黒いギアスロールは正しくある者達が持つ権限だった。

 

 

 

 ───魔王。

 

 

 

 そしてその内容はこうだった。

 

 

 

『ギフトゲーム名 “???”(故に“ペルセウス”のギフトゲームを名を借り『FAIRYTALE in PERSEUS』とします)

 

・プレイヤー一覧

 逆廻 十六夜

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 ウルキオラ・シファー(ゲスト扱い)

 

・"ノーネーム"ゲームマスター ジン=ラッセル

・“ペルセウス”ゲームマスター ルイオス=ペルセウス

・主催者兼開催者 ウルキオラ・シファー

 

・クリア条件 ホスト側のメンバー全員の打倒

・敗北条件 プレイヤー側の降伏、及び戦闘不能

 

・舞台詳細、ルール

*始めに、このギフトゲームは“ペルセウス”が行うルールに乗っ取って行われる。

*ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

*プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない(・・・・・・・・・・・)

*姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦権を失う。

*失格となったプレイヤーは挑戦権を失うだけでゲームを続行する事はできる。

*このゲームの主催者兼開催者であるウルキオラ・シファーはノーネーム側のプレイヤーとしてゲスト参加する。

*ウルキオラ・シファーは“ペルセウス”ゲームマスターであるルイオス=ペルセウスへの挑戦権を得る事は出来ない。

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”と“ペルセウス”はギフトゲームに参加します。

 

“”印』

 

 

 

 その内容はノーネームとペルセウスを戦わせる為のものだった。ウルキオラは主催者権限を使う事でお互いを戦わせる場を与えたのだ。

 主催者権限は基本、自身のコミュニティと他のコミュニティが戦う為にあるものだ。だが『他のコミュニティ同士を戦わせる事は出来ない』とは言っていない。

 ウルキオラは主催者権限の特徴を逆手に取り、ノーネームとペルセウスを戦わせる事に成功した。

 

「なっ……!? おんし、まさか“主催者権限(ホストマスター)”を所持しておるのか!?」

「ああ」

 

 白夜叉はウルキオラが主催者権限を持っていた事実に驚愕する。そしてウルキオラが白夜叉に向けて言う。

 

「……この餓鬼が勝負を受けない姿勢を取り続けていたから強行手段を取ったまでだ」

「……じゃがおんし。これではおんしは魔王となってしまうぞ」

「……問題ない。お前が“サウザンドアイズ”としてこのギフトゲームを取り持てば、このギフトゲームは正式なものとして扱われる。最後の印に何も書かれていないのはその為だ」

「……まさか主催者権限を行使してお互いのコミュニティを戦わせるとは……。そういう使い方をしたのはおんしが初めてだ」

「……そうか」

 

 ウルキオラが白夜叉と会話をしている間、黒ウサギはただ絶句していた。まさかウルキオラが主催者権限を、魔王としての資格があるとは思っていなかったのだ。

 

「……ウルキオラ、さん……?」

「……おい」

「!」

 

 ウルキオラの視線が黒ウサギを捉える。ビクリ、と黒ウサギが震える。

 

「……お前の自己犠牲など俺にとってはどうでも良い。それはお前が勝手に決めて、勝手に犠牲になるがいい」

「うぅ……」

「……だが、それはお前が今まで護って来たノーネームというコミュニティを裏切ると同義だと肝に銘じておけ」

「……!」

 

 ウルキオラの言葉にドクン、と黒ウサギの心音が高鳴る。そう、自己犠牲をするという事は今まで黒ウサギが世話になったコミュニティを裏切るのだ。その事実を黒ウサギは失念していた。

 ウルキオラの強大な霊圧が解かれる。圧迫感と重圧感から解放され、ウルキオラと白夜叉を除く者達は咳き込んだり、その場から動けずにいた。特にルイオスは酷く、霊圧が解かれた瞬間に解放されたからか泡を吹いて気絶していた。これではギフトゲームどころでは無い。そこで白夜叉がウルキオラに提案する。

 

「……二日後にギフトゲームを開催する。それなら良いだろう? 今はこの有様じゃからな」

「……俺は別に構わん」

 

 ウルキオラも特にそれを拒否する理由は無い。ギフトゲームは強制的に成立した。ルイオスはもう逃げ隠れする事は出来ない。それで十分だ。

 

 

 

 

 

 こうして二日後、ノーネームとペルセウスはウルキオラ主催・サウザンドアイズ公認の下、対峙する事になった。

 

 

 




次の更新は戦闘シーンなので割と早いかも(早めに更新するとは言ってない

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