カンピオーネ~生まれ変わって主人公~《完結》   作:山中 一

13 / 132
十三話

(まつろわぬ神。それも、源頼光公……!)

 豪快な名乗りには呪力が篭っていたのか、目前でたたきつけられた晶は総身が震えて仕方がなかった。

 その威風堂々たる立ち姿を目にするだけで、頭の天辺から冷や水を浴びせられたかのように寒気が走り抜け、身体中から力が抜けていくような気さえする。

 神の姿を目にしたことすらも不敬であると、全身が忠告し、心が悲鳴をあげていたのだ。

 魔術に関わる人間は、幼いころから神の脅威を叩き込まれて育つために、まつろわぬ神の支配力には抗し難いという報告もある。

 まして、相手は源頼光というではないか。

 名門の武家に生まれた人間であれば、まさかその名を知らぬとは言うまい。

 源頼光は、平安中期の生まれだ。当時は摂関政治の全盛期であり、彼も藤原道長に仕えて頭角を現た。

 主君道長の繁栄に支えられ、彼自身の身代も大きくなり、『朝家の守護』とまで称されるようになった。清和源氏発展の礎を築きあげた人物であり、彼の子孫は摂津国多田を本拠地として摂津源氏と呼ばれるようになる。

 また、頼光の子孫からは、武田信玄に仕えた馬場信春や、本能寺の変で有名な明智光秀が現れるし、彼の弟の源頼信の子孫は後、源頼朝や足利尊氏を輩出し、武家の棟梁となっていく。

 つまり、源頼光は、多くの武士、それも名門であればあるほどに無視できない人物であり、そこから派生した化物退治の伝説が魔術界に進出した多くの武家から尊崇を集めるようになっているのだ。

 魔術を納め、武芸を嗜む晶にとっては心の師とも呼べる存在であり、祖霊でもある。

 武器を向けられるはずもない。

 睨まれただけで、心臓も呼吸も止まってしまいそうだ。

 喉が干上がるかのような錯覚を覚えて、荒く息を吐いた。しかし、吸えない。溺れかけた魚のように、口をパクパクとさせながら酸素を求めた。

 汗が噴出して、頭が揺れる。

 せっかく護堂が、整えてくれた体調も、まつろわぬ神の登場で一気に崩れてしまった。

 無理もないだろう。晶にとっては、初めての神との遭遇だ。

 その存在は、ただそこにいるというだけで周囲に影響を及ぼすのだから、晶の身体が変調をきたしてもおかしくはないのだ。

 そもそも、武士の名乗り自体が、相手を威圧して士気を挫くことを目的としていた側面もあったのだから、それをはるかに上回る神の名乗りは、ある種の精神攻撃に似た力を発揮することになったのだった。

『大丈夫』

 ズン、と胸の奥に響く言葉だった。

 空気の振動によって届くのではなく、本当の意味で胸の奥に染み入ってくるような、暖かくて、力強い声が、晶の心を満たしていた恐怖を取り払った。

「かはっ!はっはっ……!」

 咳こみ倒れそうになる晶の肩を護堂が支えた。

 頼光を見つめたまま、身体が青白く発光する。

「む!」

 頼光が馬首を護堂に向けたとき、すでに二人の姿は消えていた。

 

 

 護堂の伏雷神の神速は、近くに自然の水が一定量なければ発動できないらしい。

 その水量や距離などは、まだ理解していないが、雨天であれば、条件を気にすることなく使用できるので、今の護堂の戦闘は雨天時がもっとも力を発揮できることになるだろう。

「先輩……すみませんでした」

 神速で大きく距離をとった後の晶はしょんぼりとしていた。

 為す術なく敵の術中に嵌ってしまった事と、護堂の世話になってしまったことを悔いているのだ。

「べつにいいよ。相手が神様なんだから仕方がないだろ」

 護堂はそう言って、晶の槍を渡した。

 戦線を離脱するときに、ついでに回収していたのだ。

 転送の魔術ならば、すぐに手元に呼び戻せるのだろうが、目に入った以上無視もできないと拾ってきたのだ。

「ありがとうございます」

 槍を受け取って、晶はお礼を言った。

 その晶の身体に異常がないことを確認して、護堂は頷いて言った。

「後のことは、俺がやる」

 槍を渡した護堂は、そう言って晶に背を向けた。

 晶には、護堂が積極的に戦うと言い出すことが意外に思えた。

 妹の静花を心配するいいお兄さんで温厚な人。それが、これまで接してきた護堂の印象だった。

 もちろん、なんの面識もないころには、その力を恐れていたし、ゴールデンウィーク直前に監視していたことがばれかけた時は九死に一生を得たとも思ったものだが、実際にその人柄に触れてみると、神を殺すという人知の及ばない偉業を為しえた人にはとても思えなかった。

 これが、カンピオーネ。闘争の化身。神を殺し、その力を簒奪せしめた魔王の在り方なのだ。

「先輩……!」

 護堂の袖を掴んで、晶が呼び止めた。

「……頼光公は、武士の中で最も高名な化物退治の専門家です……おそらく、破魔の呪術も使ってくるはずです」

 刀剣の類だけが、頼光の力ではないということ。決して、油断をしないでほしいと晶は伝えたかった。

 護堂の身体がスパークする。飛び散った火花が風に消えていく。

「ありがとう。晶さん」

「あ、晶でいいです」

 なぜ、そんなことを言ったのか、晶自身よくわかっていなかった。咄嗟に口をついて出た言葉がこれだった。

「え?」

「先輩のほうが、年上ですし……その、なんていうのか……」

 自分でもわからないことを口にするのは難しい。晶は、場違いなことを言ってしまったことの恥ずかしさから俯いた。

 媛巫女最強と呼ばれていても、こうした表情の一つ一つは、普通の少女とかわりない。

 そんな晶の頭を護堂はワシャワシャと撫でた。

 妹に接するような感覚で、頭がちょうどいい位置にあったからだ。

「わっ」

 と、驚く晶に護堂は微笑みかけた。

「じゃあ、晶だな。今度からそう呼ぶよ」

「はい」

「それじゃ、さっさと倒してくる」

「はい」

 直後、バシ、と紙を裂くような音が聞こえ、護堂は姿を消した。

 嵐の中、残された晶は護堂が向かった船岡山公園のほうを見た。

「……御武運を」

 

 

 

 

 ■ □ ■ □

 

 

 

 

「やっと戻ってきたか、神殺しよ。待ちかねたぞ。さて、某は名乗りを上げたぞ。次はお主の番だ」

 頼光は、雨も嵐も気にせず、ずっとその場にいた。

 どういうわけか、護堂が戻ってくると思ってのことらしい。 

「草薙護堂。生憎と誇れるような出自じゃない」

 むしろ、一族の歴史を振り返ると、世間様には言えないような伝説ばかり。高らかと宣言するようなことは、遠慮願いたいところだ。

「では、互いに名乗りを上げたところで、戦としよう。この時代、武勲を証明してくれる友もいなければ、忠義すべき主もないのでは戦い甲斐もないと思っていたが、フフフ……よもや神殺しと業を競うことができようとはな」

「言っとくけど、俺はアンタと競うつもりなんかこれっぽっちもないからな!」

 護堂は大声で言い返すが、頼光は聞く耳を持たない。

 頼光は、納めていた刀を再び抜いた。鋼の冷たい輝きが、不気味だ。

「いざ、参る!ハア!」

 手綱を叩き、馬は嘶いて筋肉を大きく膨らませ、大地を蹴り付ける。

 主従は、爆発的加速で護堂にせまった。騎馬は、大鎧を身につけた男を背負っているとは思わせない身軽で力強い走りで護堂に接近した。

 対する護堂は、神速を五十パーセントに制限して発動。顕身もせず、人の肉体を保持したまま神速の領域へ入る。

 ---------------見える!

 神速は、移動時間を操る力だ。発動すれば、体感時間に比べて、外部を流れる時間は異常なまでに遅くなる。

 空から降り注ぐ雨粒すらも、はっきりと視認できる今、神馬の加速も十分に余裕を持って回避することができた。

「小出しにしていけば、負担は減るのか」

 護堂は体調を気遣いながら呟いた。

 感覚的には、全力疾走とランニングの違いくらいはありそうだ。おまけに、神速を加減すれば、速すぎて身体のコントロールができないということにはならない。

「ほう……拙いながらも見事な体捌き。これは、思っていたよりもずっと苦戦しそうではないか!よいよい!なればこそ、勝利に価値が生まれるというものだ!」

 刀をかわされた頼光は、上機嫌に笑っている。

 戦う事が楽しくて仕方がないのだろう。そのように生き、そのように死んだ武士なのだから、神になっても根元の部分は変わらないのか。

 馬首を護堂に向け、再び猛然と走り出す。

「次はかわせぬぞ!お覚悟あれ!」

 確かに、速い上に、鋭い。先ほどの一撃は、小手調べのようなものだったのだろうか。

 護堂は真横に跳んで刀を避ける。

「うわっ!?」

 声を発したのは、切っ先が身体を捉える寸前だったからだ。

 袖に切れ込みが入ったのだから、かなり危なかったと言えるだろう。あと、もう僅かでも避けるのが遅ければ、腕を落とされていたかもしれなかった。

 余裕を持って避けたはずなのだが……。

 護堂の頬を雨とは違う、冷たい汗が伝う。

「むう……僅かに目測を誤ったか?いや、お主の動きが某の予想を超えていたというところだな。よし、次は討ってくれる」

 頼光は、刀をふるって水気を飛ばした。刀身についていた水滴は払い落とされ、剣圧が地面を割った。

 引き裂かれる大地が断末魔の叫びを上げる中、頼光は手綱を握り締める。

「ゆくぞ!」

 神馬が疾走を開始する。

 護堂との距離が凄まじい勢いで縮まり、ギラリと輝く刃の殺傷圏内に至る。

 だが、頼光の斬撃は、三度目の正直とはならない。神馬が護堂を蹄にかけ、刀が振り下ろされるよりも前に、護堂の姿が目前で消えうせたからだ。

 目を見開く頼光を真下から雷撃が貫いた。

 護堂は、土雷神で土中に逃れ、神馬の足元から再出現、即座に伏雷神を発動し、雷へと肉体を変化させたのだ。

 雷となった護堂のタックルは、そのまま強力な雷撃となる。

「ぬうう!見事なり!してやられたぞ!」

 雷撃を強かに浴びても、頼光は堪えた様子なく護堂の奮闘ぶりを讃えている。

 強敵から賞賛を受けた護堂は、それに関してとくに思うことなく、着地。即座に雷化して頼光に向かう。

 護堂の持ちうる最高速度。

 通常の雷と同じだけの速度が出ているのであれば、秒速二百五十キロはでているはずだ。

 ほんの数十メートルの距離等、物の数ではない。

 引き伸ばされる時間の中で、護堂は、呪力を高めて飛び込んでいく。

 動きが異常に緩慢になった頼光が、それでもわかるほどに明確な笑みを浮かべる。

「その動きは、すでに見せてもらったぞ!」

 頼光の声は、ひどくゆっくりと、低くなって聞こえた。

 音楽プレーヤーをスロー再生したときに、このような声がスピーカーから聞こえてくるだろう。

 頼光は疾風の如き鋭い突きを放った。

 渦を巻く呪力。鈍く光る切っ先が護堂に向かって寸分違わず突き入れられる。

 カクカクとした、コマ送りの映像を見せられているようだ。

 頭ではわかっていたが、実際に目で見ると違うものだ、と護堂は思った。

(だけど、これなら!)

 心眼によって護堂の神速を見切った頼光であるが、それでも速度で勝っているというわけではない。護堂を追いかけるように切っ先が微調整されているのがわかるが、問題はない。避けることは可能だし、何よりも今の護堂は雷となっているのだ。雷を斬る事はできない。

 刀をすり抜けて頼光の身体を焼く。

 突撃を敢行する。

 護堂の命を救ったのは、第一の権能と戦いによって極限まで研ぎ澄まされた直感だった。

「ぐ、くう……!」

 神速を解いた護堂は、バランスを崩して地面を転がった。

 すぐに起き上がる護堂だが、驚愕と痛みで顔をゆがませている。

 二の腕から肩にかけて、ばっさりと切られていた。

「なかなかどうしてしぶといではないか!今のを避けるとは思っていなかったぞ!」

「そりゃどうも。俺は斬られるとは思ってなかったよ」

 護堂は、頼光に言葉を返しながら、頭を働かせた。

 雷を斬る刀。

 とっさに雷切の名が浮かんだが、それは頼光の刀ではない。もっと後の時代のものだ。

 そもそも、頼光に、雷神殺しの伝説はない。ということは、雷に対する優位性のある技ではないのだろう。

「破魔の術法かな」

 護堂は雷化の弱点を思い出した。

 アレクサンドルの雷化は、人間でも、破れるくらいに脆い代物だったはずだ。おそらくは、護堂の雷化も同じ弱点を持っている。

 しかも、相手は、破魔の術に関しても造詣が深いらしい。

 相性は悪いといえるだろう。

「ふはは!よくわかっているではないか!某は、数多くの物の怪を討伐し、魔を討つ力を得たのだ。おまけにこの童子切安綱は酒天童子の首を落とした刀!」

 頼光は、大太刀の切っ先を護堂に向けた。

「お主の呪など、紙切れに等しい」

 刃を一振り。強大な呪力が練りこまれた風刃が護堂に襲い掛かる。

 護堂は再び雷をまとって空中へ逃れた。

 相手がいくら破魔の力を持っていたとしても、攻撃を避けるには神速を使うのがもっとも確実でリスクが少ないという事は変わりない。

「空に逃れても無駄だぞ!」

 頼綱は童子切を鞘に納めたかとおもうと、いつの間にやら弓矢を構えていた。

「弓馬の道こそが武士の道。いざ、翔けよ!雷上動!」

 放たれた矢が大気をねじ切って空を翔けていく。

 ピイィィィィィ……

 矢の先端。鏃の辺りから、甲高い、金切り声のような音が四方に広がっていく。

「鏑矢?……うわっ!?」

 護堂は突然襲われた浮遊感に瞠目した。

 落ちている。

 青白い光が消え、肉体が戻る。雷化が解けてしまったのだ。

 頼光が射放ったのは、破魔の鏑矢だった。

 上空百メートル付近で、護堂は物理学の世界に戻ってしまった。重力に引かれ、風に髪を煽られながら、地上が迫る。この高さから落ちれば、いかにカンピオーネといえどもただではすまないだろう。

『弾け』

 護堂は、大気を弾いて勢いを殺し、空中に踏みとどまった。

 そこに、さらに追い討ちとばかりに矢が飛来する。

『砕け!』

 呪力を込めた言葉が、矢にまとわりつく。

 内側から砕けて消える矢を見て、頼光は、ほう、と感心したように息を吐いた。

「卦体な技を使う。それもお主の権能か」

「さあ、どうかな」

 嘯く護堂は、地上に軽々と着地を果たした。

 頼光は、弓手の弓を握り締め、護堂に狙いを定める。引き絞られた弦が、きりきりと音を出している。

 文殊菩薩の化身から頼光が授かったという伝説の弓。

 子々孫々に伝えられ、頼政の時代に、宮中に現れた鵺を射落としたという伝説を創り上げた。

 そして、鵺は雷獣と同一視される。

 頼光自身には雷に対抗する性質がなくても、武器にはあったということか。おまけに、こちらの神速は、魔術破りにひどく弱い。

 護堂は呪力を高め、戦いに集中する。

 矢が放たれる。

 その時にはもう、護堂は射線から外れたところにいた。肩を矢が掠める中、護堂は視線を頼光からはずさない。

「ぬ?」

 一矢、二矢と繰り返し矢を放つが、やはり当たらない。

 紙一重で、護堂は回避する。

「なんと、矢を放つ瞬間にはすでに避けている……!たいした戦術眼だ!ならば、これはどうだ!?」

 頼光が番えた矢は、同時に三本。

 それが、ライフルのような速度で護堂に襲い掛かる。

『弾け!』

 空中で、護堂の言霊と矢がぶつかり合い、あらぬ方向へそれていった。

 弦が連続で鳴る。

 まるで弦楽器を奏でているかのように、リズミカルに、霊妙な音で響く。

 一方で、弓から放たれるのは殺意の嵐だ。

 大地を抉り、敵対する者を黄泉の国へ送り届ける破魔の矢。

 護堂は直感を駆使して軌道を予測し、放たれる前に射線から逃れ、逃げ切れないとわかればすぐに言霊によって防御する。

 このままでは、千日手だ。勝負はつかないどころか、削り合いとなれば、鎧で守っている上に神様である相手に比べて、こちらが圧倒的に不利。

 攻撃能力の高い権能で相手を倒してしまいたい。

 護堂はどうすれば、頼光を倒せるか、シミュレートする。

『弾け!』

 護堂は、頼光の弓に向かって言霊を投げかけた。

 強制力を持った命令が、頼光の弓を揺さぶった。

 狙いがぶれる。

 その瞬間を、狙う。

 身体が青白く発光する。神速に突入した証だ。 

 すでに、見切られた雷速ながら、この日数度目になる突撃を行う。

 完全に肉体はほつれ、雷に返還されている。 

「見切ったと言った!何度も同じ手を喰らわぬぞ!」

 頼光は冷静に抜刀。

 護堂に向かって、振り下ろす。

 見事な技の冴え。太刀筋はキレイに、護堂を両断する軌跡を描いている。

『曲がれ!』

 この一瞬を狙っていた。

 護堂は、目前の空間に干渉。空間がグニャリと曲がる。刀の軌道をかわすように、変化した空間に飛び込んだ護堂は、真っ直ぐに進んでいながら、外から見れば急に進路を変えたように見えただろう。

 童子切を避け、懐に飛び込んだ護堂は神速を解除した。

「鋭く、速き雷よ!我が敵を切り刻み、罪障を払え!」

 聖句を口にすると同時に、公園の中にある木の一本が縦に断裂した。雷の直撃を受けて避けたかのようだ。

「ぬう!」

 頼光が返した刀が、護堂の脇腹に切り込んでくる。激しすぎる激痛に苦悶の表情を浮かべながら、刀が身体を両断する前に、力を発動する。

 護堂の腕から、雷撃が放たれた。真横に一文字の、まるで斧や剣を横なぎに払ったかのような閃光。

 熱と電流、そしてそれ以上に、殺傷力の高い切断力によって頼光は両断された。

 触れたものを切り裂く雷。

 咲雷神の力だった。

 頼光の上半身は、後ろに倒れ、馬から転げ落ちた。護堂を切り裂こうとしていた刀も、右腕を根元から斬りおとされたためにその役目を果たす事ができず、脇腹に突き立ったままになっていた。

「ぐああ!」

 地面に落ちた護堂は、童子切が刺さったままだったので、激しくうめいた。

 血塗れた手で、刀を引き抜く。血が、噴出して大量に流れ出た。

 頼光は、仰向けに横たわりながら、そんな護堂に声をかけた。

「見事……実に見事であった!我が血肉を喰らい、さらなる強者となるがよい!」

 痛みにうめく護堂をあざ笑うかのように、頼光は豪快に笑って光の粉となった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。