縁結びの神の恋~ノラガミ   作:マニック

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ヤスミ

毘沙門との騒動が収まった後、イズモガミは自分の社で夜トのヤスミについて考えていた。

 

ヤスミとは不浄を受けることである。

 

夜トの場合、まずまちがいなく神器である雪音が原因である。

 

イ「あんな神器使ってたら、身がもたねえ。

 

  早く破門させるべきだ。

 

  つっても夜トのやつは頑固だからなーー

 

  どうしたらいい?

 

  李愛?」

 

イズモガミはたえずそばにいる李愛に尋ねる。

 

李「あなたの好きなように。

 

  私たちはあなたの信じる道についていくだけです。」

 

李愛はそう答えた。

 

イズモガミはそれをだまって聞いていた。

 

イズモガミという男は神器に刺されたことがない。

 

それはイズモガミという男の器の大きさ、神器を家族とする考え方に一因があるのだろう。

 

イ「そうだな。

 

  どっちにしてももう一度降りなきゃな。

 

  このままだと夜トが死ぬ。」

 

イズモガミは真面目な顔を誰にも見せることなく言った。

 

 

その頃、ひよりは毘沙門の神器である兆麻から夜トがこのままでは死ぬということを聞かされていた。

 

兆「神器が悪事を働くとその主が患うこちになる。

 

  それを放置すれば苦痛は蓄積されヤスミは全身に広がり

 

  どんどん悪化していく。

 

  いまのままでは、、、夜トは死ぬ。」

 

ひよりは夜トの症状がそこまでひどいとは知らず驚愕する。

 

兆「いざとなったらイズモガミ様をたよれ。

 

  あの人にできないことなんかないのだから。

 

  ヴィーナを救ったのもあの人だった。」

 

ひ「ヴィーな?」

 

兆麻はしまったというような顔をした。

 

兆「いや、なんでもない。

 

  今後、毘沙門様に会ったらあらぬ知らぬでやり通せ。

 

  いいな。」

 

そう言い残し、兆麻は立ち去った。

 

それから数日たって夜トと雪音とひよりは中学生の学(まなぶ)という男の子の依頼を解決していた。

 

そこで雪音の心の鎖がはずれた。

 

学校の窓を無作為に割っていた。

 

自分はもう死んでいる。

 

本当に欲しいものはもう手に入らない。

 

そんな雪音の絶望が夜トを刺す。

 

夜トはついに倒れてしまう。

 

倒れた夜トをかついでひよりは急いで小福のもとへ向かう。

 

ひ「小福さん!!

 

  夜とを、夜トを助けてください。」

 

ひよりは今にも泣き崩れそうな顔で言う。

 

その場を見た大黒は小福をかばうかのように一線を引く。

 

一線とは神器だけが使うことのできる妖との間にひく結果のようなものである。

 

ひよりはこれに驚く。

 

ひ「助けてください!!

 

  夜トが死んじゃう!!」

 

するとひよりの後ろから足音が近づいてくる。

 

イ「ひよりちゃん。

 

  夜トを下ろして、離れて

 

  雪音はそこを動くな。」

 

イズモガミである。

 

いつもより低い声でそう言う。

 

ひ「え?」

 

イ「いいから言う通りにしろ。」

 

ひよりはイズモガミに従った。

 

イズモガミはひよりに近づき、ひよりに感染しているヤスミに触れる。

 

すると、ひよりのヤスミがみるみる治っていく。

 

ひ「す、すごい。

 

  イズモガミ様これを夜トにも!」

 

イズモガミは頭を掻きながら

 

イ「俺はヤスミの軽い状態の者しか治せないんだ。

 

  わるい。」

 

ひ「そんな!?

 

  それじゃ、夜とは!!」

 

ひよりは泣き崩れる。

 

イ「李愛。

 

  兆麻を連れてこい。

 

  ここからならあいつが一番近い。」

 

李愛はうなずく。

 

イ「大黒。

 

  兆麻と李愛とお前で禊をする。

 

  準備しとけ。」

 

大黒「ああ。  

   

   それしかねえか。」

 

そんなことを話していると李愛が兆麻を連れてきた。

 

兆「夜トは!?」

 

兆麻が叫ぶ。

 

イ「ご覧のとおりさ。

 

  朝まではもたない。

 

  さっそく禊を。」

 

そう言うと、雪音を大黒、李愛、兆麻が囲んだ。

 

イ「(雪音。耐えろよ。)」

 

イズモガミは心の中でそう願った。

 

 

 


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