そうして店員さんに通されたのは、フロアのやや端にある隔離されたブース。何故か事務所の方へ連れて行かれ恐いお兄さんたちが出てくるという展開ではなかったことにホッとする。
だがしかし、俺の気分は超ベリーバッドです。
いったい、何なんだよもう。ここで何が行われんだ。
ブースの中には既に先客がおり、俺を含めて計5人――10代から50代くらいまでの幅広い年齢の、いずれも女性が揃っていた。
ほわーい。野郎成分が完全に消失してるんですけども。き、気まず……。
ちらちらと見られているのを感じつつ、乾いた笑いを振りまき端っこにつく。完全にアウェイだわこれ。お家帰りたい。俺、無事に帰ったら、商売を始めようと思うんだ……とにかく抽選券をつけてやるんだ……。
うわぁ、しかも俺が最後だったのか店員さんはブースの入り口の前に立つと、いきなり拍手をし出した。
「コングラッチュレーション。おめでとうございます。皆様は今回のA-RISE握手会の抽選において、ラッキー番号に当選された方になります」
不思議だ、嬉しさが湧いてこない。でも周りに合わせて拍手をして、歓喜にむせびそうになりそうな感じをかもしだすぞ、がんばれ俺。ファイトだよ!
「皆様には、握手の他にメンバーとのツーショット写真撮影やサイン、そしてそしてぇ――ッ」
もう何がきても驚かない。そうこれが明鏡止水の境地、
「これから行われるゲームで勝った方1名様にA-RISE側の意向もあり、次回のシングルのPVに登場出来る権利を差し上げます!!」
終了のお知らせです。
「い、い」らねぇ……!!
と思わず、言いかけた瞬間、皆の視線がこちらを向いた。
「いいですねぇ……!!」
修正を施すと、ほぼ全員が笑顔で頷く。わお、言論の自由がなーい。
と内心慟哭してると、既にブースの外が騒がしいことに気づく。ジャングルみたいな奇声と歓声飛び交う向こうでは、どうやら普通に……普通に握手会が始まっていたようである。この高い壁を乗り越えて、君たちに逢いに行きたいよルルル。
ということはだ、案の定、
「順番として先に、他の当選者の方々の握手会を行ってから、A-RISEのメンバーが参りますので、申し訳ございませんが今しばらくお待ちくださいませ」
そんなお達しが来て、めでたく暇を持てあます運びとなった。もう最悪だ、どうすんのよ、これ。
ひとまず、改めて四人を見渡す。
一人目、二十代くらいだろうか、仕事の出来るお姉さん風な雰囲気を持っているが、その隠れた趣味はアイドルやかわいいものが好きだった。そんな印象を受ける。
二人目、同じく二十代。だが、こちらは一人目に対しかなり派手目だ。すぐさまスマホをいじり始めたあたり、現状をつぶやいてでもいるのか、それとも友達に連絡でも取っているのか。
三人目、五十代後半。非常に恰幅が良く、ほ、豊満な肉体をお持ちです。子供連れで来ていてもなんらおかしくはないが、それなら当選を息子娘にゆずっているはずだ。おそらく夫婦二人で、もはや孫のような年齢差のアイドル達に独り立ちした子供の面影を重ねているのかも、などなど想像が広がる。
そして四人目、背丈的に十代と見て間違いないだろう。迷彩柄のパーカーにショートパンツのコーデ、更に「V.I.P」とラメ文字で書かれたハイセンスなキャップを目深に被り、黒ブチ眼鏡でダメ押しのアクセントを加えている。
どっかのコートの子より遙かにマシだが、目立ちたくないのか目立ちたいのかよくわからん。差し詰め、控えめだけどここは曲げたくない自己主張の強さがポイントです、といったところか。知らんがな。
ふむ、まぁ順当に考えてこの中なら同年代っぽい四人目に話しかけてみるのが一番マシだろう。位置的にも一番近かったので、歩み寄り、
「えと、ラッキー……でしたね。お互い」
初対面用のスマイルで話しかけると、
「――気安く話しかけんといて」
にべもなかった。ビキとこめかみに井桁が浮かぶのを感じるが、オトナノタイドオトナノタイドと脳内で繰り返し、どうにか笑みを崩さずに保つ。
「ここにおるんは、あんた含めみんな敵や」
何言ってんだこいつ。
敵って一体何と戦ってんだ。常人には見えない魔物と影の世界で異能バトルか? 一族の
……おっといかん。先ほどから心に高負荷がかかりすぎて、とげとげしくなっている。今の俺は切れたナイフといっても過言じゃない。深呼吸をするのだ、落ち着け行人。
「いやあの、敵ってどういうこと?」
「そのまんまや。A-RISEのファン、つまり、敵や」
何言ってんだこいつ。
堂々と自分を棚に上げさせてもらうが、普通はこういう所に来る人たちはそのアイドルのファンに決まってるんですぅ。それを敵って、マジで何しに来てんだこいつは。
激しく話しかけたことを後悔し、俺は苦笑いで固まってしまった顔のまま、ゆっくり後退をし始める。
「待ちや」
「……なんすか」
気安く話しかけんなっつったのはどこのどなたさんだよ。
「こんだけ言われて、なんで怒らへんねん」
怒ってるから、離れようとしてんだろうが、再びビキビキ来てますよぼかぁ。
「まぁ、いいんじゃないすかね、ほら、みんな違ってみんないい、人それぞれみたいなこと言うしねよく」
たぶん金子みすゞもこれ見たらお茶濁すレベルだけどな。
「……もしかして、あんた、A-RISEのファンちゃうんか?」
ファンだらけの場で、そうデェース。とか言えるわけねーだろ。我慢の限界に達した俺はとうとう口を開く。
「待て待て、危ない発言やめろって」
「え、どうなんどうなん?」
小声で注意しても、聞く耳持ってません。
ぐいぐい来るその子に俺は周りに聞こえないようにそっと耳打ちする。
「なんつうか、濃いファンじゃないんだよ」
「じゃあ本命は?」
「はぁ?」
「あんたの推してる本命のスクールアイドルグループは、なに? って聞いとるん」
そんなこと何故言わなきゃならないんだよと遠回しに拒否しようとしても、えーからえーからと引っ込む気配はない。
しかし、言ったところで、この子が知ってるわけもまたない。め、面倒くせぇ……。
「にひひ、何恥ずかしがっとんねん、男らしくないでー」
揺らされながら考える、こういう時はアレである。古来より用いられてきた、
「君が教えてくれたら、俺のも教えてやるよ」
人の名を聞くときはまずは自分からの応用だ。そう、これで時間を稼ぐ。
「ウチの?」
「ああ」
今の『ウチ』ほんまもんのイントネーションを感じるぞ。なんちゃってではない真の関西弁だ。出身がそっちなのだろうか、目の前のこの子は。と、
「ん」
そうして指差すは彼女自身。
ちょっとやってる意味がよくわかんないっす。
「よーく見てみぃ」
促されるままにご尊顔を拝させてもらう。どでかい眼鏡をかけているが、目の大きさが変化していない辺り、ただのダテ眼鏡であるらしい。うん、それで小生意気そうだけど、整った顔をしている。おそらくは高校生くらいだろう。もしも同じ学校ならば、間違いなくちやほやされまくってるであろうことは想像に難くない。
「はい。見たけど?」
だぁ……っ、と本場っぽいずっこけの仕方を披露してくれると、
「ええかぁ、もう一度よーく見てみぃっ!!」
わっからん。褒めてほしいの? まつげ長くて超うらやましいんデスケドーとかやってほしいのかよ。キモ過ぎるから断固拒否なんですが。
露骨に首を傾けていると、
「あーもう、わからんやっちゃなぁ!! これだから東京もんは!!」
「あ? 聞き捨てなんねぇな。こちとら生まれも育ちも江戸っ子なんだよ!!」
それも生粋の下町だぞ。郷里を馬鹿にされて黙ってられっか、てやんでいべらんめえ。
「なんで見てわからへんねん!!」
「知るか。言葉で言え言葉で、このバーバリアンが!!」
「むっかぁ!!」
取っ組み合いに発展しそうになった俺たちに冷水を浴びせるように、
「――何か、あったんですか?」
六人目が突然、ブースの中に現れるなり、そう口にした。
その少女はUTX学園の白いブレザーに身を包み、メタルフレームの眼鏡の奥には怜悧な瞳がこちらを据えていた。
えと……どなた?
まったくもって見覚えがない。
闖入したという自覚があったのか、少女は俺たち一同に対し頭を下げ、
「初めまして、私はA-RISEの専属マネージャーを務めています
「専属……マネージャー……?」
て、何すんだ? 運動部みたく記録したり、スポドリ作ったり、レモンのハチミツ漬けを配ったりするのだろうか。
余程のアホ面を露呈してしまっていたのか、千歳という少女は俺に向かって、
「はい。私たちの学校はA-RISEの活動を全面的に支援してくれています。ですが、それはたとえば遠征先の手配であったり、ライブチケットの販売とか大きなものです。私のようなマネージャーがやっているのはもっと細かな、練習の手伝いであったりとかアドバイス、そんな雑用のようなものですよ」
学校をあげてか……なるほどな、甲子園優勝経験のある名門野球部は学校全体でサポートしてくれるようなもんか。
にしても専属マネージャーねぇ……まぁさすが全国一位だな。スクールアイドル活動の規模からしてまったく違うんだろう。しかし、得心がいった俺の横では関西娘が、
「出よったな……四人目」
またわけのわからんことを言っている。おいおい四人目じゃなくて、六人目だろうが。
「お前な、さっきからさぁ――」
「――それは正確じゃありませんね。たしかに私のことをそう呼ぶ方もいらっしゃいますが、私はあくまで裏方です。メンバーのみんなと並ぶような表現はやめて頂けますか」
「はっ、ようゆーわ。A-RISEの衣装や演出、曲のテーマ、あんたが一枚噛んでるってレベルやないのは西の方でもよーく知られてんで」
いや、ごめんなさい。二人の話、ついてけてないっす。でも他の皆さんもそうみたいです。
スッと目を細める千歳さんと関西娘の視線が交錯した、その時、
それはやってきた。
「やーやーやー、ゴメンなさーい。お待たせしましたぁ」
頭を掻きながら、ブースに軽い調子で入ってきたのは、
「キャ――ッ!! ツバサちゃ――ん!!」
耳をつんざくような黄色い声に手をひらひらさせる、A-RISEのセンター、全国のスクールアイドルの頂点に立つ、
――綺羅ツバサ、だった。
「どもどもー。えーと、これが今回ラッキーだった皆さんですね? おめでとーごっざいまーす!!」
パチパチと胸元で拍手をする綺羅さんに、焦った様子で千歳さんがその肩を掴む。
「ちょ、ちょっとツバサ!? 向こうの握手が時間がかかりそうだったから、私がこっちに来て間をつなごうとしたのに、なんでもう来れたの!?」
「うんそれはだね文ぽん。片手での話だよね?」
「ま、まさか……」
やべっ、千歳さんじゃないけど、俺次の言葉なんとなく予想できたわ。
「手は、二本あるんだよ!!」
直後、顔の前に二つの手の平を突きつけられた千歳さんのこめかみに青筋が立つのを見逃しませんでした、ハイ。
「いやー単純計算で二倍。うんうん、これが天啓ってやつだねぇ」
得意げに腕を組んで頷く綺羅さんに、千歳さんは俺たちに向かってもの凄い笑顔を浮かべてから、
「皆さん、すみません、ちょっとあさっての方向を見てて下さい」
「いだっだだだだだだららららいらい!!」
言うや否や悲鳴が響く。うわぁ、ナンバーワンアイドルがグリグリ攻撃されてる。しかもやられてる綺羅さんの表情を背中で見せないようにしてる辺り、あの女……出来る……。
と、今度はそこに、
「す、すまん文乃!! こっちにツバ、サ、が……」
A-RISEのクールビューティー担当、統堂英玲奈が走り込んできた。が、恐れていた事態が、時既に遅し状態だったため力なく目を背ける。
「英玲奈、私、ちゃんとツバサのこと見といてって言ったよね」
「め、面目ない……」
「い、いらひよぉ文ぽぉん」
ぱたりと力なく床に伏した綺羅さんを放置し、
「あんじゅは?」
「フォローを込めて何人かと少し会話をしていたから、すぐに来るだろう」
「そう、よかった。……安心したわ」
千歳さんは胸を撫で下ろす。唖然としているのは、今にも噛みつきそうにジト目で唸る関西娘を除いて全員だ。ステージ上の彼女たちと目の前の光景が全然結びつかないのだからしょうがない。
「あら、皆さん、もうお集まりだったんですね、ごきげんよう」
のんびりと最後に加わったのは優木あんじゅだ。お嬢様然としたゆるふわヘアーをいじりながら、他のメンバーの様子に驚くこともなく微笑む。いいのかそれで。
そうして呆気に取られるまま、気づけばA-RISEは今この場に揃っていた。
正直を言えば、思ったよりもキラツバって小さいのなとか、英玲奈様の視線にぞくぞくしますとか、あんじゅお嬢様のムチムチ感は男をダメにしますよこれはなどと、感動よりも先に感想が先に出てきてしまう。
だから、こちらが縮こまるようなオーラがなかったことに、俺は少し拍子抜けしていた。口ではそこまで興味ないと言いつつも、なんだかんだで期待していたのかもしれない。
徐々に、停止していた周りが騒ぎ出すのを余所にそんなことを一人考える。
制服を払いながら、再び立ち上がった綺羅さんは、
「よっと、それじゃあアハハ皆さん気を取り直してぇ――PV登場権をかけて、ジャンケンをしましょう!!」
は? それってもしかして例のゲームってやつか。いやいやいや、え、ただのジャンケンなのかよ。やれやれと頭を振っている千歳さんが視界の端に引っかかってるのを気にしたら負けなんすかね。
「私たちそれぞれが一回ずつジャンケンしますから、勝った人がもちろんその権利を得られますっ、はいっじゃあ、あんじゅから!!」
早い早い、心の準備がまだなんだけど、
「それじゃあ~、いきますよ、じゃーんけーん」
考える暇もなく、そのままグーを出す。
「チョキです。いかがですか?」
そのままこちらにピースする優木さん。半分白目になりつつ俺は周りの勝敗を確かめる。二名が負けていて地団駄を踏んでいる。残るは俺、関西娘、貫禄のお母ちゃん(50代)である。ええ……ちょっといきなり減りすぎじゃない、もっと穏やかに行こうよマジで。
「おお、残るは三人ですね。はい、次、英玲奈」
「はぁ……いきます、じゃーんけん」
次こそ負けてやるからな。俺まったく勝つ気ないから。ゼロだから。PVとかいらんから。よし、俺に敗北をもたらしてくれるのは――こいつだ。チョキで、断ち切る、この正の連鎖をな。
「パーです」
あるぇー!? おかしいなぁ、どうなってんのこれ。責任者はどこだ、出てこいよ。てかまずいまずい、もう関西娘と二人だけになってしまった。負けないと大変なことになる。ここは関西娘よ、頼むぞ、空気を読んで勝ってくれ、俺は負ける。気合いだ、気合いで負けを引き寄せるのだ。
「ふっふっふ、ラストを飾るのはジャンケンの鬼と噂されたこの私だぁっ!!」
鬼なら勝てよ。負けんじゃねーよ。もう対戦相手を応援するとか、何が何だかわからなくなってきた。早く終われ、俺の負けで終われ。ハッピーエンド決め込んでやる――グーで。
「じゃーんけーん!!」
結果が恐くて目をつぶったままこぶしを突き出した俺は、耳を頼りに天秤がどちらに傾いたのかを推し量ろうとする。
だが、無音。
つまりノーヒント。
思わず、わかるかボケェ!! とキレそうになった俺が目を開くとそこには、
グーチョキパーいずれにも属さない、ただ人差し指を綺羅ツバサに突きつける関西娘の姿があった。な、何してるんだこいつは……、
「よーやく会えたでぇ、綺羅ツバサ。ウチのことは当然知っとるやろ?」
「んー? えーっと、……ああ!!」
ぽんと綺羅さんは手を打つが、
ああ、次の言葉も予想できる。俺はエスパーか。それとも誰かノリが似てる奴が近くにいただろうか。
「――どちら様?」
先ほどと同じく新喜劇風にずっこけて見せてくれる関西娘。いやもう芸術品レベルですよこれ。
すぐさま食ってかかると、
「覚えときや!!
わずかに千歳さんが眉を上げただけで、他のA-RISEのメンバーは首を傾げる。おい、あれだけ大見得切ってダメじゃねーかとついツッコミたくなるのをこらえた。
一歩進み出ると千歳さんは、
「ツバサ、たしかこの前
「あー
「し、四宮先輩、そんなことゆーてくれとったんか……」
感極まった様子で口元を押さえる、えー紅尾。しかし、そんなことをしてる場合じゃないとすぐさま我に返る。
「で、そのONE-kissの紅尾さんがどしたの?」
よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに薄い胸を張ると、再びビシィッと擬音がつきそうな動作で人差し指を向け、
「――宣戦布告や」
そう言い切った。
一拍の沈黙を挟み、
「はるばる大阪からヒッチハイクで東京まで来たんは、他でもない、これを伝えに来た。
――今年のラブライブの優勝はウチらのもんや」
静止した世界で紅尾の指が狙う綺羅さんは、あろうことか――笑った。
「な、何がおかしいんや!!」
「アハハ、そんなこと言われたのアナタで
「は、はぁッ!? ふ、二人目ってどういうことやねん!!」
「いやぁ、つい最近ね。ライブで似たようなことを言ってくれた子がいたんだなぁこれが」
ちょい待ち、なんか俺、似たような話どっかで聞いたことがある気するぞ。い、いやいや、まさかな、そんなことあるわけないって。そ、そうだよ、あるわけないね。
「誰や、そいつ!!」
「うん、それはねぇ――」
やだ、俺、その先聞きたくない。
「高坂穂乃果さんって言うんだけどね」
お、お、
脳裏に浮かんだその顔は、
『あ、ユキちゃーん、どうしたの?』
にへらと笑う。
お前じゃね―――――――――――――――か!! 穂乃果ぁ!!
バカバカおバカ、完璧に天下のA-RISE様に認識されちゃってんじゃねーか。どうする気だお前!?
「高坂穂乃果……聞いたことないわ。どこのスクールアイドルやねん」
「近所に国立音ノ木坂学院って学校があるんだけど、そこのスクールアイドルだよ」
「……グループ名は?」
「それがねぇ……まだ決まってないらしいんだよねぇ~」
「はぁ?」
疑問符を顔中に貼り付けてから、紅尾は何アホなこと抜かしとんねんと爆笑する。
「グ、グループ名なしなんて、そ、そんなん、プ、ププつまりホンマにただの無名のアイドルやん!! ちょ、ええ加減にしいや、ボケなんそれ? あかん、お腹痛いわぁ。あんたバカにされとるでそれ!! ってかその高坂っちゅうのがアホなんかなぁ」
紅尾の哄笑だけがブース内に響き渡る。お腹を押さえヒーヒー引き笑いしながら時折、目尻を拭う。
「――おい、訂正しろ」
「あ? 何、急に?」
人を指差すなって、お袋に小さいころから何度も教わったが、知ったこっちゃない。
俺のあご先くらいまでしかない小柄な紅尾の鼻先に人差し指を突きつけ、
「『μ’s』だ。高坂穂乃果は国立音ノ木坂学院スクールアイドル『μ’s』のセンターだ。無名でもアホでもねぇんだよ」
【あとがき】
ペロッ、これは、スノハレ中毒!
どうもらむぷです、アニメ二期九話でメロメロ(ほぼ死語)にされてしまったのとA-RISE再登場や、その他色々盛り込んだせいで、今回の話ちょっと執筆が楽しすぎました。何ぶん、原作でさほど描写のない彼女たちなので私なりの解釈で彼女たちには演じてもらっておりますがいかがでしたでしょうか。こういうA-RISEもアリッスと気に入って頂ければ幸いです。しかもなんか新キャラもちゃっかし登場してます……うむむ、
はい、ハンターが再開したのでまだまだ生きます。