僕と君とのIN MY LIFE!   作:来真らむぷ

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#17 あげる紙あれば、もらう紙あり

 

 

 

 

 

「――お買い上げ2000円以上でしたので、本日のA-RISE握手会の抽選券をお付け致しますね。まもなく当選番号が発表されますので最上階のイベントスペースでお待ちください。ありがとうございましたー」

 

 そんなよどみない口調で、店員さんより渡された抽選券に書かれていた番号は『631』。

「ムサい」

 などとしょーもない言葉を吐き出しつつ、俺は買ったばかりのCDをカバンに入れると、既に購入を終えていた彼女たちの元へと戻った。

 

 そわそわしていて落ち着きのない小泉さんの隣では、西木野さんがクセなのか自分の髪の毛の先をクルクルといじっている。どうにも手持ち無沙汰になってるようなので、最上階を目指しがてら俺の方から話しかけることにした。

 

「二人は何番だった?」

「はい、わ、私は205番です」

 西木野さんは、と視線を転じると無言で券を突き出された。

「……あー820番ね」

 

 まだまだプリプリモードらしい。うん、そっとしておくに限りそうですね、これ。

 しかし、ということはだ。

「番号飛び飛びで渡してんだね。抽選だからかな?」

「そうじゃないでしょうか。今日の握手会は300人限定らしいので……」

「300人!? 朝から抽選券渡してたなら1000人くらい抽選番号いってるんじゃない?」

「そうね。そのくらい、いってるんじゃないかしら」

 

 おやまぁ、お優しいことでもう会話を許してくれたのだろうか。

「っ!?」

 と思った矢先、再び西木野さんに顔を背けられる。え、今のただのポカすか……まぁ、そういうことにしておこうか。 

 

 いたる所がアイドルたちの広告で埋め尽くされた階段を、時には下りてくる人たちと互いに壁に身を寄せ合って譲り合いつつ上へ上へと向かっていく。本当はエレベーターに乗れればよかったのだが、混み合っていて女の子二人を詰め込むのははばかられた。じゃあエスカレーターで、と出来なかったのは単純にこの店のビル、エスカレーターが存在しないのである。よって、パパとママにもらった自慢の足で階段をのぼるしかなかった。

 

 これが穂乃果たちならガンガン気にせず先行しちゃう俺なのだが、いかんせん知り合って間もない年下の少女たちなのだ、そりゃ気も遣う。

 

 目指す先が6階だったことに、罪悪感を抱きつつどうにかイベントスペースのフロアへと到着した。ぶち抜きのせいか、ここに来てようやく空間的に余裕を感じる。

「二人とも、大丈夫?」

「は、はい……」「……ええ」

 軽く息が乱れている二人に配慮しつつ、周囲を確認する。

 

 案の定というか、ここも結構人数いるな。仮に1000人に対し、300人の枠なら単純計算で約3倍の倍率。しかも皆さんお買い上げ2000円以上の上客だ。店からすればウハウハ、こっちからしたらこすい真似しやがってと愚痴も吐きたくなるが、商売だから仕方あるまい。悲しいけど、これ、ビジネスなのよね。

 

 当選者発表までのわずかな間、めいめいが雑談などに興じている。

 すると、隣で今度はきょろきょろしていた小泉さんに気づき、俺は尋ねた。

「どうかした?」

「あ、はい。実は……ここで友達と待ち合わせしてるんですけど、まだ来てないみたいなんです」

 辺りを見回す。確かに同年代の女の子たちはいるが皆すでにグループで固まっているから、ここには誰かを探しているような子はいないようだ。ん、いや、一人――

 

「あの人は…………あー、違う、か」

「えっと、あの人……ですか?」

 

 俺の視線をたどった小泉さんはその先にある奇妙な人物を発見したらしい。

 

 その出で立ちはまさに最強と言っていいほど、この場に浮いていた。

 

 トンボを彷彿とさせるような大型のサングラスをかけ、口元はマスクで隠し、季節外れのマフラーとコートを着込んでいる。

 

 なんだあの格好。芸能人というより、今からエイリアンでも連行しにいきそうな格好なんだけど。

 ただ一人壁にもたれかかっているその人は、体格からすれば小柄な女性なのだろうが、圧倒的な存在感を振り撒いてる。

 

 しかし、

 

 人口密度急上昇中のこのフロアにおいても彼女の周りだけぽっかり空いている。見ろ、みんな一度はチラッてするけど、そそくさと視線を戻してるんだこれが。引かれちゃってますよ、普通に。

 ……あの黒髪にピンクのリボンのツインテールって髪型、どっかで見たことあるような気もしないでもないけど、いや流石に知り合いじゃないだろ……いずれにしても触らぬ神に祟りなしである。

 

 見なかったことにする。これが最良の選択だろう。

 

 勝手に自己完結して頷いていると、軽やかな足音が背後より聞こえ、それが小泉さんに向かっていくのを感じ取った瞬間――俺はシークレットサービスさながらに身を滑り込ませた。

「か~~~よ~~~~ち~~~――――んに”ゃ!?」

 

 おいおい、もしかして小泉さんにぶつかる気か!? と思ってとっさに身体を動かしたはいいが、背中にきた衝撃は思いの外軽くて逆にこちらが驚くくらいだった。

 うなじの辺りにこそばゆさを感じつつ、首だけ動かし俺はそれが一体何であるのかを確かめる。

 

「わ、わわ!? ご、ごめんなさい!!」

 張り付いた背中から、シュタっと猫のような俊敏な動きで離れると、ようやく全体を視界に収めることが出来た。そこで頭を下げていたのはショートボブが印象的な一人の少女。華奢な身体は触れるだけで傷つけてしまいそうな印象を与え、くりくりっとした丸い目は覗いていたら吸い込まれそうになる。

 なるほど、先ほど猫と形容したのはあながち間違ってない。

 

「凛ちゃん!! どうしたの!?」

「か、かよちん? こ、この人は……?」

 

 この反応はもしかして、この子が小泉さんの友達なんだろうか。口ぶり的には、そうだよな。

 

「えっと、日高行人さんって言って、西木野さんの……お、お友達?」

「もうそれでもい「知り合いよ、ただの!」

 さいでございますか。

 と、そこで会話に加わってきた西木野さんの存在にやっと気づいたのか、驚いたように凛という名らしいその少女は、

「に、西木野さん? こ、こんにちは」

「……ええ、星空さん。こんにちは」

 

 なんか気まずそうに二人ともしているが、つまりはアレなのだろうか。二人は小泉さんを介した友達の友達のようなもので、親交がない、と。

 どうしようと困っている小泉さん。その開いてしまった間を埋めるように、

「あー、小泉さん、悪いんだけど、そちらの彼女を紹介してもらってもいいかな」

「あ、はい、ごめんなさい……えと、私のお友達の星空凛ちゃんです」

 

 なんかカックイイ名前だな。ヅカとかにいそうだぞ。

 

「えと、凛です。よろしく、お願いします」

「こちらこそ、日高です。よろしくね」

 ついで、というのも変だが、先ほどのことも謝っておく。

「さっきはごめんね。小泉さんに抱きつこうとしてたのに邪魔しちゃって」

「え、あ、いや、いいんです。大丈夫です……」

 

 活発そうな見た目とは裏腹に、縮こまってしまっているけど、もしやこれ、俺、怖がられてるパターン? な、なんてことだ、今すぐその印象を覆さねば。

 

「あの、日高、さんは、先輩、ですか?」

「うん? あー三人とも今一年生だよね? 俺は高三だからまぁ、2コ上ってことになるかな」

「日高さんって、三年生だったんですね」

 ああ、そっか。西木野さんは知ってるが、小泉さんはそりゃ知らないよな。

 

「うん、そうなんだよ。だから頼れるお兄さんとしてドンときちゃっていいんだぜぃ?」

 などとウィンク付きで親指立てて、気さくな行人さんをアピールするが、

 

「…………」

 星空さんは小泉さんの陰に身を半分隠してしまう。ショ、ショック……。

 

「…………プッ」

「おい西木野さん、今笑いましたよね」 

「べ、別に!!」

 

 いや、思っきし吹き出してただろ。お兄さん見逃さなかったからな。

 

「あはは……でも、嬉しいです。身近にこんなにスクールアイドル、A-RISEのファンがいてくれて」

 

 小泉さんに言われてみると、まったくその通りである。今日知り合ったばかりの二人も含めて、やはりスクールアイドルの影響力の偉大さには舌を巻く。

 そうしてみると知り合い多すぎだろ。ひょっとしたら、うちのクラスの連中もここにいるんじゃないだろうな。普通にかわいいこの三人の女の子に囲まれてるところを見られでもしたら、呪殺されてしまうかもしれん。

 

 もしも見かけたら()られる前に()るしかないと身震いしていると、

「それにしても……、星空さんがここに来るとは思わなかったわ」

「あ、うん……」

「小泉さんはともかく、アナタはあまりスクールアイドルに興味を持ってるようには見えなかったから」

 

 うーん、なんだかなー。西木野さん的にはがんばって話しかけたつもりっぽいのだが、いかんせん仏頂面のせいか星空さんとしても二の足を踏んでいる節がある。コミュニケーションのキモたる笑顔が圧倒的に足りていない。もっとにこやかに、

『えへへ、凛ちゃんもスクールアイドル好きだったんだ~、実は私も大好きだったんだ~。共通の趣味、一つ発見だね♪』

 

 こんな感じでいけば、楽しく友人関係を築く最初の一歩を踏み出せると思う……が、これまでの西木野さんの会話からすると、人付き合いが苦手そうなのがうっすら窺える。そんな子にいきなりある種の馴れ馴れしさ、懐に入り込む能力を要求するのはフェアじゃない。くそ、こんなことを考えるのも、素の状態でこういう感じにユキちゃんユキちゃん話しかけてくる奴がいるせいな気がしてならないのは気のせいですかそうですか。

 

「実は凛ちゃん、この前のμ’sのライブを見て、スクールアイドルに興味を持ってくれたみたいで、私が色々CDとか貸してあげたら気に入ってくれたんです」

「か、かよちん……っ」

「で、そしたらそしたら、今日のA-RISEの握手会にもちょっと行ってみたいかもって言ってくれて、前だったらそんなこと言ってくれなかったのに、も~花陽は感激です!」

 スクールアイドルの話題になったらテンションが上がってきたのか、小泉さんは先ほどまでの気弱な雰囲気とは打って変わり饒舌になる。

 おおう、なんかスイッチ入った感じになってますよ。どうすんのよこれ。

 

 というか流しかけたが、μ’sってあいつらじゃないか。てことはなんだ、もしかしてあのライブの時、この子たちは講堂にい、た、

 脳裏によぎるのは、諦めかけたその時に現れた、

 

「――そうか、小泉さんってあの時来てくれた子か」

 どうりで見覚えがあると思ったわけだ。あの時の彼女は紛れもなく、救いの女神という存在だった。放送を流してくれた謎の人物ももちろんそうだが、ああいった結果になることが出来たのは小泉さんの存在も非常に大きい。そういった意味では、礼を言わなければならないんだろうな――

 

「あ、あのどうかしましたか?」

「へ?」

 気づけば三人の視線を集めてしまっていた。

「わ、私が、あの時来てくれた子って、どういう……」

 

 やっべ、これ言っちゃまずいんだった!! はわわ、バレたら一巻のおしまい。一生クールなお兄さん系の仕事が出来なくなる。アウトローという言葉には憧れるが、法的にアウトは御免だ。

 

 一瞬で言い訳を構築する。大丈夫だまだ取り戻せる。あの時来てくれた、ええとなんだ、そうだ、適当にこう、駅でコけた時に助けに来てくれたとかそういうので、

 カラカラになった喉で言葉を振り絞ろうとした俺に、助けは意外な方向からやってきた。

 

 

「えー、それではA-RISEの握手会の当選番号を発表致します!! 皆さん、こちらで掲示も致しますし、ディスプレイでも流しますのであまり押し合わないようお願い致します!!」

 

 ナイス店員さん!! 一斉に動き始めた客たちに合わせて俺たちも移動を開始することで、どうにかごまかせた。まだ気にしている様子の小泉さんに内心謝りつつ、俺は非常にそちらに興味があるといった風を装う。

 掲示された番号は小さい順にならんでいた。ええと、600番代は真ん中らへんかな。

 

 596 598 599 605 606 608 611 612 614 617 620 625 628 630 631 634 638

 

「ん……?」

 目を凝らし手元の番号と何度も照らし合わせる。

 

 ... 630 “631” 634 ...

 

「おあっ!?」

 

 きたきた豪運スキルきましたわこれ。また勝ってしまった、敗北を知りたいですぅ、はっはっは。しかし、ゆきちゃん大勝利のお知らせを報じる前に、地獄絵図と向き合うはめになった。

 灰と化した者、うなだれながらこの場を去る者、慟哭する者、あっ、あのコートの子……すげぇ、完璧なorzだ……。

 

 そんな敗者に対し、わかりやすくガッツポーズや飛び跳ねているのが勝者である。

 一瞬の内に、こうも明暗はっきり分かれてしまうものなのか。抽選とは、あなおそろしやと思わざるを得まい。

 

 俺から少し離れて自分の番号を確認していた彼女らも、明暗は分かれていた。

 

 無言でやはりガッツポーズを決める西木野さん。

 や、やりましたぁとはしゃぐ小泉さん。

 そして、俺の隣で、

「……あはは」

 視線に気づいたのか、困ったように笑った星空さん。確かめるまでもない。

 

 さて質問です。

 俺が、もともとこの場に来た理由はなんでしょうか。

 

 はい、答えです。

 CDが欲しかったから。握手会に参加したかった訳じゃない。ということは、アルバムを購入した時点で俺の任務は完了しているのである。

 なら、それでいいじゃないか。

 

 俺は、星空さんの抽選券を「見せてもらってもいいかな」と告げて、借りる。

 そこに西木野さんと小泉さんの二人が戻ってくる。

 

「あた、当たっちゃったよぉ!! 凛ちゃん、どうだった!?」

「り、凛は……」

「はい、返すよ。いや凄いなぁ」

 

 俺から戻された抽選券を、口にするのがためらわれたのだろう、星空さんはうつむきながら無言で二人に差し出した。

 

「これって……」

 小泉さんが眼鏡を直し、掲示された番号を改めて探している。と、

 

「当たってるじゃない」

「――えっ」

 

 西木野さんの方が見つけるのが早かったのだろう。その言葉に、信じられない様子で星空さんは番号を確認する。そこに印字されているのは、

「な、なんで? あれれ?」

「わぁ、凛ちゃんも当たったなんて、凄いよぉ!!」

 

 現実を認識出来ていない間に、手を打っておく。

 

「とほほ……俺だけかぁ、はずれたの……」

 大げさに嘆いてみせると、西木野さんが、

「日頃の行いのせいじゃない?」

「ナニソレ、イミワカンナイ」

「ちょ、ちょっと誰よそれ!? 真似しないで!!」

 

 いやいや、誰かちゃんと理解してんじゃんよ。口にして初めてわかったが、これなかなか使い勝手良さそうだな。西木野さんがいるとこいないとこ関わらず今後多用していこう。顔を振り振りしながら小憎たらしく言うのがコツだ。

 

「えっと……日高さんは、はずれちゃったんですか……?」

「まぁねぇ、こればっかは運だよ」

 申し訳なさそうにする小泉さんに気にしないでと苦笑していると、

 

「それではめでたく当選された方はこちらにお並びくださーい」

 店員さんの案内に従い、再び勝ち組の民族大移動が始まる。小泉さんはすかさず星空さんの腕を掴み「じゃあ日高さんごめんなさい……さぁ凛ちゃん行こ!!」と引きずるように列に加わろうとしていく。そんな哀れな体勢のまま、何か言いたそうにしている星空さんに、ひらひらと手を振って見送ってやる。

 

「んじゃ負け組は去りますかね。西木野さんも、出来れば後で生A-RISEの感想とか聞かせて――」

 

「――アナタのそれ。なんで、わざわざ損なことするのよ」

 

 その言葉はかなりキいた。ボディブローのようにじわじわと身体の内奥へと浸透していく。辛うじて取り繕えたのは、

「……いやいや別にそんなんじゃないよ。強いて言うなら……、ただの“ええかっこしい”さ」

「何それ、意味わかんない」

 

 最後にもはやおなじみの言葉を言い残して、西木野さんはこちらを振り返ることなく行ってしまった。

 あらら、見られてたかな……もっと上手くやるべきだった。嘆息し、まぁ明日から進歩すんべと俺は引き上げていく負け組と共にフロアを出ようとして、

 ぱったり、

 

「あれ、行人じゃないか」

「で、出たぁ!! ファイッ!!」

「ちょっ待て待て何ファイティングポーズとってんだお前!?」

「殺られる前に殺る。コレ、タタカイノオキテ!!」

 

 エンカウントしたモンスター、ハヤタに臨戦態勢を整えた俺だったが両腕を取られ、状況はいきなり膠着に陥った。

 

「なんでお前がここにいるんだよ……?」

「それはこっちのセリフだ……!」

 互いに額をぶつけ合いながら会話を交わす辺り、俺たちとっても仲良しである。アイシテルのサインかよ、アホか。

 

「俺は流れでA-RISEと握手できるらしいっていうから来た。……はずれたけど」

「なんだお前、はずれたのか?」

 なんだお前って、同類だからこっちにいるんだろうが貴様。

 

「あー……ちょっとこっち来い」

 急に力を抜いて通路の端の方へ移動し始めた逸太を、訝しく思いつつ、俺は従う。

「どした」

「ほら、これ」

 そう言って、握らされたのは抽選券だった。

「お前さ……自分で捨てろよゴミくらい」

「ちっがうっつうの。それ当たってるんだよ」

「は?」

 冗談くさいぞ。じゃあなんであっちの当選者側に並ばないで出て行こうとするんだ。おかしいじゃないか。

 

「いや、それがだな……運試しでやったのはいいんだが、まさか当たると思わなくてな。……これから別の場所で違うスクールアイドルのライブがあるんだよ。で、そっちに急がないといけないから時間的に無理なんだ」

 それってこの店に入るときに出てきた、あの濃い二人組のおっさんたちが話してたライブなのだろうか。

「だから、欲しいならやるよ、それ。な、とりあえず取っとけ。じゃ!!」

「あ、おい!?」

 

 渡すだけ渡すと、逸太は礼を受け取ることなく走り去っていった。

 残された俺は呆然と立ち尽くすのみである。なんなんだよ……てか、え、またあそこへ戻んの? どのツラ下げて戻るんだよ、逆に恥ずかしくて赤面しちゃうだろ。バレないよう最後尾の方へ回ればなんとかなる、か?

 

 まぁもらってしまった物はしょうがない、ありがたく受け取るとしよう。

 西木野さんたちに見つからないよう細心の注意を払いながら、俺は大回りをし、握手会の最後尾を整理している店員さんに抽選券を渡し、ふぅ……と一息ついた瞬間、

 

「あ、おめでとうございます。ラッキー番号ですねこれ」

「は?」

 

 な、なんですかソレ。俺、聞いてないんだけど。

 

「ラッキー番号の方は列がこっちなんですよ、来て下さい」

 周りの勝ち組たちから一斉に羨望と嫉妬の視線の集中砲火を浴び、ついでにヒソヒソされて――俺は泣く泣く店員さんについていく他なかった。

 

 だ、誰か助けて…………。

 

 

 

 

 

    ◆#17 “あげる紙あれば、もらう紙あり”◆

 

 

 

 

 

 

 

 




ユメノトビラのラブカのコラっぷりには笑ってしまいました。
あの立ち絵はもはやスクフェスでも見なくなったというのに……

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