三好長慶の野望~何とかして生き残りたい~   作:三好長慶

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なんか納得できない文章になった。
反省はして)ry
では本編を……。


第二章 父親

 又四郎が生まれて数ヶ月後、三好長慶に嬉しい報告が届いた。

 父・元長が細川晴元との関係を修復し、ここ三好群に帰ってくるという。

 この知らせを聞いた時、長慶は嬉しさ半分、安心半分の気持ちになった。

 

(やっぱり、ここはパラレルワールドなのかもしれない!)

 

 長慶がこう思ったのには理由があった。

 彼は前世で詳しい三好家の歴史を知っていたわけではない。

 だが、史実の三好長慶が畿内に勢力を伸ばすことは知っており、そのためには細川晴元と戦うことは推測できた。

 

 なぜ史実の三好家は主君である細川晴元と戦うことになったのだろうか?

 長慶は考えた結果、もしかしたらこのまま関係がますます悪化して、晴元が元長を殺したせいではないかと思い始めた。

 

 うろ覚えの知識だったが、史実の三好長慶は幼い頃に家督を継いだことは覚えていた。

 

 現在、長慶は九歳。

 この時期に関係が修復されたのなら元長が晴元に殺されるとは思いがたい。 

 

 長慶の思惑通りの世界ならば、細川晴元と戦う理由はなく、これまで通り細川晴元に仕えることが出来るだろう。

 

 故に長慶は元長の無事の帰還を喜ぶと同時に、細川晴元と戦うことがなくなったのだと安心したのだ。

 

「父上はいつお戻りになる?」

 

 長慶は知らせを届けてくれた侍女に尋ねた。

 

「はい、今頃は淡路をお発ちになられた頃と思われますので明日には阿波に着かれるかと…」

 

 そうか、と長慶は短い返答の後、侍女に礼を言って自分の部屋を出た。

 

「兄上!父上が帰ってくるって本当!?」

 

 長慶が部屋を出ると千満丸が駆け寄ってきた。

 

「あぁ、本当だ。明日にでも帰ってくるはずだ」

 

 そう長慶が告げると千満丸は「やった!」と大喜びをした。

 

「お前、本当に父上が好きだよな」

「だって父上、格好良いじゃん!それに兄上だって俺に負けないぐらい父上のこと好きだろ!」

 

 まぁ格好良いのは認める、と長慶は言葉を返した。

 実際、元長の武勇伝は凄まじく、それが本当のことであるため千満丸が憧れるのも無理はない。

 長慶も元長という名将が父としていることに誇りを持てるし、また格好良いとも思っている。

 流石に、元長を好きと言うのは恥ずかしいので言わないが。

 

「素直じゃないな兄上」

 

 うるせぇ、と長慶は千満丸の頭を軽く小突いて外を見る。

 

(明日は晴れるか?)

 

 晴れていたら遠乗りにでも誘おうか?と長慶が思っていると、五歳の千満丸に

 

「父上と遠乗りにでも出かけたいとか思っていそうな兄上、本当に分かりやすい」

 

 と見透かされたので恥ずかしくなり長慶はまた千満丸の頭を小突いた。

 

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 翌日、晴天の空に包まれている三好群に当主・三好元長は帰ってきた。

 

「よう!仙熊丸。息災だったか?」

 

 元長は門の前で待っていた長慶に快活よく話かけた。

 ここまで、京から阿波までの長旅であったにも関わらず、元長の疲れが見えない笑みに長慶は安心した。

 

「見ればわかるでしょ?元気そのものですよ」

「そうか!流石は俺の息子だな!」

 

 ガッハッハ!と笑う元長に、長慶もつられて笑った。

 畿内に行ってもこの人は変わってないな、と長慶は嬉しそうに笑った。

 

「良かったら、この後遠乗りにでも行くか?」

「良いのですか?お疲れでは?」

「そう見えるのか?」

「いえ、全然」 

 

 なら良いじゃねぇか、と元長は長慶の手を引いて妻と息子達が待つ館の方へと歩いた。

 途中で長慶の後ろで待機していた家臣達に声をかけられ、それに応対する元長を見て、長慶は思った。

 

(父上は、やはり凄いよな)

 

 家臣達と元長の顔を見ると、互いに戦友でも見るような親しげな笑顔で話し合っていた。

 この時代の「裏切りが当たり前、むしろ裏切られる方が悪い」という考えが一般的な主従関係では考えられないことだった。

 

(俺は父上のようになれるのだろうか?)

 

 長慶は元長に手を引かれながら、元長の後継者となる自分の境遇にため息しか出なかった。

 

=======================================

 

「今日は良い天気ですね、父上」

「…あぁ、そうだな」

 

 青い空の下、長慶と元長は馬に乗って遠乗りに出かけていた。

 親子共々、乗馬は得意で馬を上手に操りながら歩を進めていた。

 

「にしても父上の泣き言は今回も面白いものでしたね」

「…喧嘩なら買うぞ?バカ息子」

「たかが九歳の言葉ですよ?聞き流して下さい」

「相手が誰であろうと売られた喧嘩は買え。これ三好家の家訓な」

「大人げない上に、そんなの家訓にしたら御家滅亡確定じゃないですかやだー」

 

 馬鹿な会話を長慶と元長は楽しみながらも目的地である河原を目指していた。

 

「なぁ、仙熊丸」

「はい?」

 

 元長に呼びかけられ長慶は振り向いた。

 

「すまねぇな。本当なら俺が館にいてやるべきだったのに」

「…母上の出産の事を言っているのなら別にいいですよ。苦労もしてませんし」

 

 というか帰ってくる度に毎回その話ばかりで聞き飽きましたよ、と長慶が言った。

 長慶からすれば四歳の頃から聞かされている話なのでいい加減にしてもらいたいといった心境だった。

 

「そうか…、ありがとな仙熊丸」

 

 元長の手が長慶の頭を撫でる。

 大きくて力強さが伝わってくるその手が長慶は好きだった。

 

(父親って偉大だよな〜)

 

 お前を何が何でも守ってやる。

 長慶は撫でられていると、なんだか元長がそう言ってるように感じた。

 心から頼りに出来ると思ってしまう父親の偉大さに感心するばかりだった。

 

「よし、仙熊丸!河原まで競争するぞ!」

 

 元長は長慶の頭から手を離すと、馬を駆けさせた。

 

「ちょっ!?合図も無しにいきなりですか!」

「早く来い!置いて行くぞ!」

 

 くそっ、と長慶も元長に負けないために馬を駆けさせた。

 

「卑怯でしょう!っていうかなぜ唐突に競争なんかを!?」

「いや〜、無性に息子の成長を見たくなったというかなんというか…」

「そんな事のため!?それなら他のことでも良いんじゃ…」

「何だって良いじゃねぇか。ほら!置いて行くぞ!」

「少しは手加減してください!速すぎます!」

 

 長慶は必死になって元長に追いすがった。

 まるで、父親を超えようとするかのように。

 

 

 




ここまで、読んで下さりありがとうございます!

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