三好長慶の野望~何とかして生き残りたい~   作:三好長慶

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 前のプロローグは作品紹介に回しました。ご了承下さいませ。


プロローグ

 もしタイムスリップできるとしたら、どの時代に行きたいだろうか?

 色々な人があらゆる時代を言うと思うが、多くの人は戦国時代に行きたいと言うだろう。

 何せ、戦国時代は下克上の時代。

 かの農民という身分から天下人にまで出世した豊臣秀吉が登場した時代。

 未来の知識を有する現代人ならば天下人になれるかもしれないし、もし無理でも百万石の大名になれる可能性だってある。

 もちろん器量や運も問われるが、それでも現代に比べると出世の機会は多いだろう。

 さて、その戦国時代に転生した歴史好きの少年。

 彼も最初は戦国時代に来たことを嬉しく思っていた。

 自分が天下人として歴史に名を残すかもしれないと胸を躍らしていた。

 だが、彼は自分の転生先を知ると次第に戦国時代に来たことを後悔するようになった。

 

 

「転生先が三好長慶とか人生終わったぁぁぁぁぁぁ!」

 

 阿波(現在の徳島県)三好郡芝生。

 三好家の居館にある一室にて、今年で八歳になる元高校生、現三好家嫡男の三好長慶は叫んでいた。

 彼は後悔していた。

 最初は軽い気持ちだった。

 この時代に生まれたからには、自分の出自ぐらい知りたいという気持ちで世話係りの侍女に聞いただけだった。

 しかし侍女の言葉を聞いた時、彼は全てを理解した。

 

「千熊丸(長慶の幼名)様、貴方様は細川晴元様に仕え、天下にその名を轟かす三好家の御嫡男様ですよ」

 

 彼はその言葉を聞いた時、全てを理解した、というよりも思い出した。

 前世の記憶の片隅にあった名を思い出した。

 三好家。後世では隆盛を極めた結果、松永久秀や三好三人衆に実権を奪われ、最終的には織田信長に滅ぼされてしまう家だ。

 更には、その当主であった長慶は晩年は不遇で、疑心暗鬼にとらわれ自分の弟である安宅冬康を殺し、後悔を残したまま失意の内に死んでいく。

 

(何で三好長慶なんだよ!他にもマシな転生先があるだろうが!)

 

 無論、彼とて自分が三好長慶だということに今まで全く気づかなかった訳ではない。

 幼い頃から、三好家の跡取りと呼ばれながら生きてきた訳であって、思い当たるフシはいくつもあった。

 だが、彼は無意識の内に自分が三好長慶だという考えを切り捨てていた。

 三好長慶の祖父や父親だと思っていた。 

 もし、そうであるならば悲惨な人生が待っていることが分かっていたからだろう。 だが、侍女の言葉がキッカケとなり、彼は自分が三好長慶だということを理解した。

 

(三好長慶ってことは分かった。だからってどうすればいいんだよ!?三好長慶なんて余り知らねぇぞ!?)

 

 彼は三好長慶についてはよく知らない。戦国SLGで有名な『織田信長公の野望』にある武将列伝コーナーで書かれていたことぐらいしか知らない。

 といっても、これは仕方がないかもしれない。

 歴史の授業や大河ドラマでさえ三好長慶についてはスルーされている。

 いくら歴史好きといっても、三好家に興味がなければ知らなくても当然だろう。

 

(こんな事なら、三好長慶について調べておけばよかったかもしれないな……って、ん?)

 

 長慶は思案に耽っていると、侍女が驚いた顔をしたまま、こちらを見ていた。

 

「あぁ、もういいよ。下がってくれ」

「あ、はい。し、失礼します……」

 

 侍女は戸惑いながら長慶の元から下がっていた。

 いきなり長慶が意味不明なことを口走ったせいだろう。

 転生とか、今は仙熊丸なのに三好長慶とかいう今は存在しない人物の名前を叫ぶとか、常人から見るとかなり頭がおかしい子供に見られるだろう。

 だが、今の長慶にとってはどうでもいいことだ。

 詳しい経緯は知らないが、このままいくと確実に三好家は滅亡を迎えるし、何より長慶自身もバッドエンドだ。

 せっかく不幸な事故から戦国時代に転生して二度目の人生なのだ。

 このまま、バッドエンドなんて嫌すぎる。

(三好家は滅ぼさせない。それに俺自身にもハッピーエンドをもたらしてやる!)

 

 長慶は決意をした。

 どうしようもない三好家の運命を変えることを……。

 

 

 

 




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