新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~ 作:たい焼き
あの後のび太は設計図全てを、拳銃一丁とかつてバイオハザードが起きたススキヶ原で出会った赤いロボットから託された大切な物『ゼットソード』と交換した。一見してみると、のび太には損しかないように見えるが、仲間から託された、大切な品物だ。設計図くらい安い物だ。
あの後鈴仙を起こそうと何度か声をかけたのだが、中々起きてくれなかったので、現在はのび太が鈴仙を抱えながら、永遠亭に帰っている所だ。
人を一人抱えながら山を下るのは一苦労だが、自分の不始末に付き合ってくれたのは紛れも無く鈴仙だ。これくらい鈴仙が今まで無理してきた事に比べれば大した事はない。
だが、そう簡単に帰れそうにない。妖怪の山はそこで社会を築いている天狗達の縄張りだ。山の妖怪は仲間意識が他の妖怪よりも遥かに強く、その上排他的な面がある為、侵入者は許さず排除しにかかる傾向があるそうだ。
特に天狗は、味方がやられると確実に敵対姿勢を取る。他の妖怪には無い特徴である。
来た時は鈴仙の能力で自分達の波長を操り、他者からは見えないようにしていたため、なんとか侵入する事が出来た。
だが今は鈴仙がダウンしているため、鈴仙の能力を頼る事は出来ない。
茂みに隠れて息を潜める。見回りの天狗達が過ぎ去ったら動き、天狗達が近づいてきたらまた隠れる。
慎重に動いているのだが、そこは天狗。警戒心が強く団結力も高いため、どうしても見つかってしまう。
そういう時は、仕方なくにとりからもらった拳銃を撃って仕留めている。もっとも、にとりから貰った拳銃は殺傷能力がない代わりに、霊力を弾丸として撃ち出すことで、弾幕を撃ち落とす事が可能になる特別製なのだが、妖怪を気絶させるには十分過ぎる威力を持っていた。
天狗達には悪いが、ここで見つかるわけにもいかない。のび太は早いうちに妖怪の山から出るために移動速度を上げた。
「どうですか椛?侵入者の様子は?」
「頑張っていますね。今のところは私達以外には発見されてないようですよ。」
妖怪の山の遥か高い場所、山頂付近に彼女たちはいた。椛と呼ばれた方は
もう片方は
「何故捕らえに行かないんですか?文さんなら一瞬でしょう?」
「いいじゃないですか。彼らも出て行くところですし、こちらが手出ししなければ争いになることはないと思いますよ。」
「でも、今も仲間がやられているじゃないですか!!争いの種は今すぐ取り除くべきです!!」
既に少年にやられた天狗は十数人にもなっていた。
「仕掛けたのも彼らですよ。ここは穏便に行きましょうよ。」
椛は納得がいかない様子だったが、文が決めた以上仕方無く少年を見守ることにした。
あの後、特に何もなく山から降りることが出来た。天狗達の追撃もなく、安全に山を降りることが出来た。誰かに監視されている気がしたが、何も起こらなかった。
迷いの竹林を抜けて永遠亭に辿り着いた時にはもう夜になっていた。自力で竹林を突破出来たことには驚いた。日頃から竹林周辺を散歩していたことが、ここで役に立ったようだ。
鈴仙に関しては、日頃からの無理が体に響いていてそれが戦いによる疲労と伴い、しばらくは安静にしてないといけないそうだ。
もっとも、彼女自身はしばらく永琳の手伝いをしなくてもいいと喜んでいた。その分僕が手伝いをしなくてはならなくなりそうだが、これでしばらくは彼女も羽を伸ばせるのではないのだろうか?
そして、今日は寺子屋の教師として人里に行く予定があった。
教師として人に物事を教えるのはやった事がないが、子ども達が興味を持つような事を話していけば、きっと上手くいくだろう。
などと考えていると、いつの間にか人里についていた。のび太はまっすぐ寺子屋に向かった。
寺子屋に着くと慧音が待っていた。
「待っていたよ。子ども達も楽しみにして待っているよ。」
「わかりました。今行きます。」
のび太は慧音と共に教室に向かった。
教室に入ってまず驚いたのは子どもが人間だけではなかったことだ。ひと目見ただけでも羽が生えた子どもや昆虫の触覚らしき物が生えた子どもなど、明らかに妖怪などの人間ではない種族の子どもがいた。
「今日特別に外の世界の事を教えてくれるワイリー先生だ。みんな、一緒に挨拶しよう。」
「よろしくお願いします!!」
子ども達が元気良く挨拶をした。よほど、楽しみにしていたのだろう。
「それじゃあ、さっそくだけど・・・」
悪いが中略(自分の文章力じゃ無理)
授業は大成功だった。幻想郷では殆ど知られていない化学や星の話、外の世界の文化を覚えている限り話した。その結果、子ども達は外の世界と勉強に興味を持った。慧音にも歴史や文学だけじゃなく、たまには里の外にも連れて行って自然と触れ合えるきっかけを増やすといいとアドバイスもした。
寺子屋から出ようとすると、慧音も寺子屋から出てきた。
「今日はありがとう。コレは少ないけど、お礼ってことで。」
慧音が今回の臨時教師の謝礼を持ってきた。
「そんなに受け取れませんよ。お金目的で教師を引き受けたわけじゃないですし。」
「まあまあ、そんなこと言わずに受け取ってくれ。これで永遠亭のみんなに何か上手い物でも買って帰ってあげるといい。」
折角だし、のび太は謝礼を受け取ることにした。そしてこのお金で里で評判の良い団子を幾つか買った。茶店から出ようとすると、中から見覚えのある人が声をかけてきた。妹紅だ。
「おっ、ワイリーじゃないか。」
「妹紅さん。お久しぶりです。」
はじめて人里に来た時に間違えて寺子屋に連れて行かれた時以来である。
「これから帰るのか?」
「はい。妹紅さんは?」
「私も永遠亭に行こうと思っていたところだったんだ。ついていっていいか?」
のび太と妹紅は一緒に永遠亭に向かうことにした。
竹林を歩いている時、ふとのび太は疑問に思った。
「妹紅さんも何か特別な能力を持ってるんですか?」
「え?急にどうしたんだ?」
「永遠亭の人から聞いたんですけど、この世界には不思議な能力を持っている人がいるみたいなんですよ。」
「それで、私も能力を持っているかってことか?」
「はい。はじめて会った時から何か特別な感じがしたので。」
「ふ~ん。いいよ、教えてあげる。私の能力は老いることも死ぬことも無い能力、つまり不老不死よ。」
妹紅は自分の能力を説明した。
魂を起点に好きな場所で新しい肉体の再生・再構築が行えるそうだ。例え大怪我をしても数日で元通りになる。ただしそれ以外は普通の人間と変わるところがないらしい。
「すごい能力じゃないですか。」
「・・・そう言ってくれるのはお前が二人目だよ。」
妹紅はそう小声で言った。
「何か言いましたか?」
「あ・・・いや、なんでもない。さあ、早く永遠亭まで行くぞ。」
顔を赤くしながら、妹紅は駆け足で永遠亭に向かう。
「ちょっと!!待ってくださいよ。」
のび太も後を急いで追った。
竹林を抜けて永遠亭まで辿り着いた。玄関に入ると、家の奥から大きな声が聞こえてきた。
「あ~ん。また死んだ!!」
この永遠亭の姫、蓬莱山輝夜だ。最近ゲームにハマったとのことらしい。おそらく、ゲームで負けたのだろう。
「あの野郎・・・ゲームやりたいからって引きこもりやがって・・・今日という今日は決着をつけてやる!!」
妹紅が走って輝夜の部屋まで行ったので、のび太も後を追いかけることにした。
永遠亭の中心近く、一際大きな部屋が輝夜の部屋である。のび太が追いついた頃には既に妹紅は部屋の中にいた。
「おい、デュエ・・・じゃなかった。決闘しろよ輝夜!!」
テレビの前に張り付いて離れない輝夜の注意を引こうと妹紅が必死に声をかけていた。
「うるさいわね。これがクリアしたらいいわよ。」
輝夜がプレイしていたゲームは昔のシューティングゲームだった。次々と現れる敵を自分が乗っている戦闘機で撃ち落として、クリアやハイスコアを目指すという物だ。
「よし、やらせろ。こんなもんさっさとクリアしてやる。」
「ふん。あんた如きにできるわけがないわよ。」
プレイヤーが妹紅に変わり、プレイを再開する。しかし、想像以上に難易度が高いらしく、中々クリア出来ない。
「くそ・・・中々難しいな・・・。」
「あらあら。さっきまでの威勢はどうしたのかしら~?」
輝夜が妹紅を煽る。それにより、妹紅の怒りは頂点に達した。
「輝夜ッ!!てっめぇ!!表出ろヒキニート!!」
「なっ・・・!?その言葉、宣戦布告と受け取ったわ。やってやろうじゃないの!!」
二人はそう言い残して、表へと出て行った。残されたのび太は二人がプレイしていたゲームに目をやった。
「はぁ・・・全く姫様ともあろうお方が・・・。」
のび太は輝夜の部屋の後片付けを始めた。
この小説も既に八話まで来ました。といっても、何話まで続くかとかはまだ決めていないのですがね。
最近三日に一話投稿してるけど、流石に辛くなってきた・・・
それでは、次回またお会いしましょう。