新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

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泥棒は犯罪です。絶対にしないようにしてください。


白黒の魔法使い

 のび太は部屋で考え事をしていた。どうしたら子どもたちが楽しく授業を受けてくれるか?

 

 慧音はありのまま話してくれればいいといってくれたが、だからと言って今まで自分がいた偽りの22世紀の話しをするわけにもいかない。

 

 「さて、困ったな。」

 

 だがこのまま何もせずに考え込んでいても仕方がない。気分転換をしがてら、一旦外に出て新鮮な空気を吸うために、部屋から出る。

 

 

 

 

 

 

 

 部屋から出ると、永遠亭の住人が集まっていた。てゐや鈴仙、永琳もいる。

 

 「どうしたんですか?」

 

 「それが、なんだか怪しいカバンをウサギ達が拾ってきたのですが、開けるかどうか悩んでいたところなんですよ。」

 

 のび太に気がついた鈴仙が事情を説明してくれた。

 

 「持ち主はわかるのですか?」

 

 「いえ、それに、幻想郷の外から流れ着いたカバンみたいですので何が入っているのかもわからないのですよね。」

 

 のび太が見た限り、カバンの外側には特に怪しいところはない。

 

 「開けてもいいですか?」

 

 「ええ、いいわよ。」

 

 永琳は快く了承してくれた。早速のび太がカバンを開けてみる。

 

 「これは・・・?」

 

 中には色々と書かれた紙が大量に入っていた。随分と書き込まれており、所々に血がついていて書いた者がどれほど多くの時間をつぎ込んだかがよくわかる。

 

 「なんですかこれ?」

 

 鈴仙達には、それが何か理解できなかった。日本語で書かれていてかろうじて文字は理解できるが、専門的な名称や記号が使われていて、内容が理解できなかったからだ。

 

 「これって・・・設計図って奴かしら。」

 

 永琳がかろうじてこれが設計図だということを理解する。

 

 「師匠、これの内容がわかるのですか?」

 

 「内容はわからないわ。これが何かってくらいならわかるけど。」

 

 「師匠でもわからないの?」

 

 「いくら私でもなんでもわかるってわけじゃないわ。機械についてはよくわからないわ。」

 

 一同がなんとか何の設計図か解読できないか悩んでいるなか、のび太だけは違った。

 

 「これは・・・僕が書いた道具の設計図じゃないか!?なんでこんな所に・・・」

 

 それは、のび太が未来に残した本当の22世紀に存在したひみつ道具の設計図だった。ゼロが嘘の22世紀を滅ぼしたあと、残った人類に本当の22世紀を作らせるためだ。

 

 「えっ!?これワイリーさんが書いたのですか!?」

 

 一同がその発言に対して驚く。見た限り10歳くらいの人間の子どもがこれを書いたと言ったからだ。

 

 「それで、これには一体何が書かれているのかしら?」

 

 「それは、僕が幻想郷に来るまで、何をやっていた事と一緒に説明します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「にわかに信じがたいわね。」

 

 のび太は自分が今から約100年後の未来から来たということ、その未来で主に自律行動できるロボットを研究、制作するロボット工学という分野の科学者だったということや、一度老いて死んだ後にこの幻想郷に来たということを説明した。それは常人にはとても理解できないものだった。

 

 (本当かしら。だけどそれなら彼の落ち着いた言動も説明がつくわね・・・)

 

 永琳自体のび太の今の話をほとんど信じられないのだが、のび太の話が嘘には聞こえなかった。

 

 「って事は、ワイリーさんこれを作れるのですか!?」

 

 鈴仙が手にとっていたのは、『ころばし屋』の設計図だった。

 

 「多分無理ですね。材料が足りないんですよ。」

 

 「そうですか。残念ですね。」

 

 「こんなのどうするつもりだったの?鈴仙?」

 

 「ちょっと、どこかのいたずらウサギを懲らしめるために使おうと思ってね。」

 

 「いやだなぁ・・・なんでこっち見るの?」

 

 鈴仙のまるで狩る者のような目に只ならぬ威圧感を感じて、てゐは後ろに下がる。

 

 「ところで、これはどうするのかしら?」

 

 ここでひみつ道具の設計図をこれからどうするかという問題が出てくる。

 

 「とりあえずこれは、僕の部屋に置いておきます。悪用されるって事はないと思いますが。」

 

 「そうね。今のところ、それの内容を理解できるのはあなただけしかいないわ。」

 

 「では、失礼します。」

 

 のび太は設計図の入ったカバンを自分の部屋に持っていくために、部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「でも、本当にあんな不思議な事が起こせる機械があるのかしら。」

 

 先程の場所に残った鈴仙とてゐは設計図に見たひみつ道具について話していた。

 

 「そうかな?どこでもドアだっけ?あれだってスキマ妖怪の能力と大差ないし、そんなに驚くようなものじゃないと思うけど。」

 

 「逆に考えてみなさい。近い将来、スキマ妖怪の能力を誰でも使えるようになるのよ。」

 

 「それもそっか・・・」

 

 鈴仙達はワイリーが書いたひみつ道具の設計図から、将来ひみつ道具が幻想郷に広まった時の事を頭に思い浮かべていた。人間と妖怪で特殊能力の面での差がなくなる未来が見えた。

 

 それによって、今以上に人と妖怪が互いに同じ道を歩む未来と、今以上に人と妖怪の対立が激しくなって、お互いが生き残るためにひみつ道具を使い、戦争が起こる未来との二つが見えた。

 

 (でもあの人なら、間違った使い方をしないと思うわ。)

 

 鈴仙はワイリーの存在が幻想郷を変えると確信するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のび太の部屋 

 

 のび太は幻想入りしたひみつ道具が入っていたカバンを今後どうするかを決めようとしていた。中身ごと全部処分するか、このまま永遠亭に残すか、またはひみつ道具を今後のために作成するかの三つの案が思い浮かんだ。

 

 三つ目はもしひみつ道具の存在がバレ、奪われたのちに悪用される恐れがあるので保留、一つ目もいいが、もし必要になった場合使えなくなるので却下。

 

 実は先程鈴仙達にひみつ道具を作る事ができないというのは嘘である。元からあるものをひみつ道具に改造する事は可能というわけだ。

 

 となると、二つ目しかないのだが、これも何らかの理由で紛失してしまったら意味が無い。

 

 「やっぱり、これは処分するか・・・」

 

 設計図をカバンにしまい、処分するために持ち出そうとする。後でこっそりと燃やしてしまおう。

 

 のび太がカバンを持って外に出ようとすると、窓がいきなり突き破られる。それと同時に何者かが侵入。のび太を突き飛ばし、部屋の中に着地する。

 

 「おいーっす。借りに来たぜ。」

 

 箒を持ち、黒を基調とした服装に白いエプロンに加え、黒い三角帽子を被っている少女は、その姿から魔法使いを思い浮かばせた。

 

 「ん、誰だ?見かけない奴だな。おーい大丈夫か?」

 

 自分の前で気絶している少年を一応心配するが、彼女はすぐに少年の近くに落ちているカバンに興味を持った。

 

 「なんだこりゃ?」

 

 少女がカバンを手に取り、カバンを開ける。中には紙が何枚も入っている。かなり汚れていて、相当書き込んだように見えた。

 

 「なんだただの紙切れか・・・いや、待てよ。」

 

 設計図を捨てようとした少女が何かに気がついた。

 

 「そういえば、コレに似た紙をにとりの家で幾つも見たことあったな。確か機械の事が書いてある紙って言ってたな。にとりに見せたら何かわかるかも。」

 

 少女は思いにもよらないお宝に目を光らせる。

 

 「それじゃこいつを借りてくぜ(・・・・・)。」

 

 そう言い残し、少女は箒に乗り、飛び込んできた窓から外に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大丈夫ですか!?ワイリーさん。」

 

 大きな音に気がついた鈴仙がのび太の部屋に駆けつけてきた。

 

 「うっ・・・大丈夫です・・・」

 

 頭を打ったのか、後頭部を抑えながら立ち上がるのび太。まだ意識が朦朧(もうろう)としているのか、フラフラしている。

 

 「一体何があったんですか?」

 

 「わかりません。設計図の入ったカバンの中身を確認していたらいきなり・・・」

 

 部屋の何かが突入する前とは様子が変わっていた。綺麗に片付いていた部屋は、破られた障子や壁の破片で散らかっていた。

 

 「ところで、設計図の入ったカバンはどこですか?見当たらないのですが・・・」

 

 「え、まさか!?」

 

 辺りを見渡したが、どこにもなかった。誰かが持ち出さない限り、どこにも落ちていないというのはありえないのだ。

 

 「しまった!!()られた!!」

 

 常識では考えられない程大胆な犯行だが、実際設計図が無くなっているため、盗まれたと考えるしか無いだろう。

 

 「また、あいつに仕業かしら。」

 

 鈴仙には心当たりがあるようだった。

 

 「あいつって誰ですか?」

 

 「霧雨魔理沙(きりさめまりさ)のことですよ。よく薬とかを盗まれるので困っているんですよ。」

 

 どうやら、設計図を盗んだ者は霧雨魔理沙というらしい。

 

 「それって、泥棒って事ですよね・・・」

 

 「本人曰く、借りてるだけみたいですけどね。」

 

 借りてるだけだと本人が納得していても、盗られた方にしてみたらたまったもんじゃない。

 

 「それより、取り返しに行くんですよね?手伝いますよ。」

 

 あまり必要ないが、悪用される可能性を考えると、取り返した方が安全だと思う。

 

 「ええ、お願いします。場所ならわかります。」

 

 のび太と鈴仙は設計図を取り戻すために、永遠亭を飛び出した。




なんとかサイヤの日&東方Projectの生みの親であるZUN氏の誕生日に間に合いました。この場でお祝い申し上げます。

(え?自分にとっては寝るまで日付は変わりません。)

ところで、時々のび太とワイリーとが同時に出てきているときがありますが、これはのび太視点の場合は『のび太』他者の視点の場合は『ワイリー』になっているからです。なので、間違いではありません。気がついているかもしれませんが、一応この場で説明します。

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