新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

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半獣教師の憂鬱

  のび太は里の中心にほど近い建物に連れて来られた。木造で昔の学校みたいな建物だ。

 

 「ほら、着いたぞ。」

 

 のび太を掴んでいた腕が離れて、のび太は床に降ろされる。何がなんだかわからないが、ここの生徒と勘違いされているのだろう。

 

 「おいおい、教室の場所を忘れたのか?こっちだ。」

 

 白髪の女性が教室があると思われる方へ歩いていく。のび太も後をついて行く。

 

 しばらく歩くと、ひとつの部屋が見えてきた。中から人の気配がする。

 

 「おーい慧音。サボってる奴を連れてきたぞ。」

 

 教室の中は里の外見が江戸時代にそっくりだったためか、内装も江戸時代の寺子屋と同じだった。

 

 「ん?どうしたんだ妹紅。今日は寺子屋は休みだぞ。」

 

 教卓に座っている女性が、この女性がいう慧音という人なのだろう。腰まで届こうかというまで長い青のメッシュが入った銀髪がよく目立つ。

 

 「そうだったのか、こいつには悪いことしちまったな。」

 

 妹紅と呼ばれた女性がのび太の頭を撫でる。

 

 「ん?誰だこの子?うちの生徒じゃないぞ?」

 

 「え!?そうなのか?じゃあこいつは・・・」

 

 「え~と・・・そろそろ事情をお話したいのですが・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 「幻想入りねぇ・・・こんな子どもなのに大変だな・・・」

 

 のび太から事情を聞いた妹紅がそう言った。

 

 「ええ、いきなりこの世界に飛ばされていましたからね・・・」

 

 「そういえば、君は住む場所とかあるのか?」

 

 慧音がお茶を淹れて、居間に戻ってきた。

 

 「大丈夫です。僕を拾ってくれた永遠亭の方達にお世話になっています。」

 

 「そうか、それなら安全だな。」

 

 のび太はもらったお茶を少し飲み、一息つく。

 

 「そういえば、お前阿求の家に向かっていたんだったな。送って行こうか?」

 

 「いえ、今日はもう遅いですし、明日また出直します。」

 

 既に日がかなり傾いていて、西の地平線に太陽が沈みかけ、空が赤く見える。

 

 「そうか。なら、永遠亭まで送っていくよ。場所ならわかるしな。」

 

 「いえ、鈴仙さんと里まで来たので、合流したいと思います。待たせてると思いますので。」

 

 「なら、また来るといいよ。君と同じくらいの子どももいっぱいいるからね。」

 

 「・・・もう、勉強は死ぬほどしましたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 寺子屋からの帰り道 

 

 あの後、鈴仙と合流するのにかなり時間がかかったのび太であった。鈴仙ものび太も里中を走り回って入れ違いになることがあったからである。

 

 「でも、よかったですよ。日が暮れる前に合流できまして。」

 

 「はい。ですが、僕も人里に行けてよかったです。明日も薬を売りに行くのを手伝いますよ。」

 

 そんなことを話しながら帰り道を歩いていたが、どうも見られてている気がする。そして前には、土を掘り返したような痕があった。そこまで時間が立ってないようだ。

 

 「鈴仙さん。ちょっと待ってください。」

 

 「え?どうしたんですか?」

 

 のび太はそういって鈴仙を止めると、近くに落ちていた石を前に投げる。すると、石が落ちた地点の地面が崩れ落ちる。

 

 「こ・・・これは・・・!?」

 

 「誰かが仕掛けた落とし穴でしょうね。そして、これを作った人は、おそらくあそこに隠れています。」

 

 のび太がすぐそばの茂みを指さしながら言った。確かに少し茂みが動いている。

 

 「今朝の子だろう。出てきてくれ。」

 

 すぐに落とし穴を作った者が現れた。鈴仙とは形が少し違うがウサギの耳があり、人参のネックレスを着けている。

 

 「よく気づいたね。人間なのに。」

 

 「そっちこそ、見つけてくれってくらいに気配を隠していなかったじゃないか。」

 

 「ちょっとてゐ!!さっきの事、忘れたわけじゃないでしょうね!?」

 

 鈴仙が今にもてゐに飛びかかろうとしているようだった。

 

 「まあまあ、落ち着きなよ鈴仙。」

 

 「何度も何度も、落とし穴に落とされれば、こうもなるでしょうね。」

 

 今まで何度落とし穴に落とされたのか、怒りが今にも溢れそうである。

 

 「てゐ!!今日と言う今日は覚悟しなさい。捕まえてウサギ鍋よ!!」

 

 「あはは。そう簡単に捕まるもんか~」

 

 捨てぜりふを吐いて一目散に走り出すてゐ。鈴仙もそれを追いかけようとするが、のび太がそれを止める。

 

 「追う必要はありませんよ。」

 

 「えっ?」

 

 間もなく、前を走っていたてゐが突然消える。鈴仙が驚いててゐがいた場所に駆け寄ると、てゐは落とし穴に落ちていた。頭を打って気を失っている。

 

 「足元注意ですね。」

 

 のび太はてゐが他にも落とし穴を作っていた事を知っていた。場所も知っていたので、後はてゐの注意を自分や鈴仙に向けさせるだけである。そのためにてゐを煽ったのである。

 

 「年貢の納め時よ。てゐ。」

 

 鈴仙がてゐの足を掴んで引っ張り上げる。この後、てゐがどのような目にあったのかは、語るまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 後日

 

 のび太は再び人里を訪れていた。もちろん、稗田邸にあるという幻想郷縁起を見せてもらうためである。先日、慧音から人里の地図をもらったため、今度は迷う心配はないだろう。

 

 しばらくして、慧音の寺子屋の前を通りかかる。今日は子ども達の元気な声が聞こえてくる。授業が終わったのだろう。子どもたちが寺子屋から出てくる。中には羽などが生えた子どももいる。妖怪や妖精も生徒なのだろう。

 

 「そうだ。この前のお礼もしておかないとな。」

 

 のび太は稗田邸を後回しにして寺子屋に向かった。稗田邸に行ってもアポをとっていないので、門前払いされる可能性が高かったからである。そして、寺子屋の門をくぐり、中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 中に入って教室に向かうと慧音がいた。

 

 「お邪魔します。」

 

 教室に入ると慧音がのび太に気がついた。

 

 「おお、君か。よく来てくれた。」

 

 慧音ものび太を歓迎してくれた。のび太の目に慧音が先程まで見ていた紙が映った。

 

 「先生。それは・・・」

 

 「これか?これはさっき子ども達が解いたテストの答案だよ。」

 

 慧音にテスト答案を見せてもらった。幻想郷が今の形になった頃から今までの歴史のテストのようだ。できはあまりよくなく、中には0点もあった。

 

 「実はな、一つ困った事があってな。」

 

 「え?何ですか?」

 

 テストを机の上に置くと、慧音の方を向く。

 

 「子どもたちがあまり授業を集中して聞いてくれないんだ。原因はわかっているのだが・・・」

 

 「なるほど・・・で、その原因とは?」

 

 「多分私の授業がつまらないのだろう。どうしても授業内容が偏ってしまうからな。」

 

 話を聞くと、授業のほとんどが歴史や国語などの文系の教科しかないようだ。原因として、慧音一人しか教師をできる者がいないそうだ。

 

 「誰か適役はいないだろうか・・・」

 

 慧音はそう言っているが、さっきから慧音の視線がのび太に向いている。

 

 「そういえば、君は外の世界から来たんだったな・・・どうだ?」

 

 「え?僕ですか?時間ならたっぷりありますけど、人に教える自信はありませんよ。」

 

 「大丈夫だよ。外の世界の事を子どもたちに話してやってくれないか?」

 

 後日、寺子屋は大きく変わった。




第3話投稿しました。

バイオの小説なのに、『なんで戦闘シーンないんだ?さっさと戦闘シーン書け』って言われるかもしれないが、断る!! なんにしても、下ごしらえってのは大切なんだよ。だからといって全くないってわけでもないので、ゆっくり待っていてね。

最後に感想を書いていただいた、ホーシーさん・未奈兎さん・黒狼さん
ありがとうございました。この場でお礼申し上げます。

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