新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

27 / 31
長いようで短い物語に終止符が打たれた。


最終回

 街から脱出した後すぐに紫や永琳達に保護されたのび太達は永遠亭の病室のベットの上で治療を受けた。

 

 巨大蜘蛛から受けた体当たりによって体の一部の骨にヒビが入ったりし、体に刺さった針は三本、内一本は少し横にずれれば心臓を貫いていたらしい。ポスタルから受けたダメージは思いの外大きく、少なくとも一ヶ月の間は絶対安静と診断された。

 

 鈴仙はのび太に比べれば軽傷なのだが、妖力を限界を超えて使ったのと、脳に大きな影響を与えるシステムを使ったため、有無を言わずに安静を言い渡された。

 

 しかし、まだ最後の仕事が残っていた。地獄と化したあの街を完全に消滅させることだ。未だに色褪せない少年時代の思い出ごと焼いて消滅させることには流石に心が痛むが、これはのび太自身も仕方ないと割り切っていた。

 

 無くなった街はまた直せばいい。T-ウイルスによって汚染され、住む人が一人足りともいなくなり、ゾンビやB.O.Wが彷徨うあの街はもはや幻想郷にとって害悪な物でしかない。

 

 本当は実際に被害が出る前に街を焼却処分したいのだが、現地に向かおうとすると、絶対安静と診断した永琳がそれを許さなかった。

 

 一度街がどうなっているかが気になって、病室から抜け出そうとしたことがあるが、その時は後一歩の所で永琳に発見され、病室に連れ戻された挙句、ベットに完全に固定されてしまい、動くに動けない状況になってしまった。

 

 永琳は『今のうちに今後どうするか考えておきなさい。』とのび太に言った。これはのび太にとっては簡単な問題ではなかった。

 

 のび太の最終目的、それは誤った未来を滅ぼし、本当の22世紀をこの世に蘇らせることだ。だがのび太はこの幻想郷に長く居過ぎた。長く居たことで生じた人との友好関係や慣れ親しんだ環境を全て捨ててまでこの幻想郷を離れる決断が出来る程、のび太は決意を持ち合わせていなかった。

 

 「さて、どうしたものか・・・」

 

 「何か考え事ですか?」

 

 ひと通りの治療を受け、直接受けたダメージも少なかった鈴仙がいつの間にかのび太が括りつけられているベットの横に立っていた。まだ体中の包帯や絆創膏などが目立つが、こうして向い合って話している限り、殆どの怪我は治っていると思う。

 

 「何か手伝えることがありましたら、手伝いますよ。」

 

 「じゃあこのロープを解いてください。」

 

 のび太は自分の体を縛っているロープを指さして、自分を自由にしてくれるように頼む。

 

 「それだけは無理ですね。諦めてください。」

 

 頼みの綱である鈴仙があっさり断った。それだけ永琳がしていることを信用しているのか、はたまた怒った永琳が恐ろしくていくらのび太の頼みでもロープを外すことが出来ないのかはわからない。

 

 「仕方ない・・・自分で外しますよ。」

 

 のび太がロープに手をかけた瞬間、のび太の頭のすぐ横に矢が突き刺さった。のび太の頭に触れるかどうかくらいの位置に刺さった矢が、のび太の注意をロープから矢に向けさせた。

 

 のび太は矢羽に結ばれた紙に気が付き確認する。そこには『絶対安静、動くな』と書かれていた。矢が飛んできたと思われる方向に永琳の姿はない。おそらく永琳は自らが放った矢を自由にコントロールすることができ、それを使って医務室からこの病室まで矢を操作してのび太に警告文を送ったのだろう。

 

 鈴仙が永琳を尊敬しつつも畏怖している理由が分かった気がする。彼女が出している余裕は決して不老不死による物だけではない。少なくともこの幻想郷にいる中の誰にも負けない程の自信を持っているからだろう。

 

 (あの人みたいな超人があの22世紀に居たとしたら・・・ゾッとするな。)

 

 少なくとも敵じゃなくてよかった。内心そう思うのび太がいた。

 

 ベットの上で寝ていることで余計な事を考えないためか、永琳の言っていた言葉が頭の中で何度も再生された。

 

 (今後どうするか・・・か。)

 

 永琳が言っていることはおそらく一日や一週間程度のことではない。一生の運命に関わることだろう。

 

 幻想郷に残って科学や常識から遠く離れた生活を送るか、幻想郷の外に出て昔のように暮らすか、そのどちらかを選べということだろう。だが今ののび太が外に出たとしても、外はすすきヶ原が幻想入りしたことから推測して、のび太が子どもだった頃から10年以上の時間が経っているだろう。

 

 もちろんかつての仲間達は大人になっているだろう。そしてその隣には既にコールドスリープで22世紀に向かっている自分自身がいるはずだ。22世紀がどうなっているかも知らずに。

 

 もちろん外に出た方が常識から言って過ごしやすいかもしれない。だが仲間達は大人、自分は子どもの状態だ。しかも未来を変えることが出来ていないのだ。このまま会いに行っても迷惑をかけるだけだし、何よりも会わせる顔がない。

 

 (やはり僕にはここに残る選択肢しかないのか・・・)

 

 『幻想郷は入るものを拒まず、出るものを拒む。』いつか、八雲紫がのび太の前で零した一言だ。始めはその意味がわからなかったのび太だったが、こうして考えてみるとその言葉の意味が嫌という程わかった。

 

 「まぁこれからゆっくり考えればいいか。若い者の特権ってわけかな。」

 

 歳を取った頃には無かった余裕を今ののび太は持っていた。その顔には決して動揺や苦しみはなく、むしろ清々しさを感じた。のび太はその顔でどこか遠い場所を窓から見ていた。それがどこかはのび太にしかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のび太よりも数日早く退院が決まったプリズムリバー三姉妹が恩人であるのび太と鈴仙の前に立って深々と頭を下げて感謝の念を示した。

 

 「この度は私達を助けてくださってありがとうございます。」

 

 長女のルナサも噛まれた箇所は傷跡が残らず綺麗に治ったそうだ。

 

 「別に気にしなくていいですよ。」

 

 救助した当初は迫り来るゾンビと死の恐怖に怯えている様子が見られたが、今向き合っている限りそんな様子は見られない。

 

 「助けて頂いたお礼に、何かお手伝いしたいのですが・・・」

 

 「なら、このロープを・・・」

 

 のび太は最後まで言い切る前に、自分に向けられた殺意に気が付きそれ以上言うのをやめた。

 

 「・・・やっぱり結構です。」

 

 突然顔から冷や汗が出てきた。その様子を見て三姉妹は何事かと戸惑う。

 

 「とにかく無事で良かったですね。お大事に。」

 

 「それではこれで失礼します。」

 

 最後にもう一度お辞儀をして三姉妹は部屋から立ち去った。先にメルランとリリカが出て行く。

 

 「・・・一つ聞きたい。」

 

 のび太は最後に部屋から出ようとしたルナサを引き止める。ルナサが立ち止まったことに気が付かず、妹二人は歩いていった。

 

 「何ですか?」

 

 のび太は少し間を開けて慎重に言葉を選んだ。それだけ重要なことだからだ。

 

 「貴方を襲った奴を見てどう思った?」

 

 「どうって言われても・・・」

 

 ルナサはそれから少し考えてから答えを出した。

 

 「私にはあの人達が何故か助けを求めているように見えました。」

 

 ルナサは明らかに人には見えないゾンビを『人』と言った。

 

 「貴方を襲った奴も元は僕らと同じ人間だったんですよ。」

 

 「ええ。」

 

 ルナサもある程度はT-ウイルスについて聞かされて知っているのか、然程驚きもしなかった。

 

 「そういえば、ルナサさん達って楽器の演奏が得意なんですよね?」

 

 「そうですよ。」

 

 「なら今度開かれる宴会で一曲鎮魂歌をお願い出来ませんか?」

 

 「レクイレムですか?」

 

 「あの街で死んだ人を弔うってことでお願いしたい。」

 

 「わかりました。」

 

 「それが終わったら、一杯奢りますよ。」

 

 ルナサはあの地獄であったのび太と、今こうして向き合っているのび太とはまるっきり違っていて驚いた。

 

 始めて会った時は見た目に似合わず行動力がある勇敢な男だと思ったが、実際に話してみると、優しくて自分を助けてくれた時のような覇気は見られない。

 

 「では三人でご馳走になりますね。」

 

 「ははは。じゃあ頼むよ。」

 

 ルナサは一礼して先に立ち去った二人の後を追いかけていった。

 

 「・・・ここに残るべきなのだろうか・・・」

 

 のび太は人生で数回訪れるかどうかともいうべき問題の前で答えを出せずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから一ヶ月の月日が経った。のび太の体も問題なく治り、いよいよすすきヶ原の滅菌作戦が行われようとしていた。これに立ち会ったのはのび太と鈴仙、永琳、紫、霊夢と灼熱地獄の管理を任されている地霊殿の住民の一部だけである。

 

 実際街を小さくして運んで灼熱地獄という名のゴミ箱に放り込むだけなのだから、見ていても何も面白くないだろう。

 

 それに万が一T-ウイルスが漏れていた場合を見越して余計な感染者を増やすわけにも行かないので、野次馬が居ても困るだけだ。

 

 のび太はすすきヶ原の自分の家にあったスペアポケットからスモールライトを取り出し、それを街の上空から街全体に光が当たるようにしながら光を当てた。結界越しでもスモールライトは問題なく作用し、街はみるみるうちに小さくなり、最後には何十分の一のサイズの模型と同じくらいの大きさまで小さくなった。

 

 周りから驚きの声が上がるが、そんな事を気にしている余裕はなく、作業は迅速に行われる。結界によって常に隔離されながら街は地底へと運ばれた。

 

 といっても正規のルートではなく、紫のスキマによって直接地霊殿に移動した。

 

 東洋的な名前とは裏腹に、西洋風のお屋敷であり、紅魔館に負けず劣らずと言える程立派な屋敷だった。地霊殿の中庭に目的の灼熱地獄跡があった。何でも昔はこの辺りは地獄の繁華街だったが地獄の縮小化により切り捨てられたそうだ。

 

 「では、入れますよ。」

 

 のび太は持っていたミニチュアサイズになった自分の育った街を灼熱地獄に通じている穴に入れる。何者にも遮られることなく落ちていく街は次第に建物が溶け始め、それと同時にウイルスで汚染された街はウイルスが高温によって死滅することで浄化されていく。

 

 やがて一分もしない内に街は黒焦げになるどころか、この世から消滅した。

 

 「そういえば、そのブレスレットはどこから持ってきたんですか?」

 

 のび太が言っているのは、鈴仙がポスタルとの戦いの時に使った対生物用戦闘システムが仕込んであるブレスレットのことだ。のび太が知る限り、幻想入りしたのび太の私物の中にはなかった。

 

 「これですか?紫さんに貰いました。」

 

 鈴仙はあんな事があったにも関わらずまだブレスレットを腕に装備している。

 

 (紫さんか・・・後で説教だな。)

 

 のび太は実験の段階でシステムがロボットに与える稼動部や動力部への負荷が大き過ぎると知っていた。それをある程度装甲で保護出来るロボットではなく、生身の人間が使ったのだ。身体と精神へのダメージによって鈴仙が再起不能の廃人になる可能性も十分考えられた。

 

 紫はおそらくそれを知らなかっただろう。ただ大きな力を与える程度の認識でシステムに手を出したはずだ。何故なら、幻想郷を一番愛している紫が自分で幻想郷を滅ぼすような元凶を自らの手で持ち込むわけがないからだ。一歩間違えていたら幻想郷はT-ウイルスでなく、そこに住む住人の一人に滅ぼされていただろう。

 

 「それもう使わないですよね?」

 

 「え、はい。もう必要ないと思いますが・・・」

 

 「こんな物はこの幻想郷に必要ありませんからね。」

 

 のび太は鈴仙からブレスレットを受け取ると、それを目の前の灼熱地獄へと続く穴へ落とす。

 

 紅いブレスレットは灼熱地獄の炎と融け合い、やがて灼熱地獄の炎と一体となった。

 

 その様子をのび太と鈴仙は黙って見ていた。

 

 「どうして今回の異変を解決したんですか?あのままでも十分だったはずなのに。」

 

 ずっと鈴仙の頭の中に残っていた疑問の解決をのび太に求める。

 

 「・・・僕がまだワイリーだったからですよ。この名前は間違った歴史を正すために作った僕の偽りの名前。僕の街は歴史を変える事件で犠牲になった。」

 

 のび太は全てが終わった今だからこそ言えることを語りだした。

 

 「前までの僕なら、今回の異変で幻想郷がどうなろうとどうでもよかったと思っていたかもれない。戦う意思がなかったからだ。だけど見過ごせなかった。」

 

 「どうしてですか?」

 

 のび太は恥ずかしさを隠しながら鈴仙の問いに答えた。

 

 「それは君が、いや君らが居たからだ。外の世界で起きた事件によって君達が犠牲になることがおかしいと思ったからだ。」

 

 「なんか柄に合わないな。」

 

 のび太は柄にもない言葉を言ったからか、照れ隠しのために鈴仙から視線を外す。

 

 「そんなことないですよ。それにワイリーさんの性格なら、最後はきっと自分で異変を解決しに行ったと思いますよ。」

 

 「あ、バレてましたか。」

 

 「当たり前です。口で誤魔化しても、波長は嘘を付けませんからね。」

 

 鈴仙がのび太の嘘を見抜いた理由は本当は違う。

 

 (なんかワイリーさんの事が全部手に取るように分かる気がする・・・)

 

 鈴仙とのび太はあの街の中で常に二人で行動していた。そのため、お互いが行動する時の予備動作や癖などが把握出来ていたのだろう。

 

 「楽しく会話してるとこ悪いけど、そろそろ帰るわよ。」

 

 万が一ウイルスが結界の外に流出した時に備えていた永琳がのび太達に声をかけてきた。ウイルスが外に漏れるという心配は杞憂に終わった。

 

 「えー。折角地底まで来たんですから旧都で飲んで行きましょうよ。」

 

 旧都は地獄の繁華街の頃からある頃から食べられていた料理や酒は地上にはない珍しい物だ。それを目当てに地底に降りようとする妖怪も多いらしい。

 

 「ダメよ。早く戻らないと姫様やてゐになんて言われるかわからないわよ。それにT-ウイルスの解析もまだ終わってないし。」

 

 永琳はルナサがゾンビに噛まれた際に感染したT-ウイルスを採血することで回収し、培養を行うことでT-ウイルスを利用した治療法の研究のサンプルを手に入れた。のび太は永琳の研究を手伝うことで、とりあえずの目的を見つけた。だがそれも一時的な物でしかないため、いつかは大きな決断をせねばならない時が来るだろう。

 

 「それでワイリー?答えは出たのかしら?」

 

 永琳は前にワイリーに求めた『これからどうするか?』と聞いた時の答えを求めた。もちろんワイリーもそれに相応しい答えを用意していた。

 

 「もうワイリーという名を名乗る必要はなくなりました。これからは『野比のび太』、僕の本当の名前を名乗る事にしました。」

 

 それはワイリーとしてやらなくてはいけない事を終え、これからはその使命に縛られず鈴仙達『家族』と生きていくという意味だった。

 

 だがそれは、元居た時代へ帰る事を諦める事に等しかった。

 

 「ならこれからもよろしくですね。のび太さん。」

 

 鈴仙を先頭にのび太達は帰るべき場所に帰って行った。笑顔で溢れている三人は、周りが見ればそれはもう家族そのものだった。

 

 そんな三人を後ろから見守る者が居た。のび太の過去に秘められた真実を暴き、結果的には幻想郷中を一つにするきっかけを作った人物だ。

 

 「やっと、幸せになれそうね。のび太・・・」

 

 地霊殿の中庭からのび太達の様子を見ていたさとりがそう呟いたのが彼女のペット達に聞こえた。疑問に思ったさとりのペットの一匹である火焔猫燐ことお燐が聞いた。

 

 「さとり様、あの人とあの時よりも前から知り合いだったのですか?」

 

 「違うわ。彼の事を知ったのはあの時が始めてよ。」

 

 あの時とは、のび太が幻想郷の大半から狙われていた時のことである。

 

 「だったら何故、彼を助けたんですか?他人も同然でしたし。」

 

 「困っていたり、助けを求めている人がいたら助けるのが普通でしょう?」

 

 さとりはその理由をゆっくりと語りだした。

 

 「それに、彼の心が闇と孤独で満ちていたからよ。」

 

 「闇・・・ですか?」

 

 さとりはのび太の心を『闇と孤独』で表現した。その理由をお燐が尋ねる。

 

 「彼はねとても長い間戦い続けたのよ。それこそ人間の一生を遥かに超える程の長い時間をね。そんな戦いの中で彼は自分を見失いかけていたわ。孤独のせいで自分を見失なって心を閉ざしてしまった子の事を貴方は良く知っているでしょう?」

 

 「あっ・・・」

 

 「真っ黒な心のままの彼を見ていて彼があの子と同じように見えたの。こいしとね。」

 

 さとりが言っている『あの子』とは、彼女の唯一の血の繋がった家族であり、大切な妹である古明地こいしの事である。ウイルス異変の前から彼女は地上に出かけていた。

 

 「そういえばこいし様、最近ここにお戻りになられていないようですが・・・大丈夫なのでしょうか・・・」

 

 「あの子ならきっと大丈夫よ。いつもちゃんと帰ってくるし。今は時間をかけて見守るしかこいしの心を開く方法はないわ。」

 

 実際こいしの心は閉じた当初よりは良い傾向にあった。その原因はさとりのペットが起こした異変である。それによって霊夢と魔理沙が地底にやって来た事が彼女の心に少し良い影響を与えた。

 

 自分のペットが地上侵略を考えて起こした異変が皮肉にも自分の妹の心を癒やす結果となったのである。

 

 「でもこれで人は簡単なきっかけで変われるってことがわかったでしょう?ということはこいしの心も変われるってことよ。」

 

 「ですね・・・それにはとてつもない時間がかかりそうですが。」

 

 「何年、何十年でもいいわ。例え何百年かかっても待つわ。長い間生きれるのは妖怪の特権よ。」

 

 地霊殿の中庭には三種類の妖怪が立っていた。一人の妖怪少女が再び心を開く事を期待する火車、妹と正面から向き合うと誓った覚り妖怪、二人の話が難し過ぎて内容を理解出来ずに頭の上に疑問符を浮かべる地獄鴉の三人である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博麗神社

 

 地底ですすきヶ原の最後を見届けて帰ってきた霊夢と紫の二人が縁側でお茶を飲んで一息ついていた。

 

 「それにしても、取り返しのつかないことになる前に異変に解決して良かったわねー。」

 

 「・・・私って今回異変解決に貢献出来たのかしら・・・」

 

 紫は一仕事終わって息を抜いているが、霊夢は今回の異変での自分の仕事に納得出来なかった。

 

 「何言ってるのよ。貴方が結界はらなきゃT-ウイルスが漏れてたでしょ?」

 

 「それだけでしょ。直接解決したわけではないわ。」

 

 霊夢は異変を解決する博麗の巫女としての自信をなくしかけていた。

 

 「霊夢、自分の力に不満があるなら強くなりなさい。修行しない者が活躍出来る程今回の異変は甘くなかったってことよ。」

 

 紫は歴代の博麗の巫女を見守って来た者としての意見を霊夢に言う。

 

 「そうね・・・少しずつ修行する事にするわ・・・」

 

 「でも彼みたいになりたいなんて思わないようにね。貴方と彼とじゃ役目が違うわ。」

 

 「役目ねぇ・・・」

 

 「今回貴方が活躍出来なかったのは今回の異変が貴方の能力では不向きだったからよ。代わりに彼の能力が今回の異変解決に向いていただけよ。」

 

 「みたいね・・・」

 

 霊夢は新たな決意を胸に更に強くなると誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから更に月日が経った。のび太は永琳や鈴仙の仕事を手伝いながら自分は趣味で里の人達が持ってきた機械の修理を殆どタダで請け負っていた。

 

 金を稼ぐ事が目的ではないので、のび太も暇になることがないので満足していた。

 

 T-ウイルスを使った治療法も確立したため、もしも事故や生まれつきの障害がある者もこれで治療が出来るだろう。

 

 のび太は元の世界に戻れなかったものの、それに対して不満などは一切なかった。むしろこんな運命に感謝すらしていた。

 

 幻想郷での生活は、元居た世界に突然やって来たドラえもんと共に過ごした非日常の時間に似ていたからだ。

 

 (さて、明日はどんな不思議な事が起きるのだろう。)

 

 その好奇心に満ちた目は老いるまで生きた老人の目ではなく、全てを貪欲に吸収しようとする子どもの目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、稗田家が管理する幻想郷縁起にT-ウイルスの異変が書き記された。そこには異変の事を外の世界で起きた犯人のいない始めての異変として記されると共に、解決した人物に博麗の巫女の名前ではなく、月から来た玉兎の名と外の世界の科学者の名が書き記されたそうだ。




二月に一話を投稿したこの小説もいよいよ最終話を迎えました。

UAは20000人を突破し、お気に入り登録者は100人以上、評価も高いものを頂きました。

名残惜しいですが、皆さんとお別れする時が来たみたいです。

次回作は東方✕DBということになりました。ガンダムで書きたかったよ

チクショウメ!!

次回作の投稿は未定です。色々と忙しいというのもありますが、実際は別の理由があります。

それではこの物語に幕を閉じる時が来たみたいです。

皆さんお元気で。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。