新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~   作:たい焼き

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次にお前らは『投稿早すぎないか!?』という。


すすきヶ原攻略戦 其の3

 その後、鈴仙達ものび太達も無事に保健室に辿り着いた。

 

 三人とも酷く疲れていたため保健室のベッドに寝かせた。ルナサも感染の兆候が見られず、デイライトもしっかりと効いたようで安心した。

 

 外と連絡して紫が応答するまでの間、のび太達が束の間の休息が与えられた。

 

 感染してしまったルナサに付きっきりで看病していた時の鈴仙の目が妙に冷たくて寒気がした。

 

 その後一時間程で寝ていた紫が三姉妹をスキマでこの世界から脱出させた。大妖怪になると寝ないと体を維持するのが大変だとかなんとか言っていたが、とにかく三姉妹をここから脱出させることに成功して一先ず安全と言ったところだ。

 

 その後学校内をひと通り探索し、生存者の有無の確認と警察が残した武器弾薬の補充を行い、いよいよ研究所に入るために学校に付けられていたエレベーターに向かった。

 

 学校の北に位置する棟の最上階まで来たのび太達だが、何かの気配に気が付き、階段を上がりきらずにその場に伏せる。

 

 のび太が伏せる合図にすぐに反応した鈴仙がのび太が警戒している存在の姿を捉えた。

 

 カエルにもトカゲにも似ている姿で二足歩行を行い、人の体を簡単に斬り裂けそうな鋭い爪を持っていた。

 

 「あれが外の世界で作られていたB.O.W、の内の一体、ハンターです。」

 

 対象の特徴を説明するのび太の声が小声で聞こえてきた。

 

 (あれが・・・生物兵器・・・)

 

 鈴仙が廊下を小さな群れでまとまって歩くハンターの実物を見るたびに外の世界の人間がどれだけ恐ろしい事をしていたのかが分かった。

 

 (あの生き物一体を作り出すために、どれだけの災厄をつめこんだって言うの?)

 

 それは考えるだけでも恐ろしくなった。やがて鈴仙はそれを考えることをやめ、目の前に迫っている脅威をどうやって取り除くかという問題だけに集中する。

 

 「あいつらの特徴とか弱点って何かあるんですか?さっさと排除しましょうよ。」

 

 「落ち着いてください。何もまともに戦う必要はないですよ。」

 

 目の前の敵を排除しようと気が昂ぶっている鈴仙をのび太が宥める。

 

 のび太は廊下にいるハンターの数と位置を確認する。

 

 「ハンドガンの弾なら数発耐えられる硬い皮膚と身体能力を持っているので、正面からの戦闘は出来るだけ避けてください。」

 

 「分かったわ。」

 

 のび太達はゆっくりと、足音を立てずに今まで使っていないデザートイーグルを抜きながらハンター達に接近する。

 

 ハンターの一体が異常に気がついて後ろを振り向いた時は既にのび太がデザートイーグルをハンターの目の前に置いていた。

 

 ハンターが自慢のスピードでのび太の首を掻っ切るよりものび太がデザートイーグルの引き金を引く方が早かった。

 

 デザートイーグルの.50AE弾はハンターの堅牢な皮膚を貫くには十分過ぎた。大量の血を吹き出しながら吹き飛んだ。

 

 「ぐっ・・・こいつは強力過ぎる・・・」

 

 やはり慣れないとデザートイーグルを連射することは難しい。のび太が撃った際の反動で硬直している隙に他のハンターがのび太の姿を視認し、数で取り囲む。

 

 その内の一体がのび太の首筋目掛けて飛びかかるが、横からの正確に頭を撃ち抜いた狙撃によって首を掻っ切る前に吹っ飛び絶命する。

 

 「やっとこれを活かせる時が来たわね。」

 

 鈴仙は背中に背負っていたバレット M82でハンターを次々と狙撃していく。元は戦車の装甲を貫くために開発された対物狙撃銃は、デザートイーグルよりも強力な12.7x99mm NATO弾の徹甲弾を次々とハンターに命中させていく。強力なため急所に当てなくても、再生能力を持たないハンターは一発で再起不能に陥る。

 

 鈴仙の正確な狙撃と強力な弾丸は、一発撃つ度に大きな銃声を響かせながら全てのハンターを蹴散らした。

 

 「よしっと。」

 

 片手で肩にバレットM82を担いだ鈴仙の周りにはいつの間にか体に大きな穴が開いて痙攣しているハンターが数体転がっていた。

 

 (やはりこの状況の中で才能を開花し始めている。)

 

 バイオハザードが起きた現場で生き残った者達はその殆どが天性とも言えるようなサバイバル能力を持っていたという。どんな状況にも冷静に対処し、決して動揺しないことがこの街で生き残るために必要な技能なのだ。

 

 (これなら僕も安心して目の前の敵だけに集中出来るな。)

 

 それはのび太が鈴仙に背中を任せられると同時に一人前になったと認めた瞬間である。

 

 「それでは、先に進むとしますか。」

 

 「はい!!」

 

 二人は血と死体で汚れた廊下を尻目に、やや小走りで研究所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒が立ち入り禁止となっている部屋に隠されたエレベーターを使って地下へ降りたのび太達を待っていたのは、研究所を作る時に資材を運び込むために使ったと思われる坑道に足を進めた。

 

 「・・・よし、ここは敵が少ないみたいだ。」

 

 目の前には3体のハンターしかいなかった。今度はのび太達が発見するのと同時にハンター達も気がついたため不意打ちは不可能だ。

 

 ハンター達は一斉にのび太達に襲い掛かるが、襲い掛かるタイミングに若干のズレがあった。

 

 まず一番反応が遅れた個体に鈴仙が対物狙撃銃で胴体に風穴を開けた。群れで行動していても仲間意識がないハンター達は死んだ個体には目もくれずにのび太に襲い掛かった。

 

 のび太はショットガンを構え、ドラムマガジン内の20発を撃ち込んだ。もちろんハンターは全ての弾を耐えることができず力尽きた。

 

 その影から最後のハンターが姿を現し、のび太に襲い掛かる。

 

 のび太は既に片手で構えたグロックのマガジンの中の弾をありったけハンターに撃ち込み怯ませる。動きが止まった所でグロックをデザートイーグルに素早く持ち替え、ハンターの頭に正確に狙いを定めて引き金を引いた。

 

 頭に撃ち込まれてハンターだったがまだ息が残っていた。最後の足掻きとしてよろけながらものび太達の元に向かった。

 

 だが無情にものび太の鈴仙が同時に放った銃弾がハンターの体を貫き、完全に絶命させた。

 

 「・・・行きましょうか。」

 

 「・・・ええ・・・」

 

 のび太も鈴仙も、心で思っていることはおそらく同じなのだろう。だがここで立ち止まるわけにも行かず、二人は後ろを振り向かずに先へと進んで行く。

 

 (次生まれるときはあいつも人間に生まれるといいな。)

 

 のび太は今まで命を奪ってきたB.O.Wに対して哀悼の意を表す。だがそんな暇もなく、今出来ることは先に進むことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 坑道を進んでいると広い空間に出た。そこには何も居なく、静かな空間だった。

 

 「ここにも何も居ませんね。先に進みますか?」

 

 のび太もそのつもりだったが、妙に胸騒ぎがした。何も居ないはずなのに、何かの気配がするからだ。

 

 (何だこの違和感は?周りに何もいないのに気配だけがある。)

 

 前後左右に何もなく、下が地面で何かが動いているような振動もない場合、敵が潜んでいる場所と言えば・・・

 

 「上か!!」

 

 のび太が上を見上げた時には既に前に遭遇した巨大蜘蛛よりも一回り程大きいクモの変異種が口から糸を吐いていた。

 

 一瞬早く気がついたのび太は緊急回避で回避することに成功したが、完全に不意を突かれた鈴仙は回避出来ずに粘着性の高い糸で体を壁に固定され、自力での脱出は不可能に近かった。

 

 「何よこれ!?」

 

 鈴仙はなんとか脱出しようと藻掻くが、どうやっても切れるようには見えない。

 

 蜘蛛の糸の強度は同等の太さの鋼鉄の5倍もあり、鉛筆と同じ太さなら飛行機を止めることも理論上可能と言われている。幾つもの蜘蛛の糸が集まった縄は人がぶら下がっても切れないのだ。

 

 当然妖怪であるといえども、素手で蜘蛛の糸を断ち切るのは不可能だった。

 

 のび太の手を借りなければ脱出は不可能だった。そののび太も今は巨大蜘蛛の相手で忙しい。

 

 「悪いがお前のために割く時間はあまりないんだ。速攻で決めさせて貰うよ。」

 

 のび太は勝負を一瞬で決めるために背中のショットガンを取り出し構えた。マガジンもこれが最後の一つだった。

 

 巨体に似合わぬスピードで真っ直ぐ突っ込んできた巨大蜘蛛に対し、フルオートかつ頭に集中して撃ち込んだ。昆虫特有の黄色の血を撒き散らしながら巨大蜘蛛が叫んだ甲高い声が空間内に響く。確実にダメージを与えているが止まる気配がない。巨大蜘蛛は巨体を活かし、そのままのび太に体当たりを仕掛ける。

 

 「ぐあっ!!」

 

 勢いよく吹っ飛んだのび太は壁に叩きつけられ、意識が飛びかける。ショットガンに入っている弾は残り一発。

 

 のび太がショットガンの最後の弾薬を放つ。それが巨大蜘蛛に止めをさした。力無く倒れた巨大蜘蛛だが、最後の一撃に糸をのび太に向かって吐いた。

 

 のび太はそれをもう必要がなくなったショットガンを盾にして防ぐ。巨大蜘蛛が死んだのを確認すると、ナイフを抜いて鈴仙の元へ向かう。

 

 「お疲れ様です、ワイリーさん。」

 

 のび太が負けていたら間違いなく殺されていたであろう鈴仙からは恐怖を微塵も感じられなかった。のび太が勝つと信じていたのだろう。

 

 「まだまださ。むしろこれからが鬼門ですよ。」

 

 のび太は鈴仙が捕らえられている蜘蛛の糸をナイフで苦労しながらも切り、鈴仙を解放する。真の地獄はここからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに研究所の中に辿り着いた。薬品の匂いと血の匂いが充満していて常人ならば吐き気がしそうなところだが、どちらにも慣れてしまった自分が怖い。

 

 「おっと、やっと研究所の中に入れたみたいだね。」

 

 陰陽玉からにとりの声が聞こえてきた。

 

 「はい。連絡が遅れてしまってすみません。」

 

 「別にいいよ。それより、二人にお客さんだよ。」

 

 そう言われた後に出た人物は二人も知っている人物だった。

 

 「順調かしら?うどんげ、ワイリー。」

 

 「はい。そちらこそ、最高の援軍をありがとうございます。」

 

 鈴仙に今回の作戦を教えたのも、侵入する方法を助言したのも永琳の仕業だ。彼女は鈴仙がのび太の助けになることもわかっていたし、鈴仙も話をした途端に着いていくと言って他の話を聞かなかったからだ。

 

 「それで話は何ですか?これから核を封印してこの施設を完全に消滅させる準備するところですよ。」

 

 「それなんだけど・・・少しでもいいからT-ウイルスについての資料を持って帰って来てきれないかしら?」

 

 永琳からの用件でのび太は絶句した。

 

 「・・・どういうつもりですか?」

 

 のび太は永琳の返答次第では帰還した際に永琳を殺害することもやむを得ないと考えた。不死の人間を殺すことは不可能だが、コンクリートで固めたりして会話も出来ないくらいに封印することで死んでいることと同じ状態にすることは可能である。

 

 「貴方のT-ウイルスの資料を確認したのだけど、上手くいけば医療に転用出来るわよ。」

 

 「・・・もう少し詳しく話して頂けませんか?」

 

 永琳の話によると、T-ウイルスは細胞を活性化させ、変異を起こさせることで身体能力の異常な強化が起きたり、脳が壊死して本能的な行動しかとれなくなる。

 

 ならばそれの内、変異を抑えて細胞の活性化だけを体の中で起こさせた場合、歩けない者が歩けるようになったり、動かせない腕を動かせるようすることが理論上可能だという。

 

 アンブレラ内でも先天性の免疫異常や末期ガンといった難病治療に用いる試みがなされていた。だが投与されて間もないうちこそ劇的な回復がみられるものの、投与が長期に及ぶと肉体の異形化や脳細胞の異常などを引き起こすために試みは頓挫してしまったと、押収された資料の一部に書かれていたと聞いたことがある。

 

 「ですが肝心のT-ウイルスを僕が持ち帰るわけないでしょう?」

 

 「T-ウイルスの方は心配ないわよ。さっき貴方達が救出した騒霊の子が協力するって承諾してくれたわよ。」

 

 使っている物が物だけあって余り関心しないが、それでも幻想郷の人々が平和や技術向上に向けて歩んでいる証である。

 

 「・・・わかりました。可能な限り協力しますよ。」

 

 「そう。助かるわ。」

 

 「ですが、もしT-ウイルスを悪用する人が現れた時は・・・」

 

 「わかってるわ。こちらも出来る限りT-ウイルスの変異性を取り除けるように改良してみるわ。」

 

 そう言い残して陰陽玉の通信が途絶える。音を発しなくなった陰陽玉をしまってのび太は先に進む。

 

 「師匠はなんて言っていたんですか?」

 

 「仕事の依頼ですよ。」

 

 鈴仙がのび太に話の内容を聞いてきたが、のび太は直接答えずに少し誤魔化して答えた。

 

 二人の足は核のある場所ではなくT-ウイルスに関する資料が大量に保存されている資料室へと向いていた。




投稿早すぎないか!?___ハッ!?

ジョジョの第三部にハマり始めているうp主です。承太郎カッコイイよ。主題歌もエンドレスで聴いてるし。

最近何かと忙しくて、中々書く時間がなかったのですが、時間が出来た瞬間コレだよ!!

後、突然だけど次回ラスボス戦な。全裸待機して待ってろよ。

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