アニメで真澄ちゃんがそんなに出てこなくなって寂しくなり書きました(おい、本編更新しろよ)
注意書き
聖星と真澄が恋人
今回はデュエルはなく、短いです
学校も塾もない休日のある日。
舞網市には海が近く、それの関係かは知らないが水族館が存在する。
かつて日本の台所と言われた場所にある水族館よりは小さいが、それでも様々な種類の海の生物達が人々を楽しませている場所だ。
折角恋人同士になったのだからデートくらいしたい、と聖星が言い出して真澄をここまで連れて来た。
「何か海の中を歩いている気分だよな」
「そうね」
最初に通ったのはアーチ状のガラス張りで囲まれた通路だ。
魚達が暮らしている水槽の真ん中に通路をくり抜き、足元以外魚が見えるようなつくりだ。
自由気ままに泳いでいる魚達を見上げながら聖星は真澄の手を引いた。
「そういえばさ、真澄ってこの水族館来た事あるのか?」
「いいえ、水族館よりデュエルばかりしてたわ。
あとは父が仕入れた宝石を眺めていたわね」
「宝石かぁ……
やっぱり触らせてもらってた?」
「何言ってるの、商品よ。
触れないわよ。
……まぁ、誕生日に貰ったものは別ね」
「え、誕生日に宝石買ってもらったのか?」
「えぇ。
ま、安物だけどね」
「ふぅん。
どんな宝石を貰ってたんだ?
やっぱり誕生石とか?」
「誕生石のネックレスにブレスレットとか、そういうのが多いよ。
デュエルの時に邪魔だからそんなにつけたことないけど」
この市で主流のデュエルはスタンディングデュエルだけではなく、アクションデュエルというものがある。
時にはモンスターの攻撃を避けるため、時には相手を妨害するために動き回るデュエルでアクセサリーは邪魔だろう。
刃は竹刀を持ってデュエルを行うが、真澄が非効率な恰好でデュエルをするとは考えにくい。
「(……やっぱり真澄へのプレゼントって奮発した方が良いのか?)」
宝石がついているアクセサリーをプレゼントされている彼女が満足するようなプレゼント。
両親から離れて暮らし、自分が自由に使えるお金が少ない聖星は地味に悩んだ。
それでも他愛もない会話を繰り返す2人は青い世界を自由に動き回る魚達を眺める。
「あ、次はリーフアクアリウムか」
「リーフアクアリウム?
何、それ?」
「珊瑚をメインとした水槽だよ」
「あぁ、珊瑚ね…」
暗い壁に丸い穴が開いており、それを覗けば珊瑚やそこを住みかとしている生き物を見る事が出来る。
赤や緑に桃色。
様々な珊瑚が青白い世界にあり、周りを魚達が泳いでいる。
「やっぱり珊瑚ってカラフルだよな。
そういえば珊瑚って宝石にもなるんだっけ?」
「えぇ。
でも、ここに展示されているのはならないわね」
「そうなのか?」
「えぇ。
宝石になる珊瑚は宝石珊瑚と呼ばれて海岸とかで見られる珊瑚礁とは違うわ。
基本、水深100mまたはそれ以上の水深で生息しているのが宝石になるのよ」
「何で?
違いとかあるのか?」
「さぁ。
それは私も専門外だからね」
「そりゃそうか」
目の前にある色とりどりの珊瑚たちは珊瑚礁を形成する浅海に生息する。
青白い世界故か垢が紫、緑が更に深い青色に見えて神秘的な雰囲気がある。
これらも宝石にしたら綺麗だろうと思いながら別の質問をした。
「宝石になる珊瑚ってさ、何種類くらいあるんだ?」
「日本産で限定すると紅サンゴ、桃色サンゴ、白サンゴかしら。
紅サンゴはその名の通り血のように赤い色をしているわ。
特に赤黒くなればなるほど高級品ね」
「え、普通赤黒い色より紅色の方が綺麗だろ?」
「希少価値って奴よ」
「あ、なるほど。
で、値段は?」
「ピンからキリ。
安くて1000円。
高くて600万円」
「…600…」
聖星は宝石に関してあまり詳しくはないが、600という数字を提示され自分に分かりやすいものに変えて考えた。
600万円あればD-ホイールが一体何台買えるのだろうか。
少なくとも安いものであれば10台以上は余裕の金額だ。
「買う人っているんだ」
「当たり前でしょう。
特に高知県の赤黒い血赤珊瑚は世界最高品質とも呼ばれているから、セレブには人気よ」
「セレブって本当に凄いな」
「でも赤黒い珊瑚はマイナスのエネルギーを引き寄せるから、パワーストーンとしてはお勧めしないわ」
「パワーストーンとしてはどんな効果があるんだ?」
「色々あるけど……
体と心のバランスを保つことが主ね。
ヨーロッパでは年末年始にこの宝石を身に着けると健康でいられる、という言い伝えもあるわ」
「魔除け、みたいな感じか」
「えぇ」
そこから真澄は宝石の組み合わせなどを話し始めた。
ターコイズと組み合わせるのは良いが、エメラルド、ダイヤモンド、ブルーサファイア、キャッツアイと一緒に身に着けてはいけない。
それでも赤と緑の組み合わせの装飾品もあるが、あれは緑色の珊瑚を加工しているとのこと。
「(いや、そもそも何で水族館に来て宝石の話してるんだよ俺達)」
人間は胎児の頃から水と深いかかわりを持ち、海の傍にいると落ち着くという。
だから水族館に来たというのにどうしてこんな会話になった。
自分で突っ込みをいれながら真澄を見下ろしたが、彼女の表情が幾分か生き生きしているため聖星は微笑んだ。
**
「(どうしよう、ギャップ萌えってこういう事だよな……!?)」
今すぐにやけそうな顔を引き締めながら聖星はお土産コーナーでぬいぐるみを見ている真澄を見る。
聖星が持つカゴには抱き枕並みに大きなペンギンやイルカが入っており、彼女の手にはさらに小さいぬいぐるみがある。
真澄は【ジェムナイト】のせいで宝石のイメージが強いが、やはり中学生の女の子。
可愛いぬいぐるみには興味があるという事だ。
「さっきからなに笑ってるのよ」
「真澄が可愛いなぁ、と思って。
やっぱり可愛いものと可愛いものが揃うとさらに可愛いよな」
「貴方、本当ストレートよね」
「そうか?
俺は何を買おうかな……」
流石に抱き枕級のぬいぐるみは気が引ける。
というより、こんなものを買って帰ったら北斗や刃あたりにお腹を抱えて笑われるだろう。
まぁ笑われたら真澄の肩を抱き寄せ、笑顔で「水族館楽しかったぜ。真澄なんて本当目を輝かせて凄く可愛かった」と言うつもりである。
刃はともかく精神的に脆い北斗は膝を抱えていじけるだろう。
「聖星は子供ペンギンが似合うんじゃない?
甘えん坊だし」
「じゃあお揃い買う?」
「どうしてそうなるのよ。
私は親ペンギンを買うわ」
「なんだよ、それ。
お揃いにしようぜ」
目の前にある灰色の子供ペンギンを2つ手に取り、1つを真澄に渡す。
しかし真澄はすぐに戻し、隣にある親ペンギンを掴んだ。
そしれ子供ペンギンに親ペンギンをおしつけ、上目遣いで言う。
「いつも子供のように私に引っ付くじゃない」
「あれは甘えたいんじゃなくて、愛情表現だって」
「今日だって後ろから抱き付いてきたじゃない」
「だから、愛情表現だって」
「そうやって言ってる傍から抱き付くな!」
「ぐっ!?」
鍛えられた彼女の肘打ちが見事に鳩尾に入り、そのままその場に膝を着いてしまう。
そんな彼氏を真澄はため息をついて見下ろし、聖星は涙目で真澄を見上げた。
「…………今のは痛い」
「ば~か」
END