先程まで大騒ぎだった保健室は嘘のように静まりかえっている。
誰も言葉を発することが出来ず、無機質な音を立て、砂嵐しか映し出さないPDAを持つ手は震えていた。
「くそっ!」
「十代!」
誰よりも先に動いた十代は保健室を飛び出し、出た瞬間壁にぶつかりそうになる。
彼はそんなこと気にせず、カミューラの城がある湖まで走り出した。
万丈目と取巻、三沢の3人は彼の後を追う。
明日香も彼ら4人を追おうとしたが、へたり込んでいる翔に視線を移し、どうすれば良いのか考える。
すると、机の上に置きっぱなしにされているクロノス教諭の人形が光り出す。
「な、何!?」
「下がって!」
明日香は思わず後ずさり、鮎川先生は生徒達を守るかのように前に出た。
光が治まると人形だったクロノス教諭が元の姿で座っていた。
「クロノス先生!」
「あれ?
私は一体何をしていたノ~ネ?
確か人形にされ~の、黄色い変な生き物にこちょこちょされ~の……」
頭上に疑問符を浮かべ、普段通りの口調で喋る先生の姿に皆は肩から力を抜く。
そして険しい顔をした鮎川先生が指示を出し始めた。
「いい、皆。
前田君は内線電話で鮫島校長にこの事を伝えて、本土へ救護ヘリの要請を。
天上院さんは私と一緒に薬と包帯類を持って行きましょう。
翔君、貴方はここで休んでいて。
クロノス教諭、翔君をお願いします」
「分かったんだな」
「はい!」
「よ、よく分からないけど、任せるノ~ネ」
実の兄がもしかしたら大怪我、またはそれ以上の事になっているかもしれないのだ。
上手く立ち上がれない翔は隼人とクロノス教諭に任せ、自分達は怪我人を手当てするために湖に走る。
一方、先に湖に向かっている十代は暗闇に包まれる森を走っていた。
「おい、十代!
いい加減に止まれ!」
「何で止まらなきゃいけぇんだよ!
聖星やカイザーが大変なんだぜ!
早く行かねぇと手遅れになっちまうかもしれないだろ!」
そうだ、早く行かなければならない。
あんな崩壊に巻き込まれたらひとたまりもないくらい十代にだって分かる。
とにかく助けないと、今の十代はその気持ちだけで動いていた。
すると森の奥に一筋の光が走った。
「何だ!?」
突然の光に十代は思わず足を止めてしまい、万丈目達もその光を見上げる。
細い光は雷をまといながら太くなり、生き物のようにうねっている。
蛇がとぐろを巻くような動きをしていると思えば、その光は空へ向かって昇っていった。
「何なんだあれは?」
「あれもセブンスターズの力なのか?」
目の前の現象に理解が追いつかない取巻と三沢は呆然としながら隣にいる皆に問いかける。
だが、この場にいる者に明確な返答をする者はいなかった。
光はアカデミア上空に浮かんでいる雲を貫き、周りを赤色に照らしている。
その光は次第に姿を変え、翼のようなものを生やした。
「ドラゴン?」
両翼を広げた光の姿に十代は静かに呟き、そのドラゴンが消えていくのを見ているしか出来ない。
ドラゴンが姿を消すにつれて光もなくなっていき、再び森は暗闇に包まれる。
4人は思わず顔を見合わせたが、十代を筆頭に湖へと足を動かした。
飲み込まれるほど深い闇に惑わされないよう進むと、静かに波打つ湖に辿り着く。
ついさっきまであった城の姿は跡形もなく、この場所は恐ろしいほど静寂しかない。
「おい遊城……
あの城は湖の上に建っていたんだよな?
まさか不動達、湖の中に?」
「っ、くそっ!」
「十代!?」
取巻の言葉に3人の表情はさらに引きつり、十代は勢いよく上着を脱いで湖の中に飛び込んだ。
その姿に万丈目は盛大に舌打ちをして追いかけようとする。
「待て、万丈目!」
「何だ、三沢!
あのバカ、こんな暗闇の中懐中電灯もなしに飛び込んだんだぞ!?
早く追いかけないとあの大バカ野郎まで死ぬぞ!」
「聖星のPDAが繋がった」
「……何?」
「画面には空、そして誰かの手が映っている。
微かだが光もだ。
恐らくこれは俺達の懐中電灯の光だろう」
つまり、誰かがこの近くに倒れているという事だ。
湖の底に沈んでいない人がいる。
「俺と取巻でこの辺りを探す。
万丈目はその懐中電灯で湖の中を照らしてくれ。
頼んだぞ」
「……あぁ」
三沢の言葉に2人は頷き、それぞれ決められた役割を果たす。
万丈目は十代が湖の中で迷わないように懐中電灯で照らし、取巻と三沢は互いに逆方向に誰か倒れていないか探す。
見落としがないよう、光で照らしながら草の根を分けてでも探し出そうとする。
そうしたら、取巻の視界に誰かの手が入った。
手の主に懐中電灯を向けると、行方不明だったIS2の社員だ。
そしてその周りには気を失っている他の社員、聖星、カイザーが倒れていた。
「いたぞ、三沢!
不動達だ!」
「分かった!
万丈目、十代に知らせてくれ!」
「どうやって知らせろっていうんだ!?
あのバカは水の中だぞ!」
「息が苦しくなって浮上したときに伝えれば良い!」
その言葉に万丈目は言葉を詰まらせる。
あの体力バカでもえら呼吸は出来ない、息が苦しくなったら浮上してくるのは当然だ。
どうやら相当焦っているのは自分も同じようで、万丈目は頭が痛むのか手で額を押さえた。
すると湖の中から十代が勢いよく顔を出す。
「十代!」
「何だよ、万丈目?」
「聖星達はあっちにいる!
取巻が見つけた!」
「本当か!?」
万丈目の言葉に十代は急いで陸へ上がり、屈んでいる三沢達の方へ走る。
近寄れば彼らの言葉通り、意識がない男達が何人もそこにいた。
聖星はカイザーの手首を握っており、崩れゆく城の中、必死に掴んだのだろう。
「三沢、聖星達は?」
「大丈夫だ、皆の息はある。
目立った外傷もない。
むしろ無傷と言って良い」
三沢の隣に膝を付いた十代はその言葉にしだいに笑顔になっていった。
力んでいた力も体から抜け、思わず大きく息を吐いてしまう。
それは取巻や万丈目も同じようで、ぎこちないが口角が上がる。
「そっか、無事なんだな、良かった……
って、さみぃ~!」
「……まぁ、まだ寒い時期だしな」
緊張の糸が途切れたためか、十代は大げさに両腕を抱え込む。
確かに冬は過ぎ、春は近いが夜は冷えるものだ。
全身びしょ濡れの十代の髪からは水滴が一定の間隔で落ちていた。
苦笑いしか出来ない三沢に対し、取巻は盛大なため息をついてコートを差し出す。
「とにかく脱げ。
いつまでも濡れた服を着ていると風邪を引くぞ。
ほら、コート貸すから」
「サンキュー、取巻」
彼の言うとおり、体を冷やすわけにはいかない。
十代は取巻のコートを着る前に、濡れている衣服を脱ぎ始めた。
すると背後から誰かが走って近寄ってくる。
「皆、聖星君や丸藤君は見つかった!?」
「「「「あ」」」」
瞬間、空気が凍る。
懐中電灯の光で照らされている皆は逆光で誰が来たのかはっきり分からない。
しかし、微かに見える衣装で女性が2人立っているのは分かった。
そして今十代は上半身裸でズボンを脱ごうとしている瞬間である。
急いで追いかけてきた明日香は目の前の光景を理解した瞬間勢いよく後ろに振り返った。
鮎川先生はとても気まずそうな顔をして恐る恐る尋ねた。
「……十代君、どうして服を脱いでるの?」
「いや、その。
聖星達が湖の中に沈んでいるんじゃないかって思って……
それで、寒かったから……
アハハハハ……」
「そ、そう。
このタオルを使って」
「は、はい……」
十代は鮎川先生と目を合せることが出来ず、大人しくタオルを受け取った。
そして邪魔にならないよう離れた場所に移動する。
三沢達は同情するような眼差しを十代に向けた。
「それで、聖星達は見つかったの?」
「天上院君」
少し耳が赤い明日香は地面に倒れている聖星とカイザーの姿に顔を歪めた。
鮎川先生はすぐに皆の容態を調べだし、小さく息を吐く。
「どうやら無事のようね。
持ってきた薬品が無駄になって良かったわ」
瓦礫の山から彼らを救助し、手当をするかもしれないと思って持ってきた手荷物達。
これらが無駄になって心底ほっとしている。
こういうのは出番がない方が良い。
「それにしてもこの人数じゃあ保健室は使えないわ。
救助ヘリもいつ来るか分からないし……」
「鮎川先生、体育館はどうでしょう。
あそこなら彼らを寝かせる事が出来ます」
三沢の言葉に鮎川先生は大きく頷いた。
これほどのメンバーを1つの寮に寝かせるのは部屋が足りない。
だからといって複数の寮に分けるのは効率が悪すぎる。
自然と選択肢は体育館に絞られる。
彼らを体育館に運ぶため、男性職員に来て貰うよう鮎川先生はPDAを取り出した。
**
鮫島校長は体育館の上から眠っているIS2社の社員達を見下ろす。
難しい顔を浮かべながら両腕を後ろで組み、全員の容態を看ている鮎川先生に声をかけた。
「鮎川先生、皆さんの容態は?」
「はい、ただ気を失っているだけです。
他に異常はありません」
「そうですか。
それは良かった」
その言葉に彼は安堵したようにため息を零す。
ペガサス会長から彼らが行方不明の話を聞き、今後この戦いのどこかで関わってくるとは直感していた。
彼らのことは鮎川先生に任せ、鮫島校長は体育館を後にした。
一方、十代達は聖星の部屋に集まっていた。
「なぁ、皆。
あれは一体、何だったんだろうな」
投げかけられた問いかけに万丈目達は十代に目をやる。
彼が問いかけているのは湖で遭遇した謎の光についてだろう。
だが、勢いよく空へ昇っていく光について、ただの学生である彼らが答えを持っているわけがない。
「ふん、俺が知るか」
「セブンスターズとの戦いに備え、闇のゲームに関する情報を集めてみたが……
あのような光については何一つ情報がなかった」
殆どあったのはダメージが実体化する事や、敗北者の末路についてだ。
デュエル終了後にあのような光が昇った記述などどこにもない。
しかし空へ駆け上がる様子はまるで生き物、例えるならドラゴンのようだった。
「赤いドラゴン、赤い竜……
もしかすると、あれは聖星が言っていた赤き竜なのか?」
「え?」
三沢の言葉に十代達は彼に視線を集める。
「覚えているか、十代、万丈目。
聖星が保健室で語った三幻魔と、三幻魔を封印した星の民の伝説を」
「あぁ、あれか!
星の民とかいう連中が神様を呼んだ話!」
「その話に出てきた竜があのドラゴンだと言うのか?」
「あくまで俺の推測だ。
これに関しては、聖星が目を覚まして話を聞くしかないだろう」
「そうだな」
**
夜が明け、やっと平穏な朝が来た。
カーテン越しに太陽の光が射し、自然と瞼が上がる。
まだ覚醒しきっていない頭は目の前にある赤と白が何か分からず、ゆっくりと手を伸ばす。
目の前にあるそれに触れようとすると、手はあっさりと空を切り、やっとそれがドラゴン達だと理解する。
「【星態龍】に【スターダスト】?」
「もう平気か?」
「平気……?」
眉間に皺を寄せていると思われる彼の言葉に、昨晩のことを思い出す。
布団を放り投げた彼は自分を見下ろす彼らに詰め寄った。
「先輩は!?
皆は!?」
聖星が覚えているのはカミューラが消え、彼女の居城が崩れるところまでだ。
そう、カイザーの手を掴んだ覚えはなく、もしかしたらと最悪な事態を想定する。
【星態龍】は首をゆっくりと縦に振り、短く答えた。
「皆生きている。
怪我もない。
また赤き竜に助けられたようだ」
「赤き竜に?」
「グァア」
同時に頷いた2匹の表情は穏やかで、本当のことだと理解した。
大きく息を吐いた聖星はそのまま背中から倒れ込み、暖かい布団に体を沈める。
自分のせいで闇のデュエルの犠牲になったIS2社の社員達と、彼らのために全てを十代と聖星に託したカイザーが無事だった。
やっと心の緊張がほぐれ、自然と笑みが零れてしまう。
「良かった、本当に良かった」
「カイザーは自室だが、他の皆は体育館にいる。
後で様子を見に行ってやれ」
「うん、そうする」
よく頑張ったというように【星態龍】は赤い尾で聖星の頭を撫でた。
夜行達が行方不明になったと聞いて以降の聖星はどこか気を張りすぎていた。
星竜王にこの世界の戦いを託され、学友がその戦いに巻き込まれてしまう。
さらに友を助けるためとはいえ、シンクロ召喚を使ってしまったせいで見知っている人達が行方不明になる。
緊張状態が続く中、やっと少しだけ力を抜けるようになったのだ。
すると広い部屋に間抜けな音が鳴り響いた。
「…………」
「食堂に行くか?」
「キュ~」
「……行く」
頬を赤らめ、片手で目元を隠した聖星の声はとても小さかった。
***
イエロー寮の生徒達はそれぞれ仲の良い生徒と固まり、それぞれ頼んだ朝食を食べていた。
聖星は三沢と神楽坂達がいないか探してみる。
特に三沢には昨日のことについて色々と聞いておきたい。
きっと冷静で頭の回転の早い彼のことだから、セブンスターズについて進展したことがあったら説明してくれるだろう。
「聖星」
「大地、神楽坂」
背後からかかった声に振り返れば、探していた人物達がいた。
神楽坂は今日の定食を注文済みのようで、暖かい湯気が上がっている定食を持っていた。
美味しそうな匂いに涎が垂れそうになるが、心配そうにしている三沢に笑いかけた。
「目が覚めたかのか、聖星。
体調はどうだ?」
「大丈夫か?
三沢から聞いたぞ」
「あぁ、もう平気。
ほら、ピンピンしてる」
笑いながら自分の肩を回せば、少しだけ三沢の表情がやわらかくなった。
以前星竜王に体を乗っ取られたときは大変だったが、今回は特に後遺症のようなものもない。
とにかく何か食べたくて仕方がないため、神楽坂に場所取りを頼み、三沢と2人で朝食を取りに行った。
「それで大地、俺が勝った後なにかあった?」
「そうだな。
城の崩壊を見て聖星達を助けに行ったとき、赤い光柱が立った」
「赤い光?」
「あぁ」
闇のデュエルを象徴するような重苦しい夜を貫いた光。
轟音と暴風を起こしながら天に昇る姿はまるで意思を持つ生き物のようにも見えた。
目を閉じて昨晩のことを思い出す三沢に、聖星は納得がいったように呟く。
「聖星、君はあれが何か分かっているんじゃないのか?」
「流石は大地。
それの説明は十代達と合流した後で良い?
流石に食堂で話すのはちょっとな」
「もちろん構わない」
三沢は聖星の言葉に首を縦に振り、ゆっくりと後ろに振り向いた。
食堂を利用している生徒達はいつものように過ごしている。
彼らを巻き込まないためにもこの話題は避けた方が良い。
「そういえば聖星、君は神楽坂とデュエルしたのか?」
「あ~、まだしてないなぁ」
「彼なりに改良を重ねている。
興味があれば1度デュエルしてみると良い」
「分かった」
さて、自分は何を食べようか。
少し軽めのサンドイッチでも良いし、神楽坂と同じように定食でも良いだろう。
迷った結果、お手軽なサンドイッチを注文し、神楽坂が待つ席に向かう。
「あれ?」
目立つ髪型を持つ神楽坂の元へ向かうと、見慣れた赤と黒が彼の前に座っていた。
聖星の声に三沢も気がついたのか、そこにいる友人達に首を傾げる。
「十代に万丈目?
何故君達がここに?」
「よっ、三沢。
聖星も平気そうだな」
「俺はこいつに無理矢理連れてこられただけだ。
あと数分で取巻も来る」
欠伸をかみ殺している万丈目は、レッド寮で作られたおにぎりを頬張っている。
普段の彼なら、怒鳴って十代を止めただろう。
それなのにここまで来たのは昨晩のことが気になったからだろう。
しかし、取巻はともかく、十代と万丈目がここにいて、彼らがいないのは少し妙だ。
それは聖星も思った事なのか、十代の前に座った彼は尋ねる。
「十代、翔と隼人は?」
「翔はカイザーのところ。
やっぱり兄ちゃんのことだからな、1番に起きてさっさとブルー寮に行っちまったぜ。
隼人は翔の付き添いさ。
聖星達も後で行くだろう?」
PDA越しに兄が人形にされるところを目の当たりにしたのだ。
いくら怪我がないとはいえ、兄は本当に無事なのか、心配で仕方がないのは当然である。
今頃、目が覚めたカイザーに情けない顔を見せ、大声を上げているだろう。
「うん、後でお邪魔するつもりさ。
でも、その前に体育館に行って良いか?」
「おう」
まずは体育館にいるフランツ達の様子を見て、その後はカイザーのところに行き、十代達に赤き竜について説明をする。
やることが多いなぁとため息をすると、先程三沢と話したことを思いだした。
「そういえば神楽坂、今は何戦何勝したんだ?」
そう、神楽坂のゲームの進行具合だ。
彼に渡したカードの数は23枚。
カミューラが襲撃してくる前には21戦していたから、もう23戦終えていてもおかしくはない。
聖星からの問いかけに神楽坂は実に良い笑顔を浮かべた。
「19戦3敗。
あと1回デュエルすれば不動とのゲームも終わりさ」
どうやら1回デュエルをし、見事白星を挙げたようだ。
この調子なら今日中に最後のデュエルを行い、無事にゲーム終了となるだろう。
さて、聖星が貸しているカード23枚のうち、神楽坂は何を選ぶのだろう。
そう思いながらサンドイッチを飲み込むと、話題の中心である彼は立ち上がった。
「そこでだ、不動。
お前にデュエルを申し込む!」
「え?」
「このゲームの最後の相手は、不動、お前にすると決めていたからな!」
自信満々な笑みでそう宣言した神楽坂は語る。
どれ程強いカードでデッキを組んでも、伝説のデュエリストのデッキを真似ても、どうしても勝てなかった。
しかし、聖星から知らないカードを借り、その中で最高のデッキを組んだことで自分の実力を発揮出来るようになったのだ。
空回りしていた力が、嘘のように歯車が合い、稼働しているといって良い。
「その切っ掛けをくれた不動とデュエルせずにゲームを終わらせるなんて、デュエリストのする事じゃないだろ!」
以前の神楽坂ではみることの出来なかった真っ直ぐな瞳。
闘気に満ちあふれるその言葉は、デュエリストの本能を刺激するには充分すぎた。
自然と口角が上がった聖星は大きく頷いた。
「よし、その挑戦受けて立つ」
「そうこないとな!」
目の前で交されたデュエルの約束に、万丈目は小さくため息をついた。
同時に隣に座っている十代に違和感を覚える。
普段の彼なら犬のようにはしゃいで彼らのデュエルを楽しみだと騒ぐだろう。
だが、今の彼は腕を組んで「面白そうだな」と静かに笑っているのだ。
不気味なものを見るような目で、万丈目は十代を凝視した。
それは彼らも同じようで、【おジャマ・イエロー】と【ハネクリボー】も心配そうに顔を出す。
「あら~
彼ぇ、ちょっと凹み気味?」
「クリ~……」
**
体育館に寄った結果、夜行達は誰1人目を覚ましていなかった。
一瞬だけ闇のデュエルの後遺症かと思ったが、【星態龍】と【スターダスト】曰く、ただ疲れて眠っているだけだという。
それに対し、翔に看病されているカイザーは大分回復したようで、聖星達に笑顔を見せてくれた。
「「デュエル!!」」
互いの声と共に2人のライフが表示される。
先攻を得たのは神楽坂だ。
「俺の先攻だ、ドロー!」
ゆっくりとカードを引いた神楽坂は聖星を見る。
聖星から提示されたルール上、基本的に魔法・罠カードは神楽坂が自由にデッキに入れることが出来る。
もちろん、今回のデッキに入っているカードは聖星が知らないカードも入っているのだ。
そのカードを発動したときに目の前の彼がどれほど驚くか楽しみである。
「俺は手札から【暗黒界の取引】を発動!
互いにデッキから1枚ドローし、1枚捨てる。
俺が捨てるのは【暗黒界の尖兵ベージ】だ!
来い、【ベージ】!」
「はぁぁ…」
場に輝く光があふれ出し、その中から1本の槍を構えた兵士が現れた。
【ベージ】はカード効果で捨てられたとき、場に特殊召喚出来る効果を持つ。
1番手に選ばれた【ベージ】はいつでも駆け出せるよう、腰を低く落とす。
「さらに【プリーステス・オーム】を攻撃表示で召喚!」
呼ばれた女性の名に、【ベージ】の目が点になる。
そして恐る恐る横に振り向くと、彼の隣に黒い魔方陣が描かれ、紫色の光があふれ出す。
邪悪さをまとった光の中から現れたのは鞭を持つ女性モンスターだ。
「ふんっ」
「【プリーステス・オーム】……
そういえば入れてたな」
彼女は妖しい笑みを浮かべながら独特な形の鞭を地面に叩き付けた。
乾いた音がデュエル場に木霊し、隣に立っている【ベージ】の士気がみるみるうちに下がっていく。
理由を知っている者からしてみれば納得する反応だ。
しかし、それを知らない万丈目は腕を組みながら首を傾げる。
「何だ、あのカードは。
俺とデュエルしたときには使わなかったな。
どういう効果だ?」
「え~っと、確か……」
「【プリーステス・オーム】。
彼女の効果は、自分の場の闇属性モンスターを生贄に捧げ、相手に800ポイントのダメージを与えること。
神楽坂の【暗黒界】デッキはモンスターの特殊召喚に長けている。
早い内に手を打たないとすぐにライフがなくなるな」
「そうそう、それ」
自分の記憶の糸をたぐり寄せる十代に対し、三沢はすぐに効果について解説する。
「1ターン目にバトルは行えないが、800ポイントのダメージを受けてもらうぞ、不動!」
対戦相手である聖星を指さしながら、神楽坂は彼女の効果を発動する。
もちろん生贄として選ばれる闇属性モンスターは1体のみ。
【プリーステス・オーム】は再び地面を叩き、隣で凹んでいる【ベージ】に微笑む。
氷のような笑みに、逆らえないと判断した彼は聖星に突撃した。
「え?」
槍を構えながら向かってくるモンスターは紫色の光弾になり、聖星の体を貫く。
「ぐっ!」
体に衝撃が走ると同時にライフが3200まで削られた。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」
自信ありげに宣言された言葉に聖星は静かに息を吐く。
三沢のいうとおり、1ターンに何回でも使用できるダメージ効果は厄介としかいいようがない。
これは早く退場して貰わなければ、あっさり負けてしまうだろう。
「俺のターン。
手札から【天使の施し】を発動。
デッキからカードを3枚ドローし、2枚捨てる」
引いたカードはとある【魔導書】とモンスターカード。
特にモンスターカードの方は墓地に居て真価を発揮する。
デッキ圧縮・墓地肥やし・手札交換を全て出来てしまうのは本当にありがたいものだ。
「俺は【名推理】を発動。
さぁ、神楽坂。
レベルを選んでくれ」
【名推理】、このカードは相手がモンスターのレベルを宣言する。
その後、聖星は通常召喚可能なモンスターが出てくる限りデッキからカードを捲るのだ。
モンスターのレベルが宣言通りなら、捲ったカード全てを墓地に送り、異なればそのモンスターを特殊召喚する。
「不動、真の狙いは墓地に【魔導書】を落とすことか?」
「さぁ、どうだろうな。
落ちすぎて使える【魔導書】がデッキからなくなるリスクもあるぜ」
穏やかな笑みを見せる友人に、神楽坂は考えを巡らせる。
聖星はデュエル毎にデッキのモンスターを変える。
そして今は2ターン目であり、デッキを構成しているモンスターが何か分からない。
「それなら俺はレベル7を宣言する!」
「分かった、7だな」
宣言された数字に、神楽坂は【魔導法士ジュノン】を警戒したのだろうか。
それとも入学試験に使用した【ブラック・マジシャン】か。
「1枚目、【魔導書院ラメイソン】。
2枚目、【神の宣告】。
3枚目、【ルドラの魔導書】」
ゆっくりと墓地に送られていくカードの名に、神楽坂は安堵する。
多少【魔導書】は落ちてしまったが、最強のカウンター罠が墓地に落ちるのは嬉しい誤算だ。
「4枚目、【魔導弓士ラムール】。
レベルは3だ」
「くっ!」
「【魔導弓士ラムール】を攻撃表示で特殊召喚。
頼んだ、【ラムール】」
召喚されたのはゴーグルを身につけ、弓だけを持つ魔法使い族。
その攻撃力は600と、1700である【プリーステス・オーム】に比べてとても低い。
そんなモンスターを攻撃表示に召喚したのだ、きっと何かある。
「そして【ラムール】の効果発動。
手札の【グリモの魔導書】を見せ、【魔導戦士フォルス】を特殊召喚する」
「はっ!」
勇ましいかけ声と共に現れたのは赤をイメージとした魔法使い。
彼女が着地した瞬間に砂埃が舞い、手に持つ戦斧を肩に乗せる。
巨大な戦斧は獅子の頭を象ったもので、彼女に好戦的なイメージを与える。
「そして【グリモ】の効果でデッキから【トールの魔導書】をサーチ。
さらに【ルドラの魔導書】をデッキに戻し、【フォルス】の効果発動」
【フォルス】の周りに浮かんでいる文字が1つに集約し、それが1冊の魔導書となる。
それは勝手に開き、綴られている言葉が光り出した。
同時に【フォルス】が赤い光に包まれ、攻撃力が1500から2000に上昇する。
「攻撃力が500上がった?」
「あれ、万丈目って【フォルス】見るの初めてか?
【フォルス】は墓地の【魔導書】をデッキに戻すことで攻撃力を500ポイントアップするんだぜ」
十代は入学当初から聖星とつるんでおり、三沢は聖星と同じ寮のため、何度も彼のデュエルを見ている。
そんな2人に対し、万丈目が聖星とまともな接点を持ち始めたのは最近だ。
知らなくても当然だろう。
「しかも彼女の効果は魔法使い族になら誰にでも使える。
墓地から【魔導書】を回収する効果も、中盤以降に展開力が下がるあのデッキにとっては有益だ」
「三沢ってさ、解説役とかアカデミアの先生とか、そっちの方も似合いそうだよな」
「そうか?」
「あぁ」
友人からのさりげない言葉に三沢は不思議そうな顔をする。
十代は本当にそう思っているようで、微笑みながら頷いた。
「バトル。
【フォルス】で【プリーステス・オーム】に攻撃」
戦斧を両手で持った【フォルス】は勢いよく飛び上がり、【プリーステス・オーム】に向かって斧を振り下ろす。
【プリーステス・オーム】は手を伸ばして結界を張り、彼女の攻撃を凌ごうとした。
斧と結界がぶつかった瞬間に火花が散り、【フォルス】は雄叫びを上げながらもう1度斧を振り上げる。
「はぁあああ!!」
何度も激しく斧で攻撃を加え、結界を吹き飛ばす。
その衝撃に【プリーステス・オーム】の周りの砂埃が舞い上がる。
瞬間、一筋の閃光が輝いた。
気がついたときには彼女は一刀両断され、粉々に砕け散る。
「よし」
これで厄介なバーンモンスターを排除できた。
素直に喜んでいると、神楽坂の場にある違和感を覚えた。
結界の欠片と共に舞い上がっている砂埃の色が変色し、煙へと変化していく。
「……え?」
煙は【プリーステス・オーム】がいた場所に集まり、煙の奥から何かが向かってくる。
一体何が特殊召喚されたのか、そう身構えていると鉄の塊が現れる。
モンスターとは思えない無機物の姿に、三沢は目を見開いた。
「あれは、まさか【タイム・マシン】!?」
その言葉に聖星は首を捻る。
三沢が驚いているという事は、かなり厄介な効果を持っているという事だろう。
しかし名前を聞いてもどのようなカードか思い出せない。
聖星の反応は想定内だったのか、神楽坂は不敵な笑みを浮かべる。
「悪いな、不動。
俺はリバースカード【時の機械-タイム・マシン-】を発動させて貰った。
このカードの効果で【プリーステス・オーム】は俺の場に戻ってくるぜ!」
【タイム・マシン】の扉が開き、中から先程砕け散ったモンスターが姿を現す。
せっかく場から退場して貰ったというのに、再び舞台に上がった同族に【フォルス】は「面白い」とでも言いたげに笑った。
「うわ、場に残った……
仕方ない、カードを2枚伏せて、俺はターンエンド」
「俺のターン、ドロー」
神楽坂のライフは3700、それに対して聖星は3200。
このターンでどこまで聖星を追い詰めることが出来るだろうか。
「手札から【強欲な壺】を発動!
デッキからカードを2枚ドローする。
俺はモンスターをセット、そして魔法カード【強制転移】を発動!」
「あ、そのモンスターが何か分かった」
「察しが良いな。
ま、このモンスターも一応お前から借りているカードだ。
分かって当然か」
【強制転移】はお互いにモンスターを選択し、そのモンスターのコントロールを相手に移すカードだ。
【暗黒界】デッキに組み込まれるモンスターで、裏側守備表示となれば自然と1体のモンスターが思い浮かぶ。
「俺は裏守備のこいつを選ぶ」
「俺は【ラムール】だ」
【ラムール】の攻撃力は600、そして効果は【魔導書】がなければ使えない。
弓兵が敵に回っても怖くはないが、神楽坂からもっらたプレゼントはとても怖い。
コントロールが移り、念のためモンスターを確認すると、やはり聖星の想像通りだった。
「バトル!
【プリーステス・オーム】でそのモンスターを攻撃!」
「はぁ!」
向かってくる攻撃に、裏守備モンスターが姿を現す。
小さな壺に隠れているモンスターは、手札を全て捨て、5枚ドローするという凶悪効果を持つリバースモンスター。
神楽坂は嬉しそうにモンスターの名前を呼んだ。
「この瞬間【メタモルポット】の効果発動!」
今回のゲームは、一応『神楽坂が知らないモンスター』でデッキを組む事を前提としている。
しかし【暗黒界】において【メタモルポット】は非常に相性の良いモンスター。
モンスター1枚くらいなら良いだろうと、デッキに入れる事を可としたのだ。
「さぁ、手札を全て捨てて貰おうか」
「けど、手札が5枚に回復した。
その点は感謝するよ」
互いに手札を墓地に捨て、同時にデッキからカードを5枚ドローする。
「悪いがこのターンでけりをつけさせて貰う!
俺が墓地に送ったのは【暗黒界の龍神グラファ】と【暗黒界の鬼神ケルト】。
【グラファ】は通常、カード効果で墓地に捨てられたとき、場のカードを1枚破壊する。
だが、それが相手のカードだったら?」
「……破壊効果に加え、俺の手札からランダムに1枚選する。
それがモンスターだった場合、神楽坂の場に特殊召喚する」
「その通り、さぁ、手札を前に出せ!」
神楽坂の背後に半透明の【グラファ】が姿を現す。
黄色い眼で見下ろされるのは気分が悪い。
一方、【グラファ】の効果を聞いた万丈目達は自分達のデュエルを思い出した。
「俺の【アームド・ドラゴンLv5】を奪った恨みは忘れんぞ」
「俺は【リボルバー・ドラゴン】だったな……」
万丈目は【アームド・ドラゴンLv7】を特殊召喚出来なくなり、とても苦戦した。
三沢も苦戦したようで、当時を振り返って苦笑いしか出来ない。
同級生2人の言葉に、十代はなんとも言えない表情をする。
「(俺は1回もモンスターを当てられたことないって言える雰囲気じゃないな」
十代の豪運はこういうところでも発揮されるのだ。
【グラファ】の幻影は聖星の伏せカードである【トーラの魔導書】を破壊する。
「1番右だ!」
「当たりだよ。
流石だな、神楽坂」
聖星は不幸にも選ばれてしまったモンスターカードをつかみ、神楽坂に向かって投げる。
指2本でカードをキャッチした彼は、自分が当てたモンスターを確認した。
「【魔導剣士シャリオ】か。
良いカードを引いたぜ」
緑色の光と共に現れたのは白馬にまたがり、剣を持つ青年。
表示された攻撃力は1800だ。
「そして【ケルト】の効果!
こいつ自身を特殊召喚し、デッキから【グラファ】を攻撃表示で特殊召喚する!」
【ケルト】はカード効果で捨てられたとき、【ベージ】同様特殊召喚される。
しかし、今回は聖星がコントロールするカードによって捨てられたのだ。
滅多に見る事の出来ない、デッキから悪魔族モンスターを特殊召喚する効果が発動した。
「仲間の声に応じ、場に君臨しろ!
【暗黒界の龍神グラファ】!」
「グォオオオ!!」
特殊召喚されたモンスターの数に、聖星は笑うしかない。
十代は目の前の光景に対し、静かに呟くしかなかった。
「すげぇ、一気にモンスターが5体になりやがった……」
「まずいぞ、聖星の場には攻撃力2000のモンスター1体のみ!」
「神楽坂の場には攻撃力2700に2400、1800。
1700に600のモンスターか」
龍神の名を持つ【グラファ】が2700、【ケルト】は守備力が低い代わりに2400の攻撃力を持つ。
攻撃力の合計は9200、聖星のライフは3200。
攻撃力2000の【フォルス】1体だけでは生き残る事が出来ない。
「行くぞ!
【グラファ】で【フォルス】に攻撃!」
「くっ!」
【グラファ】は口から青い炎を吐き出し、【フォルス】を焼き払う。
これでライフは3200から2500へと減少した。
攻撃を素直に受けたことに、十代達は目を見開く。
「伏せカードを使わなかった!?」
「つまりもう1枚の伏せカードは【ミラフォ】や【攻撃の無力化】ではないということか」
「行け、【ケルト】!
ダイレクトアタック!!」
主からの命令に、【ケルト】は鍛え上げられた腕を振り上げる。
数メートルはあると思われる巨体の攻撃に聖星は身構える。
瞬間、【ケルト】の攻撃がはじき返される。
「な、何だ!?」
何かに妨害されたソリッドビジョンに、神楽坂は聖星の伏せカードを見る。
しかし、最後のカードが発動された様子はない。
ならば手札からの誘発効果と思ったが、手札はきちんと4枚ある。
「罠カード」
冷静に語られたカードの種類に神楽坂は聖星を凝視する。
彼は静かに墓地から1枚のカードを取り出し、それを神楽坂に見せる。
「っ、墓地か!」
「そう。
俺が発動したのは【光の護封霊剣】。
このカードの効果で、ダイレクトアタックは封じさせて貰ったよ」
【光の護封霊剣】は、相手モンスターの直接攻撃を止める効果を持つ。
モンスターを戦闘破壊から守れないのは欠点だが、場を荒らす【暗黒界】相手には有効な手だろう。
「そんなカードが……
それなら【プリーステス・オーム】の効果発動!
【グラファ】、【ケルト】を生贄にする!
これで不動に1600ポイントのダメージだ!」
「ぐっ!!」
再び向けられた攻撃に、聖星のライフが2500から900へと下がる。
【プリーステス・オーム】を生贄に捧げなかったのは、次のターン召喚した【暗黒界】を生贄にするためだろうか。
小さく咳き込んだ聖星は指を鳴らす。
「この瞬間、罠発動。
【一族の結集】。
場に存在するモンスターとカード名が異なる、同種族のモンスターを特殊召喚する。
俺は墓地に存在する【魔導法士ジュノン】を特殊召喚!
来てくれ、【ジュノン】!」
「はぁ!」
神楽坂の場には聖星のカードも含め、魔法使い族モンスターが3体。
淡い光をまといながら蘇った【ジュノン】は、敵側に付いている仲間に怪訝そうな顔をする。
【ラムール】は苦笑いを浮かべ、【シャリオ】は首を横に振る。
特殊召喚された聖星のエースモンスターを見て、神楽坂はカードを掴む。
「カードを3枚伏せ、ターンエンドだ」
「3枚とか怖いな~」
伏せカード3枚だと、一体何を伏せられているのか考えただけで頭が痛い。
だが、スリルがあって背筋がゾクゾクする。
モンスターの召喚を妨害するカードだろうか、それとも破壊するカードだろうか。
もしかすると【暗黒界】の効果を発動させるためのカードかもしれない。
自分の4枚の手札、【ジュノン】、墓地に眠る【魔導】達でどのように攻略しようか。
明らかに楽しんでいる友人に、三沢は微笑んで2人のフィールドを見渡す。
「さて、聖星のライフは残り900。
それに対して神楽坂は3700。
神楽坂のことだ、あの伏せカードは十中八九カウンター罠。
その罠をどうやってかわすかが、このデュエルの勝敗を分けるな」
三沢の言葉に神楽坂は心の中で同意した。
伏せカードは全て罠カード。
聖星は【トーラの魔導書】や【ゲーテの魔導書】、そして【ジュノン】の効果を使って罠カードを対処しようとするだろう。
だがそれらのカードを使っても、対処しきれないカードを1枚伏せている。
その罠カードを攻略しない限り、聖星の勝利は遠い。
「(さぁ、来い、不動!!)」
神楽坂は聖星のように墓地で発動するカードや、手札誘発カードをあまり持っていない。
持っていても、このデッキに加えるのは勧めれないものばかり。
今の状況は神楽坂が出来る最大の防御である。
「遊城」
「お、取巻。
やっと授業終わったのか」
「あぁ。
それで、今はどうなってるんだ?」
「ああいう状況」
背後からかかってきた声に振り返ると、授業を終えた取巻がいた。
彼は2人の場を見て、状況を整理しようとする。
聖星の場にはお馴染みの【ジュノン】が存在し、神楽坂の場には何故か【魔導】モンスターが2体揃っていた。
「…………あいつ、デッキ変えたのか?」
「変えてない、変えてない」
取巻きの言葉に十代は手を横に振って否定した。
苦笑いを浮かべていた十代はすぐに視線を2人に戻し、口角を下げる。
その表情変化に取巻は怪訝そうな顔をした。
「どうしたんだ、遊城」
「何がだ?」
「いや、なんていうか……
楽しそうじゃない?」
指摘されたことに十代は数回瞬きし、思い当たることがあるのか頭をかく。
普段の十代なら何らかの言葉を返すが、驚くことに何も返ってこない。
いや、口にするのを迷っているといえば良いのだろうか。
朝から十代の違和感を覚えていた三沢と万丈目も心配そうに会話に混ざる。
「今朝から元気がないようだが、体調でも悪いのか?」
「聖星と神楽坂の2人がデュエルをすると聞いても静かだったな。
お前らしくもない。
拾い食いでもしたか」
「俺は犬じゃねぇ!
あ~、いや、その……
別に体調が悪いって訳じゃないぜ。
ただ……」
「ただ?」
十代は昨晩の出来事を思い出す。
デュエルに敗北したカミューラは塵となって消え、聖星達は崩れゆく城に取り残された。
謎の光のお陰で今回は無事だったし、あの時はとにかく必死だった。
だが一晩経ち、頭が冷えたときに気がついてしまったのだ。
「あれは夢じゃなかった。
負けた奴は死ぬかもしれないし、もしかしたら周りの皆を巻き込んじまうかもしれない。
そう思うと、何て言えば良いんだ……?
俺のデュエルって正しかったのかなって思っちまったんだ」
「正しい?」
「俺は頭悪いから、その、デュエルは楽しければ良いって考えなんだ。
カミューラと聖星のデュエルだってどこか楽しんで見てた。
異世界に飛ばされたときに闇のデュエルをしたけど、あのデュエルだって楽しかった。
けど、デュエルのあとにカミューラは死んだ。
そう、死んじまったんだ」
【墓守の長】達のデュエルは痛みを伴うデュエルだった。
しかし隣に【ハネクリボー】と取巻もいたし、墓地を封じられているあの状況をどうやって覆そうか考えるのが楽しかった。
吹雪とのデュエルだって後遺症が残るほどのダメージを受けたが、命が奪われるほどの被害はなかった。
クロノス教諭やカイザーも人形にされただけだ。
「だから、デュエルに対して素直に楽しめないっていうか……
う~ん、俺もよく分かんねぇ」
腕を組ながら適切な言葉を探す十代の姿に、三沢は顎に手を添える。
恐らくだが十代は、今まで死者が出なかったため、闇のデュエルに対し軽く考えていた面があったのだろう。
だが実際に最悪の事態が起こってしまい、その事実に衝撃を受けたというところか。
万丈目は小さくため息をつく。
「要は怖じ気づいたという事か。
情けない」
「怖じ気づいてるわけじゃねぇよ」
「死ぬのが怖くてデュエルに対し悩んでいる事を怖じ気づくと言わずどう言うんだ。
他の言葉があるのなら言ってみろ。
何ならこの万丈目サンダー様にお前の鍵を譲っても良いんだぞ」
「誰が譲るか!」
言い合いを始める万丈目と十代に、三沢は乾いた笑みを浮かべるしかない。
全く、万丈目は友人を慰めるためとはいえ、もう少し言葉を選べないのだろうか。
同意を求めるように取巻に目をやれば、首を横に振って返された。
「十代。
逆に聞くが、楽しいと思うことのなにが間違っていると思うんだい?」
「え?」
三沢からの素朴な疑問に十代は間抜けな声を出す。
「当然これからの戦いにおいて誰かが死ぬこと、巻き込んでしまう可能性は頭に入れておくべきことだ。
だがデュエルとは本来楽しむものだろう?
それを間違っていたのかと疑問に感じる必要性はどこにもないさ」
「そうか?」
「あぁ」
情けない話しだが、十代が抱いている不安を解消する術を三沢は持っていない。
何故なら三沢も、もしかすると隣で偉そうにしている万丈目も、どこか脅えているからだ。
しかし、十代が持つ疑問について答える事は出来る。
「まぁ、難しい話はおいておいて聖星達のデュエルに集中しよう。
その方が直感的な君には良いだろう」
「確かに三沢の論理的な言葉より、その方が十代は理解しやすいだろうな」
「何か万丈目、今日はいつも以上に俺をバカにしてないか??」
「ふん、貴様はバカだろう」
本当に素直じゃない、三沢と取巻の心は一致した。
観客達が上記のような事を話し合っている間、聖星は手札と墓地、フィールドと睨めっこを終えた。
「俺のターン、ドロー。
俺は【魔導書士バテル】を召喚」
「罠発動!
【神の警告】!
悪いが【魔導書】はサーチさせないぜ!」
「くっ……!」
【バテル】が守備表示で場に現れると、2人の天使を侍らせた神様がフィールドに降り立つ。
彼は手を高く上げて【バテル】に向かって何かを口にした。
その言葉に天才少年は難しい顔をして、フィールドから離れる。
「それなら手札の【セフェルの魔導書】を発動する。
手札の【ネクロ】を見せ、墓地の【グリモ】の効果をコピー」
場に【ジュノン】が存在し、手札の【魔導書】を見せたことで【セフェルの魔導書】の発動条件は満たされた。
【ジュノン】の目の前に黒に近い紫色の魔導書が現れ、それは彼女の魔力で淡い光に包まれる。
穢れていた魔導書の邪気は祓われ、真っ白な魔導書となる。
「俺が加えたのは【アルマの魔導書】だ」
「【アルマ】か……」
聖星が加えたのは除外されている【魔導書】を手札に加える効果を持つカード。
場には除外効果を持つ【ジュノン】が存在するため、この後聖星が何をしようとしているのか簡単に想像がついた。
「そして墓地の【グリモの魔導書】を除外し、【ジュノン】の効果発動!
左側のカードを破壊!」
【ジュノン】は掌を伏せカードに向けて魔法を放つ。
貫かれたカードは表側になり、書かれている名前に目を見開く。
「【透破抜き】……
それも入れてたんだ」
「あぁ。
良いカードを当てたな」
そのカードには、隠していた小判と団子が露となっている様子が描かれている。
セコいことをしていると思うが、それより効果が凶悪だ。
このカードは手札・墓地でモンスターの効果が発動した瞬間をトリガーとしている。
なんと、そのモンスターを除外してしまうのだ。
手札で【ジュノン】、墓地で【魔導鬼士ディアール】の効果を使えば問答無用で除外されてしまう。
「それなら俺はさっき加えた【アルマ】を見せ、【ネクロの魔導書】を発動。
【バテル】のレベルを受け継ぎ、【魔導冥士ラモール】を特殊召喚する。
蘇れ、【ラモール】」
半透明の【バテル】は地面に魔方陣を描き、掌を地面に置いた。
すると静かに風が吹き始め、紫色に光る魔方陣に集まっていく。
強風にまで成長した風で【ジュノン】や【シャリオ】の装飾品は激しく揺れる。
風は竜巻のように天空へと昇り、その中から大鎌を携えた青年が現れる。
「特殊召喚された【ラモール】の効果発動。
こいつは墓地の【魔導書】の枚数によって効果を得る。
俺の墓地には【トーラ】、【ゲーテ】、【ラメイソン】、【セフェル】の4種類存在する。
よって【ラモール】の攻撃力は2000から2600になり、デッキから【グリモの魔導書】を手札に加える」
「なる程、だから【アルマの魔導書】で【グリモの魔導書】を手札に加えなかったのか」
「あぁ。
どうせ【ラモール】の効果で手札に来るしな。
さらに墓地の【魔導鬼士ディアール】を特殊召喚」
聖星の宣言と同時に、墓地に眠る3枚の【魔導書】が地面から現れる。
神楽坂によって破壊された【トーラの魔導書】と、【天使の施し】で墓地に捨てた【ゲーテの魔導書】。
そしてこのターン使用した【セフェルの魔導書】だ。
3枚の【魔導書】が壁を作り、回転しながら光を生み出す。
「ぐわぁああああ!!!」
光の壁から聞こえてくる醜い雄叫びに、【シャリオ】達は後退る。
輝いていた壁は黒ずんでいき、内側から粉々に砕け散る。
中から現れた悪魔は両翼をゆっくり広げ、敵陣営にいる仲間を睨み付けた。
「うわぁ、【ディアール】の顔、マジだな」
「何がだ?」
精霊を見える分、十代には取巻達とは違う光景が見えるのだ。
【ディアール】は仲間でも容赦はしないと目で語っており、【ラモール】は虚ろな瞳で静かに仲間を見ている。
それに対し【ジュノン】は、両サイドにいるダーク系モンスターに頭を抱えている。
まるで自分がここに居るのが場違いで、神楽坂側に居るのが正解ではないのだろうか。
「人を殺すような睨み付けってああいうのを言うんだろうなぁ。
あと場違い感を感じてる【ジュノン】が向こう側に行きたがってるし、【シャリオ】達も歓迎気味だぜ」
「いや、仮にも不動のエースだろう」
いくら居心地が悪いからといって、敵側に行こうとするな。
これから神楽坂がどうやって聖星の猛攻を凌ぐのか気になるのに、十代の解説につい気がそれてしまう。
「ははっ、攻撃力2500以上のモンスターが3体か……」
先程は神楽坂がモンスターを大量展開したが、聖星も負けてはいない。
攻撃力2500の【ジュノン】に【ディアール】、2600の【ラモール】。
数字で見れば神楽坂のモンスターでは到底敵わないだろう。
だが、どこか余裕があるのか焦りの表情はなかった。
万丈目と三沢は冷静すぎる友人の様子に、伏せカードに注目する。
「神楽坂の奴、涼しい顔をしてやがるぜ」
「あぁ。
恐らく、あの伏せカードだろう」
「俺は【グリモの魔導書】の効果により、デッキから【トーラ】をサーチ。
そして【アルマの魔導書】の効果で、除外されている【ゲーテの魔導書】を手札に加える」
新たにデッキ、除外ゾーンから手札に加わった【魔導書】2枚。
そのカードを交互に見た聖星はゆっくりと息を吐いた。
神楽坂のライフは残り1700。
場には攻撃力600の【ラムール】が攻撃表示で存在し、攻撃力2600の【ラモール】で攻撃すればこのデュエルに勝利する。
「バトル。
【魔導冥士ラモール】で攻撃」
「罠発動!
【イタチの大暴発】!」
「え?」
「俺のライフがお前のモンスターの攻撃力の合計より低いとき発動できる。
攻撃力の合計が、俺のライフ以下になるようモンスターをデッキに戻して貰うぜ!」
「え、え?
えぇえ!??」
表情が固まった聖星は次第に状況を受け入れ始め、情けない声を上げた。
聖星の叫びようも納得いくものであり、取巻は険しい顔を浮かべる。
「不動の場に存在するモンスターの攻撃力の合計は7600。
それに対し神楽坂は【神の警告】の効果で、ライフを2000失い、1700」
「待てよ、1700って事は……
聖星の奴、全員デッキに戻すってことか!?」
なんたって聖星のモンスターは全て攻撃力2500を超えているのだ。
十代の驚きように三沢は強く頷いた。
「そういうことだ。
しかもあのカードはプレイヤーに強制的に行わせる効果。
対象はカードではなく、プレイヤーである聖星自身。
カードを対象にしているわけではないから【トーラ】の効果で防げない!」
「これは勝負が見えたな」
もう見る価値はないと言うように、万丈目は目を瞑る。
【ジュノン】達の足下が盛り上がり、激しい爆音が鳴り響く。
爆発に生じた砂煙が視界を悪くし、小石が地面に落下する音が聞こえる。
薄暗い煙は徐々に晴れていき、聖星の場が見渡せるようになった。
そして、神楽坂の目に存在しないはずのモンスターが入ってくる。
「っ、何だと!?
何故裏守備モンスターがお前の場にいるんだ!?」
今はバトルフェイズであり、聖星が発動できるのは速攻魔法ぐらいだ。
神楽坂は今までのデュエルを思い出し、聖星が何をしたのか考察する。
【トーラ】は耐性をつけるカード、【ゲーテ】はカードを除外する効果のはずだ。
その時、ある事に引っかかる。
「裏側……
表示形式の変更、まさか!」
「そう。
俺が発動したのは【ゲーテの魔導書】」
墓地からカードを手に取った聖星は、神楽坂に見えるように手を前に出す。
テキストには伏せカードのバウンス、カードの除外、そして表示形式変更について書かれていた。
聖星はよくカードの除外の効果を使用していたため、別の効果について見落としていたのだ。
「墓地に存在する【アルマ】と【ラメイソン】の2枚を除外し、【ジュノン】を裏側守備表示にしたのさ。
【イタチの大暴発】は表側表示のモンスターにのみ適応されるからな」
まさかの最後の伏せカードを突破されたことに神楽坂は両手を強く握りしめた。
震える両手に対し、彼の表情は好戦的なものになっていく。
明らかに楽しんでいる様子に、十代はつい呟いてしまう。
「すげぇな……」
神楽坂と同じように十代も両手を握りしめた。
2人の攻防は凄まじいものだ。
神楽坂が伏せたカードは聖星を追い詰めるのに充分だった。
モンスターの召喚封じ、効果モンスターの除外、そしてライフを削ったのも【イタチの大暴発】を最大限に利用するため。
しかし聖星は直前に手札に加えたカードで見事に罠を防いだのだ。
「すげぇ、うん、やっぱりこうだよ。
デュエルはこうじゃないとな」
伏せカードが何か予想し、どのように罠を潜り抜け、相手の次の一手を先読みする。
じわじわと胸に何かがこみ上がってくるのを覚え、次第に口角が上がっていった。
「だが、これで攻撃出来るモンスターはいない!
次のターン、俺が闇属性モンスターを召喚すれば【プリーステス・オーム】の効果でライフは0に!」
そう、神楽坂の手札には【暗黒界の術師スノウ】がある。
彼のターンで【スノウ】を召喚し、【プリーステス・オーム】と一緒に生贄に捧げると1600ポイントのダメージを与える。
900ポイントしか残っていない聖星の敗北は確定だ。
「それはどうかな」
「何?」
「速攻魔法【ライバル・アライバル】を発動」
「しまった!!
それがあったか!!」
場に現れたのは喧嘩している女の子達の元に、1人の女の子が乱入する様子を描いているカード。
そのカードの効果は魔法カード【速攻召喚】と似ており、神楽坂もよく覚えている。
「そうさ。
【ライバル・アライバル】は互いのバトル中に1度だけ召喚出来る速攻魔法。
俺は裏側守備表示の【ジュノン】を生贄に捧げ、【魔導皇士アンプール】を召喚!」
「ふんっ」
【ジュノン】の代わりに現れたのは、威厳溢れる皇。
彼は椅子に座っている状態で頬杖をつき、足を組んでいた。
「攻撃力2300……
そんな……」
このままでは攻撃力600の【魔導弓士ラムール】に攻撃されれば、1700ポイントのダメージを受けてしまう。
ライフがぴったり削られる事に神楽坂は墓地とフィールド、手札を見るが、この攻撃を防ぐカードはなにもない。
相手モンスターを奪い、カードを破壊し、デッキにもモンスターを戻した。
ここまでして勝てないとは悔しくてたまらない。
だが、今回のデュエルでこのデッキの改善点も見えた。
楽しく、有意義なデュエルであると思えた神楽坂は清々しそうな顔を上げる。
「【アンプール】!
とどめを刺せ!!」
聖星の言葉に【アンプール】は玉座から立ち上がり、【ラムール】に狙いを定める。
手を天に向けて掲げた彼は静かに呪文を唱える。
彼の持つ魔導書から引き出された魔力は巨大なエネルギーの固まりとなり、それは【ラムール】に叩き付けられた。
膨大な熱量に包まれた【ラムール】は一瞬で破壊され、余波で神楽坂のライフが0になる。
「っ、うわぁああああ!!!」
彼は咄嗟に両手で顔を隠すが、目を射すような光と衝撃に悲鳴を上げた。
デュエル終了のブザーが鳴り、ソリッドビジョンが消えていく。
敗者となった彼はその場に膝をつき、深呼吸を繰り返す。
「神楽坂」
「……不動」
近寄ってきた勝者を見上げると、聖星は嬉しそうに微笑んでいる。
「今回は俺の勝ちだな」
「あぁ。
正直に言って悔しいぜ」
差し伸べられた手を握り、立ち上がった神楽坂は笑いながら答えた。
さて、部屋に戻ったらデッキを組み直さなければ。
自分が持っているカードを思い浮かべながら、どのカードを入れ替えるか考えた。
「23戦19勝4敗。
ということで、19枚のカードは神楽坂にあげるよ」
「あぁ。
それなら4枚のカードは不動に返さないとな」
神楽坂はすぐにデッキから4枚のカードを選ぶ。
【メタモルポット】を含めたカードを差し出せれば、聖星は不思議そうな顔をした。
「え、今返してくれるのか?
デッキを組み直した後でも良いんだぜ」
「いや、元々返すカードは決めていた。
だから心配は要らない」
「そっか」
そう言うのなら遠慮なく返して貰おう。
4枚のカードを受け取った聖星は空のデッキケースにカードを仕舞う。
すると背後から元気のある声が聞こえてきた。
「聖星、神楽坂!
凄くわくわくするデュエルだったぜ!
2人のデュエル見てたら俺もデュエルしたくなってきた。
なぁ、誰か俺とデュエルしようぜ!」
いや、この場にデュエリストが6人も居るのだ。
タッグデュエルも面白いだろう。
そう提案する彼の様子に三沢達は安心したように微笑んだ。
END
私にシリアスは無理だ(ゲンドウポーズ)
半裸の十代と明日香達のシーンは書いていてとても楽しかったです。
アニメで十代が自分の考えは間違っていたのかと悩んでいるところ、誰にも相談しなかったんですよね。
まぁ主人公の宿命というべきか、もう少し万丈目達を頼っても良いんだぜ??とアニメを見ながら突っ込んだ覚えがあります。
ここでは取巻達に指摘されて、独り言を呟いた感じです。
もちろんこの後温泉で【カイバーマン】と遭遇し、最初から全力でデュエルを楽しみます。(書くとは言っていない)
そろそろヨハンを登場させたいなぁ。