有限実行せなと思ってセシリア戦後まで行こうかと思ったら案外長くて分けた。続きはまだないです。
戦闘描写が不安なんで、ここ、こうした方がいい。とか俺いい案あるぜ。っていう人は感想で書いてほしいです。伝わりづらいってとこでも良いんでお願いします。
慣れないものというのは、疲れを増幅させるには十分であった。二限目にあんなことあったから、話しかけられることがなくなったため、休み時間の勉強が非常に捗った。女三人寄れば姦しいというか、さすが女性というか、伝わるのが早かったのか朝よりギャラリーの数は増えていたし、移動しようもんなら大名行列ができそうだったので、昼食時も家で作ってきていた弁当を教室で食っていた。箒からも食堂で食べようと誘われたが、一週間後まで無理と伝えた。教室から出る箒の背中は、とても寂しそうだった。無論、時間は惜しいので片手に教科書、片手に箸、机にはまとめたノートと弁当、と行儀は悪いが時間がない以上四の五の言ってはいられなかった。
時は放課後。SHRを終え、各々寮に戻る時間であった。が、当然のように女性たちは、俺が教室から出るのを待っていた。多いわ。大勢の中から箒を探す。鈍ってはいるだろうが、現状で剣を使い、どれだけ戦えるかを知る必要があった。
「いたいた、箒。お前、竹刀持ってきているか?」
「っ! あ、あるぞ。それがどうした?」
犬耳と尻尾が見える……。話しかけてもらえたのがそんなに嬉しかったのか。
「いやなに、久々に手合わせを、と思ってな。剣道場とかなんかいい場所知らないか?」
「剣道場なら部活で使っているのがある。そこに行こう」
笑顔である。それはもう、満面の笑み。ここに来てから怒り顔と照れ顔しか見てなかったから、ある意味新鮮だ。
剣道場の中心で正面から相対する俺と箒。防具は、他人のはつける気にはならんので、箒だけ着用のはずが「私を舐めているのか」と結構な剣幕で言われたので、仕方なく探して使われてないとかいう防具を着用。
「じゃあ、ルールはそうだな……審判がいないから一本勝負で、細かい剣道のルールはなし。決まった決まらないは潔く、でいいか?」
「ああ、それでいい」
箒が合意したことにより、二人の間には沈黙が流れる。俺も箒も始まったからといって、愚直に動き出すことはしない。動きの読み合いだ。先に動いたほうが負けるということはない。しかし、下手に前へ出れば、相手にカウンターを決められかねない隙を作ることになる。俺に至っては学生最強を相手にしてるんだ。迂闊に動けば簡単に仕留められる。あまり軽率に動くことはできない。
だが考えだけ張り巡らせて、動くことをしないのは試合の意味がない。無謀かもしれないが、俺は箒の隙を作りにいく。すり足で箒に近づき竹刀の先を当てる。たったこれだけの行動は、相手を動かさせるいい餌になることがある。箒に効果があるとは到底思えないが、やっておいて損はない。
箒は動き出した。動きを止める様子がない、餌と知りながらそれをぶち抜いてきたのだ。正眼に構えた竹刀を振り上げ、上段。上げてから落とすまでのラグがあまりにも少ない。避けることは叶わないだろう。二年のブランクは、体の動きを鈍らせるには十分だったようだ。
「っ……」
完全に避けることはできないと感じた俺は、竹刀の両端を持って防ぐ。重い、あまりに強烈な一撃は、俺の腕を痺れさせるには十分であった。箒は休むことなく次に移る。意識を完全に上段切りにはやっていなかったのだろう。流れるように胴斬りにシフトさせる。手首を返しそれを受ける。痺れは強く、完全には胴斬りを受けきれずに飛ばされる。狙ったわけではないが、距離はできたのでよろけながら、なんとか体勢を立て直す。
ああ、やはり強い。二撃を受けただけだが女性の膂力とは思えない。力に頼りきらないも最高だ。防がれたと思ったらすぐに手段を変えてきた。
「……受けるだけで、精一杯だ。やっぱり強いな箒は」
「当然だ。伊達に何年も続けているわけではない。一夏が手を抜かない限りは、こちらも全力でいかせてもらう」
ありがとな。声には出さない。声に出せば、箒のことだから照れてしまって、近づいただけで殴られそうだし。
可能な限り早く近づき、竹刀を右斜め下段に構え、振り上げる。半歩下がった箒に悠々と避けられるが、勢いをそのまま箒のように流れで胴斬り。男女の力の差はあるが簡単に防がれる。
「なんだ、私の真似か?」
「いや、そんなつもりは」
箒に弾かれ、大きくよろめいたところに、先ほどのような振りかぶりの上段斬り。先ほどとは違い、柄の部分だけを持ち、竹刀の腹で受ける。そして竹刀を持つ力を弱め、斜めに逸らす。箒の力をうまく利用して今度は俺の、上段っ!!。
「――っうぉら!!!!」
女性に対して本気で殴りかかるのは、女尊男卑の世の中であっても、あまりよろしいことではないと思う俺でも、この時ばかりはそんなこと言ってられなかった。(オルコットは別だ)
「メェェエエンンンン!!!!!!」
まあ、こうやって気を抜いているとやられるわけだ、ハゲるかと思った。俺はあまりの衝撃に意識を飛ばしたほうが楽だと悟り、視界を黒く染めた。
「ん、ぁ……ああ、……ほう、き? ははっ、なんで、泣いてんだよ」
「ばかもの……。私が面を打ったら、いきなり、いきなり倒れる……ばかが、あるか……」
「ごめんごめん、脳みそ揺られてたみたいだ。もう大丈夫。心配すんな」
目の前にはなく箒の顔、の前にでかい双丘。後頭部の柔らかさからいって箒の膝枕だと推測する。やらけえ。
「ぐすっ……、もう貴様とは試合しない」
箒が拗ねた。涙を流すことは止めたみたいだが、未だに鼻をすする音が時折聞こえる。
「そうだな、箒が泣いちゃうもんな」
「次は泣かんっ!!」
目尻に涙滴乗っけながらよく言うわ。名残惜しいが箒の太ももから頭を離す。いきなり立てばまだふらつきそうなのでゆっくりと立ち上がる。そして、屈伸などのストレッチをして体の調子を確かめる。うん、問題ねえな。
「問題ねえからこのまま帰るな。あんま気にすんなよ、このとおりピンピンしてっから。じゃあな」
自宅へと帰ろうとすると俺を探していたという山田先生と姉さんが立っていた。山田先生は、政府が保護、監視のために寮に暮らさせる、ということを通達してきたのを伝え忘れていたようで、カードキーを渡してきた。キーには部屋番号が書かれていた。姉さんは既に必要最低限の荷物は送ってあるという。俺にプライバシーはないのか。
「……1023、1024、1025、っとここか」
山田先生も言っていたが、保護、監視のために急遽寮に入れたから女生徒と相部屋だそうだ。できれば同じクラスの人がいいな。欲を出せば、知り合いがいいから、箒とがいい。間違ってもオルコットなんぞと相部屋だったら俺は全力で投身自殺を図る。
カードキーを入れ、開いたことを示す機械音が鳴るのを待ってからドアを開ける。最初に目に入るのはベランダへと続く大きな窓。中に入ると、壁につけてある机荷台とベットが2つ。ベットの間には仕切りが引き出せるようになっている。値段高めのホテルに来ているようで気分が高揚する。
「誰かいるのか?」
突然、こもった聞き覚えのある声が聞こえた。この部屋からではない。もっとこう狭く、湿気の多そうな。例えば備え付けのシャワー室とか。………………まずくない? この状況。
「ああ、同室の者か。これから一年間よろしく頼むぞ」
まあ、他人じゃなくてよかったが、逆にまずいような気がする。とりあえず、どんな格好で出てくるかわからないから、制服の上着を脱いでドア付近まで戻り、背中を向けておく。
「こんな格好ですまないな。先にシャワーを使わせてもらっていた。私は篠ノ之箒だ。よろしく頼むぞ。……っていない?」
「こっちだよ箒」
勢い良く体を回転させたのがわかった。こんな格好とかいってるし服が擦れる音もなかった。要するに最悪の場合全裸だ。いや、さすがにタオルぐらいは巻いて出てきているだろう。
「んなっ、い、一……一夏っ」
「悪い、とりあえずこれでも着といてくれ。俺は廊下に出てるから着替えが済んだら呼んでくれ」
脱いでおいた制服を後ろ向きで渡す。本能に従えば、今すぐにでも体を翻し、大怪盗3世の如き跳躍を使い、その豊満な肢体を貪っていただろう。ここまで想像をしても起立することのないマイサンが心配になってきた。箒が俺の制服をとったのがわかるとすぐにドアを俺一人ぎりぎり通れる分だけ開け、箒の肢体が外からは見えないように、出来る限りの配慮をしながら抜け出し、ドアを閉める。……ふぅ、一苦労だった。
しばらくドア前に座り込んでいると道着を着た箒が扉を開けて入れてくれた。ここで、普通に話し始めるのではなく、謝罪を、誠意を見せながら謝ること、――土下座が大切だ。これをすれば相手は許さざるを得なくなる。伊達に何年もラッキースケベ体質をやっていないのでな。
「不可抗力だったとはいえ悪いな。鍵もかかってたから、誰もいないもんだと思ってた」
まあ、いくら土下座をしようが、ほんとに反省してるか疑うやつもいる。箒の場合は武道を修める者という意味での武士だからな。土下座されれば、故意じゃない限り無理やり納得してくれるだろ。………………ゲスだなあ、俺。
「わ、わざとでは、ないんだな? もし仮にわざとやっていたならば、ガワから性根をたたっ斬ってやったが、そうでないなら許すほかない。……次はないからな?」
ほらな? その後、俺が同室を希望したのかという問いに、肯定で答えて箒を恥ずかしがらせて遊んだのは言うまでもない。
前書きの通りなんかしらのアドバイス求みます。