某日早朝、お天気お姉さん曰く、今日の天気はお洗濯日和の快晴。
そんな清々しいお天気の日に、並盛小学校の校門前に、一台の車が停まった。
朝日を跳ね返す黒い車体、威厳を放つ大型高級車のドアが小気味いい音を立てると、外側へと開かれる。
登校してきた生徒たちの視線を一気に集め、黒ずくめの男たちに迎えられる。まるでドラマのワンシーンのような、優越感咲き誇る光景…… 第三者視点から見れば。私にしたら反吐が出そう。ああ、出て行きたくない……。
一生のお願いでもいいからどうにかならないのかと、同伴者の彼にチラと視線で尋ねてみる。
「んだよ。さっさと出て行きやがれ」
広い車内の一角に腕組みをして座る獄寺氏に一蹴され、あんな恥ずかしいシュチュエーションの中新しい学校に登校しなければならないことに……。
みんなからの好奇な視線があるのに、その中をリムジンから降りて歩いていくだなんて…… 死ねそう。卒倒してそのまま逝けちゃいそうだよ。
でも、ツナが心配だからって、こんな通学にさせられたし、すごく不安な顔されて断りきれなかったし…… なんかディーノの手前もあるんだという。どうしてディーノなのかは知らないけど、ディーノの名前を出されたら弱いのにっ……。
結局、おずおずと車から降りることに……。さもないと同伴の彼が一応は保護者なのに所構わずボムを着火させようとするんだもん。
ジャッポーネのランドセルと言った変わった通学鞄を背負って、何回か深い呼吸を繰り返して、竦む足で車から降りる。
……ゔっ。視線が痛い。メンタルへの殺傷力が半端ないよ。
途端に突き刺さる刃に必死に堪えていると、その後ろから降りてきた獄寺さんにぶっきらに声をかけられる。
「オラッ、何ぼやっと突っ立ってんだ。さっさと行くぞ」
しみじみ思う。どうして同伴してくる人が彼なのか。よりによって一番悪態吐く嫌味そうな彼なのか。どんな基準でこの人を選抜したの。ツナ、本当に心配してくれてるのかな。すごく疑っちゃうよ。
「たくっ、んでこんな餓鬼の送り迎えなんざ…… 10代目もこんな奴に気ィ遣いすぎなんですよ……」
彼に指摘されておずおずと歩き出した私の後ろに付いている獄寺さんは、余程子守りに不満なのか、耳にタコもいいくらいに不平不満をネチネチと零している。別に本人の前で態々言わなくてもいいじゃない……。
「オイッ、勘違いすんなよ。10代目のご指示だから仕方なくてめぇの面倒見てやるだけだ。山本辺りは朝っぱらから何か用事で、オレぐれーしか手の空いてる奴がいなかったんだ。10代目の命令じゃなけりゃ、てめぇなんざそこいらの野良共にくれてやるんだからな」
…………ああ、本当ツナは何考えてるんだろ。なんで山本さんにしてくれなかったの。この人ヤダ。もう怖い、ヤダ。誰かこの人を保護責任放棄で逮捕してってください。いろいろ言ってるけど、彼もただ暇でツナにちょっと頼まれただけでしょ。可哀想な人。
どうしてこんなことになったのか、つい先日のことを思い出してみる。
ツナがまとめる"ボンゴレファミリー"というところに引き取られてから、数週間が経った頃。
「よし。合格だ」
リボーンからかなり上から目線の言葉をいただき、無事合格発表を受け取った。
「おめでとう! アカネちゃん!」
「ありがと。ツナ」
見守ってくれていたツナから祝福されて、少し背中がむず痒い。そこに腕を組んだ小さめの影がやって来る。
「なかなかの上達ぶりだぞ」
「ムッ。リボーン……」
私と歳も変わらないくせに、気取っていつも黒服を着ている。そのボルサリーノの下に見える僅かな含み笑みを睨みつける。
「リボーン。もうちょっと言い方とかあるだろ」
「ちゃんと褒めてるつもりだぞ。この短期間によくやったんじゃねえか。ガキにしてはな」
「リボーン!」
……なんだろう。ムカムカするのか、イライラするのか。
ちょっと賢いからって、いっつも上から目線で、見下すようなこと言って…… こんなのが家庭教師なんてやだ。でも、ツナたちは仕事があって時間がないみたいだし……。
「いや、本当にすごいよ! アカネちゃん! 全然分からなかった日本語をこの短期間でマスターするなんて!」
……まぁ、頑張ったよ。漢字も簡単なものはちゃんと書けるようになった。
ディーノのファミリーにまた迎え入れてもらえるように、頑張るって決めたから。
「ツナはイタリア語覚えるのに何年かかったんだっけな?」
「うっ、うるさいっ、リボーン!」
ツナが真っ赤になりながら肯定する。それもいろいろ問題あるよね。ボスとして……。
どうしてこんなことになってるかというと、あの後ツナからこう言われたんだ。
――オレはただ、アカネちゃんを保護したくて、事件のこととかは二の次というか、だから記憶のこととかはゆっくりでいいよ。オレもディーノさんも急いでないから。アカネちゃんのペースで、ここで気持ちを落ち着かせてね。
――包み込むような笑顔に微笑まれて、少しホッとした。安らぎの場所ができた。少しずつでも自分に向き合っていいって言われて、余裕ができたんだと思う。
ツナやいろんな人たちが支えてくれて、ここまで来れた。……不覚ながらリボーンにも。
でも、記憶の方は、まだイマイチ……。
私の様子を見て察したのか、ツナが横から明るく話しかけてくる。彼も大概お人好しなんだよね。どうしてこうも人のマフィア像を崩すのが上手なんだろう。
「アカネちゃんさ、頭もいいし、学校に行ってみない?」
「……学校」
日本の学校に、か……。
過去の私もきっと学校には通っていた筈……。
なのに、どうしてだろう。全然胸にときめくものがない。
それどころか、ふと胸に募る重たい気持ち……。
「興味ない?」
「…………」
ツナの誘いに、どう答えればいいか分からない。
「何言ってやがる、ツナ。ジャッポーネは義務教育制度だぞ。アカネに拒否権はねえ。こいつが嫌がろうがさっさと学校に連れてってやれ」
流れていた沈黙をブチ壊したのは、リボーンの皮肉な言葉の数々だった。このっ、ニヒル口めっ……!
――……思い出していたら、もう教室の前に着いちゃった。
恐らく担任の先生である年増の女性の人と打ち合わせのような会話を終えると、教室のドアの前に佇んで呼吸を落ち着かせている私にイタリア語で彼がそっと一言。
「オイッ、ヘマしてオレに恥をかかせんじゃねーぞ」
応援どころか、彼自分のことしか考えてないしー。
さらにはプレッシャーという睨みを利かされ、溜め息しかもう出ない。もう帰ってよぉ……。
「今日は新しいお友達が来ますから、みんな仲良くしてね」
担任の促しで、渋々とドアを開けるしか致し方ない。最後まで睨まないでよ、獄寺さん。もう誰かこの人追い出してよー!
「さぁ、アカネちゃん。クラスのみんなにご挨拶して」
また担任の声がする。ちゃんと日本語は聞き取れる。隣から私に話しかけて、獄寺さんとは大違いで、緊張する私にそっと笑かけてくれる。
この感覚が、安心だろうか。
ザッと教室を見渡すと、私と先生以外が椅子に座って、席に着いている。みんなの視線が、私という存在に集中して、それぞれの印象を眼差しに込めて見据えている。
……居心地が悪い。
どうして動悸が激しくて、喉がすごく渇いて、顔が俯いて、視界が霞んでいくの……?
「っ、ぁ…… あっ………」
「アカネちゃん?」
――やっぱり、世界は怖い。
リボーンと獄寺とはどうしてか睨み合うw
主人公のタイプを考えればね、ちなみに笹川兄貴のタイプも苦手でしょう。
そして雲雀さんが苦手で、割と骸との相性がいい?主人公は私の書くキャラクターの中でも変わってます。変な娘ですw
まぁ、みんな変だけどもw
ハルとは女性同士で馴染みやすい。
うーん、性別の差ってすごい。