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くじらとの情事が終わってから帰って来たユート。
勿論、ユーキを連れて。
かんっぺきな朝帰りというやつだったが、スワティはユートとユーキの関係が単なる
これでも三度に亘って、河村耕平の縁を導いてきた縁結びの女神様。
そもそも、その縁結びも謂わばエッチ有りのものなのだから、多少の耐性くらいはあるのだから。
「きゃる〜ん、ユートさんってば帰るなり眠っちゃいましたよ?」
「朝までヤっていたから、眠たいんだろうね。ボクはちょっと出て来るね」
「何処に行くんですか?」
「御散歩♪」
ユーキはポケットにとある機器を捻り込み、ヒラヒラと手を振りながら宿屋の部屋を出た。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユーキが広場に続く大通り散歩をしていると、突然変な輩が声を掛けて来る。
「やあ、其処を行くタバサ似の女の子!」
「ハァ?」
軽薄そうな口調に、しかも一応とはいえ姉の名前で呼んでくるソイツは、格好こそこの世界に融和してはいたが、現代人が持っているファンタジーに似つかわしくない雰囲気を醸し出しており、間違いなく転生者だと判断が出来た。
思わず嫌そうな表情になってしまうが、相手が転生者ならば此処で始末する。
わざわざ、
「ボクに何か用?」
「おお! ボクっ子か!」
ああ、間違いなく転生者だねぇ……それがユーキの下した判断。
一人称であんなに大喜びをする人間が、この世界にそうそう居るとも思えなかったからだ。
「で? 何か用な訳?」
鬱陶しいと思いつつも、面倒事を早目に終わらせるべく今一度、転生者らしき男に質問をすると……
「いや、何ね。闘神大会に出ようとパートナーを捜していたが、結局は見付からなかったのだよ。まったく困った、葉月をモノにしようと瑞原道場を捜したが、何処に在るのやら」
どうやらこいつ、コストの全てを戦闘関連に注ぎ込んで、パートナーを得る為の一ポイントすら使い切ったらしい。
「まあ、仕方がない。君はとある少女によく似ているからね。うん、とっても可愛いよ」
ゾワッ!
ソイツが……否、ソレが微笑みながら美辞麗句を並べた瞬間、背筋を奔り抜ける悪寒を覚えて震える。
「(な、何なのさ? この気持ち悪い笑み……って、まさか!)」
一つの可能性に行き着いたユーキ。
「あれ? 僕の必殺スマイルが効かない?」
「(必殺スマイルって……マジに
転生者は大概は莫迦だと思っていたけど、こいつは極め付けの大莫迦だ。
正直、これはキツい。
「兄貴の為に情報収集でもしようかと思ったけれど、これは……とてもじゃないけど耐え難いね。もう良いから終わらせるよ」
「は? 何を言っているんだい? タバサ似ちゃん」
「もう黙れ……」
その手に光の槍を現出、投げ付けた。
「うおっ!? これは……【ハイスクールD×D】で堕天使が使う光の槍か? タバサ似ちゃんは転生者の一人なのか?」
どうも堕天使の力を
これは
【
ユートに真の意味で初めてを捧げた後、ユーキの中に発現した能力である。
その効果は憑依した相手の能力の完全再現であり、凄まじく使い勝手が良い。
普通なら肉体に依存する能力は、その肉体から離れてしまうと使えなくなるのが普通だろう。
例えば、【ハイスクールD×D】の堕天使が使う光の槍や黒い翼、これらとて堕天使という特性──光の力は天使も使うが──によるモノだから、人間に改めて憑依をしたら使えなくなってしまう処を、ユーキの
ユートとの肉体と精神の触れ合いで、高い確率ではないが発現する
今、ユーキが光力を用いて光の槍を作れたのもその為だった。
ニコポによる嫌悪感と、タバサ似とか呼ばれる事への忌避感、ユーキの中ではキレてはならないナニかがキレてしまったらしい。
「お前は此処で消えろ!」
ポケットから取りい出したるは、赤いハートを象る宝玉が填まった機械。
「そ、それはジョーカーラウザー? いや、ラウザーユニットが赤いって事は、カリスラウザーか!」
驚愕する転生者を無視、自らの腰にカリスラウザーを宛がうと、ブレイバックルと同じ様にシャッフルラップが伸びて装着される。
待機音が響く中でユーキはカードを取り出した。
それは蟷螂の絵柄が描かれてハートのスートにAのが描かれ、更に【CHANGE】の文字。
「変身っ!」
カリスラウザーの中央、そのリーダーに読み込ませると……
《CHANGE!》
電子音声が鳴り響いて、ユーキの姿が黒を基調とした異形の姿──仮面ライダーカリスへと変わった。
「ボクはお前を……ムッ殺す!」
醒弓カリスアローを左手に持つと、ユーキは転生者へと駆け出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それはブレイバックルやブレイラウザーを造ろう、その話を始めた時の事。
ユーキは気になっていた事があり、ブレイバックルやブレイラウザーを造る際にユートへと訊ねた。
「ねぇ、兄貴」
「何だ? ユーキ」
「【
とある世界──【ハイスクールD×D】を主体とするその世界に於いて、
聖書の神──ヤハウェが造ったとされる人間に……神の子の血筋にのみ赦された力だ。勿論、抜き取れば純人外にも扱える訳だが、生まれ付き宿すのは人間の血を継ぐものだけ。
ユートは先天的に宿す者を
ユートは、【
また、
その中には、十三種類の
例えば【
ユートが獲たのはそんな神滅具の中でも上位四種、
それが、あらゆる魔獣を想像して創造する【
因みに、他の三つの
神滅具の名前の由来でもある【
天候を操作すると云われる【
霧の結界を造り上げて、空間操作を可能としている【
閑話休題……
「仮面ライダーか? そういえばユーキにもその話は帰ってからしたな」
修学旅行で【
「一応だけど、鎧型の魔獣として構成はしているよ。ちょっと使えないけど」
「何でさ?」
「僕のイメージの所為か、変身用デバイスを介さないと装着が出来ない。それと必要なアイテムも創ってはいるんだよな」
「必要なアイテム?」
「ラウズカード、アドベントカード、ゼクター、キバットバットといった変身の補助アイテムだね」
「ラ、ラウズカードって……アンデットを封印してるプライムベスタを?」
「そ、プライムベスタを」
ユートは亜空間ポケットからトランクを取り出し、ユーキの目の前でそれを開いて見せた。
因みに、所長やダディがラウズカードを仕舞っていたあのトランクだ。
中にはスート別に分けられたプライムベスタが入っており、ユーキは瞳をキラキラさせて覗き込む。
「これ、本当にアンデットが封印されてるの?」
「【
ラウズカードを見ていたユーキがふと気付く。
「あれ? ジョーカーやアルビノジョーカーは入ってるのに、スピリットヒューマンが無い?」
ハートスートのカテゴリー2──ヒューマンアンデットが封印されたベスタが欠けていたのだ。
ヒューマンアンデット──それは原典に於いて人間の始祖であり、嘗て一万年前のバトルロワイヤルを勝ち抜いた存在。
ジョーカーが再び始まったバトルロワイヤルで人間に擬態をする為、一番最初に斃したアンデットだが、実はジョーカーを内側から変質させる為にわざと斃されて封印をされたという。
「ヒューマンアンデットって相川 始の姿だったろ? その侭の姿にするかどうかで悩んでね」
「ああ、成程ねぇ」
ジョーカーが人間の──ヒューマンアンデットの姿に
ジョーカーは、この姿と名前で【ハカランダ】に住んでいたのである。
「ねぇ兄貴。僕さ、ガワだけなら造ってるんだけど、ブレイバックルとブレイラウザーを改良して、プライムベスタと女の子モンスターカードを使える様にするから、ハートスートのプライムベスタを頂戴!」
「ガワだけって?」
「ん、オリハルコンプラチナの代わりに
ガシリッ!
「うひゃっ!?」
行き成り抱き付かれて、流石に驚くユーキ。
「ちょっ、嬉しいけどさ……脈絡が無いよ?」
「やっぱりユーキは比翼の鳥だな。互いに足りない所を補い合える」
「へあ!? うん……」
嬉しそうに言うユート、その言葉を若干だが頬を赤く染めながら聞き、目を閉じて頷いた。
「それで? ひょっとしてヒューマンアンデットの姿に注文でもあるのか?」
「あ、うん。ボクの大きくなった姿にして欲しい」
「は? 大きくなった姿って言っても、今の姿が最大じゃないか」
「だ・か・らぁ、おっきくなったイメージでだよ! こう、おっぱいもバインバインな感じで、腰もくびれてて、お尻も引き締まっているみたいな! 身長だって一七〇センチは欲しい」
「ユーキ、お前……」
思わず涙する。
「憐れむなぁっ!」
絶叫するユーキ。
どうやらミニマムな自分に相当なコンプレックスを感じていたらしく、ユーキは成長をした感じの姿になってみたいと思った様だ。
「判った。とはいえ、僕のユーキというか……タバサやジョゼットのイメージがミニマムだからな。あんまり大きくは出来ないぞ? 【
「何それ?」
「いや、言わなきゃいけない気がしてな……」
何やら電波を受信してしまったらしい。
「【
イメージはユーキの──延いてはタバサの成長? した姿を。
だけど、現実と
せめて今のY○UJ○な姿から脱却をさせる為に、何とか自らの
「
創造は無事に成功。
プロパーブランクには、創造されたヒューマンアンデットの絵柄、ハートスートとカテゴリーの2が書かれており、【SPRIT】の文字が入ったプライムベスタへと変化した。
ユーキが造るカリスラウザーというのは元がジョーカーラウザーで、その能力はプライムベスタ内に封ぜられたアンデットのコピーである。
トランプのジョーカーがどの札にも変化出来る事、それがジョーカーアンデットの特殊能力なのだ。
まあ、ジョーカーは別に存在している訳だが……
とはいえ、ディケイドの【ブレイドの世界】に於いてはカリスラウザーは普通にライダーベルトであり、ジョーカーと別々に存在していたから問題無い。
この場合、コピー能力が在ったかは疑問だけど。
それから僅かな時間──ガワは出来ていたから後はカードの力を引き出せる様に調整するだけ──で完成させ、ユートにはブレイバックルとブレイラウザーを渡して、ユーキはカリスラウザーやカリスアローを。
勿論、ハートスートのプライムベスタをユートから譲渡されており、十三枚のベスタがカードホルダーの中に入っている。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カリスラウザーのサイドホルダーに入ったプライムベスタ、変身にカテゴリーA・チェンジマンティスは使っているから、残っているのはカテゴリー2からカテゴリーKまでの十二枚。
ブレイドと同型なブレイブと異なり、武器にオープントレイは持たないカリスアローは、名前の通り弓としても使えるが、本体両側が刃になっていて近接戦闘にも耐える。
「せやっ!」
「うわっ、待てよ! 僕は単に君をパートナーにしたいだけなんだ。付いてくれば旨味だってあるぜ?」
躱しながら言う転生者に対し……
「冗談は顔だけにしなよ! 君如きに付いていく物好きじゃないっ! 況して、ニコポなんて地雷スキルを選ぶ様な、ぶぁっかなんか相手に出来ないね!」
素気無く断ってカードをラウズした。
《BIO!》
ハートスートのカテゴリー7──バイオプラントのプライムベスタ。
蔦を伸ばして敵を拘束したり、鞭の様に叩き付けたりが可能なカード。
緑の蔦が顕れて転生者を縛り付けた。
「チィッ!
「なにぃ!?」
あっという間に縛っていた蔦が断ち切られ、転生者の背中には蒼く光輝く翼が顕現している。
「ば、莫迦な! その翼、【
「フッ、当たりだ。やっぱり君も転生者なんだね? 闘神都市Ⅱの世界でハイスクールD×Dの神器を知っているとは。となると……カリスの力が君の
何処か自慢気に言う。
「戦うなら此方も力を使わせて貰おう。
禁手化──
「
鋭角的な真白の鎧姿に、蒼く光り輝く翼……それはユーキも見た事があるヴァーリ・ルシファーが使っていた龍の力を鎧へと具現化したモノ。
「これが僕の
「コスト八……だって?」
「フッフッ、コスト二だったニコポにコスト八だった【
「【
コストが云々とかは関係は無く、レオナルドという少年から抜き取ってユートが持っているし、ユーキのプライムベスタはそれで創られている訳だが……
どうやら、
「だけどね、幾ら君が仮面ライダーカリスの力を持っていても、神すら殺す事が出来る
気取って言う転生者だったが、ユーキはそうは思っていなかった。
確かに中途半端なら能力では力でごり押しされていたろうが、生憎とユーキはそこまで中途半端な心算はないのだ。
「それにさ、君だってこの
「十秒毎に相手の力を半減させ自らの力に還元する。禁手状態なら十秒毎と言わず力を半減させまくるね。後は空間圧縮で物体を半分にする。とはいえ、半減の能力は触れなきゃ使えないけど。それに空間圧縮だって防ぐ手立てがある」
伊達に最強の白龍皇──ヴァーリ・ルシファーと闘ってはいない。
そして、ユーキは此方では小宇宙を禁じられてはいても聖闘士なのだ。
聖闘士に一度視た技は、二度と通じない。
況してや、この転生者は何処にでも居そうな凡百の転生者だ。
能力を使われても全く以て恐くは無かった。
戦闘を開始する二人。
武器らしい武器を持たない転生者は、どうも一誠やヴァーリの様に素手で戦うタイプらしい。
一撃が殴り掛かる。
「おっと!」
それを危なげ無く首を傾げて躱すユーキ。
両腕で転生者がラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュッッ!
それを躱す躱す躱す躱す躱す躱す!
「くっ、当たらない!」
「無駄だよ」
「莫迦な、原作のヴァーリみたいな魔力や身体能力が無いから、実際のハイスクールD×Dの白龍皇みたいな強さじゃないとはいえ、こうまで!?」
赤龍帝はパワーに秀で、白龍皇はスピードに秀でている。
だが、そんな自慢の速さがまるで鈍足だと謂わんばかりに軽く躱されていた。
紙一重のギリギリだが、それは余裕の裏返し。
大きく避けると隙も大きくなるから、僅かな動作の紙一重で避けているのだ。
「弱いよね、君。典型的な転生者だ。折角の
「なっ!?」
「確かに速度はそこそこ、だけどボクには速いだけの攻撃なんて通じないさ」
「心眼之法訣? そんな、有り得ない! 仮面ライダーカリスのコストは五で、ワイルド有りだと七だ! 心眼之法訣は六。どっちにしてもコストオーバーになる筈だ!」
「へぇ? 君らの言ってる
ちょっとばかり面白く感じるユーキ。
「は?」
「言っておくけど、ボクのこのカリスは兄貴との合作だし、心眼之法訣も自前で身に付けたものさ」
「な、んだ……と!?」
龍を模した白いマスクで判らないが、転生者は驚愕に目を見開いている様だ。
「ボクには義理の、そして愛しい兄貴が居てねぇ……ボクが機械関係を、兄貴が魔導や特殊な部分を担当しているんだ」
「どういう……?」
「このプライムベスタ……兄貴が君が云う【ハイスクールD×D】の世界で手に入れた【
「
「これで解っただろう? 君に勝ち目は無いよ」
カリスアローで肩をポンポンと叩きながら言う。
「どういう事だ? だからって僕に勝ち目が無いなんて言えないだろう!」
「君自身で言っていたじゃないか、原作の白龍皇程じゃないってさ。僕や兄貴が白龍皇ヴァーリ・ルシファーと戦った事が無いとでも思った?」
「っ!? それは……」
彼方側では小宇宙の制限も無かったが、この偽龍皇はヴァーリ・ルシファーに比べて格段に弱いが故に、相対的に視て充分な勝機があった。
「君が触れられない以上、半減の力は使えないよ」
「くっ、だったら!」
転生者が掌を開いて腕を突き出すと、ユーキの周囲の空間が歪み始める。
「これは……」
「喰らえ!」
《Half Dimension!》
電子音声が鳴り響いて、ユーキを空間圧縮が襲う。
「無駄な事を!」
ユーキは腕を揮って空間の歪みを払うと……
パンッ!
空間が破砕されてキャンセルされた。
「な、な、何だってっ!? そんな莫迦な!」
転生者の偽龍皇は驚き、狼狽えながら後退る。
「言った筈さ、聖闘士には一度視た技は通用しない。ヴァーリ・ルシファーが使ったそれを、ボクも見知っているんだよ」
「だからって、こんな腕を振り払うだけで!」
「ボクの
「……ジョゼットって? タバサじゃなくて双子の妹の方?」
「散々、姉さん似とか言ってくれたねぇ。もう君は消えちゃえ!」
ユーキは右腰のホルダーからカードを三枚出して、ラウザーユニットを装着したカリスアローにラウズ。
《FLOAT》
《DRILL》
《TORNADO》
カードを連続でラウズをすると、コンボが発生する組み合わせが在る。
それはより強力な攻撃を発生させるのだ。
《SPINING DANCE!!》
浮かび上がるユーキは、本来よりも激しい竜巻を纏って、高速でスピンしながら右脚を突き出して偽龍皇へと蹴りを繰り出す。
「でりゃぁぁぁぁっ!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
逃げ出そうと叫びながら後退しようとするが……
ズガンッ!
「グハッッッ!」
蹴りは胸部へヒットし、アーマーを砕かれながらも吹き飛ばされた転生者は、その侭外壁へと激突した。
「フッ、ワイルドカリスに成るまでもなかったね」
カリスのコンボ技の一つ──
スピニングダンスのAPは三五〇〇、威力をトンに再計算すると百分の一。
即ち、三五トンとなる。
単純に三五トンも可成りの重量だが、それが勢いもよくぶつかってくるのだ。
【|白龍皇の鎧《ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル》】を纏っていたとはいえ、ヴァーリ・ルシファーならまだしも、この衝撃は何の力も持たない人間では受け切れはしないだろう。
「が、は……っ!」
【
「うぐ、うう……痛い……痛い痛い痛い!」
「終わりだね、君には死んで貰うよ。次は普通の転生で生まれ変わると良い」
ザッザッと、足音を起てながら近付いてくるユーキ──仮面ライダーカリス。
その異形の姿も相俟って空恐ろしく感じた転生者。
「ヒッ! やめてくれ! 殺さないで、殺さないでくれよぉぉぉっ!」
無様に這いつくばって、命乞いを始めた。
「君が無害な存在だったら見逃しても良かったけど、【
「な、何でだよ! こんな風に転生をしたら誰だって思うだろ!? 女の子な君は解らないだろうけど! 君の兄だって!」
「そうだね、兄貴はそれこそ沢山の女の子を囲っているよ。まあ、ボクが推奨したんだけどさ」
「ハァ? だったら何で僕が咎められるんだ!」
「迷惑だから。君らは迷惑ばかり掛けるから。
「なっ!?」
「えっと、瑞原道場の葉月だっけ? その子もきっと君を蛇蝎の如く嫌ったんじゃないかな?」
「そ、そんな……」
どうやら、彼はニコポでヒロインが次々に堕ちていく二次小説でも参考にして選んだらしい。
地味にアホだった。
まあ、原作介入してある意味ではユートも迷惑を掛けているが、そこはユーキの知った事ではない。
「(兄貴にもアレが有るんだけどねぇ)」
ユートの
「という訳で、折角だからワイルドカリスに変身してワイルドのカードを使ってトドメを刺して上げるよ。なぁに、痛みは一瞬だ」
「い、嫌だ! また死にたくない!」
「どうせいつかは死ぬよ。それが早いか遅いかの違いがあるだけで」
ユーキはユートが最優先であり、他は仲間くらいは大切にしても全くの他人に優しくはない。
「た、頼むよ……二度と君には近付かないから!」
「……ニコポの封印、それと【
「ま、待ってくれ!
「大丈夫。極力は死なない様に出来るから。虚無魔法と堕天使の神器摘出術式を組み合わせれば……ね」
神滅具の摘出は周囲にも影響を及ぼすし、ユーキはレオナルドから【
虚無魔法有りきな為に、ユーキでなければ使えない術式だが……
「それで、どうする?」
「わ、判った……」
ガックリと項垂れながら承諾した。
その後、すぐにユーキは転生者から神器を摘出。
転生者は闘神都市から、この世界での生まれ故郷へと逃げ帰る。
こうしてユーキはお土産を片手に、ユートの許へ帰るのであった。
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