闘神都市RPG【魔を滅する転生闘】   作:月乃杜

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第4話:変身! 仮面ライダーブレイブVS絶対王者

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 大きな黄色いリボンにてピンク混じりの長い赤毛を結わい付け、真白のドレスに身を包んだ透き通る様な白い肌をした美しい女性がコロシアム壇上に立って、マイクの前で口を開く。

 

 闘神都市のアプロス市長であった。

 

 タレ目勝ちで赤い瞳が、満員御礼なコロシアム客席を見回している。

 

「闘神大会の開会式を行うに当たり、この都市の代表として全世界の皆さんを心より歓迎致します。大会の開催に尽力をして下さった方々、市民の皆様、そして勇猛果敢な大会参加者の方へ感謝を! 私の願いは、幾度もの戦いを勝ち抜いた最強の『闘神』を見届ける事なのです。今日から決勝のその日まで、皆が感動を共有し国籍や言語を越えて心を通い合わせる事を期待してます。そして大会に出場する闘士の皆さんの健闘を祈ると共に、その勇気に最大限の敬意を表します。今此処に、闘神大会の開幕を宣言致します!」

 

『『『『『ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!』』』』』

 

 アプロス市長による開会演説が締め括られた途端、観客席からは大歓声が地よ響け、空よ震えろと謂わんばかりに沸き上がった。

 

「遂に始まったか闘神大会の本戦が」

 

「だね、仮面ライダーブレイブの力を如何無く発揮して欲しいな」

 

 ユートの右手にはブレイバックルが握られており、バッチリとやる気が漲ぎっているのが見て取れる。

 

 抽選会も終了していて、トーナメント表が貼り出されていた。

 

 それによると、一回戦の相手はケイジン・カーターという名前らしいのだが、何しろ原典の知識を持たない二人に、それが何者であるのか推し測れない。

 

「ケイジン・カーターね、誰であれ敗けてやる義理も無いし、必ず勝つさ」

 

「兄貴、相手のパートナーとヤる気満々だねぇ」

 

「混ぜっ返すな。もう二度とは僕以外に肌は許さないなんて言う以上、敗けられる筈もないだろ? 僕だってコル先生が亡くなってからは二度とユーキを誰かに触れさせる気は無いさ」

 

「うん」

 

 何処か遠い目のユーキ、遥か過去へと想いを馳せているのであろう。

 

 開会式や抽選会も済み、翌日にはトーナメント表も確認したユートはブレイバックルを手にすると、早速ラグナード迷宮に向う。

 

 ユートの識らない原典と多少、異なった並び方をしているのだが、識らなければ同じ事だである。

 

 ブレイバックルとブレイラウザーの試運転と称し、少し愉しそうな表情で迷宮まで来ていた。

 

 一応、ユーキやスワティの前で正常稼働するか否かの謂わば、起動テストの方は済んでいるにしてもだ、実働テストまではしている時間も無く、これが初実戦という事になる。

 

 ラグナード迷宮の入口に着くと、牛の角っぽいものを付けた覆面を被った筋骨隆々な巨漢と、赤毛のショートヘアに眼鏡を掛けている十代後半から二十代前半の女性が、黒髪に鎧を纏う少年と金髪の美女と一緒に立っているのに気付く。

 

 巨漢は会場で確認をした一回戦の相手、ケイジン・カーターで間違いない。

 

 ならば隣の赤毛の女性がパートナーで、もう一組の男女もまた闘神大会出場者と考えるのが妥当か……

 

 何だかよく解らないが、ケイジン・カーターらしき巨漢が、少年を引っ張りながらラグナード迷宮の中へと突入していき、少年は叫びながらされるが侭になっていた。

 

 苦笑いをしていた金髪の美女が此方に気付く。

 

「あら? 貴方は……?」

 

「闘神大会の出場者だよ。君らはさっきの二人のパートナーかな?」

 

「ええ、私はセレーナ・フレイズ。さっきの男の子──シード君の姉代わり母親

代わりって処だけど、パートナーを務めているわ」

 

「私はアンドラ・くじら。ケイジン・カーターのマネージャーでパートナーよ」

 

「御丁寧にどうも。僕の名はユート」

 

「ユート? ユート・オガタね? ケイジンの一回戦の相手……!」

 

 くじらと名乗った女性が目を見開いている。

 

「そうだよ。まあ、宜しく……色々な意味でね」

 

「っ! ケイジンは敗けないわ! 彼はプロレス界の絶対王者なんだから!」

 

 『宜しく』の意味を察したのか、くじらは羞恥か怒りなのか兎も角にしても、真っ赤になって怒鳴った。

 

「そっか。なら期待をしておくとしよう。彼が強い事と……君の味を」

 

「くっ! アンタなんか、ケイジンに伸されて敗けちゃえっっ!」

 

 クスクスと笑いながら言うと、再び真っ赤になって怒鳴るくじらを背にして、ユートはラグナード迷宮へと突入をする。

 

 可愛らしくポーズを取ったスワティの絵が描かれ、【CHANGE】と書かれたカードを左手に、スペードではなく剣と盾をモチーフにしたレリーフの機器を右手に持ち、ラウズリーダーへカードを装填すると、シャッフルラップが巻き付く様に腰へと装着され……

 

「変身っっ!」

 

 ユートが叫びながらも、ターンアップハンドルを引いたら、ラウズリーダーが一回転をする

 

《TURN UP》

 

 機器──ブレイバックルから電子音声が鳴り響き、スワティの絵柄のオリハルコン・エレメントが顕れ、ユートがそれを潜ると次の瞬間には装備が一変。

 

 見た目には防御力皆無で豪華絢爛な儀式用装束で、スワティのドレスを男性用に直した感じの服に、籠手や脚当てや肩パーツが付いた感じの防具、顔を覆ったバイザー、腰にはブレイラウザーを佩いた姿だ。

 

 パッと見で防御力は本当に無さそうだったが、何処ぞの異世界召喚少女騎士が纏っていた防具も、見た目の防御力が低そうな印象とは裏腹に、最強のクラスの防具であった様なモノで、確り攻撃は防いでくれる。

 

 尚、【OPEN UP】でなく【TURN UP】方式だったのは、ユーキ的に前者のイメージが余りにも良くなかったからだ。

 

 暴走しまくったレンゲルを始め、ダークライダー枠なグレイブ、三下風味でしかないランス、糞ビッチなラルクでは仕方がない。

 

 まあ……ラルクが本当にビッチかどうかは扠置き、故にこそ愛すべきダディやオンドゥルの方がまだしもマシだと、此方を採用したという訳だ。

 

「さあ、始めようか!」

 

 ブレイラウザーのオープントレイを円弧を描く様に展開すると、寂しくも三枚のカードが入っている。

 

《SWALLOW TURN!》

 

 選んだカードは【ラルカット】で、アクティブ効果は燕返しという二段攻撃。

 

「ウェェェイッ!」

 

 カードリーダーがカードを読み込み、電子音声を響かせるとブレイラウザーに光が灯り、効果の通り剣を揮うユートは目の前に現れた【プロレス男】という、青い覆面を被る脹れ上がっただけの筋肉を持つモンスターを斬り裂いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 夜になり、探索を終えてテレビを点けると……

 

〔闘神ダイジェスト!〕

 

「ファンタジー世界なのに存在する16:9ワイドなテレビとか、意味不明なんですけど……」

 

 ユートが呟く。

 

 テレビ画面には金髪ロングで、頭の両横に青い小さなリボンで軽くツインテールに結わいた美少女ナビ、それに赤い三角帽子に赤い服を着て、両手には煌めくナイフを持つ人形? らしき宙に浮く物体。

 

〔ぱうぱう、こんばんわ。今日から始まりました新番組の闘神ダイジェストの御時間でーす。明日から開催される闘神大会の試合結果やその他の様々な催し物の様子を私、クリちゃんと〕

 

〔解説の切り裂き君が御送りするよ。今日から大会の終了まで皆、宜しくね〕

 

 どうやら本名は不明だが【クリちゃん】というらしい金髪美少女と、相方となる【切り裂き君】と名乗る人形が色々と番組を盛り上げてくれる様だ。

 

「へぇ、面白そうだねぇ」

 

 ユーキも愉しそうだし、スワティも瞳をキラキラとさせている。

 

〔ではでは……明日もこの時間に、アデュー♪〕

 

 楽しみが増えたのだと思う事にした。

 

「明日もラグナード迷宮に行くから」

 

「りょーかーい」

 

「判りました」

 

 三人共、その日はすぐに眠った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ラグナード迷宮の探索をまた終えたユート。

 

「ふう、ヤっちまったぜ」

 

「兄貴、アンタねぇ……」

 

 新しいカードを手にし、汗を拭う仕草のユートを見てユーキはジト目だ。

 

 体操服に革ベルトを身に付け、黄色のマフラー? を首に巻いた黒髪ロングの女の子モンスター【やもりん】だが、キック力を強化をするべくラグナード迷宮の中で伝説の蹴り技を修得する修業中だったらしく、マスターした技の練習台にと襲撃してきたのである。

 

 戦闘にメリットが無いからと言ったが聞く耳を持たない【やもりん】に対し、ならば勝ったらカード化を了承させる事で勝負。

 

 見事に勝利を納めた。

 

 勿論、美味しく『戴きます』をしてからカード化、四枚目のモンスターカードをゲットだぜ!

 

 赤ブルマの上からの愛撫ですっかり参ったらしく、【やもりん】はアッサリと堕ちたのだ。

 

 蹴り技を強く鍛えるべく下半身を鍛えていただけあって、アソコの締まり具合もスゴかった……

 

 満足気なユートに対し、少し不満気なユーキは別に嫉妬している訳では無──いとも云えないが、自分とスるより満足されては立つ瀬が無いのだろう。

 

 小さな肢体で頑張って、狭いアソコで扱き上げるのがユーキだが、それよりも何だか良さそうにしているのが少し癪だったから。

 

「キック系のカードが手に入ったのは良かった」

 

「くっ、そんなにこの子のアレが良かったの!?」

 

「──は?」

 

 意味不明な呻き声と共に吐き出される呪詛にも近い科白に、ユートは思わず目を点にして首を傾げた。

 

 【やもりん】のカードはアクティブでキックの力、パッシブでカウンターという使い勝手の良いモノ。

 

 また、フィールドスキルに壁破壊が在った。

 

 カードリーダーは三つが設けられており、使いたいスキルに応じて読み込む為のリーダーを変える。

 

 アクティブはブレイド系仮面ライダーがよくやっている【キック】や【スラッシュ】といったスキルで、パッシブは予め読み込んで暫く持続するスキルだ。

 

 フィールドスキルに関しては、そのスキルの働きを瞬間瞬間に行使するモノ。

 

 これが中々に面白い。

 

 これからも女の子モンスターと交流? していき、カードを増やしていったら退屈凌ぎにはなるだろう。

 

「そういや、ケイジン・カーターだっけ? 一回戦の相手だけど、伝説の蹴り技ってのを会得したみたい」

 

「そうか、興味が無かったから石板を捜していた奴にくれてやったけど、自分の為じゃなくケイジン・カーターに渡したのか」

 

 ユートが斃し、ヤってからカードにした【やもりん】が持っていた伝説の蹴り技を描く石板は、それを捜していた少年に上げた。

 

 確か、セレーナ・フレイズという美女をパートナーにしていた少年だった筈。

 

「なら、少しは楽しめる……かな?」

 

 この世界のプロレス──WWTの絶対王者であると云うケイジン・カーターだったが、最近は行き詰まりを見せているらしく、伝説の蹴り技とやらを修得するべくこの闘神都市を訪れたらしい。

 

 やっぱり目的も色々という事なのだろう、夢や希望を持って来る人間も居て、野望や欲望の虜も居る。

 

 後者は兎も角、前者に関しては踏み躙るのが心痛む気もしたが、だからといって勝利は譲らない。

 

 況んや、後者なんぞ寧ろ幾らでも踏み躙って、全部を否定してやる。

 

「そう、否定してやる!」

 

 酒場で働くさやかという赤毛の女性、去年の大会で敗者となった者のパートナーだったらしいが、同じく去年の大会で優勝を果たした闘神クランクのお気に入りらしく、いつも酷い目に遭わされているとか。

 

 その陵辱の現場を先日、見る機会があった。

 

 猫なで声でさやかを呼び出し、『お兄ちゃん』とか呼ばせて自分のモノに奉仕を強要する姿。

 

 ユートはルール上の問題が無いから何も言わずに、酒場から黙って出て行ったのだが、どうやらシード君とやらは酷く憤慨をしていたらしい。

 

 『青い』とは言うまい、ルール的には問題無いから何も言わなかっただけで、ユートも公衆の面前でアレはどうかとも思ったし。

 

 尚、他所でヤる分には特に言う事も無かった。

 

 そもそも、義憤に駈られてクランクを打ちのめしたとして、それで逮捕されでもしたらユーキの身が危ないのだから。

 

 とはいえ、気分的に良くないのも事実だから優勝をしたら〝息子様〟を切り落として鬱憤を晴らす。

 

 若し、さやかが対価となるモノを用意した上で助けを求めて来ていたのなら、その場で助けるのに否やは無かった。

 

 勿論、真っ正面からブッ飛ばす訳ではない。

 

 それでも、それくらいはしても良いと思わせる程度には良い子で、それなりに美人ではあったのだ。

 

 それは兎も角として。

 

 ラウズリーダーにスワティの【CHANGE】カードを装填、シャッフルラップが腰に展開したと同時に掛け声を叫ぶ

 

「変身!」

 

 ターンアップハンドルを引くと……

 

《TURN UP》

 

 ラウズリーダーが回転、電子音声と共にオリハルコン・エレメントが展開し、ユートはそれを潜る。

 

 仮面ライダーブレイブとなり、ユートはコロシアムの中央へと立った。

 

 ユートの仮面ライダーブレイブ・Aモードを見て、ケイジン・カーターは目を見開いていたが、すぐ気を取り直して口を開く。

 

「ほう、中々に外連味の利いた姿だな」

 

「これを単なるハッタリと思うなよ? 僕の信頼する技術者が技術の粋を凝らして造り上げた逸品だ」

 

 ラウズホルスターから抜いて手にしたブレイラウザーを構えて、ユートは口元を吊り上げながら言う。

 

 オリハルコンプラチナを極限まで研磨したというのが原典のオリハルコンエッジを持つブレイラウザー、だけど流石に本物を用意する事は出来なかったが故、普通に神鍛鋼(オリハルコン)を用いている。

 

 勿論、高熱放射と高周波振動によるヒーティングエッジは採用されていた。

 

 要するに、根本的な素材以外は基本的に原典に窮めて近い代物という事だ。

 

 この格好をケイジン・カーターは外連と呼んだが、決してそれだけではないというのがユートの意見。

 

 ハルケギニアの時代よりずっと傍に居た者、ユーキが手ずから造り上げた逸品であるからには、ユートが信じない理由は無かった。

 

 さて、女の子モンスターのカードは現在だと僅かに四枚──【ラルカット】、【きゃんきゃん】、【ざしきわらし】、【やもりん】のみである。

 

 【ラルカット】は二段攻撃を可能とした燕返し。

 

 【きゃんきゃん】は防御を上げるガードアップ。

 

 【ざしきわらし】は命中やクリティカル率などを上げるラッキーヒット。

 

 【やもりん】は伝説の蹴り技の六十四文キック。

 

 現状では戦術など有りはしなかった。

 

「始め!」

 

 司会者兼審判による始まりのコールを受け、ユートとケイジンが同時に駆け出して互いに攻撃を放つ。

 

 当然だが、ケイジンは刃に直接は触れない様に攻撃を仕掛け、ユートはブレイラウザーの攻撃を極めるべく動いていた。

 

 ケイジン・カーターは、WWTのマットに立っているプロレスラー。

 

 ラグナード迷宮に棲まうモンスター、プロレス男の様な無駄筋肉と違い一切の無駄を省き引き締められた鋼の肉体……それは正しく絶対王者の風格だ。

 

 そんな鍛え抜かれた肉体には、神鍛鋼(オリハルコン)の刃とて瞬間的になら抗し得る。

 

 故にこそ、ブレイラウザーという剣に対しながら、拳で打ち合うという普通なら有り得ない、非常識な事も可能となっていた。

 

 仮令、小宇宙を使わない素の肉体能力だけで闘っていても、ユートもまた肉体が尋常ではないから普通に打ち合っているが、これで通常の人間の侭だったなら危なかっただろう。

 

 プロレス百戦無敗の絶対王者の名は伊達ではない。

 

「ケイジン・カーター……伝説の蹴りってのは使わないのか?」

 

 正確には伝説の足技というのだが、やっている事は要するに蹴りなのだ。

 

「ほう、君がそれを知っているというのは?」

 

「アンタが受け取った筈の石板……あれは元々は僕が手に入れた物だからね」

 

「そうか……」

 

「まさか、敗けたらパートナーがどうなるかも知れない一戦に、自分で手に入れた訳じゃないから使わないとか、そんな事を考えてはいないよな?」

 

「むう!?」

 

 闘神大会の勝者は、敗者のパートナーを一晩に限り好きにする事が出来る。

 

 但し、殺害だけは禁じられているが……

 

 それ以外なら何をしたとしても、勝者の権利として咎められはしない。

 

 勿論、何もしないというのも権利の一つだろうが、闘神大会出場者の多くは男であり、パートナーは全てが女性なのだ。

 

 ナニがどうなるかなど、言わずとも知れた事。

 

「それで敗けるのはアンタの勝手だが、全力を尽くして敗けたのならまだしも、出せる筈の力を出さず敗けてしまうなど、パートナーになってくれた女性に失礼な話だと思うぞ?」

 

「……」

 

 打ち合いを止めたケイジン・カーターは、瞑目をしながら天を仰いだ。

 

「そうだな、君の言う通りかも知れない」

 

 迷いは消えたと言わんばかりに、ケイジンがユートを真っ直ぐ見る。

 

「まあ、それでも僕が勝つんだけど……ね」

 

 そんなケイジン・カーターへニヤリと、口角を吊り上げながら不敵に笑って見せると、ブレイラウザーのオープントレイを開く。

 

 二人の動きが止まった事に観客はざわつくものの、突如として果てしない緊張感がコロシアムを包み込んで風を感じた。

 

「ヌオオオオオッ!」

 

 先に動いたのはケイジン・カーター。

 

 ユートはそんな彼を認めると、二枚のカードをオープントレイから引き抜き、それをブレイラウザーに付いたアクティブ用スラッシュリーダーへと通す。

 

《SWALLOW TURN!》

 

《SIXTY FOUR KICK!》

 

 ブレイド系仮面ライダーでは、カードを連続スラッシュする事でコンボというのが発生する。

 

 例えば、ブレイドだったら【キックローカス】と【サンダーディアー】を使って通常なら【キック】と【サンダー】だが、コンボの場合は【ライトニング・ブラスト】となる。

 

 そしてユートは、この組み合わせでコンボが発生する事を聞いていた。

 

《TWIN BREAK!!》

 

「はぁぁぁっ! ウェェェェェェイッッッ!」

 

 二人の【伝説の足技】が互いに炸裂する。

 

 それは相殺をし合って、ケイジン・カーターは着地をするが、ユートの攻撃はまだ終わってはいない。

 

 空中でターンをすると、再びケイジン・カーターへ蹴りを見舞う。

 

「な、何とぉぉっ!?」

 

「ウェェェェェェイッ!」

 

 最大の攻撃を仕掛ければそれだけ、攻撃後に大きな隙を作ってしまう。

 

 百戦錬磨のケイジンとはいえ、僅かな隙は出来てしまった訳だが、その僅かな隙を突いて再び蹴りが彼の胸部に炸裂……

 

「グハァァァッ!」

 

 コロシアムの壁まで吹き飛ばしてしまった。

 

 壁を破砕する威力で吹き飛ばされたケイジン・カーターは、丈夫な鋼の肉体であるが故に生きてこそいるのだが、流石に意識を保つ事は出来なかったらしく、ピクリとも動かない。

 

 司会者であり審判でもある人物がケイジン・カーターの様子を見て、気絶しているのを確認すると……

 

〔ケイジン・カーター選手の試合続行不可能、ユート・オガタ選手の勝利!〕

 

 高らかにユートの勝利を宣言するのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 アンドラ・くじらは控え室に設えられたベッドに腰掛け、緊張をした面持ちでケイジンの帰りを待つ。

 

 ケイジン・カーターは、WWTのマットで絶対王者として名を馳せるプロレスラーだ。

 

 くじらはそんな彼のマネージメントを行いながら、彼の為に相手の情報を集めたり、様々な世話などをしてきたのである。

 

 ケイジンはそれを純粋な〝善意〟と受け取ったが、くじらはセレーナから指摘を受けて気付いた……これは好意だったのだと。

 

 セレーナ・フレイズと話す機会があったくじらは、ケイジンに対して懐いていた想いに気付いたが、当のケイジンは全く気付いている様子もなかった。

 

 そして一回戦が始まり、ケイジンが勝利を納めれば扉が開く事はないだろう、だが然し開いたならそれはケイジンが敗北したという確かな証となる。

 

 ガチャ……

 

「っ!?」

 

 ドアノブが音を鳴らせ、動いた瞬間くじらはビクリと肩を震わせた。

 

 果たして扉が開き、入ってきたのは前にラグナード迷宮の前で会った青年で、彼はケイジンの一回戦での相手となっていた筈だ。

 

 そんな彼が、この時間帯に此処へ入って来たという事は、第一回戦は終わってケイジンが敗北を喫したという事に他ならない。

 

「……ケイジンは?」

 

「怪我はしたけど、丈夫な身体だからね。ちゃんと生きているよ」

 

「そう……」

 

 真剣すら使う大会故に、敢えて倒れた相手にトドメを刺すのは兎も角、攻撃を受けて怪我をしたり死んだりする事はある。

 

 実際、ケイジンも丈夫だったから割とピンピンしてはいるが、それでも全身がガタガタとなっていたし、蹴りを──【ツイン・ブレイク】を受けた胸部は陥没していたくらいだ。

 

 よくもまあ、生きていたものだった。

 

「さて?」

 

「ふん、ヤりたければ好きにヤれば良いじゃない!」

 

 くじらは大胆にも服を脱いで下着姿となり、程好く鍛えられながらも筋肉の付かないし、染みも全く無い綺麗な肢体を露わにして、然して大きくもない胸部を両腕で隠しつつ、ベッドの白いシーツの上でペタンと所謂、女の子座りで座ると上目遣いに睨んでくる。

 

「そ、じゃあ遠慮無く」

 

 半裸のくじらに近付き、無遠慮に肩へと触れた。

 

「ヒッ!」

 

 思わず息を呑む。

 

 威勢よく言い放ったが、そんなものは恐くないという見せ掛けのポーズでしかなく、実際には内心で震えていたのだから当然だ。

 

 ソッと押し倒される。

 

 ユートは特にがっついてはいない為、乱暴に押し倒したりはしない。

 

 だけどヤらない理由も有りはしない訳で、ユートはくじらの頬を撫でる。

 

「ひうっ!」

 

 目を固く閉じて顔を背けるが、ブラジャーの隙間へ手を突っ込まれ、小さくはなくとも大きくもない胸を揉みしだかれて声を上げてしまった。

 

「反応が随分と初々しい、ちょいと面倒だけど……」

 

「あっ、ん……」

 

 触れ方が更に優しめになって、嫌悪感とは異なる震えが……否、奮えが身体を駆け抜けていき、背筋を何か今まで感じた事の無い得も云われぬ感覚が奔る。

 

「アアッ!」

 

 大雑把なケイジンと全く異なる触れ方に、病み付きになりそうな感覚が間断無く襲い掛かってきて、自分でも気付かぬ内に嬌声を上げており、あられもない余りに大きな声を上げた時に気付いてしまい、羞恥から顔を真っ赤にしてしまう。

 

 これでも未だに決定的な部位には触れてもおらず、何だか焦らされた感じで切ない気分になってきた。

 

 股を擦り合わせるとクチッと水音が響き、今の自分の股の状態を知ってまた赤くなってしまう。

 

「(ぬ、濡れて……?)」

 

 くじらが手で確認をしようとしたら、それをユートによって阻止される。

 

「あっ!」

 

「自分で慰めちゃ駄目だろう?」

 

「べ、別に……」

 

 そんな心算は無いと言いたかったが、現在進行形で未だに触れられない部位が疼き始めており、自分で触れてしまえばその侭本当にヤりかねないと自覚をし、何も言えずにいた。

 

 自慰も赦されず、かといってユートは痒い所に手が届かない触り方でもどかしさばかりが募り、遂に涙を浮かべ始めてしまう。

 

「ね、ねぇ……何でさっきからずっと外れた場所ばかり触ってるのよ?」

 

「別に? そっちの方が愉しいからだけど?」

 

「うう……」

 

 胸を揉んだり太股を撫で回したり、首筋を舐めたり耳朶を甘噛みをしたりと、徐々にだが確実に気分が盛り上がる様に触れながら、性感帯の最も感じるであろう部位には微塵も触れようとはしないユートに対し、くじらはもう我慢の限界にきていた。

 

「も、もっとちゃんと触れてよぉ……」

 

「それじゃあ、ちゃーんと御強請りしてみようか?」

 

 とんでもない事を言われたくじらだが……

 

「あ、う……私の……イヤらしくヒク付いて期待してる部分を……貴方の舌で、指で、感じさせて……っ」

 

 ダメだと思っていると云うのに、思いに反して口を突いて出るのは御強請りの言葉だった。

 

 それからすぐにくじらは快感の波に呑まれ、絶頂の中で激しく絶叫を上げる。

 

「……あ」

 

 涙と涎に濡れて羞恥心から紅くなった顔をユートの下半身にふと向けると……

 

「す、すご……」

 

 決して自分には存在していない槍が、自身を貫かんと屹立しているのを視た。

 

 ケイジンのモノを拝んだ事はあるが、あの巨躯なる彼と比べてみて勝るとも劣らないモノ。

 

 それが少しずつ近付いてくると、納めるべき場所へと納められた瞬間再び快感の激しい波が押し寄せて、くじらは知識が無いから判らないが、脳内に快感を司る分泌物が溢れて絶頂へと導き、初めてを引き裂いた痛みを軽減してくれる。

 

 二時間にも亘る長い前戯から、決定的な本番に至ってケイジンの名を口ずさみつつも、白いシーツを紅い染みで汚しながら涙と涎を垂らして、後悔と満足感の板挟みによる背徳感まで、快楽へと換えて朝まで溺れてしまうのであった。

 

 

.


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