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フラフラと宿屋に戻って来たユート、其処には精彩に欠く表情でスワティ辺りは心配をしていたのだが、ユーキ頭を抱えている。
「ヤバいな。兄貴ってば、血に酔ってるよ」
「血に酔ってるですか?」
「う〜ん、多分なんだけど……資格迷宮で下劣な屑を殺してきてるね」
「ふぇ!? 殺してって、どうしてですかぁ?」
「さあ? 兄貴を敵に回したのが下劣な屑だったからじゃない?」
「はぁ……」
スワティはよく解らないといった風情で、気のない生返事をした。
「ボクは兄貴の相手をするからさ、スワティは
「きゃる? どういう意味ですか?」
「血に酔った兄貴はまあ、何と言うか……」
ちょっと頬を朱に染め、ポリポリと掻く。その視線はユートの股間へと注がれていた。
「発情しちゃうんだよ」
「はつ……って!? きゃる〜ん!」
「兄貴ってば、下種を相手にすると残忍で残酷で冷酷になるからね。平然と敵を殺してしまうんだ。その血に酔って発情しちゃうから鎮めて上げないと……」
「きゃ、きゃる〜ん!?」
今回は名も知らない男をモンスターに生きた侭喰わせるという、残虐極まりない殺し方をしている。
そんな下種の血を浴び、興奮したユート。
「という訳でさ、さっさと退避をしないと襲われても知らないよ?」
「きゃる! わ、判りましたぁ!」
慌てて部屋の外へと出たスワティを見送るユーキ、すぐにユートの方を向き直って瞑目をすると、服の釦に手を掛けた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日、ユートとユーキはコロシアムへと向かう。
【迷宮攻略の証】を持って行き、本戦出場の権利を得る為である。
コロシアムの受付には、緑のショートヘアにアクアマリンの瞳の女性が居り、更にハイスクールD×D的な世界からやって来た人妻であり、黒髪ポニーテールな女性の姫島朱璃も何故か立っていた。
「優斗様、どうですか? 【迷宮攻略の証】は無事に手に入りましたか?】
「ああ、これだろ?」
「はい、確かに。流石ですね優斗様」
「おめでとうございます、無事に予選突破です」
朱璃とシュリから祝福の言葉を受けるユート。
「それでは、闘神大会に於ける詳細なルールについて御説明しますね。その後、意思確認と契約書の取り交わしを行って、正式参加と相成ります」
「了解、了解」
ユートは二人からルールの説明を受けた。
最終確認をされた際に、ユートは取り敢えず気になった事をシュリに訊ねる。
「引き返さなかったら契約書の通り、全てを受け容れた事になるんだな?」
「はい、そうなりますね」
「そう、その最終確認って全員にしてるんだよね?」
「勿論です」
「判った」
ユートとユーキは契約書にサインをする。
「兄貴、こうなったからには敗けられないよ?」
「勿論、敗ける気は無い」
敗北すればユーキがどうなるか知れないし、更には一年間の強制労働をさせられてしまう。
「言っとくけど、兄貴以外に肌を許す気無いからね」
「判っているさ。絶対に敗けないから安心しろ」
一年間の強制労働を免除されるには、一〇〇万Gの免除金を支払うしかない。
それは難しくはないが、その際にネックとなるのは勝者が敗者のパートナーを一晩好きに出来る権利。
故に敗北は許されない。
「それじゃ、行こうか」
「うん」
出て行く二人を見て朱璃は思う……
「(う〜ん、仲睦まじいわねぇ。その優しさをもう少し朱乃にも欲しいわ)」
苦笑いを浮かべながら。
後日、最後の出場参加の資格を得るべく少年と金髪の女性が訪れる。
資格迷宮は突破してきたものの、何処か頼り無さげな少年だったと云う。
「さて、次はどうする?」
「ラグナード迷宮に入る為の許可を、市長から受けに行こう」
「ラグナード迷宮……ね。彼処って修業用のダンジョンの筈だけど、兄貴に必要は無いんじゃない?」
「そうでもないさ」
女の子モンスターのカードを増やす為にも。
やり方は少しおかしかったが、ああいうのはちょっと愉しくなってきた。
ブレードの【醒剣ブレイラウザー】や龍騎の【ドラグバイザー】みたいな専用リーダーを造ったら、その力を出力する事も可能になるだろうし。
「まだトーナメントの抽選すら終わってないけどね、許可だけは取っておいた方が後で楽だから」
「まあ、そうだね」
一応、予選は既に通過をしているのだからラグナード迷宮へと入る権利は有しているだろうし、アプロス市長も実力者が入る分には反対もしないと思う。
結果だけ云えば、許可は拍子抜けをする程アッサリと出た。
これで暇潰しにラグナード迷宮へと入り、趣味的に女の子モンスターのカードを蒐集をする事も可能。
それに平行してカードリーダーを造ろうと考えた。
呑気に構えてはいたが、実は既に色々と変化が……
転生者が一名、ユートが入り込み、更には本来なら予選を通過していたあの男の不在などが、本来の流れを変えてトーナメントにも影響を及ぼしてるのだが、原典を識らないユート達に解ろう筈もなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この世界はファンタジーな世界であるが故に娯楽は無く、ハッキリと言ってしまえばこの上無く退屈。
そういう意味では娯楽に溢れた現代日本は天国だと云えるし、恵まれた世界だとも云えた。
だから、上手い暇潰しを見付けなければユートは、本戦開始までユーキとひたすらセッ○スでもしているしか無かったし、女の子モンスターのカード蒐集というのは愉しい暇潰しだ。
カード屋にカードを見せたら、カード屋が手を加えるまでもなくカードが使える状態らしく、後は何らかのデバイスを用意すれば、普通とは違う効果も得られそうで楽しみだった。
ユーキとしても助かる。
先日……というか、今朝までずっとヤり続けていたから、負担も半端ではなく流石に疲れた。
血に酔ったユートは抑えが利かず、遠慮も全く無しに欲望の塊を吐き出され、全然寝てないから眠い。
ユートとの情事は好きだけど、ヤり潰されてしまうのはやはり困る。
それが正直な感想だ。
そんなユーキの思いなどは他所に……数日後の本戦トーナメントの抽選会までユートはラグナード迷宮へ潜ってカード蒐集したり、宿屋でカードリーダー・デバイスを造ったりする心算である。
まあ、抽選会の後も当然ながら行動は変わらない。
アプロス市長から迷宮を探査する許可は得た訳で、ユートはラグナード迷宮に向かった。
ラグナード迷宮──先の資格迷宮とは、そもそもの規模からして全く違う闘神都市最大のダンジョン。
ユートも詳しくは知らないのだが、少なくとも資格迷宮の時みたいに僅か半日もあれば踏破が可能なものではない筈だ。
というよりは、ユーキがプレイをしたとか言っている闘神都市Ⅲの迷宮を鑑みれば、年単位での攻略すら必要となりかねない広さを持つと推測される。
そういう意味でならば、退屈はしそうにない。
「これがラグナード迷宮──資格迷宮に比べて豪華な入口だな」
あの今にも崩れそうだった資格迷宮、その貧相に過ぎる入口に比べると確りとしていた。
資格迷宮を洞穴であるとすれば、ラグナード迷宮は正しくダンジョンだろう。
ブラックメタル・メイルを身に纏い、バックラーを左腕に、腰には妙法村正を佩いた剣士としての出で立ちでラグナード迷宮の中へと入っていく。
アプロス市長が言っていた事だが、最近は迷宮内を盗賊などが荒らして回っているらしい。
場合によれば襲ってくるかも知れないと、アプロス市長から注意を受けた。
だが、ユートからすれば何も問題は無い。出て来れば排除をするまでだ。
早速、ユートは分かれ道に差し掛かって向かって右へと曲がる。
何故かハニーらしき物体が鎮座をしていたのだが、取り敢えずは見なかった事にして放置しておく。
先に進みまた右折すると梯子が掛かっている。
其処を降りたら濃厚なる気配と共に、濃い緑の怪物が行き成り襲撃してきた。
「チッ! お呼びじゃあないんだよ!」
舌打ちをして佩刀を抜刀すると、その侭怪物に対して斬り付けてやる。
刀身には焔が宿って煌々と燃え盛っていた。
斬っっ! 轟っっ!
斬り裂いてやった瞬間、緑の怪物は傷口を燃やされてのた打ち回る。
「緒方逸真流・抜刀術──【華斬】!」
燃えていた刀身の焔は、瞬時に消えてしまった。
鞘内の火薬に鞘走りの際の摩擦熱で燃やし、瞬間的に刀身へと焔を灯す技で、敵は斬られたと同時に傷口を燃やされてしまう。
それが緒方逸真流の抜刀術が一つ【華斬】だ。
ユートはのた打つ怪物の首を落とす。
すると、緑の怪物は消滅してしまった。資格迷宮でも死んだモンスターは消滅していたし、これが此処のモンスターのデフォルトという事なのだろう。
リザルト画面を見ると、経験値とGOLDが表示されており、モンスター名は【おかゆフィーバー】とされていた。
「なんつー名前だ」
とはいえ、そんな怪物に用事など有りはしない。
フロアを調べようと動いてすぐに止まる。
「行き止まりか?」
壁は崩せそうだったが、そうするとみすみす後発に道を教える事になる。
今は放って置こうと考えたユートは、元来た道を戻ってハニーが鎮座する場所を今度は左折した。
因みにフロアには名前が付いているらしく、先程の【おかゆフィーバー】とやらが出たフロアは【黄金の時代】とステータスウインドウに表示されていた。
そして此処は【鉄の時代】とされている。
このフロア、基本的には余り資格迷宮と変わらないらしく、大したモンスターも出て来なかった。
奥に行くと【鉄の時代】の第二フロア。
赤紫色のクローバー状な謎物体な【るろんた】なるモンスターが現れた瞬間、ユートは唐竹で真っ二つにしてやる。
他には【ぶたバンバラ】という、酒場で名前を聞くモンスターの名前。
このショルダーとスモールシールドに、ボロい槍を持つ豚野郎が食材と思うと複雑だが、さっさと斬る。
探索をしていると、見た目に子供の姿をした少女がスキップをしながら向かって来ているのだが、まさか本当に子供がこんな迷宮に居る筈もない。
恐らくは女の子モンスターだろうと考え、ユートは黒髪おかっぱ頭でミニスカっぽく纏めた着物を着た、両手に白狐に狸のパペットを填めた女の子モンスターに近付いた。
モンスターであり、人間とは異なる生命体であるのならば、人間の……しかも地球の法律など関係無い。
見た目がちょっとアレなのだが、そもそもユーキも大して変わらないのだから今更というやつだろう。
女の子モンスターが此方に襲撃をしてくる。
「ぽんぽこパーンチ!」
右手の狸パペット側で殴り掛かってきた。
ポコッ!
全く痛みを感じないし、どうやらこの少女は相当に非力なタイプらしい。
「こーんパンチ!」
今度は左手に持つ白狐のパペットで殴ってくる
所謂、強パンチとでもいうのだろうか? 少なくとも【ぽんぽこパンチ】よりは威力があった。
でも効かない。
もっと下層のモンスターならまだしも、こんな浅いエリアではユートを傷を付けるには及ばない様だ。
ユートは、手にしていた妙法村正の刃を返して峰を前面に出すと……
「はっ!」
「きゃうっ!?」
女の子モンスターの足を村正で払って転けさせた。
尻餅を付いてひっくり返った少女の顔の近くへと、妙法村正を地面にズシャッと突き立てる。
「ヒッ!」
ヒトの姿をしていても、つまる処はこの娘もやはりモンスター。理性より本能の方が強いのか、これ以上の抵抗は殺される可能性を感じて、すっかりと大人しくなってしまう。
何だか見た目の可愛らしさも相俟って、自分が悪党外道の類いになった気分となるユートだが、モンスターである以上はそんなもの掻き捨てる。
カタカタと、生命の危機に小さく震えるモンスターにアクセスし、ステータス・ウインドウからスキルを選択──【検索】を選ぶ。
其処には【ざしきわらし】という名前が表情され、種族名が判明した。
ネームドモンスターではないから、どうやら個体名は持っていない模様。
まあ、この世界にそんな概念が有るかどうかも判らないのだが……
ユートは大人しくなったざしきわらし──何故か平仮名で表記されていた──の元から露わな太股に触れると、内股をソッと
ビクビクと怯えていた筈のざしきわらしだったが、暫くしたら頬を朱に染めてだらしなく半開きになった口から涎を垂らしており、目をトロンと蕩けさせながら喘ぎ声を響かせる。
女の子モンスターというのは、カテゴリーとしては間違いなく狐狸妖怪・魔物の類いに属してはいるが、身体的には人間の女性との差異が余り無い。
勿論、芯から診たならば全く別物であろう。例えばユートのモノは大丈夫だったが、本来なら彼女らには人間の精液は毒として働くという辺り、肉体の作りの違いを思わせる。
ユートがカード屋に行ってカードを見せた時、手を加えるまでもなく既に心を開いており、一体全体、何をやったのかと訊かれた。
ユート的には『ナニをヤった』としか答えられなかったが、その時に女の子モンスターの特徴を教えられたのである。
実際、その昔に女の子モンスターを捕らえてヤった男が居たらしく、その直後に苦しんで死んだ様だ。
その事から導き出された答えが、人間の精液が毒として作用するという事実。
ユートはカテゴリー的に人間だが、可成り変質している所為で毒にはなり得なかったのかも知れない。
閑話休題……
着物の帯は解かず肩口をはだけさせ、小さな胸を軽く揉みながら人間でも感じる股間の部位を弄る。
軽く涙を零しながら嬌声を発するざしきわらしの口を自らの口で塞ぎ、舌を絡ませてお互いの唾液を混ぜ合わせて呑み込ませた。
それから一時間経過──
ナニかを股間から溢しながら眠るざしきわらしに、ユートは白紙カードを使ってカード化をする。
このカード化に関しては本人から了承済み。
眠る前、試しに言ってみたら喜んで──というか、悦んで頷いたのだ。
ある程度、【鉄の時代】を探索し終えたユートは、ラグナード迷宮から出ると宿屋へと戻る。
部屋にはユーキとスワティが待っていた。
「お帰り、兄貴」
「お帰りなさい」
二人に出迎えられるが、ユーキはすぐにニヤニヤと笑いながら訊いてきた。
「それで? 今日はどんな女の子モンスターを誑し込んで来たのかな?」
「ユーキ、人聞きの悪い事を言うなよ……間違いじゃないんだけどな」
「じゃあ、良いじゃん」
ユーキが新しく作られたカードを見ると、其処には当然ざしきわらしの絵が描かれている。
「うわ、ビジュアル的にはちょっとヤバいよね」
確かに実質には兎も角、単純にビジュアルだけを視たら、Y○UJ○にイタズラじゃ済まない事をしている変態さんである。
「それを言ったらユーキが相手でも同じだろ?」
「うわ、言ってはいけない事を!?」
生きてきた継続累計年数は永いが、ユーキの見た目は身長が一四〇センチにも届かず、胸囲も七〇センチに届かないペタ胸であり、端からは中学生にすら見えない容姿だ。
容姿の基がジョゼット、つまり【ゼロ魔】のタバサと瓜二つで、髪の毛を伸ばしてポニーテールにしている以外に差異は無い。
「きゃる〜ん。そういった会話は少し遠慮をして欲しいかも……です」
縁結びの神様とはいえ、男性経験皆無なスワティは明け透けな会話を聞いて、真っ赤になっていた。
「さあ、早速デバイスを造ろうか!」
ざしきわらしのカードを手にしたユートは、カードの力を機械的に引き出す為のデバイス造りを開始。
「それで、どんなのが良いかな?」
「カード型というのなら、【仮面ライダーブレイド】に【仮面ライダー龍騎】、【仮面ライダーディケイド】だろうね」
「全部、仮面ライダーじゃないか!?」
自信満々に言うユーキが挙げたのは、カードを使って戦う仮面ライダー達。
五二体+αのアンデットを敵に、剣崎一真達が戦う物語が【仮面ライダー剣】という作品で、滑舌の悪さからオンドゥル語と揶揄をされる言語で有名に。
ミラーワールドに放たれたミラーモンスター、そのモンスターと契約して力を得た一三人の仮面ライダー達が互いに合い争うライダーバトルに、城戸真司というジャーナリストが参戦してライダーバトルを止めるべく戦うのが【仮面ライダー龍騎】の物語。
十周年企画で制作された【仮面ライダーディケイド】はある意味では、最大の裏切者の物語。【アンチ・ライダーシステム】とも云うべき【ディケイドライバー】を〝再び〟手にしてしまった
最大の裏切者の意味は、元々が仮面ライダー自体が裏切者であり、基本的には敵と同じか似た力を用いる事からきており、ディケイドが仮面ライダーの力を使うのは、本来の敵が仮面ライダーである事を示す。
だが、何らかの事情にて記憶を喪った士は、最終的に大ショッカーと敵対し、仮面ライダーという鞘に戻った二重の裏切りから最大の裏切者となった。
本人が意図していた訳でもないだろうが……
「ディケイドは無いな」
「何でさ?」
「いや、カードに掛かれた仮面ライダーに変身するのが真骨頂だろ? まさか、僕が女の子モンスターに成るのか?」
ユーキはふと、考えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
《KAMEN RIDE》
「変身っっ!」
《CANCAN!》
「遊んで遊んで♪」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
げんなりするユーキ。
「……無いね、確かに」
「だろ?」
仮面ライダーディケイドはソッコー却下された。
「龍騎も無理だな」
「まあ、龍騎は……ねぇ」
ミラーモンスターと呼ぶには流石にちょっと違うだろうと感じたか、ユーキも苦笑いをしながら頷く。
よく解らないスワティだけは、どうにも首を傾げるしかなかったが……
「となると、ブレイドか」
「そうだねぇ。女の子モンスターが何体くらい存在するか判らないけどそれなりに居るだろうし、アンデットの代わりには良いね」
「ん? でも通常のカードは兎も角、特殊カード──チェンジとアブソーブとフュージョンとエボリューションはどうする?」
「ああ……」
変身の為のチェンジ。
強化変身の触媒的なのがアブソーブ、強化変身の為のカードがフュージョン。
そして最強フォームへの変身がエボリューション。
確かに女の子モンスターのカードは、【スラッシュ】や【ブリザード】みたいなカード的なモノであり、変身系とは趣が異なる。
「行き成り行き詰まった」
「アハハ……」
ユーキも乾いた笑いしか出ない。
「あの〜」
「なに? スワティ」
「例えば私の力をカードに封入するとか? 封印されちゃ困るけど……」
ポン! と手を叩く。
「「その手があった!」」
ユートは亜空間ポケットから何枚かのカードを取り出すと、女の子モンスターカードと並べて置いた。
其処には【プリンセス】【ハーミット】【イフリート】のカード。
他にも何枚かが在るが、今回はこれだけで良い。
「スワティのカードで変身をして、ハーミットのカードを触媒にイフリートのカードで強化変身、プリンセスのカードで最強フォームに変身……かな?」
「どういう意味の内訳?」
「プリンセスとイフリートは心通わせた訳じゃなく、割と無理矢理に力だけ奪った形だけど、ハーミットはそうじゃないんだよ」
「ああ、ハーミットは堕としたんだね」
他に心通わせた者も居るのだが、アブソーブは一枚在れば良いのだし、それはフュージョンとエボリューションも同様だ。
だから初期の三枚だけを選んで出した。
また、本来このカードの役割は天使召喚にある。
「【ナイトメア】や【ベルセルク】は?」
「いや、今回は特殊カードを四枚だけだし、スワティを含めれば三枚で済むから要らんだろう?」
「ま、それもそうだねぇ。変身後の姿まで仮面ライダーにするのはアレだけど、デバイスはブレイラウザーと同じで良いよね?」
「機械的な部分は
「りょ〜か〜い。取り敢えずブレイラウザーっぽいのを造るね。強化変身の為のラウズアブソーバの方は後で造るよ」
「判った」
ユーキの言葉に頷くと、スワティの方を向く。
「それじゃ、カードを創ろうか?」
「きゃる〜ん! 頑張りますね!」
何を? と訊きたかったが止めておく。
用意したカードに神力を注ぐだけで、頑張る要素が皆無なのは知っているが、やる気なのにわざわざ水を差す事もあるまい。
それから、抽選会までの数日間はデバイス造りへと精を出し、何とか完成まで漕ぎ着けた。
「心に剣と輝く勇気っぽい物を……仮面ライダーの姿じゃないけど、仮面ライダーブレイブって事で。あ、ちゃんとカメンライダーの姿にも成れるよ?」
だから変身ツールの名前は【ブレイバックル】で、カード制御デバイスの名前は【ブレイラウザー】なのだと、ユーキは在りもしない胸を張り言ったと云う。
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