.
羽純・フラメルは手を腰の辺りで組み、試合を大人しく観戦していた。
本来ならこの世界に存在しない人間ではあるけど、転生者による召喚によって喚ばれてしまい、その上で〝何故か〟という部分には今現在は靄が掛かったみたいに思い出せなかったが、幼馴染みのナクト・ラグナードと単なる【幼馴染み】の関係から更に一歩を踏み出そうとしていたが故に、服は着ておらず股をMの字に開脚した状態でナクトの分身が、羽純の秘裂に宛がわれた状態で今正にグッと力を籠めようとした瞬間、羽純は真っ赤な顔で恥ずかしそうに両手で目を覆い、見ていなかったけど世界から消え失せて、召喚主たる転生者の前に顕れる。
急に秘裂への圧迫感が無くなった事に不審を覚え、『ナクト?』……と名前で彼を呼びながらソッと手を退けて前を見遣れば、目の前には見知らぬ男と銀髪の少女が立っており、見知らぬ男に至っては勃ってすらいたから一気に恐慌状態に陥るが、すぐにも我に返る事となった。
秘裂への圧迫感が生まれた瞬間、ブチブチとまるで音が感触になったみたいな嫌な響きが下半身に表れ、次の瞬間には得も知れぬ痛みが羽純を襲ったから。
既にナクトが秘裂を弄って愛液で潤っていたけど、何の配慮も無く無遠慮にも狭い道にぶち込まれた槍、肉壁のより一層狭い部分──処女膜と呼ばれる場所を強引に引き千切ったのだ、声にもならない悲鳴を上げて美しい肢体を弓形にし、『かは、かは……』と息も絶え絶えになり、目からは大粒の涙を流していた。
だけど羽純の災難はそれで済まない……というか、済む筈もない。
悦楽享楽愉悦愉快とばかりに転生者が腰を振る。
ただただ腰を振り続け、舌を突き入れながら唇を奪うとこれまた強引に舌を絡ませて、羽純は喪失感を味わう暇すら与えられずに、痛みと気持ち悪さに吐き気を催しつつ、凶宴が終わるのを待つしかない。
とはいえ、羽純にとっては永劫にも思えた時間も、実際には十分と経たず終了していた。
それでも羽純がお腹の中に熱を数回も感じており、どうやら転生者は早漏野郎だったらしい。
回数だけは保った辺り、それなりの回復力か?
転生者に蹂躙された後、羽純はそこから所謂心神喪失状態に陥り、何があったか殆んど覚えていない。
そんな中、光を取り戻した瞳が最初に映したのが、ユートの姿であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユートとシードの決闘、それは始終ユートの有利で進んでいって、最終的にはユートの勝利に終わる。
だけど、シードの戦いを観ていたら何と無くだったがナクトを思い出す。
そして怒涛の様な記憶の奔流にフラリ……と目眩を感じてしまった。
「お、もい……出した!」
靄が掛かっていた嘗て、一年前に自身に起きた事。
涙が零れ落ちる。
「どうした羽純?」
流石のユートも様子がおかしい羽純に気が付いて、多少の動揺をしながら本人に訊ねた。
「思い出したんです」
「思い出した?」
「はい、私がこの世界に来る前にどうしていたのか、その状況を……」
羽純は語る。
ナクト・ラグナードは、羽純をパートナーに拡張付与をしながら闘神大会を勝ち進み、ドギ・マギを斃してマニ・フォルテを抱き、忍者の十六夜幻一郎を斃して十六夜桃花を抱き、ナミール・ハムサンドを斃してナミール・ハムサンド本人と双子のルミーナ・ハムサンドを抱き、マグラガ・クリケットを斃してアザミ・クリケットを解放した。
「解放?」
「あ、はい。流石にアザミは抱かなかったみたい」
羽純はそう説明する。
決勝戦でレメディア・カラーと戦い、然し敗北を喫してしまったナクトは去年のシードみたく暴れたが、都市を追放になる。
その後はレグルス・ラグナードの許に居た羽純。
ナクトが一年後に再び、闘神都市にて大会に出場をしたのは知っていた。
身体は自由にならないが意識はあったから。
ナクトは無事に闘神にはなったが、都市長のシンの計略に嵌まって更なる探索をしなければならなくなってしまい、その上に特殊な指輪を着けられていた。
迷宮の瘴気を防ぐ防壁を張る指輪であり、淫力が無ければ使えないらしい。
淫力はまぐわえば貯まるから、ナクトは否が応にも女を抱きながら探索した。
そして運命の日。
フィオリという悪魔は、心を封じられた羽純を抱けと連れてくる。
フィオリは無垢な令嬢としてナクトに近付いたが、その正体は比喩ではなくて真に悪魔だった。
その美しい顔を愉悦に歪ませていた辺り、悪魔と呼ぶに相応しかったとか。
しかも、自分の楽しみの為にナクトへ羽純の感情を取り戻す方法を教えた。
ナクトは羽純の心を縛る物を見付けて破壊、羽純と漸くまともに話せる。
話し合いをして淫力を貯める為に、そしてナクトを愛しているから『抱いて』と願う羽純。
裸身をナクトの前に晒して前戯で準備、そして今正に分身をナクトが宛がい、グッと力を籠めようとした瞬間、羽純は消えた。
其処から先はユートも知る内容となる。
「フィオリはあの夜は私しか抱かせないと言ってた。だから……」
「淫力の貯まってない指輪の侭、ナクト・ラグナードは迷宮に入るか」
そうなればナクトは死ぬしかなくなる。
「お願い! 何でもしますからナクトを助けてっ! 私はもう既にユートのモノだけど、どんな事にも応じるから……お願い!」
「例えば、今すぐ大通りに出て見知らぬ男共に股を開けと命じても?」
「それが対価になるなら」
「……成程、面白いな」
「?」
ユートが愉快そうに笑うのが何故か解らず、羽純は可愛らしく小首を傾げた。
「僕の権能──【
嘗て【まつろわぬペルセウス】を斃して簒奪をした権能は、ペルセウスが海獣ティアマトーを討ち取り、エチオピアの王女アンドロメダを手にした事に由来をしたものだ。
さて、あの【カンピオーネ!】を主体とする世界に於いて英雄が救い出すという美姫とは、即ち討ち斃した竜蛇そのものを指す。
例えば、ペルセウス・アンドロメダ型神話の代名詞たるペルセウスは正にで、他には八岐大蛇を降したという建速須佐之男命が救った寄稲田姫、これらが有名処だろうか?
その地の支配者を降し、征服したという証。
それが竜蛇を討った英雄が美姫を娶るという事。
故にこその権能だった。
「心神喪失状態だったから本来の制約を無視して権能を使えたが、やはり不完全だったかな? まさか僕に対してナクトを救いたいと言えるとは。否、優先順位が変わるだけだからかな。別に嫌いになる訳でもないんだし……」
実に興味深い。
「けど兄貴、一時的にとはいえ失明するんだろう? やって欲しくないよ」
「可能性だよ。それにやるにせよ問題がある」
「羽純とは別に闘神都市Ⅲ世界の誰か……ねぇ」
やはりネックはそれだ。
よもやすれば捜したなら居るかも知れない。
転生者の呼び込みと特典の受け渡し、精力的にやっているなら僅か数名というのは無いだろう。
ならば、或いはその中に羽純と同じ世界出身の誰かも居る筈だから。
やるとなれば仕事は速い訳で、メイドも含めユーキの記憶を頼りに描いた似顔絵を使い、【闘神都市Ⅲ】に登場する人物──恐らくは女性しか居ない──を捜す事になって数日。
未だに見付からないが、闘神都市はそれなりに広いから数日程度は見積り済みだったし、クライアやはっちゃんは出せないにせよ、スワティの持つ縁を視る程度の能力も総動員をして、羽純・フラメルの同郷者を人海戦術で捜す。
「きゃる〜ん、何と無くですけど羽純さんとの縁の糸が繋がる人が居そう」
スワティは本来であれば縁結びの神様、元々の世界でも一人の青年に良縁を授けていたくらいだ。
だが、頼り無い縁の糸を探るのは難しい。
何より、青年に授けていた良縁だって青年本人が足を使って捜さねばならず、スワティは飽く迄も切っ掛けを与えたに過ぎない。
まさか、スワティ本人がこうして飛び回る羽目になるなど、神としての自分でさえ思いもよらなかった。
さて、そもそもスワティとは何者か?
【きゃんきゃんバニー】シリーズ、プルミエールとエクストラとプルミエール2に於けるナビゲーター。
メタ的にはそう云える。
身長一六〇、体重は内緒でB八三・W五六・H八五と中々のスタイルだ。
唯一、某か言いたいならエクストラではヒロイン枠ながら、最後まで〝合体〟シーンが無いナビゲーターの哀しさよ。
その正体は本名のサラスワティという事からも判る通り、弁財天として名高いヒンドゥー系神話のブラフマーの妻のサラスヴァティ──の分け御霊である。
ユートはその手のゲームを殆んどプレイしていなかったから識らないのだが、ユーキはプレイした事があったから判った事実だ。
その能力は縁結び。
河村耕平に良縁を授け、応援をしていた。
エクストラで北極紫微大帝の星を勝手に使った咎により、期限内に飛び散った七つ全ての星を集めなければ嫁になって貰うと宣言をされてしまい、耕平は星を集めるべく奮起する。
結局は全てを見付けられなかったが、耕平に真の縁を授ける段階でまさか自分がヒロインとなっているとは思わなかっただろう。
選んでいる最中、ニャル子による召喚を受けたから耕平の選択は聞けてない。
どの道、スワティ本人がこの場に居るからには彼女を選べないし、スワティの妹分のサワディか若しくはミーナクシーのミーナ辺りが引き継ぎ、耕平に真の縁を授けた筈である。
まあ、ミーナはサワディより幼いから無理か。
そんなスワティだからこそ可能な縁捜し、ユートとしても万が一にも見付ける可能性があるとするなら、スワティだろうと半ば確信をしていた。
捜し始めて二日間。
闘神大会の本戦が始まる数日前、漸くスワティからそれらしき人物を見付けたと連絡を受けた。
ラグナード迷宮近くに在った小屋、そこに可成りの美人な女性が寝ている。
「寝てるというか、意識を失っていると言った方が、寧ろ適切かも知れないな」
汗をグッショリと掻いたらしく、ガビガビな鎧の下の白い服に女性には不釣り合いな黒い剣。
青い癖っ毛をロングにしており、額には紅い宝石を付けている事から、彼女がクライアみたいなカラーである事が判る。
しかもカラーの身で紅い宝石、恐らくは処女なのだろうが肉体は可成り鍛えてあるとみた。
「レ、レメディア?」
「知り合いか?」
「は、はい。レメディアはナクトのお父さん、レグルス・ラグナードとパーティを一時期組んでいた人で、幼い頃に会ってるんです」
スワティが見付けたのはレメディア・カラー。
羽純の感覚的に昨年──ナクト・ラグナードと闘神大会決勝戦で戦い、それに勝利をして闘神となっているらしい。
「恐らく、転生者が望んだんだろうけど……何で一人切りで気絶してるんだ? それに転生者は……って、この剣の血の臭いは!」
それで察した。
「転生者は殺されたか」
召喚したは良かったが、どうやらすぐに斬り殺されでもしたのだろう。
処女なのも頷ける。
「この剣が原因だろうな」
気絶している理由までは解らないが、この黒い剣がまるで呪われた邪剣にしか感じられなかった。
バキン!
ユートはあっさりと刀身を握り潰して砕く。
カンピオーネの身の上、小宇宙無しでもこれくらいは容易い。
「さて、館に戻ろうか」
レメディアを背負うと、ユートは小屋を出て羽純やスワティを伴い、闘神の館へと戻る。
館の空き部屋のベッドへとレメディアを寝かせて、羽純と同じカラーという事で連れてきたクライアに向き直ると……
「レメディアの世話は羽純とクライアに頼む」
そう言った。
「判りました」
「うん、ユート」
羽純は元より、クライアも異世界から来たとはいえ同族のレメディアを世話するのに否やは無く、二人はすぐに了承をする。
「ユーキ、余り怒るな」
「怒ってない」
探索には手を貸したが、ユーキとしてはユートが傷付くのは嫌だし、況してや失明の危険なんて犯して欲しくはない。
ただそれだけだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クライア・カラーは眠るレメディア・カラーを見つめており、自らの額の赤い宝石に手を伸ばし触る。
「貴女もまだ未経験なんですね……」
カラーという種族は嘗て神が創りたもうた存在で、その姿は基本的に現在世界のプレイヤーに酷似して、額には赤い宝石を持つ。
更に女性しか存在しないが故に、殖える為には別の種族――メインプレイヤーとの交わりが必要であり、カラーが処女を喪うと同時に額の赤い宝石は青く強い魔力を持つ様になる。
その美しさは交われば交わる程、鮮やかな輝きを含む青へと変わっていく為、カラーを狩り犯して犯して犯し抜き、最高潮にまで煌めきを放つ様になった宝石を額から剥がす。
その青い宝石は高額にて取り引きされるが、カラーは宝石を失うと同時に生命活動も停止する。
また、カラーの青い宝石を取り込むとメインプレイヤーは魔力を得るらしい。
三超神のハーモニットが何故そんな風に創ったかは窺い知れないが、世界ではそれが真実であり常識として回っていた。
レメディアの額の宝石も赤い事から、どのくらいを生きたかは判らないけど、少なくとも男性経験が無いのは間違いない。
クライアとしてはユートに処女を捧げ、額の宝石を青に変えて貰っても構わないと思ってはいるのだが、最後まではしていない。
基本的には他の娘とヤる際に、サポート要員くらいのポジションである。
「う、んっ……」
呻き声と共にうっすらと目を開くレメディア。
「目が覚めましたか?」
「貴女……カラー?」
「はい、クライア・カラーと云います」
「そう、私はレメディア。レメディア・カラーよ……此処は何処なのかしら?」
「闘神の館です」
「闘神の館? 闘神!」
気だるい感じで半覚醒な状態だったレメディアは、【闘神】という言葉に反応して起き上がる。
「あ、無茶しないで」
「うう……」
身体が衰弱していた。
「すぐにご飯を持ってきて貰いますから」
クライアは席を立つと、厨房へと向かう。
レメディアは肉体を動かせないもどかしさを感じながらも、同族が普通に暮らしているなら危険も無いのだろうと座った状態で背中を背刷りに凭れ掛からせ、今までの事を思い出す。
「確か私は……」
ナクト・ラグナードとの決勝戦、勝利して闘神となって目的の人物と会って、黒い剣を渡された後は操られていた。
その後、行き成り変な男と銀髪アホ毛の元に喚び出され、襲い掛かって来た男をなます斬りにしてやる。
頭と身体の行動矛盾から倒れて今に至る訳だ。
「私が私の意志で動けているという事は、あの黒い剣は喪われた?」
都市長シン――父親から渡されたあの黒い剣。
カラーとは誰が父親になろうと、誕生するのはカラーであるが故にレメディアもまた純血のカラー。
だが然し、それでもシンは確かに父親なのだ。
「闘神の館と彼女は言っていたけど……」
自分は全く違う世界にでも跳ばされたと判断していたのに、蓋を開けば闘神というよく知る言葉。
「いったい……」
レメディアは知らない、銀髪アホ毛が邪神といったカテゴリーで、傍に居た男が転生者と呼ばれる存在であり、転生者はレメディアを見た瞬間に犯すべく襲い掛かって来た事を。
まあ、だからレメディアは黒い剣で転生者を殺し、自己矛盾で意識をストップしてしまったのだが……
そしてこの世界が自分の居た世界に似た平行世界、闘神都市Ⅲから闘神都市Ⅱの世界にシフトした現実、それは致命的に自らの目的を阻んでいる事を。
ガチャ!
「っ!」
思考に耽っていると扉が開かれ、クライアがトレイにご飯を載せ入ってきた。
「お待たせしました」
「あ、ああ」
同族なだけに警戒心も薄れるが、闘神がクライアを使っているのだろうか?
判らない事が多過ぎる。
取り敢えず、クライアが持ってきた食事を食べた。
自分を殺すなら寝ている時に出来たし、食事に細工はされていないだろう。
「美味いな」
胃に優しく玉子粥。
それは一日以上食べてない空きっ腹に染み渡る。
暫し食事を堪能、飲み物――緑茶を飲んで食事を終えたレメディア。
「クライアと言ったな?」
「はい」
「お前はこの闘神の館とやらでどんな立ち位置だ?」
「……闘神ユートの友人、愛人は違いますね。して貰えてないですから」
「闘神ユートか。その人物に会いたいのだが」
「構いませんよ。食事を終えたら連れて来る様に言われてますから。歩くのが難しいなら呼べますけど?」
「いや、行こう」
レメディアは渡された服に着替え、クライアに案内をされてアプロスの間に向かうのだった。
アプロスの間の玉座に座るのは黒髪黒瞳の青年で、闘神の称号を持つ闘神都市の市長――つまり父親シンと似た立場だと聞く。
「レメディア、無事に目を覚ました様で何よりだよ」
「貴方が闘神ユートか?」
「ああ、ユート・スプリングフィールド。去年の大会で優勝して闘神となって、同時に市長の座に就いた。異世界の闘神レメディア、貴女を歓迎しよう」
「異世界……やはり此処は私の居た世界では無いか」
「その通り。君は邪神の企みに巻き込まれ、この世界に召喚されてしまった」
「帰る事は?」
「帰りたいのか? 不可能だな。君の世界が何処に在るのか判らない」
「……そうか」
肩を落とすレメディア。
「私には何も出来ない……私は彼方側の闘神都市へと赴き、父に会うべく自らを代価に大会に出場をした。ナクトに……知り合いにも勝利して闘神にはなった。父にも会ったが……黒い剣に操られてしまった」
父親の企みを知り止めたかったのに、レメディアはまんまと操られてしまう。
「本来なら無理だったが、実はレメディアを発見して状況は変わった」
「……え?」
「同じ世界の人間を二人、それで共振を引き起こして世界を特定、そいつを外から視る為に僕の〝視る〟事に特化した魔眼──【
幾つか解らない単語も有ったが、レメディアにとっては福音とも云える。
だが、気になる事が一つだけあった。
「待って欲しい、つまりは私以外にも私の元居た世界の住人が居るのか?」
「居る。そもそも、君を捜していたのもその人物の為だった。彼女を――羽純・フラメルを彼方側へ還すという目的の為に」
「っ!? 羽純が?」
カツン! 軽い足音が、レメディアの背後な響く。
「は、羽純!」
「久し振り、レメディア」
「それじゃ、羽純も?」
「うん。同じ様に召喚されたんだ。でもレメディアみたいに強くなかったから、それにナクトと結ばれようとした瞬間に召喚されて、抵抗も出来ずに犯されちゃったけどね」
「なっ!?」
軽く言うが、女の子にとってどれだけ重たい事か、それはレメディアにだって理解は出来た。
「闘神大会にパートナーとして登録されて、私を犯した男の人は敗けた。その時の対戦者がユートだった。心がズタズタだった私は、ユートに心を救われたわ。抱かれて一年間をこの館で過ごしてきた」
「それは……」
「そして先日、私は一部の喪っていた記憶を取り戻す事が出来たの。だから元の世界に帰りたかった。貴女が見付かるとは思わなかったけど、ユートは私を還す為に同郷の人を捜してくれたんだよ」
「……そうだったのか」
羽純の境遇とは悲惨そのもので、レメディアとしても何と言えば良いか判らなかったが、同じ女としては同情を禁じ得ない。
とはいえどうやらユートは悪人では無さそうだ。
「問題は対価だよ」
レメディアへ向けて言うのは、青髪ポニーテールの少女──ユーキ。
「対価?」
「兄貴は簡単に言うけど、【劫の眼】に変えるのとか失明の危険もあるらしい。一時的にはほぼ確実だって云うしね。そんな危険を犯すなら、貴女はどんな対価を支払うのさ? 言っとくけど羽純はもう兄貴のモノだから、対価は支払い様が無いからね!」
ユーキの言い様に驚き、羽純の方を見遣ると真っ赤な頬で俯いていた。
「羽純、ナクトの事は?」
「……私を召喚した人に、私はユートに救われるまで散々に犯されたわ。初めてもナクトに上げられなかったの。救われた後は私自身の意志でユートにこの一年間は抱かれてきた。今更、ナクトの許に戻れないよ。でも、せめてナクトの生命は助けたかったから……」
「そうか。ならば私も同じく貴方に全てを捧げよう」
「全て?」
「失明するなら我が眼を代わりに奪うが良い。私とて目的さえ果たせば構わないからな。処女も捧げよう。この身はそれなりに男を悦ばせるくらいは出来る筈」
ユートはユーキから聞いて知っている。
レメディアは自らの処女をナクトに捧げ、生命を喪う覚悟で魔力を得た額の青い宝石を使う心算だと。
とはいえ、宝石に魔力を宿せば良いのだから相手が変わっても問題は無い。
対価に処女を捧げてでも帰り、青い宝石を以て目的――父親を止めようというそれを果たす気なのだ。
「判った。なら数日の間は僕の相手をして貰おうか」
「了解した」
レメディアは頬を朱色に染め、ユートの言葉に頷いていた。
この日の夜、レメディアの純潔を示す額の赤い宝石は空の如く青に変わる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
闘神都市Ⅲ世界に向かったユート一行、ナクト・ラグナードを救って全てを斬る剣に囚われた闘神ボルトを討ち果たし、手に入れられそうなモノは全て手に入れて帰ってきた。
羽純・フラメルとレメディア・カラーはユートの許に戻る事を望み、悪魔であるフィオリは生命を救った上で真名を掴み、下僕にしてから御持ち帰りしたし、アズミ・クリケットも序でに手に入れている。
レグルス・ラグナードと村に帰ったナクトだけど、本来の道筋とは随分と変わってしまい、何故かという程でもないが十六夜桃花と宜しくヤっているらしい。
どうやら普通に惚れてしまって、レメディアも羽純も喪って意気消沈していたナクトを慰めた桃花だが、それが見事に大当たりしてしまい、お腹が膨れ始めていたから責任を取る形だ。
それは兎も角――
闘神大会当日までユートは御持ち帰りしたアズミやフィオリ、羽純にレメディアも加えて相手が足腰立たなくなるまで楽しんだ。
前大会でナクトに抱かれていなかった上、今大会でパートナーになっても手出し一つされず、前の持ち主的な男もアズミを女として見てなかった様で、未だにアズミが処女だったのにはユーキが吃驚していた。
お陰様で存分に味わえたのは間違いない。
フィオリは流石に悪魔と云うか、見た目の幼さに反して知識も実践も中々に宜しい味わいだった。
レメディアは初めっからユートの色に染まっているから言うまでもなく、羽純も転生者が前世では童貞だったのか下手くそであり、すぐにユート色に染まっていたから言わずもがな。
大会まで正に酒池肉林の祭りだったと云う。
「ふーん、あの男がユーキの一回戦の相手か……」
濃い緑の長髪にローブ姿は魔術師然とした格好で、手には御丁寧にも長杖を持っている。
ユーキが闘神大会に出場すると知ったのは遂先日、自らをパートナーにしての参戦だとか。
見た目には小学生でしかないユーキが、如何にして出場資格を得たのかと訊ねてみれば……
《SPIRIT》
『こうやってさ♪』
カリスラウザーにより、カテゴリー2ヒューマン・アンデッドをラウズして、今の姿の生母であると云えるハルケギニアはガリア、オルレアン大公夫人の姿に豊満な胸をプラスした結構な美女となったのだ。
「ふーん、割と面白い相手じゃないの」
「そうか? アンチ・フィジカルバリアを張っているだけじゃないか」
クライアを狙った猛太人とは別の意味で魔法でしかダメージが通らない訳で、並の戦士では確かに彼──ラグナスターに敵わない、
だけどその程度でユーキに勝つなど不可能だ。
ユーキの実力はユート程ではないが、それでも黄金聖闘士クラスのもの。
小宇宙は此処で使えないにしても、戦闘経験ならば可成り高いのだから。
「変身!」
《CHANGE》
ユーキはカリスラウザーにハートスートのカテゴリーA──チェンジ・マンティスをスラッシュ。
本来の仕様とは異なってオリハルコンエレメントが現出し、それをユーキが潜る事によって黒い異形たる【仮面ライダーカリス】に変身をした。
「ほう?」
ラグナスターは余裕綽々でそれを見ている。
「カリスアロー!」
その気になれば弓矢としても、近接武器としても扱えるカリスアロー。
魔術師に遠距離戦を挑む程に莫迦ではないユーキ、火炎を放つラグナスターの攻撃を躱し、カリスアローで一気に袈裟斬りにする。
ガキィッ!
「なにぃ!?」
ひ弱な魔術師が強烈なる一撃に耐えた……筈無く、何やらバリアみたいな魔法が使われているらしい。
「チィッ!」
容易く終わると思ったのが間違いだと気が付いて、すぐに腰に着けたカードホルダーからラウズカードを取り出し、カリスラウザーを中央に嵌め込み、カードをラウズした。
《CHOP》
シュモクザメの始祖たるハンマーヘッドアンデッドを封印したカードであり、全体的には手技を強化するカテゴリー3。
《TORNADO》
鷹の始祖たるホークアンデッドを封印したカード、全体的に見れば属性を得るカテゴリー6。
電子音声がラウズをしたカードの名を告げる。
《SPINING WAVE!》
この二枚をラウズした事により、コンボが発生して強力な風を纏うチョップとなって攻撃。
ガギィッ!
「っ!」
やはりバリアが発生し、スピニング・ウェーブをも弾いてしまう。
「ふん、アンチ・フィジカル・バリア……か」
此処までくれば察するに余りあるだろう。
場合によればアンデッドを封印可能状態に追い込める攻撃を、魔術師が防ぐには余りにも足りない防御。
魔法攻撃を一切防げない代わりに、物理攻撃の一切を遮断するバリア。
少なくとも、主人公なら一回戦で行き成り当たる様な相手ではない。
絶対に勝てないから。
「チッ、トルネードも魔法って訳じゃなく物理現象。防がれても仕方ないかな」
仮面ライダーウィザードじゃあるまいし、基本的に仮面ライダーの攻撃というのは物理攻撃である。
「フフフ、降参しなさい。私が勝っても君をどうこうする心算は無い。君では私に勝てまい?」
「ふん、高がアンチ・フィジカル・バリアを張ったくらいで勝った心算? 舐められたもんだね。仮面ライダーだから仮面ライダーの技で戦っていたけれどさ、別に舐めプしたい訳じゃないから縛りプレイなんかをする気は無いんだよ!」
「ム!?」
様子が変わったカリス、それに気付いたラグナスターが警戒をした。
「爆凰拳!」
ズガン!
「げぶらぱ!?」
カリスが殴り付けると、ラグナスターは変な悲鳴を上げながら壁まで吹っ飛ばされ、アンチ・フィジカル・バリアで壁にぶつかったダメージは無かったけど、爆凰拳のダメージによって気絶をしていた。
シュリが近寄って確認、ラグナスターの意識が無いのを確かめて……
「勝者、ユーキ!」
勝利宣言をする。
沸き上がる観客。
確かに物理攻撃に無敵なバリアだが、ユーキの使う【爆凰拳】とは無詠唱での虚無魔法──
拳だけならまだ兎も角、魔法による爆発は止められなかったラグナスター。
手加減していたからこそ生きているが、聖闘士としての技だから普通の人間が喰らえばバラバラだろう。
担架で運ばれるラグナスターを見送って、シュリの案内でラグナスターが連れたパートナーの控え室へと向かった。
既にやるべき事はやったから、ユーキは遠慮も無く扉を開け放つ。
吃驚した表情でユーキを見るのは、ラグナスターに比べて明るい翠の髪の毛をツインテールに結わい付けた魔術師の少女。
「驚いた。貴女がお父さんを斃しちゃったの?」
「まあね」
成程、大会規定に反さない美少女であった。
「私の名前はナオ。魔術師ラグナスターの娘よ」
「ボクはユーキ。君を自由に出来る権利を獲た勝者って処だね」
「けど残念」
「何が?」
「お父さんに勝てるくらいの男の子なら、処女を捧げても良かったんだけどね。勝ったのが女の子じゃ」
どうもナオは男に抱かれる事に忌避感が無いのか、処女を捧げても良いとか宣ってくれる。
「なら丁度良かったよ」
「うん?」
「入って来て、兄貴」
「――え?」
勝者たるユーキと敗者のパートナーたる自分しか居ない筈が、兄貴と呼ばれた男が部屋に入って来た。
「だ、誰?」
「ボクの兄貴。ナオだったかな? 君の処女を奪ってくれる人だよ♪」
「はぁ? 何を言って……私を自由に出来る権利があるのは貴女よ?」
「チッチッチッ! ルールでは問題無い。大会規約――闘神大会本戦に於いて、勝利を納めた者は敗者のパートナーを殺害以外を好きに出来る――つまりはボクが望むなら例えば、ナオを広場に連れて行って複数の男に犯させる事も出来る。好きに出来るっていうのはそういう意味だよ」
「……あ」
意味に気付いたナオ。
「じゃあ、兄貴。ボクは観てるからナオの処女を貫いて純潔を穢して上げてよ」
「全く、ユーキは」
呆れながらもルール上、何の問題も無いからユートはその日、魔術師見習いのナオの処女を奪う。
初めてとは思えない乱れっ振り、ユートとしてみれば中々に愉しい。
ユーキはそれを愉快そうに観ながらも自らを慰め、いつしか二人の中に入って参加してしまうのだった。
.
ラグナスターとナオは、闘神都市に登場します。