闘神都市RPG【魔を滅する転生闘】   作:月乃杜

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第17話:手折られるは地獄門に咲く一輪の花

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 カーツウェルの妻であるフランチェスカ……彼女の記憶を梳り取ったユートは暫くは記憶整理で眠るであろう事を宣言する。

 

 よって、カーツウェルはユートを地獄に案内した。

 

 無事を喜ぶのは妻が起きてからで良いからだ。

 

「此処が〝この世界での〟地獄という訳か」

 

 ユートが〝持つ〟地獄というか、あの世と大きく変わる所はなさそうだ。

 

 冥王ハーデスの神氣から得た神殺しとしての権能、その内の一つがハーデスの支配域となる冥界を創り出すというモノ。

 

 生と不死の狭間、地獄、極楽浄土、エリシオン……

 

 本来、極楽浄土とエリシオンは同じものであるが、ユートは一般的な極楽浄土と仲間内での楽園としてのエリシオン、この二つを分けて創造をしている。

 

 基本はハーデスの冥界と同じだし、ユートの冥闘士も存在しているから違和感は特に無かった。

 

 この世界の地獄、表面上はユートの冥界の地獄とは殆んど変わらないらしく、後はどういった施設が設置されているのか?

 

 そんな処だろう。

 

「では、私はあちらを探索しよう」

 

「本当に良いのか? 別に闘神の館で奥さんと一緒に暮らしていても構わないんだけどな?」

 

「いや、ケジメとして探索は続けようと思う」

 

「そうか。まあ、奥さんを未亡人にしない事だね? したら僕が頂くよ」

 

「……絶対に死なん!」

 

 事ある毎にフランチェスカを狙う発言を言い放ってくるユート、流石のカーツウェルも妻を奪われまいと気合いを入れていた。

 

 ユートも半分は発破を掛けているだけで、ガチに狙っている訳でもないが……勿論、本当にカーツウェルが死んだら貰う心算だ。

 

 カーツウェルと分かれ、地獄の道を進むユート。

 

 暫くの間は不毛というか荒涼とした大地、水も特に無いし罅割れた地面は潤いに欠けている。

 

 然し、モンスターは普通に現れてきた。

 

 鬼みたいなモンスターも居るが、ひょっとしたなら量産型の鬼なのだろうか?

 

 ちゃっかりと女の子モンスターのおててとちょーちんとメイドさんを抱いて、一体ずつをカードへと変えて連れて行く。

 

 潤いの足りない大地に、女の子モンスター達が荒い息を吐き、秘所から液体を垂れ流しながら恍惚とした表情で倒れ付していた。

 

 ユート自身もスッキリした顔になって立ち上がり、乱れに乱れた服装を着直してステータス・ウィンドウを開き、アイテム欄の中から食事と飲み物を取り出して昼休みを取る。

 

 昼休み後、ユートが訪れた場所には人間の魂らしきモノが大量に浮いていた。

 

「人間の魂か? 此処は……いったい……ム!」

 

 強い気配だ。

 

 人間の魂達とは明らかに違う気配であり、何と無く聖なる属性を感じる。

 

 身を隠すと強い気配の主──青い髪の毛、長い耳、青い瞳で露出嘉多な服装を身に纏う翼を持つヒト。

 

 天使が人間の魂達を導いていた。

 

「(あの額に輝いてる赤い宝石は……彼女はカラーから天使に成ったケースって訳だな?)」

 

 確かに髪の毛にしろ耳にしろ……あの巨乳にしてもクライアを思わせる。

 

 だけど決してカラーではないと主張する背中の翼、そして頭上に浮かんでいる金色のハイロゥ。

 

 一度死んだのか、或いはクライアとは比べ物にならない程度に生きていたか、天使となったカラーというのは、闘神の館に囚われた天使の中にもチラホラと見る事が出来たが、天使全体にも云える話で美しい。

 

 だけど、目の前の彼女は痴女も斯くやの大胆仕様な服装であり、それでも何処か清楚にも感じられた。

 

 あの、カラー出自の天使の額の宝石の色が赤いという事は……

 

「ユーキが言っていたな。カラーは天使化や悪魔化をすると額の宝石の色は変化しなくなると。彼女が処女とは限らない訳か……」

 

 天使になってから処女を喪っても、宝石の色に変化は無い筈である。

 

 元々、カラーという種族はメインプレイヤーの亜種として、三超神の一柱たるハーモニックが創った。

 

 その目的は天使や悪魔の供給源であると云う。

 

 カラーは女性しか存在しない為、繁殖にはメインプレイヤーの男が必要とされており、嘗ては人間の男を捕らえて搾精したらしい。

 

 ハーモニックが何の心算でそんな機能を付けたか、額の宝石とは男と交われば交わる程、青く美しく輝きを増すとされている。

 

 そして、そんな美しい青は人間の間で高値が付く。

 

 猛大人がクライアの宝石を狙い、青く輝かせる為に押し倒した理由だ。

 

 ユートは美しい花の一輪を手折るのは好きだけど、付属品だけを奪って折角の花を枯らすのは趣味ではないと考え、猛大人には死をくれてやった。

 

 花とは愛でるに限るし、新しい花の誕生に一役買うのも愉しい。

 

 まあ、誕生するのが花とは限らない訳だが……

 

 それは兎も角、ユートは現状では周囲に気配を溶け込ませており、直に見ても慣れた者でなければ見えない状態である。

 

 従って、あの天使が地獄門を開くのを待っており、上手く開いてくれたのならコッソリと入り込む。

 

 無駄な争いはお互い不幸なだけだし、見る限りではまともな感性を持っているらしいから。

 

「おんや〜? 何だよぉ、あんたも死んだのか?」

 

「………………」

 

 最悪のタイミングで声を掛けられた。

 

 確か、モンスターに喰わせて殺したザビエルとかいう男だったか?

 

 何故か大量の荷物を積んだ台車を牽いている。

 

「この世から消滅しろ! 積尸気冥界波モドキ!」

 

「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

 瞬時に咸卦法を発動し、積尸気冥界波を放ってやってザビエルを吹き飛ばす。

 

「貴方は何者ですか!」

 

 当然ながら天使に見付かってしまい……

 

「チッ!」

 

 思わず舌打ちをした。

 

「その気配、天使喰い!」

 

「は?」

 

 彼女は何を言っているのだろうか? ユートは決してアプロスの術に嵌まってはいないし、天使喰いになど成った覚えも無い。

 

「待て、激しく待て!」

 

「黙りなさい、天使喰い! 貴方達にどれだけの天使が犠牲になったか、この私がその無念を晴らします! 我が名はラベルケース、覚悟なさい!」

 

 初っぱなから臨戦体勢となる天使──ラベルケースに対して、仕方無く此方も戦闘の準備を行う。

 

 小さめのトランクを取り出し、開いた中に入っているのはベルトと周辺機器。

 

 先ずはベルトを腰に着けると、次にグリップらしきものを取り出して口元まで持っていき……

 

「変身!」

 

 叫んだ。

 

《STANDING BY……》

 

 電子音声が響く。

 

 ユートはグリップ──デルタフォンを、右腰に付いたデルタムーバーへと差し込んだ。

 

《COMPLETE》

 

 白いフォトンブラッド……ブライトストリームが張り巡らされ、スーツと鎧が形成されていく。

 

 橙色のアルティメットファインダー、三角形であるΔをモチーフとした顔に、黒を基調とするスーツと鎧の姿、仮面ライダーデルタへと変身をした。

 

「す、姿が異形に!?」

 

 ラベルケースには化物にでも見えているらしいが、強ち間違いであるとも云えない姿だ。

 

「さて、余り気は進まないんだけど……売られた喧嘩は買ってやるよ!」

 

「来ますか!」

 

「煉獄に咲く一輪の花だ、踏み躙る様な趣味は無いんだが、手折って愛でるのは好きだからね。その花弁、散らして上げよう!」

 

 地面を蹴り、ユート──仮面ライダーデルタが敵たるラベルケースに向かって駆け出した。

 

 「ふっ!」

 

 ブンッ!

 

 空気を引き裂いた音を響かせながら、デルタの拳がラベルケースに向かう。

 

「そんなもの!」

 

 風の属性が強いラベルケースは身軽で、ちょっとした速度では避けるに容易いらしく、危なげ無くパンチを躱した。

 

 無論、小宇宙処か魔力も使わないユートがライダーの力と自前の身体能力のみにより、簡単に闘えるなどとは思っておらず、すぐに蹴りへと繋げる。

 

 だがそれもラベルケースにより躱されていく。

 

 とはいえ、それもデルタにとって既定事項であり、ラベルケースは我知らず追い詰められていた。

 

 最も良い形に追い詰め、デルタはジャンプ一番……

 

「はっ! 竜尾二連脚!」

 

 最初に左脚による通常の蹴りをラベルケースの頭に打ち込み、その勢いを利用して右脚による回転背脚蹴りに繋げて頸椎を打つ。

 

「キャァァァッ!」

 

 強烈な蹴りな吹き飛ばされて、ラベルケースは悲鳴を上げながら地面に叩き伏せられた。

 

 仮面ライダーデルタ……スペック的に蹴りの威力は約八トン、パンチの威力は約三.五トンである。

 

 単純なスペック的には、同系ライダーのファイズやカイザよりも上だ。

 

 というより、映画版での仮面ライダーサイガと同じ程度のスペック。

 

 こんな威力をまともに喰らえば、人間なら即死しているのだろうが……

 

「く、う……」

 

 天使であるラベルケースは少なくとも、仮面ライダーやその敵対者並の力は備えているらしく、ダメージこそ受けていても死んではいなかった。

 

 脳がクラクラしているのだろう、未だに頭を抱えて立ち上がってくる。

 

 デルタは右腰に装着されたデルタムーバーを外し、口元にまで持っていく。

 

 この状態をブラスターモードと呼び、謂わば光弾を放つ拳銃として使える。

 

「ファイア!」

 

《BURST MODE》

 

 音声認識で光弾がチャージされ、デルタはラベルケースにサイティングすると引き金を引く。

 

 四発のフォトンブラッド光弾が放たれ、デルタは続けて二回引き金を引いた。

 

 合計で十二発の光弾が、ラベルケースを襲う。

 

「くっ! 風の加護よ!》

 

 ラベルケースの周囲を、気流が覆っていく。

 

「むっ!?」

 

 フォトンブラッド光弾は彼女に命中せず、在らぬ方へと逸れてしまった。

 

「成程……彼女は風属性。あれは気流で敵の攻撃を逸らすんだな」

 

 風属性としては至極真っ当な使い方。

 

 よくある防御方法だ。

 

 だが、ユートは四大精霊王と契約を交わしたフル・コントラクター。

 

 それが四大──土水風火──属性であれば、基本的には干渉をする事が可能となっている。

 

 よって……

 

「ハァッ!」

 

「くっ!」

 

 ドゴンッ!

 

 風の加護を無効化して、謂わば腹パンを喰わせる。

 

「カハッ! そ、そんな、まさか!?」

 

 フラフラとよろけながら踏鞴を踏むラベルケース、その表情は信じられないといったものと、打たれた腹を押さえつつ苦悶を露わとしたのを綯い混ぜにして、荒い息を吐いていた。

 

「どうして風の加護が働かないのですか!?」

 

「簡単な話だ、僕は四大の精霊王と契約を交わしているフル・コントラクター。四大属性に限れば狂乱状態でもない限り、僕の上を往く方法は三つしか無い」

 

「フル・コントラクター? 天使喰いが精霊王と契約をしている? そんな!」

 

 此処で云う精霊王とは、フォーセリアなどで謂われる精霊王とは異なる。

 

 もっと上位であり、存在するというのも言葉としてはおかしい。

 

 精霊王というのは所謂、概念意識体なのだから。

 

 一種の法則そのもので、それが意志を持っているといえば正確ではなくても、ある意味では正解だ。

 

 実はそこら辺の神々より高位な存在で、燃えるという概念そのものが火の精霊王だと云えば解り易い。

 

 化学的に考えれば可燃物が存在してそれが燃えている訳だが、それも精霊王の存在が在ったればこそだ。

 

 ラベルケースも風の属性を使えるが、所詮は小精霊への干渉が精々でしかないから、精霊王との契約によって代行者レベルの干渉力を持つユートに敵わない。

 

「終わりだな……」

 

 幾ら天使が仮面ライダーに匹敵する戦闘力を持っているとはいえ、ラベルケースの服装は明らかに戦闘用ではないのだ。

 

 某・国民的RPGの四番目の褐色肌姉妹の姉の服装レベルの露出度な訳だし、当然の事ながら防御力など本人の素の防御+魔力なんかでの強化以外には無いにも等しい。

 

 つまり、全身鎧にも似た仮面ライダーに比べれば、紙防御な訳だ。

 

 そんな状態で三.五トン……否、ユート自身の拳も込みならそれ以上のパンチを受けては、すぐに対処をすり事は叶わなかった。

 

《READY》

 

 ベルト──デルタドライバーのバックルに嵌め込まれた【ミッションメモリー】を、デルタムーバー・ブラスターモードのスリットに嵌め変え、ポインターモードに変形させる。

 

「チェック!」

 

《EXCEED CHARGE》

 

 音声入力すると電子音声が鳴り響いて、ベルトからブライトストリームを通じエネルギーがポインターにチャージされていく。

 

 トリガーを引くと円錐形のエネルギーが、ラベルケースの胸元に発射されるとピタリと手前で止まった。

 

「くっ!? 動けない!」

 

 これには一種の拘束能力がある為、余程のパワーが無ければ動きを阻害されてしまう。

 

「ハッ! デリャァァァァァァァァァァッ!」

 

 そんな身動きを封じられたラベルケースに向かい、デルタはジャンプをすると右脚を伸ばして蹴りを入れる体制に入る。

 

 円錐形のエネルギーへとまるで吸い込まれる様に、デルタの肉体が姿を消して次の瞬間、ラベルケースの真後ろへと姿を現した。

 

「ルシファーズハンマー、天使に使うには皮肉が利いた技だろう? まあ、この世界の天使にルシファーは関係無いんだろうけどね」

 

 ボッ!

 

 Δ状の青白い炎がラベルケースを包む。

 

「あ、嗚呼……あああああああああああ!?」

 

 滅殺モードだったなら、ラベルケースは原作的には灰となって死んだろうが、非殺傷設定みたいなモード──不殺モード──だからダメージこそ受けていても死ぬ事は無かった。

 

 勿論、怪人相手みたいな爆発したりもしない。

 

 ダメージ故に仰向けに倒れたラベルケース。

 

「これで良しっと」

 

 気絶こそしていないが、動く事は出来なくなっているラベルケースへ近付く。

 

「うっ、私を食べる心算……ですか!?」

 

「だから僕は天使喰いじゃないと言っている」

 

「そんな筈はありません。私は天使喰いとも接触した事がありますが、その時に感じた気配と貴方の気配は似ています!」

 

「な、に?」

 

 ユートにとっても予想外な言葉で、どういう事なのかまるで判らないといった顔付きになった。

 

「(どういう事なんだ? アプロスの仕掛けてきた術は破壊したし、天使喰いになんてなり様がない)」

 

 考えてみても解らない。

 

「まあ、良いか。僕は別に君を食う気はないんだが、戦闘で昂った気分を鎮めるのなら、エロいお姉さんが一番だよね?」

 

「だ、誰がエロいお姉さんですか! 誰が!」

 

「いや、自分の痴女も斯く

やの格好を鑑みろよ」

 

 ミニ過ぎるスカートに、半乳を出している白い服? それ以外は装身具くらいしか身に付けていない姿、天使よりそういった商売的に堕天使だろう。

 

 殆んど裸に近いのだから普通なエロい。

 

「くっ、辱しめる気?」

 

「戦いに敗けた以上は文句など言えんだろうに」

 

 身動ぎすら出来ない為、近付くユートに対処する事が出来ず、ラベルケースは顔を青褪めさせていた。

 

「まあ、僕は無理エッチって余り好きじゃないんだ。だから……」

 

 ラベルケースの上半身を起こし……

 

「我は東方より来たりし者也て闇を祓う燦然と耀ける存在。照らし出す曙光にて竜蛇を暴き、我は汝を妃として迎えよう」

 

 口訣を口にしてラベルケースの顎を手でしゃくり、上を向かせると自らの唇を彼女の唇に重ねる。

 

 それはユートの神殺しの権能──【闇を祓いて娶る美姫】だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 簡易テントが設置され、その中には一組の布団が敷かれており、その中に男女が素肌を晒し生まれた侭の姿で包まっている。

 

 それは云わずもがなで、ユートとラベルケースだ。

 

 ラベルケースはユートの腕を枕代わりにしながら、胸板に頬擦りをするかの如く密着して寝ていた。

 

 つい十時間前までユートを天使喰いだと、敵愾心を露わとしていたとは思えない態度である。

 

 敷き布団の白いシーツには点々と赤い染み、それに彼女も股から未だに生々しく液体を垂らしていた。

 

 約半日、戦闘後の興奮を鎮める為にラベルケースとの情交を楽しみ、今現在は身体を休めている処だ。

 

「ん、……うん?」

 

 小さくて可愛い呻き声を上げると、ラベルケースが眠気眼を開いてボーッとした様子でユートの顔を見遣っている。

 

「起きた?」

 

「え? あ、はい」

 

 慌てて身形を整えようとするも、そもそも素っ裸で布団に潜っている身では、精々が乱れた髪の毛を多少なり触るくらい。

 

 とはいえ、ラベルケースも女なので少しでも自分を良く魅せたい欲求はあり、顔を朱に染めつつもさっさと髪の毛の乱れを正す。

 

 その際に、巨乳がプルンプルンと揺れてユートの目を楽しませてくれる。

 

 まあ……あの肢体の線を強調した服と呼ぶのも烏滸がましいアレで、ラベルケースのプロポーションを知ってはいた訳だが、昨夜はお楽しみでしたねレベルでゆっくりと観賞た肢体は、思った以上に興奮した。

 

 服を着ようとしていた筈のラベルケースが、何故か動きを止めて何処かを凝視している。

 

「どうした?」

 

「ゆ、昨夜はあれだけ激しかったのに、こんなに元気だなんて……」

 

 視線の先には彼女の肢体で屹立したユートの分身、そして昨日の情交を思い出したのか、自分を攻め立てた分身を見て更に真っ赤になってしまう。

 

「ま、インフィニット・リロードだしな」

 

 邪神クトゥルーに犯られた後、可成り変質した身体と精神だったのだが、一番の変化は性に関して。

 

 尽きる事無き胤とヤる気は女の子を啼かせ悦ばせ、自分も満足感を得ると云う強い性欲を持った。

 

「そ、そんなに私との……ソレは良かったですか?」

 

「少なくとも、今すぐ続きをしたくなるくらいには」

 

「〜〜〜っっっ!」

 

 声にならない悲鳴を上げるラベルケース、顔はもう茹で蛸の如くである。

 

 そして探索は……

 

 翌日になったと云う。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 瑞原道場……

 

 それは瑞原流剣術を教える道場で、シード・カシマやセレーナ・フレイズ達はこの道場にて瑞原の剣を教えられてきた。

 

 道場主は瑞原葉月の父親であり、一人娘たる葉月がシードと恋仲なのは知っているが、如何に可愛い娘の事とはいえすんなり認める訳にはいかない。

 

 理由は簡単でシードが弱かったからだ。

 

 何しろ、この道場に来てから大分経つというのに、何と新人にすら敗けるのだから筋金入りの弱さ。

 

 娘の葉月の相手には強い者を……そう考えれば次の道場主にしたいのは瑞原流最強の男ビルナスだ。

 

 瑞原・刃の剣を体得し、他にも奥義を既に使えているシードの兄弟子、葉月には彼こそを結婚相手と見て欲しかったが、何処をどの様に間違ったのだろうか? 葉月はシードに惹かれていったらしい。

 

 そこで一計を案じる。

 

 ビルナスには葉月をパートナーに闘神都市で年一回に催される闘神大会に出場をし、優勝をしたら葉月と結婚して道場を継がせる旨を伝え、葉月にはビルナスのパートナーとなって闘神大会に出場をしたらシードとの婚姻を許すと伝えた。

 

 後はビルナスが闘神大会で優勝すれば、瑞原道場の株も急上昇するだろうし、ビルナスと葉月を結婚させて道場も発展する筈。

 

 とはいえ瑞原氏はシードにも機会を与えた。

 

 シードが若し闘神大会な出場し、ビルナスを降せるなら──優勝が出来たならシードに葉月と道場を与えても良い……と。

 

 イレギュラーさえなければこの目論見は上手くいっており、シードとビルナスが闘神大会の決勝戦でぶつかり合って、シードが見事に優勝をしていた。

 

 その後は、勝者が敗者のパートナーを一晩好きに出来るルールの利用をして、初めて結ばれる筈であったのが、イレギュラーであるユートがシードを倒してしまった上に、ビルナスをも倒して優勝をしてしまう。

 

 当然、勝者の権利を用いて葉月の貞操は優勝をしたユートが喰い、しかも葉月は優勝者(ユート)に付いていってしまったとか。

 

 瑞原氏にとっても大誤算というやつだ。

 

 ビルナスに預けた解放金の百万Gも、葉月ではなくセレーナの為に使われて、シードは葉月を喪った事で今も引き篭っている。

 

 というか、闘神大会でのユートVSビルナス後に、葉月の居る部屋に入っていったユートを追い掛けて、スタッフらに止められるくらい暴れたらしい。

 

 血涙を流す勢いで泣き、固くて重い扉を殴り蹴り斬ろうとし、この世のモノとは思えない咆哮を上げた。

 

 勿論、直接的には葉月の情交など見てはいないが、微妙にリアルな解説をする少女の所為で、正しく絶望を与えられたのだ。

 

 更に暴れた所為で追放、今やシードが葉月に会う事は叶わないし、瑞原氏としても目論見が破綻した。

 

 後悔先に立たずというが正にその通り、バカな欲を掻かなければ葉月を喪わずに済んだのに……

 

 瑞原氏もまた、後悔によって半ば引き篭っていた。

 

 果たして、好きな女の子が目の前ではないにせよ、手を伸ばしたら届きそうな位置で、自分以外の男によって女にされた気持ちとはどんなものなのか、シードは引き篭って暗鬱な瞳で、何処とは云えない視線の先に想像の葉月を視ながら、下半身のとある位置に右手を伸ばして、限界を迎えるまで動かし続けている。

 

 何だか虚ろな瞳であり、ぶつぶつと何やらエロエロな事を呟き、下半身の部位を右手で刺激していた。

 

「葉月、葉月の大切な場所に入ってるよ……痛い? 大丈夫さ、すぐに良くして上げるから。俺ばっかりが気持ち良くなってゴメン。今度は葉月もイかせて上げるからね? ハハハハ……ほらね、そろそろだよ? もうすぐ……うっ! イク……葉月の中に俺のが全部流れてイクよ!」

 

 部屋の壁にシードの妄想(よくぼう)の塊が飛んで、その侭ピチャッと付着。

 

 壁には裸でイヤらしくもポージングする葉月が妙に上手く画かれた絵が貼られており、シードの妄想の塊はその葉月の絵の秘められた茂みの部位を濡らす。

 

「ハァハァ……葉月もイってくれたんだね? 俺、嬉しいよ。また良いかな? 挿入()れるよ葉月」

 

 再び分身に右手を伸ばして動かし始めた。

 

 そんな様子を見続けているのはセレーナである。

 

 先程から心此処に在らずな状態で、微妙に上手い絵と妄想で葉月の初めてを貫く〝物語〟を延々と口にしながら自慰に勤しむシードを見続けていた。

 

「シード君……」

 

 壊れたにも等しいシードの姿、闘神大会では何かと弟も同然な彼を叱咤激励してきた訳だが、今度ばかりは何も出来ずにいる。

 

 まあ、葉月の振りをして時折ではあるがシードに抱かれる程度はしていたが、抜本的な解決策は見出だせていない。

 

 其処へドタドタと喧しい足音を響かせ、扉を乱暴に開く者が怒鳴り込む。

 

「ええい、いつまで莫迦をやっているのだシード!」

 

 褐色肌につり目がちな、額に二本の角を生やしている少女……

 

「咲夜ちゃん?」

 

 鬼姫である。

 

「何処までウジウジと腐っている心算だ!」

 

 後ろ向きなシードの前へ出て怒鳴り散らす咲夜は、今のシードの姿を見て今度は別の意味で怒鳴る。

 

「な、ナニをヤっている! 下半身を丸出しにそんなモノを右手で握って……」

 

 シードの固く屹立をした分身が本人の右手に握られている上、コスコスと上下に動かしていた。

 

「葉月、葉月、葉月ぃぃぃぃぃぃぃっっ!」

 

 ビュッ!

 

 目を瞑り分身を擦る速度が弥増して、遂には妄想が暴発をすると分身から白くドロッとした液体が勢いよく放たれ、ピチャリと咲夜の顔に掛かって汚した。

 

「な、な、な、なぁぁっ! ナニをするかバカ者!」

 

「ぎゃびりーん!?」

 

 廬山昇龍覇も斯くやと思しきアッパーがシードの顎に極り、天井に顔が突き刺さってプラプラと揺れた。

 

 然し、羞恥心と怒りが綯い交ぜとなった感情の爆発がその程度で鎮まる筈もなくて、咲夜はシードを引き摺り下ろすとしこたま殴る蹴るの暴行を加えた挙げ句の果て、未だに屹立していた分身の根元の袋を蹴り上げてしまった。

 

 正しくフルボッコ。

 

 その後は、気を利かせてくれたセレーナから水に濡れたタオルを受け取ると、ゴシゴシと顔に付着をした液体を拭き取る。

 

 不幸中の幸いか、ズタボロな姿になったシードは、何とか精神状態が持ち直したらしく、風呂に入ってきて部屋も片付けると咲夜から話を聞ける様になった。

 

「その、ゴメンな咲夜」

 

「もう良い、私も少しばかりやり過ぎたしな」

 

 セレーナは『少し?』と首を傾げるも、火に油なだけだと判断をして黙る。

 

 壊れたシードはらしくもない行為に耽り、その事を自覚してからはただひたすら恐縮していた。

 

「それに、あの女──瑞原葉月だったか? 色々な事が重なったとはいえ他の男に寝取られたのだろう? ショックをうけても仕方があるまい」

 

「うぐぅ!」

 

 何か、見えない棘か槍が突き刺さったらしく胸を押さえて呻くシード。

 

 この話の前にセレーナがビルナスから聞いていた、葉月からの伝言をシードは聞かされていた。

 

『シードに伝えて。ボクの事はもう忘れて、違う幸せを見付けてね? って』

 

『あ、ボクの事は大丈夫。ユートが面倒を見てくれるんだもん……ね?』

 

 これではシードが盛大に振られた様にしか聞こえない訳だが、少なからず権能が関連している事をシード達が知る由もない。

 

「……急激な心変わりか」

 

「何か心当たりでも?」

 

 セレーナが訊ねると咲夜は難しい表情をする。

 

「先日、私は地獄に赴いていたのだ」

 

「「地獄!?」」

 

「ああ、私はそもそも地獄の鬼と同じだからな。其処にヒトの魂を導く役割を持った天使、地獄門の導き手ラベルケースが居るんだ」

 

「鬼じゃなくて天使が護っているの?」

 

「まあな。でだ、ラベルケースは天使喰いと接触し、そいつと戦った……筈なんだがな」

 

「筈?」

 

「うむ、戦闘の跡が残っていたから間違いない」

 

 確認してきたセレーナに答える咲夜だが、自分自身が要領を得てない所為か、上手く説明出来ていない。

 

「間違いはないんだがな、何だ……そのぉ……な?」

 

「「?」」

 

 本当に要領を得ない。

 

「私は奴……ユートが天使喰いになって、アプロスの手先としてラベルケースを斃し、喰らおうとしていたとばかり思ったのだがな、何故か……仲好くなっていたのだよ!」

 

「「ハァ?」」

 

 全く以て意味が解らず、シードもセレーナも首を傾げるしかなかった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 それは今にも、ユートがラベルケースとの情交に及ばんとした時……

 

「待て!」

 

 咲夜が待ったを掛ける。

 

「鬼姫か……」

 

「む? 何故、私の正体を知っている?」

 

「いや、正体云々じゃなくて額に角が生えてるから」

 

 鬼の証といえば角だし、ユートは少女──咲夜の事を鬼姫と呼んでいた。

 

「私の事はどうでも良い。その手を放せ、闘神ユート……否さ、天使喰い!」

 

「……また天使喰いか」

 

 どうして、どいつもこいつも自分を天使喰い扱いするのかと、そろそろキレたい気分である。

 

 間違って天使喰いになど成ってはいないし、ユートは神殺し──カンピオーネで充分だと思っていた。

 

「ラベルケースにも言ったけど、僕は天使喰いなんかに成っちゃいない」

 

「嘘を吐くな! お前からは天使喰いの気配が確かに有るんだ! 前に会った際には認められなかった気配をどう説明する? 況してや今にもラベルケースを喰らおうとしておいて!」

 

「いや、確かに(性的には)喰おうとしたが……」

 

 一応、権能を使ってしまったが本人の許可は得ていての話だ。

 

「やはり喰う心算だったのではないか!」

 

「性的にな」

 

「は?」

 

「今、正に挿入()れようとした時に邪魔してくれた訳だが、ラベルケースを見てみろよ?」

 

「……む?」

 

 息が荒くて胸を露わとした状態、頬は林檎の如くで真っ赤に染まり、瞳はぼんやりと蕩けている。

 

 何しろ、性交しようとして前戯ですっかり蕩けさせて準備万端に整っており、自然と股を開いてしまうくらいラベルケースは感じていたというのに、行き成り御預けを喰ったのだ。

 

 我慢をしてはいるが早く挿入()れて欲しいのだろうと、見え見えな態度となって内股を擦り合わせながらユートを見遣っていた。

 

「咲夜様、彼は天使喰いではありません。彼とは単にその……仲好くなったからちょっと交流をと」

 

「な!? だがこの気配、明らかに天使喰いだぞ?」

 

 仲好くなったからとて、普通は行き成り性器同士の交流はしない。

 

 そこら辺はユートも慣れたものと云う事か?

 

「なら……」

 

 パチン! 指を鳴らすと氷の壁が顕れ、咲夜の周囲を囲んでしまった。

 

「な、何だ?」

 

氷結唐櫃(フリージングコフィン)モドキ。そいつは君の力では破壊出来ない氷の壁だ」

 

 嘗て、冥王ハーデスとの最終聖戦でキグナスの氷河が天貴星グリフォンのミーノスを相手に使った技で、その際には役に立たなかったものだが、魔力で構築をしたモドキとはいえ咲夜に破壊は不可能。

 

「其処で観ているが良い。僕とラベルケースが仲好く運動をしている処を」

 

「や、止めろ!」

 

 ガンガンと叩くが揺るぎもしない氷の壁に対して、咲夜が鎌を出すと強力無比な魔力で斬り付ける。

 

 必殺技らしい。

 

 然し、氷結唐櫃(フリージングコフィン)モドキに効きはしなかった。

 

 数時間後、氷の壁が解除されて咲夜も解放される。

 

 真っ赤になりながら睨んでくるが、内股になっていて朱色のズボンをグショグショにしていては恐くも何ともない。

 

 数時間もの時間を交流中な二人を観ては、どうやら女としてのナニかに触れたらしく、羞恥と憤怒が混ざった表情になったらしい。

 

「ほら、普通なら出来る筈の時間があったのにやらなかった。これで証として欲しいものだね」

 

「や……」

 

「や?」

 

「喧しいわ、莫迦者共! もう知るか!」

 

 涙目になりながら転移をしてしまった咲夜。

 

「さて、もう少し楽しもうかラベルケース?」

 

「はい」

 

 最早、どうでも良いと言わんばかりにラベルケースに振り向くと、テントを張って本格的にヤり始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「……」

 

「……」

 

 唖然となる二人。

 

「一応、暫くは覗いてみたのだがな……」

 

「ただ、シているだけだったと?」

 

 セレーナの問いに頷く。

 

「それと、葉月だったか? あの女にも会ってみたんだが、ラベルケースと変わらない対応だった」

 

「っ!」

 

「洗脳解除の術を掛けてはみたが全く効果が顕れなかったし、何よりラベルケースも葉月も洗脳された者に特有の瞳ではなかった」

 

 その意味は理解出来る。

 

 したくはないが、葉月もラベルケースも単純に好意を持った可能性があると。

 

「だけどそれでも……俺はもう一度、葉月に会いたいんだ!」

 

「苦しむだけかも知れん、それでもか?」

 

「ああ!」

 

「ならば来年になったなら今一度、闘神大会に出場をするのだな」

 

 決意をしたシードへと、咲夜は意外な事を奨めるのであった。

 

 

.


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