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女の子モンスターカードも随分と集まってきた。
海の幸とヤった後、当然ながら彼女をカード化した訳だが、その後も何体かの女の子モンスターと闘い、『戴きます』をしてから後にカード化をしている。
そしていい加減で此処の階層の女の子モンスターをコンプした頃、ゾンビを喚び出すボサボサな銀髪女性を見付けた。
名前はプルマ。
どうやら記憶喪失であるらしく、プルマという名前も適当に付けた偽名であるて云う。
話を聞くと、どうも記憶喪失らしく記憶を回復する為に、とあるアイテムを捜してラグナード迷宮に入ったらしい。
そして、この地で死んで果てた人間をゾンビとして甦らせ、情報を集めていたのだと云う。
尚、次の対戦相手であるカシマ・シードもアイテムを捜してくれているとか。
「またアイツか……若しかしてシードというのがこの世界の主人公か?」
それは正解であったが、此処でユートは思考の罠に掛かってしまう。
「とすると、ヒロインに当たるのはセレーナ・フレイズか……? どう考えても正統派ヒロインとは言い難い気もするけど」
ともすれば嘗てのユートとカトレア並に年齢が離れているし、それだけならばまだしも明らかに遊んでいるとまでは云わないけど、性行為は何処かでしていると思える。その相手が誰なのかまで窺い知れないが、まさかシードだという事はあるまい……と。
まあ、実際には闘神都市に来てからシードの筆下ろしをしていたりするから、その推測は誤りだが……
ユートはシードがセレーナ以外と親しく接する女性を見た事がなく、セレーナをヒロインだと勘違いしてしまったのである。
無くはないか……的に。
ユートとしても其処らはどうでも良いし。
取り敢えず……
「プルマだっけ? 記憶を取り戻したいのか?」
「は、はい……」
「その記憶喪失が不慮の事故なら良い……事はないけど扨置いて、自分の意志で記憶を消したのなら悲劇にしかならないぞ?」
「それは、どういう?」
「例えば、捨てたくて仕方ない記憶を魔術で消したってんなら、記憶を取り戻した瞬間に自殺したくなるかも知れない」
「……」
其処までは考えていなかったのか、プルマは元から不健康な蒼白い顔を輪に掛けて蒼くした。
そう、彼女の肌は白い。
だけどそれは白亜や白夜や白姫達の健康的な白さではなく、永らく闘病生活をしていた病人の様にだ。
ユートは気付いている。
デスマスクやデストールやマニゴルド等といった、
彼女は──プルマは既に死んでいる……と。
今の彼女は死した肉体に魂が貼り付き、辛うじて動かしているに過ぎない。
放っておけば自我を失って暴れ出すだろう。
閑話休題
「それでも良いというならアイテムを捜す迄もない、僕が君の記憶を取り戻させてやるよ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、可能だからね」
「是非、お願いします!」
必死な様子に苦笑いをしながら、どうやってプルマを成仏させるか考えた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
取り敢えず、シード達を含めて集合をしたユート。
「何、この鬼っ子は?」
「咲夜だ、見知りおいて貰おうか」
「ああ、君は……」
何者なのかを理解して、ユートはそれ以上の詮索を止めた。
「本当にプルマの記憶を取り戻せるのか?」
「ユスティーナ様!」
「取り戻せる。それと……この爺様は誰?」
聞けばプルマは本当だとハーメリンナ聖王国の第三王女──ユスティーナ・ハル・アプト・リンディアであると云う。
この爺さんは行方不明となっていたプルマ=ユスティーナを捜して、この闘神都市くんだりまで来た。
だが、漸く見付けたかと思えばユスティーナは記憶喪失な上に……
「そうか、咲夜が居るという事は事実を……プルマが既に死んでいるという事を知ったんだな?」
プルマはコクリと頷く、とても悲しそうに。
「解った。その後の事に関しては咲夜に任せても?」
「うむ」
心得ていると言わんばかりに鷹揚と頷いた。
ユートは右の人差し指を立てると、プルマの額に向けて突き出す。
ピシリッ! 頭に衝撃を受けたプルマが目を見開きながら仰け反り、数秒も経ったら涙を流し始めた。
「な、何をしたんだ?」
「幻朧拳。本来だと敵の脳を支配し、脳内で──愉快な──幻覚を見せる技だ」
小宇宙が使えないから、今回は霊力で代用をする。
「思い……出しました」
自分がハーメリンナ聖王国を出た理由、それは王位継承争いが激化して国が荒れていくのを見ていられなくなり、上の二人を抜いて自分が王位継承して争いを止めようと考えたらしく、闘神都市で開催されるであろう闘神大会に出場をし、優勝を目指したのだとか。
闘神大会とはそれだけの権威がある大会。
だけど、国を出てロックという魔術師に襲撃され、ユスティーナは死んでしまった。それでも死に切れずリビングデッドとなって、再び動き出したのだ。
とはいえ、強い衝撃を受けたユスティーナは記憶を失い、闘神大会に出ねばという強い意志に導かれるかの如く出場をしたらしい。
名前も覚えてはいなかったが故に、自分でプルマと名付けたのだと云う。
「ユートさんでしたね……お陰で記憶が戻りました。ありがとうございます」
王女であった記憶を取り戻したからか、ボサボサな頭に魔術師ルックなプルマだが、喋り方が変化をして何処か気品が感じられる。
「後の事は君らでやってくれるか? 僕も大会に向けて動きたいんでね」
「あ、ああ……」
シードが頷いたのを確認すると、ユートはその場から立ち去った。
咲夜の刺す様な視線を感じながら。
後日、闘神ダイジェストにてシードVSプルマは、クリちゃん&切り裂き君により、シードの勝利で終わったと報じられた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ウェーブが掛かった長い亜麻色の髪の毛に赤縁眼鏡を掛け、紺色のスク水を着てビート板を持った女の子モンスターちゃぷちゃぷ。
水色のかえる兜を被った長い銀髪に、ビキニを着て赤いマントを棚引かせている青い瞳の剣を持った巨乳なかえる女戦士。
長い赤毛に赤い瞳、肩の出た白い服を着て黒いストッキングを穿いた額に赤い宝石を張り付けたスモッグシルフ。
緑のカエルフードを被り緑のケープをヒラヒラさせており、赤い瞳にグリーンブロンドのカエル大王の血を引くらしいカエル魔女。
ユートはモンスターが蔓延るラグナード迷宮にて、女の子モンスターと出逢ってはカードに封印する。
勿論、性的に『戴きます』をする事も忘れない。
そんな中、ユートと似た様な事をする男を見付け、顔を顰めてしまった。
当たり前だが、女の子モンスターとヤっている事に関してではない。
ユートは何処かの誰かと違い、自分がしている事を棚上げなどする気は決してないのだから。
先ず、相手がユーキから聞いていた銀髪オッドアイなイケメン君、テンプレな踏み台転生者だった事。
正しく『うわぁ……』と言いたくなる、滅茶苦茶に気色悪い容姿だった。
オッドアイならユートの【リリカルなのは】で好きなヴィヴィオや、その相方のアインハルトもそうだ。
では二次元と三次元の違いなのか? とも思えるのだろうが、別にオッドアイに隔意は無い。
イケメンだからか?
そんなもの今までに沢山見てきている。
どうにも雰囲気が気色悪いのかも知れない。
次に、女の子モンスターを力尽くで犯している点。
ユートも強引にヤるにはヤるが、最終的には双方が快楽を得られる様にする。
最後に、女の子モンスターが死んでいる事だろう。
カード屋から聞いたが、女の子モンスターにとって人間の男の精液は毒にしかならない……と。
ユートは人間から可成り外れており、精液も毒にはなり得なかった。
否、それだけなら嫌悪感を懐きはしない。
ユートだって純粋な人間であれば同じ事になっていたのだから、ある意味では同じ穴の狢だろう。
ならば何に顔を顰めているのか?
それは
然し、それを平然と死体を前に言う神経が信じられなかった。
寧ろ、あのカムイ・ゴウは
しかも死体を蹴り上げ、水に落として沈めていた。
余りにも気分が悪いが、まさかこの場でカムイ・ゴウを斃す訳にもいかない。
場合によれば失格になりかねないからだ。
ユートはその場を離れ、口直しでもするかと迷宮の外へと出た。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ユートはユーキやスワティを連れ、さやかが働いている酒場へと繰り出す。
今までは特に縁の無かったボーダー・ガロアという大会常連者と、パートナーのレイチェルが居た。
悪い人間ではなさそうだったし、一緒に飲み食いをする事になる。
そんな中でカムイ・ゴウの話が出た。
転生者だとはいえども、やはりこの世界の人間であるが故か、情報が普通にあったのは驚きである。
カムイ・ゴウは傭兵をして暮らしているらしいが、今までに何故か闘神大会に出ていない。
それが今回、どうしてか出場をしてきたのには彼も驚いていた。
「(恐らく、今回は主人公のヒロインが出ているからだろうな)」
「(だねぇ……)」
目と目で通じ合うユートとユーキだが、未だに勘違いをしているユートは……
「(然し、アイツの趣味がよく解らないな。羽純・フラメルをパートナーに選びながら、セレーナが欲しいとか考えるか? だったらセレーナっぽいのをパートナーにしそうだけど)」
ズレた感想を懐いた。
ユートの信条というか、座右の銘は『未知こそが真の敵』と『情報は力なり』な為、情報収集には割かし力を入れており、ボーダーに酒を奢りつつスワティに酌をさせてカムイ・ゴウの情報を仕入れてみる。
ボーダーの……
「ちっと乳臭ぇが、まあ良いか! ガハハ!」
という意見に、スワティが憤慨をしていたけど。
判ったのは、カムイ・ゴウが相当な女好きであり、中でもいたいけな女の子の初めてを奪う事に、至上の悦びを感じるのだとか。
特に好きなのが、処女を貫き引き裂いて流れ出た血と愛液と精液が入り雑じった液体でベタベタに濡れたモノを、大事なナニかを奪われて茫然自失となっている少女の口に捻り込んで咥えさせ、その舌で味あわせる事らしい。
その上で無理矢理に頭を動かし、軽く歯が当たって口内と舌の滑りに快楽を得て
ユーキとスワティは嫌悪を露わにし、ユートもまさか其処までとは思わ……なかった訳でもない。
モンスターだとはいえ、女の子モンスターに対する行動を見る限り、それくらいはしてもおかしくないと判断が出来たからだ。
「奴の性癖はそんな感じだった様だが、肝心の能力がまたよく解らねー」
「解らない?」
「二つ名は【
「「ぶはっ!」」
ユートとユーキは二人して噴き出す。
「なんつーテンプレ乙」
ユーキは頭を抱えたが、ユートは何やら難しい表情となっていた。
そして、遂にユートの第三回戦目を迎える。
カムイ・ゴウは悠々と、虎のコーナーより歩いて来ていた。
最近、頓に困っていたのが自身のパートナーである羽純・フラメルの事。
抱いてもうんともすんとも言わず、生理現象に基づいて生きている感じだ。
何処を見ているのか判らない視線、食事も出されれば取り敢えずノロノロと食べるだけで、催せばトイレには行くし眠たくなれば眠りもする。
だけどそれだけだった。
幾ら貫いても最早、喘ぎ声の一つすら上げない様はまるで、ダッチワイフでも使って自慰をしているかの如く感覚である。
仕方がないから一回戦と二回戦の敗者のパートナーやら、女の子モンスターで性欲を満たしていた。
傭兵としてはそれなりに有名となり、正に順風満帆を絵に描いた様な人生。
故に、女なんて幾らでも調達が出来る……と考え、闘神都市Ⅱの正ヒロインである瑞原葉月がビルナスのパートナーとして参加する闘神大会に、満を持しての出場と相成った。
ビルナスを潰してやり、この大会で優勝して誰憚る事無く
初めて羽純を犯した時の興奮を味わえる。
差し当たり、第三回戦の相手のパートナーを使い、抑え切れないリビドーというやつを鎮めよう……
カムイ・ゴウはそんな事を考えながら、コロシアムへと姿を現した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
銀髪、青と赤の
おまけに強大な魔力をも感じる、見た目が完全無欠に踏み台な転生者。
名前はカムイ・ゴウ。
元が日本人だった筈で、ならば厨二精神に溢れた感じで、神威 轟と漢字なら書くのだろうか?
ユートはカムイ・ゴウを見ながら、そんな取り留めの無い思考に耽る。
司会者兼審判は三回戦からシュリとなり、緑のショートヘアな女性が右手を天に掲げて……
「始め!」
試合の合図を出した。
《TURN UP!》
直ぐにもブレイバックルを腰に装着し、ターンアップハンドルを引くと、オリハルコンエレメントが目前に顕れて、ユートはそれを躊躇う事無く潜る。
仮面ライダーブレイブ・弁天モード……スワティの力を封入したカードと融合する事で、スワティが着ている装束に近い物を装備、某・黒の王子様っぽい顔を覆うバイザーを着けた。
「ブレイバックルっぽい機械って……てめえ、まさか転生者なのか!?」
どうやら他の選手の試合は観てなかったらしい。
行き成り空中から赤い剣が顕れてユートを襲う。
「はっ!」
ラウザーホルスターからブレイラウザーを抜いて、その赤い剣を弾いた。
「はん、てめえが転生者だろうが関係ねー! てめえは俺の踏み台だからな!」
「くっくっ、踏み台な容姿でよく言う!」
「顔のこたぁ、言うんじゃねーよっ!」
何故か怒り出したカムイ・ゴウは、手に青い剣を出して斬り掛かってくる。
どうやらこの容姿は本人の意志と無関係らしい。
まあ、容姿が云々よりも性格がアレでは……
ユートはブレイブラウザーでカムイ・ゴウの剣を弾きながら、〝自身の推測〟が正しかった事を覚った。
その〝推測〟を裏付けたのが……
「死ねぇぇっ!」
ユートに重なる影が突如として盛り上がり、槍となって襲ってきた。
「古典的な手法だが、確かに効果的だろうね。相手が僕じゃなけりゃ……」
自身を囮にして死角からの奇襲──効果は抜群だ。
それがユートでさえなければの話だが……
グルリと回転する。
同時にブレイブラウザーを揮い、影の槍を全て打ち緒としてしまった。
「な、なにぃ!?」
緒方逸真流──【天輪舞】である。抜刀術であれば【切月渦】となるが……
「これは、
ユートはそう分析した。
その時は【
カムイ・ゴウは禁手には至っていないらしいけど、剣を出す能力と影の操作をする能力、そして羽純・フラメルというパートナーを十のコストで獲た様だ。
ユートは積極的に二つ名を明かしているっぽい事に違和感を感じて、幾つかの可能性を考えて対処を変えていく方向性でいた。
先日、カムイ・ゴウに関する二つ名──【
幾らテンプレ踏み台転生者っぽいとはいえ、其処まで莫迦だろうか?
若しもこれが何らかの罠だったら?
ボーダー・ガロアが加担しているとも思えないし、恐らく闘神大会に向けての対転生者用トラップとして自ら流したのだろう。
そうなると額面通り受け取るのは危険だ。
【
単純に無制限に剣を出したり射出するだけでなく、
だから、コストで
だが然し、カムイ・ゴウは【
仮に違っても操影術系の能力なのは間違いない。
コストは三〜四だろう。
パートナーがユーキ曰くアリスソフト系──其処から獲た場合がコスト一。
影を操る能力が三〜四だとしたら、剣を出す能力は五〜六といった処。
剣の射出も影を通じて行ったのであれば理解可能。
ならば、カムイ・ゴウの真の能力は……
「魔の気配と聖の気配……
「くっ!」
言い当てられたカムイ・ゴウは、悔しそうに呻き声を洩らしてしまう。
自らの作戦を看破され、悔しげなカムイ・ゴウ。
よもや、彼もこうも簡単に作戦が瓦解するなどとは思わなかったのだろう。
「糞が!」
口汚く叫ぶと聖魔剣を創り出し、一振りを手に持って残りをあちこちから射出してきた。
木場が偶に【
木場がやる地面から大量の剣を発生させるアレも、カムイ・ゴウのこれも原理的には同じ。
地面から出すか、空中から射出するかの違いがあるだけだった。
ユートは特に慌てるでなくブレイラウザーを手に、向かってくる全ての聖魔剣を迎撃していく。
緒方逸真流は基本的に、多対一で戦う事を目的に創られており、手数が多くとも絶対的な戦力差とは決してなり得ない。
「う、嘘だろ?」
驚愕するカムイ・ゴウ。
意外に自分の
性格がマトモなら味方にしても良かった程度には、努力もしているのだろう。
だが、性格が残念だ。
ユートもえちぃのは好きだし、セ○クスも割と強引に迫ったりもする訳だが、カムイ・ゴウみたいなやり方は決してしない。
例えば、草薙静花を相手に色々と御触りもしたが、本気で嫌がれば止めた。
それでも強引に事を進めるなど有り得ないから。
尤もユートはある程度、相手が赦してくれるレベルを計れる為、大抵は困った顔をしつつも受け容れる。
そうして快楽に溺れて、最後には美味しく『戴きます』されてしまう。
流石に当時は中学生だった静花は御触りまでだし、其処まで露骨な部位には触れていないが……
「お前の能力は効かない。終わらせて貰う!」
ユートはラウズ・アブゾーバーのトレイを開くと、二枚のカードを引き抜いて一枚をインサート。
《ABSORB!》
更にもう一枚をリーダーへとスラッシュする。
《FUSION!》
光を放つと、紫色の鎧を身に纏った姿となる。
「なっ!? その鎧は……【デート・ア・ライブ】の夜刀神十香だと!?」
基本的に転生者というのはサブカルチャーに詳しい者が多く、カムイ・ゴウも御多分に漏れず識っていたらしい。
まあ……当然の事ながらスカートではないのだが、そのシルエットは間違いなく夜刀神十香。
作中、彼女はプリンセスというコードネームで呼ばれている為、この姿の事は【プリンセスフォーム】と呼んでいた。
【イフリート】も同じ、主人公の五河士道の義妹の五河琴里が変じた精霊で、故に【イフリートフォーム】と呼ぶ姿だが、使っていなかったが為に未調整で、その姿は琴里の精霊モードそのまんま、男のユートにはキッつい姿だ。
「チックショー! 何なんだよ、何なんだよお前!」
明らかに自分やその他の転生者と毛色が違う。
右腕をユートの方へ掲げて人差し指を突き出すと、カムイ・ゴウは聖魔剣を何十振りと射出した。
慌てず騒がずユートは、ブレイラウザーのオープントレイからカードを抜き、スラッシュする。
《NIGHTMARE!》
ユート──ブレイブへと融合するのは橙色と黒色を基調としたドレス、ヘッドドレスやガーターベルトは何処かゴスロリチックで、黒髪をツインテールに結わい付けていた。
「時崎……狂三……?」
ユートが弁天モードで使っているのは、女の子モンスターのカードばかりでは
なく、【デート・ア・ライブ】的な世界で獲たカードも同じくだった。
「
【プリンセスフォーム】での
とはいえ、フュージョンで完全融合した訳でなく、一部融合による顕現だ。
スペードスートのカテゴリー10──タイムスカラベみたいな感じで、一回使ってしまえば消える。
「
BANG!
高速で飛翔した弾丸が、カムイ・ゴウを撃ち抜く。
カムイ・ゴウの刻が停止すると同時に、彼が制御していた聖魔剣も停止。
停まっている間に聖魔剣を打ち落とした。
「ハッ!」
気付いた時には遅くて、ユートは次の行動へと移っている。
それは全ての女の子モンスターカードの読み込み。
《CHAOS IMPACT!》
「僕と共に在る女の子モンスター達が、お前に宜しく……だとさ」
「ヒッ!」
それは同族をヤり棄てにされた怨み骨髄だろうか、融合をした彼女らからそれこそ
「ま、待てよ! アンタだって俺と同じじゃねーか。何で俺だけが責められなきゃなんねーんだよ!」
「それで?」
「いや、だから……」
「そんな話で僕が躊躇うとでも? 所詮は僕ら転生者はディケイディアン。
「に、二百年?」
〝同じ存在〟だと思い込んでいたのか、毛色が違うと思ったが経過年数を聞いて驚愕する。
「終わりだ!」
手にしたブレイラウザーから漆黒の塊を出して射出すると、それはカムイ・ゴウへ向け真っ直ぐ飛んだ。
「糞ったれがぁぁっ!」
聖魔剣を何十と創り出して盾代わりとし、ケイオス・インパクトを防御しようと試みるも……
パリン! パリン!
次々と破壊される。
「止まれ、止まれ、止まれよぉぉぉぉぉっっ!」
パリン! パリン! パリン! パリン!
願いも空しく聖魔剣が壊されていき……
「ガハッ!」
遂にカムイ・ゴウを捉えて撃ち抜いた。
「ふうん? 威力が可成り減衰されたか」
「うぐっ……!」
一度は倒れたがフラフラと立ち上がるが、ユートは直ぐにも何処ぞの蒙古男張りのレッグラリアットを、カムイ・ゴウの首へと極めてやった。
メキィッ!
「ギッ!?」
次の瞬間、何かが折れる嫌な音を響かせて吹き飛ぶカムイ・ゴウ。
首が有り得ない方向に曲がり、それでも虫の息ながら生きている。
「かはっ、げはっ!」
「お前はもうすぐ死ぬ……その間は存分に苦しめ」
「あ……く、ま……」
「違うな、魔王だよ。神殺しのね」
序でに冥王でもあるが、上司様の二次的称号を網羅している事に鬱となってしまうユート。
「っ!?」
「序でにお前の神器を戴こうか。どうせ死ねば無くなるんだしな」
驚くカムイ・ゴウを尻目に人差し指を突き付けて、ユートは燐気を集めた。
「喰らえ、死出の入口へと誘う積尸気冥界波!」
「ギィィィィッ!」
魂に癒着するかの如く、神器は所有者と一つになっており、抜かれるのは相当な苦しみを伴う。
【魔剣創造】と【闇夜の大盾】が光の球となって、カムイ・ゴウの身体から浮かび上がる様に顕れた。
ユートはそれを回収し、最早カムイ・ゴウには目も呉れずに踵を返す。
シュリによる勝利宣言を聞きながら、ユートは羽純・フラメルが居るであろう控え室へ向かうのだった。
尚、ユートは〝忙しく〟て観てはいないが、その晩の【闘神ダイジェスト】に於いて、クリちゃんと切り裂き君によりカムイ・ゴウの死亡が報じられている。
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