闘神都市RPG【魔を滅する転生闘】   作:月乃杜

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第11話:目覚めろ、その魂! Let the game begin

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 ユートは白夜から一通りの話を聞いた。

 

「莫迦だ莫迦だとは思っていたけど、極め付けの莫迦だったんだな優世は」

 

 頭を抱えたくなる。

 

「それで? 天使喰いEXって何だ?」

 

 狼摩優世が転生特典に選んだ一つ、【天使喰いEX】について訊ねると、溜息を吐くと共に白夜が重々しく口を開いた。

 

「私もよくは知りません。元からこの世界には【天使喰い】という概念があるみたいですが、文字通り天使を喰らう能力。ああ、食欲ではなく性欲的にですね」

 

 優世がヒトの形をしている天使に歯を食い込ませて肉を引き千切り、グッチャグッチャと咀嚼するグロい映像を思い浮かべ、表情を引き攣らせているのを見た白夜が注釈を入れる。

 

「その、アレです。バカ兄が射精()した瞬間に天使からエネルギーを逆に吸収をして、バカ兄自身の力に変換をします。とはいえ、本来は相手がその……」

 

 白い肌の頬を桃色に染めながら、躊躇いがちに言い淀んでしまう。

 

「どうした? つっても、察しは付くけどね。要するに天使をイカせた方がより効率的に力を吸収出来るんだな?」

 

「は、はい……」

 

 卑猥な言葉を言うのは、やはり恥ずかしい。

 

「でも、バカ兄は……早いので……」

 

「……」

 

 居た堪れない空気になってしまう。

 

 どうやら狼摩優世は早漏であるらしく、天使がイく前に自分がイッて射精()してしまうらしい。

 

 その所為で効率的な吸収が不可能であり、完全吸収には何度かに分けてヤらなければならなかった。

 

 天使喰いに成った時点で持久力や精力が付く筈が、正規の手段じゃなかったが故にか、そこら辺は前世の侭だった様である。

 

 流石に白夜も窺い知れないのだが、残念仕様な優世は短小、早漏、包茎(真性)の三重苦だった。

 

 因みに、ユートは普通だったのかも知れないけど、残念ながら童貞であったが故に、使う機会は全く無かった上に自慰すらした事が無かった為、自分自身の事すら知らない。

 

 優世の場合、女性との付き合いはあったらしいが、三重苦の所為で満足をさせた事は無かった。

 

 

 閑話休題……

 

 

「今、白夜はどう暮らしているんだ?」

 

 余りに切ない内容を払拭するべく、ユートは話題を転換する。

 

「バカ兄とラグナード迷宮の可成り奥の方で暮らしてます。バカ兄が何を企んでるのかは知りませんけど、碌な計画ではないですね」

 

「……どうして今も優世に付いて回る?」

 

「この世界、女が一人では生き難いので。まあ、壁代わりですね。バカ兄も一人では生きられませんから。一人で死ぬのが怖くて私を道連れにしたし、一人では闘神都市に来るのも憚るから私を連れ回す。だから、私もバカ兄を利用させて貰っています」

 

「成程……ね」

 

 どうやら、一人で生きる術を持たぬが故のもので、若しもそれが可能であるのならば、すぐにでも離れているであろう。

 

「白夜はこれからも優世の所で?」

 

「本当なら優斗様の許へとすぐにも馳せ参じたいのですが、私はバカ兄の所に戻って何を企んでるのかを調べてみますね」

 

「……そうか。大会が終わったらまた会おうか」

 

「はい、勿論です!」

 

 ユートの言葉に白夜は、朗らかな向日葵の如く笑顔を浮かべて答えた。

 

「そうだ、あの仮面ライダーマリカ……だったか? あれについて詳しく知りたいんだけど?」

 

「はい、構いません」

 

 頷いて話し始める。

 

「仮面ライダーマリカというのは、二〇一三年の秋から放映が始まった【仮面ライダー鎧武】に登場をするライダーの一人です」

 

「仮面ライダー鎧武……」

 

「ロックシードという果実が変化した南京錠、それを【戦極ドライバー】にセットして変身します。マリカは新世代で【ゲネシスドライバー】と【エナジーロックシード】を使う出力が上がった女性ライダーです」

 

「ふむ、ロックシードね。研究したいな」

 

「優斗様が欲しいなら差し上げても構いませんけど、私の使う力が無くなるのは流石に困りますね……」

 

「……代わりの物を渡せばくれるんだ?」

 

「はい♪ 優斗様の為ならあんな物で宜しければ」

 

 アッサリと言う白夜は、実際にユートの為になるのなら、幾らでも全てを擲ってしまうだろう。

 

 それこそ、エセルドレーダ並の忠誠心を魅せて。

 

「白夜は主役仮面ライダーではどれが好き?」

 

「私ですか? そうですね……仮面ライダーアギトでしょうか」

 

「アギト?」

 

「はい。シャイニングフォームとか最高ですね」

 

 存外とドップリハマっていたらしい白夜は、ニコリと笑い答えたものだった。

 

「判った」

 

 ユートはステータス・ウインドウを開き、アイテムストレージから【オルタリング】をタップする。

 

 すると、実際に【オルタリング】が実体化……

 

「これは……オルタリングですか?」

 

 白夜は渡された【オルタリング】を持ち、マジマジとそれを見つめる。

 

「実は主役の仮面ライダーのベルトは揃っていてね。それもその一つだよ」

 

「これ、優斗様が造ったんですか?」

 

「まあね。オルタリングやアークルは僕の領分だし」

 

 ユートの専門はマジックアイテムや術式で、ユーキの専門は機械やプログラム関係だ。

 

 一応、お互いにお互いの領分に足を突っ込めるが、やはり専門が違うとどうしても劣ってしまう。

 

 そういう意味でもユーキはユートの比翼の鳥だし、ユートはユーキの連理の枝であった。

 

「それは当然ながら本物って訳じゃない。それっぽく造った謂わば偽物。そいつに僕の持つ神器──【魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)】の禁手である【|至高と究極の聖魔獣《アナイアレイション・メーカー・ハイエンド・シフト》】で創造した聖魔獣……アギトを封じてある」

 

「え? 神器(セイクリッド・ギア)!?」

 

「そう。そのベルトを着けて『変身』すれば聖魔獣を着込む形で変身が可能だ。僕のブレイブもね」

 

 オルタリングを装着すれば後は、オンオフも自由に自分の意志一つで顕現する事が出来る。

 

 そういうマジックアイテムなのだから。

 

 白夜はちょっと目をキラキラさせていた。

 

「着けてみたら?」

 

「はい!」

 

 早速、白夜は言われるが侭に装着をしてみる。

 

 赤いベルト部、バックルは金色を基調としていた。

 

「中々に似合うかもね」

 

「そうでしょうか?」

 

 仄かに頬を染める白夜、何というか女の子としては喜ぶポイントを間違っている気がするが、嬉しそうなので良しとする。

 

「そういえば、気になっていたんですが……」

 

「? 何が?」

 

「アギトって、クウガとはどんな関係なんでしょう」

 

 行き成り何を言い出すかと思えば、今更ながら疑問を解消したいらしい。

 

「まあ、当時は五歳か其処らだった筈だしな。その頃から興味を持っていたならまだしも、放映終了後から興味を持ったなら判らない事もあるか……」

 

 白夜が仮面ライダーに対し興味を懐いたのは、当然ながらユートを好きになってからの事。

 

 そしてそれは十歳以降の事であり、最初に観たのは仮面ライダー電王だった。

 

 ユートは小さな頃から観ており、仮面ライダークウガも仮面ライダーアギトも見知っている。

 

「クウガとアギト……当初は同じ世界観の心算で設定したらしいけど、クウガは西暦二〇〇〇年でアギトが西暦二〇〇一年の噺。けどアギトの世界で未確認生命体第四号が活動していたのがアギトから二年前。つまりは一九九九年。年代的にズレがあるんだよ。早い話が窮めて似たパラレル世界って事らしいね。意図的にずらしたって話だけど……ディケイドは知ってる?」

 

「勿論です」

 

「ディケイドでのクウガの世界が、アギト本編に繋がっていたり……とかね」

 

「どうしてですか?」

 

「いや、未確認四号は未確認生命体が消えてから行方不明らしいし、雑魚クウガ……じゃなくて小野寺ユウスケはディケイドと旅に出て行方不明じゃないか」

 

「ああ、そういえば……」

 

 ン・ガミオ・ゼダ戦後、グロンギは消えている。

 

 そして、小野寺ユウスケは次元の彼方へ旅に出た。

 

 その二年後、津上翔一がアギトとしてアンノウンと戦ったのだとしたならば、割とすんなり落ち着く。

 

 小野寺クウガは正体を知っていたのが『姐さん』だけだったし、クウガではなく未確認生命体第四号の侭で呼ばれていても、それ程おかしくはないだろう。

 

「まあ、色々と矛盾とかはあるけど……ディケイドは今更だろう。例えば、設定では剣崎や渡は本編数年後だって話だったけど、電王はオリジナルから出ている様に見せて、剣崎達の仲間に居た電王は何? って話になるからね」

 

 デンライナーの面々との友誼は何だったのかと言わんばかりに、仮面ライダー電王ソードフォームが襲い掛かっていた。

 

 クウガが小野寺クウガをアルティメット・クウガにしたものなのは、五代雄介が戦いを止めて旅の空へと出ていたからだろう。

 

 尤も、実際には役者が捕まらなかっただけかも知れないが……

 

 白夜は愉しかった。

 

 こんな風にユートと逢瀬をして、仮面ライダーでも何でも良いのだが、お茶を飲みながらお喋りをする。

 

 前世ではそんな事も碌に出来ずにいたのだから。

 

 クウガとアギトの関連性を訊いたのも、ユートとの会話を途切れさせるのが惜しかったからである。

 

 純粋に疑問を感じていたのも事実だったが、やはりそれに尽きるのだろう。

 

 下手な会話をしてしまうと変な話題を振りそうで、解り易く仮面ライダーに関する話題にした訳だ。

 

 『女の子が好きな人と逢瀬で出した話題が仮面ライダーとか、何をやってるんでしょうか私は……』とか考えたが、白夜もデートなんて経験は基本的に無いから仕方がない。

 

 実際にはモテたのだし、御偉い医者の家系の息子だとか、政治家の息子だとかに食事に誘われて仕方無く行った事はあるが、自慢話へと終始するのが常だし、つまらなかったから余所事ばかり考え、全く聞いてはいなかったくらいだ。

 

 デートの続きや、悪い時にはホテルに誘おうとする輩も居たが、当然な事だがそれに乗る筈もなかった。

 

 尤も、相手がユートならほいほいと着いていったかも知れない。

 

 それからどのくらい居たかも判らないが、長い時間をユートと過ごしていた。

 

「それでは優斗様、また御逢いしましょう」

 

 それでも幸せな気分で、ユートと別れた白夜は酒場から、住処となるラグナード迷宮へと向かう。

 

 そんな白夜の前に不良っぽい連中が立ち塞がる。

 

「よう。君、可愛いな? 俺らと一発しけこまない? 寧ろ俺らのモノを君の中にしけこませてー!」

 

「ぎゃはは! お前、下品過ぎだろそれ!」

 

「あはははは!」

 

 数人の男はナンパの心算なのか、然し一般人ならばドン引きしそうな会話を、平然とかましていた。

 

 そんな連中に辟易とした気分となる。

 

「まったく……優斗様とのデートで折角、良い気分でしたのに。台無しです」

 

 俯いたのを震えているのだと勘違いをしたらしく、男が白夜の肩に手を置く。

 

「おら、さっさと路地裏に連れて行くぜ!」

 

「おう!」

 

 白夜は大人しく路地裏へ着いていくが、それが余計に連中を調子付かせた。

 

 路地裏に着くと、白夜は肩に乗せられた手を払いのけて……

 

「汚い手でこれ以上は触れないで貰えますか?」

 

 辛辣な科白を吐く。

 

「あん? 逆らってっと、いてーめに遭うぞ!」

 

「痛い目ですか? それはどちらでしょうね……」

 

 底冷えする様な冷やかな瞳で見遣って、津上翔一が変身前に執るポーズを構えると、オルタリングを腰に顕現させた。

 

 待機音が鳴り響く中で、右腕を前に、左腕を拳を握りながら腰に据える。

 

「変身っ!」

 

 叫んで両手でオルタリング左右のスイッチを押す。

 

 オルタリングに内蔵された賢者の石が輝きを放ち、封印をされていた聖魔獣が解き放たれ、白夜の身体を覆っていった。

 

「な、何だ!?」

 

「ヒッ! 化物!」

 

「俺は聞いてねーぞっ? こんなのは!」

 

「た、助けて……」

 

 金の二本角に赤い複眼、龍の顎の如くクラッシャーを持つ、金と黒を基調とした〝怪人〟の姿。

 

「化物とは、女の子に向かって酷い言い様ですね?」

 

 超越肉体の金と呼ばれし仮面ライダーアギトの基本形態、それが白夜の現在の姿であった。

 

 絶叫が上がり、何事かと見に来た者は驚愕する。

 

 数人の男が血の泡を口から吹きながら、二度とは使えぬであろう股間から赤く汚い液を漏らして、倒れ伏す姿を晒していたから。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ラグナード迷宮に入り、白夜はワープポイントから現在の住処としている邸のあるフロアへ移動、ワープが可能なのは飽く迄も入口までであり、後は中継点に行けるのみである。

 

 それ故に、多少なりともモンスターと戦わねばならなかった。

 

 この辺りのモンスターはユートが潜る第二層と比べると、格段に強くなっているから流石の白夜も生身で連戦はしたくない。

 

 白夜の生身の戦闘能力は決して低くはないのだが、カンピオーネなユートと比べてしまうと見劣りして、基本戦術はカウンター型。

 

 扇を用いて雅に戦う。

 

 そんな白夜がこのフロアで戦えたのは、仮面ライダーマリカに変身をしていたからに他ならない。

 

「変身っっ!」

 

 今は【ゲネシスドライバー】と【ピーチエナジーロックシード】を、【オルタリング】と交換している。

 

 白夜は、オルタリングの左右のスイッチを押して、仮面ライダーアギト・グランドフォームと成った。

 

 更に右側のスイッチを押すと、ボディの色が赤く染まって左肩が鋭角化して、ベルトの賢者の石が赤くなっている。

 

 仮面ライダーアギト・フレイムフォーム──超越感覚の赤と呼ばれし姿だ。

 

 白夜はオルタリングからクロスホーンに似た鍔の、フレイムソードを取り出して駆け出す。

 

「ふっ! はぁっっ!」

 

 現れるモンスター共を、次々とフレイムソードにて斬り裂き、先へと進んだ。

 

 腰の後ろには本来アギトには無い、元の姿の時から持っている鉄扇が装備されとおり、白夜はそれを手に取ると展開して、敵の攻撃を受け流すと同時に鉄扇で殴り付けた。

 

 アギトのパワーで殴ったからか、モンスターは吹き飛んで死んでしまう。

 

 腰に鉄扇を戻すと、手にしたフレイムソードを両手に握って、クロスホーンを展開させた。

 

 アギトの頭のクロスホーンと同じく、最大の攻撃をする際には二本角から六本角となる。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

 刀身に焔を纏わせると、一気に駆けて進行方向に居るモンスターを、一気呵成に斬り捨てていった。

 

 邸に戻った白夜は変身を解除して屋内に入る。

 

 何と、いつもの気分が悪くなる〝食事部屋〟に入ったら、優世が未だに出掛け前に犯していた天使を相手にヤっていた。

 

「あ? 白夜か。帰りが遅かったな」

 

「バカ兄は相も変わらず、〝早かった〟ですね?」

 

「喧しい! うっ!」

 

 怒鳴ると同時に目を固く閉じ、白夜にとって気持ちの悪い呻き声を上げると、天使の奥深くへ自らのブツを突き刺す。

 

 漫画的な擬音で表現をするなら、ビュッ! とか、ドピュッ! などと鳴りそうな出来事が優世と天使が繋がる先で起きているだろう事は、想像に難くない。

 

「妹の顔を見るなりって、バカ兄も変態度が増しましたか? ああ、それとも? 未練がましく白亜様の顔でも幻視しました? 或いは既にタイミング良く限界だったのでしょうか……」

 

 折角、ユートとの逢瀬で気分も最高であったのが、一気に急降下する。

 

 それが白夜の口から毒を吐かせていた。

 

 白夜はハッキリ、キッパリと実兄である狼摩優世が大嫌いである。

 

 道連れ心中をさせられてからは、憎んでいると言っても過言ではあるまい。

 

 それでもこの兄と一緒に居るのは、単純に優世と同じく一人では居られないという弱さが故だ。

 

 まあ、世の中の妹の十人中九人が薄い壁の向こうで兄の自慰による喘ぎ声を聞かされ、好意を持つ事など有り得ない話だろうが……

 

 とはいえ、残りの一人枠で白亜みたいに兄さんラブな奇特な妹が皆無ではない

……レベルで存在するのを前提としている。

 

「(本当に最低最悪な気分ですね。無理を言ってでも優斗様の所に泊めて貰うべきでしたでしょうか?)」

 

 腐れ兄貴の情事を見せられるくらいなら、優斗の所に泊まって『戴きます』をされた方が良い。

 

 優斗になら純潔の一つ、いつでも捧げられる。

 

 否、どんな事でも耐えて受け容れて見せよう。

 

 奴隷になれと云うならばなろうし、他の男に抱かれろと云うならば抱かれても構わない。優斗が言うなら全てを盲目的に受け容れ、如何なる命令も遂行する。

 

 彼のナコト写本の精霊、エセルドレーダも斯くやの忠実な下僕となっても構わないくらい、白夜はユートを愛していた。

 

 愛と哀──哀しいまでの愛情を以て、全身全霊全力全開でユートに全てを捧げて魅せるし、ユートの全てを受け止めて魅せる。

 

 そんな覚悟があった。

 

 尤も、そんな理不尽極まりない命令は決してしないのだろうが……

 

 現在、転生をして生まれ変わった白夜は誰にも抱かれた事の無い純潔の処女ではあるが、前世に於いては処女の侭に死んだ訳ではなかった。

 

 白亜を除いて八人──

 

 それは一族でユートを愛していた年頃の女達。

 

 その全員がそうだった。

 

 とはいえ、当時のユートはまだ出来ても殆んどしていなかった所為もあって、使徒契約はしていない。

 

 当時、使徒契約を交わしていたのはシエスタと白亜とカトレアの三人のみで、使徒契約を白夜達と交わす事自体が想像の埒外。

 

 そもそも、ユートの元居た世界は超常の力が一般的に流布していなかった為、考えもしなかった。

 

 それでもその八人、白亜も含めれば九人に対して残したものはある。

 

 それが彼女らの想いに応えるという事。残念だが、白夜はその中でも子を成せなかった。

 

 ユートとの相性が悪かったのか、或いは白夜自身がそういう体質だったのかは窺い知れないが、白亜を含む八人とは違って最後まで孕む事は無かったと云う。

 

 それは兎も角、だからこそ白夜は知っている。

 

 優斗に比べ、バカ兄こと狼摩優世がどれだけ劣っているのかを。

 

 能力云々ではなく男としての機能の話だけど。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「女の匂いがする……」

 

 宿屋の部屋に戻ったら、行き成りユーキが鼻をヒク付かせながら、此方に近付いて言ってきた。

 

「匂い? ああ、そりゃあクレリアを抱いたからね。でも、クレリアは香水なんて付けてなかったと思うんだが?」

 

「そんな人工的な匂いじゃないよ。生の女の匂い……体臭ともちょっと違う」

 

「いや、そんな技能がある事実に吃驚なんだが?」

 

 義妹ながら、不可思議な技能を発揮するユーキに、ユートも流石に引く。

 

「クレリア以外に誰と寝たのさ?」

 

「寝てない!」

 

 言外に誰かと居たのは、全く否定していない。

 

「嘘じゃなさそうだねぇ。操縦棹(そうじゅうさお)からはクレリアの匂いしかしないし……」

 

 怖っ!

 

 クンクンとユートの股間に顔を近付け、匂いを嗅ぐユーキの姿はいっそ異常にしか見えなかった。

 

 そんなユーキは何を思ったのか……

 

「てりゃ!」

 

「うわっ!?」

 

「きゃるん!?」

 

 ユートのズボンをパンツごと脱がしてしまう。

 

 スワティは顔を朱に染めると、両手で顔を塞いではいるものの、指の隙間から目を覗かせつつ、確り股間に付いているユートの分身を見つめていた。

 

 ユーキは目を閉じて口を開けると、舌を出してその分身にチロリと這わせる。

 

 ネットリとした唾液に塗れた舌が、そのざらついた表面を以て裏筋からつつーっと登り、一番敏感な部位へと到達をした。

 

 その感触を受けたユートの分身は、怒髪が天を衝く勢いで反り返る。

 

「な、何をしてくれてんだ……このおバカは!」

 

「あべし!」

 

 ユートがチョップを落とすと、有り得ない悲鳴を上げて床に顔をぶつけた。

 

 とはいえ、一度は勃ち上がった分身を満足させない事には、きっと収まりが付かないだろう事は、ユートが一番よく知っている。

 

 仕方ないので今夜は引き篭り、一晩中ユーキに相手をさせる事にした。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 翌日、ユートは【英雄の時代】より下層フロアとなる【青銅の時代】へと降りていた。

 

 其処はまるで水に沈んだ遺跡といった風情であり、何の準備もしていなかった冒険者では、先に進むのも覚束無い場所である。

 

 ユートは普通に飛翔可能な為、アッサリと前へ進む事が出来た訳だが……

 

 途中、何故かゾンビに襲われてしまった。

 

『グワァァァァッ!』

 

 生気の無い顔に窪んだ瞳の有るべき穴、元は剣士だったのだろうか? 元気に剣を揮って来る。

 

「ゾンビ……ね。それならこれだ!」

 

 ユートはベルトを腰へと装着すると、携帯電話らしき物を開いて操作した。

 

 3・1・5……エンターキー。

 

《STANDING BY……》

 

 電子音声が響き待機音が鳴り始めると……

 

「変身っ!」

 

《COMPLETE!》

 

 叫びながらも携帯電話型ツール──サイガフォンをベルトであるサイガドライバーのトランスフォルダーへと装填した。

 

 エネルギー流動経路たる青のフォトンストリームが身体を奔り、白いスーツを形成していく。

 

 人工複眼(スカイハイファインダー)の色は紫で、その形状はと云えばギリシア文字であるΨ(プサイ)を模していた。

 

 後背部には空を翔ぶ為のフライングアタッカー。

 

 その名をいと高き【天の帝王のベルト】──サイガギアである。

 

 仮面ライダーサイガ。

 

 仮面ライダー555系統のライダー、そのデザインは第三のライダーとして描かれながら、劇場版の敵役としてのみの登場となる。

 

 勿論、今のこれはユートが創った聖魔獣サイガだ。

 

 ユーキに無理を言って、

サイガギアを完成させて貰ってのテストとなる。

 

 別に普通にブレイブでも良かったが、敵はゾンビという事で死者が甦って進化した人類のオルフェノクが変身する──劇中設定──555系統を選んだ。

 

 素で翔べるユートだし、フライングアタッカーを持つサイガでなくとも、完成している主役のライダーであるファイズで良かった。

 

 敢えてサイガにしたのは趣味である。

 

 ユートはサイガの力で、ゾンビ共を次々と撃破。

 

 サイガフォンを外すと、折り曲げて1・0・6……エンターとキー入力する。

 

《BURST MOOD》

 

 トリガーを連続で引き、十二発のフォトンブラッド弾を撃ち放つ。

 

 三連弾を四回、それによって弾は撃ち尽くされてしまった訳だが、それで戦力が減じはしない。

 

 チャージも可能であり、他にも武器はあるからだ。

 

 フライングアタッカーを操作し、ブラスターライフルモードへと移行させて、秒速一二〇発の光子弾を撃ち放ってゾンビを全滅させてやった。

 

「必殺技を使うまでも無い雑魚ばかりだね。うん?」

 

 何だか小動物の如く震える少女──というよりも、女の子モンスターがゾンビの消滅した場所に居た。

 

 脚にまで届く青い髪の毛にコバルトブルーの瞳で、魚の尾っぽみたいな尻尾を持つ白いビキニ姿……

 

「確か、海の幸だったか」

 

 カード屋が曰く、レアな女の子モンスターらしく、逢えるかどうかは運次第。

 

 然し、海の幸とは食欲的に美味しそうな種族名だ。

 

 ユートは性欲的に喰べてしまうけど。

 

 足を海の幸に向けると、ビクッと肩を震わせながら涙目となる。

 

「こ、殺さないで……」

 

 海の幸は逃げたくとも、先程のゾンビ殺戮シーンに腰を抜かし、動けなくなっているらしかった。

 

 目の前まで歩を進めて、サイガフォンをドライバーから引き抜く。

 

 変身が解除されて素顔を晒したユートは、サイガギアをステータス・ウインドウを使って仕舞う。

 

 憐れに思えるくらい震えている海の幸に、ユートはそっと最接近をした。

 

「ヒッ!」

 

 元々が臆病な性格なのだろう、気絶してしまわないだけマシなのかも知れないとユートはクスリと笑う。

 

「死にたくない?」

 

 海の幸は質問に応える代わりに、コクコクと首肯をしてきた。

 

「そう、じゃあ……」

 

 海の幸をソッと押し倒してしまうと、水着に手を掛けてブラジャーの部分を脱がせてやる。

 

「ひゃう!?」

 

 小さな胸が露わとなり、海の幸は顔を真っ赤に染めると両腕で胸を隠した。

 

「楽しませろ」

 

 ユートは顎を手で上げさせると、海の幸の唇を奪って舌を絡ませる。

 

 クチュクチュと水音を響かせ、自分と海の幸の唾液を混ぜ合わせると、それを喉奥にまでトロリと流し込んでやった。

 

「んうっ!」

 

 海の幸は抵抗も赦されず唾液を呑み込む。

 

 力がぬけたのか、全身を弛緩させてグッタリとしながら息を荒げ、口元からは涎を垂らしていた。

 

 その後は海の幸を美味しく〝性的〟に戴いた。

 

 

.


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