魔法使いの異世界譚   作:御手洗ウォシュレット

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魔法学院と五大邪龍
Different world travel Vol.1


 俺には恋人がいた。背は140cm弱で、誰がどう見ても小学生にしか見えない。

 一応俺と同じ、中学三年生なはずなのにな。

 見た目は、凄く可愛い。可愛らしい。

 そんなだから、少女愛好家、要するにロリコンに好かれる。

 そんなだから、一人にさせられない。

 

 

「こーき・・・・・・・・・!いやぁ・・・・・・・・・!!」

 

 

 部活の後輩に技術指導をしていて、拗ねて先に帰ってしまった。

 その後輩が以前、俺に告白してきた女子だったからだろうか。

 ただ、拙い、と思って話を切り上げて追いかけた。

 今思えば、帰ってしまう前に言い訳の一つでもしとくべきだったか。

 今更、そんなこと悩んでても仕方ないけど。

 

 

「いかないでぇ・・・・・・・・・!こーき・・・・・・・・・っ!!」

 

 

 最初はただの幼馴染だった。けど、あいつが先輩たちに告白され始めて、初めて自分の気持ちに気付いた。

 あいつにも、遅い、って言われたしな。

 まだ、夫婦の営みってやつはしてないけど、キスくらいならした。

 ディープなものまではいかないけど。

 これからまだ、あいつとの楽しい人生を歩んでいけると思った。

 でも、それも叶わない。

 

 

「ひぃ・・・・・・・・・っ、俺は・・・俺は・・・・・・!」

 

「男の子が刺されたぞっ!!」

 

 

 俺の腹部に感じる熱さは、包丁が刺さってる熱さなのか。

 

 

「こーき・・・・・・・・・っ!死んじゃいやぁ!!」

 

 

 俺、死ぬのかな。

 あいつが見えたとき、後ろには挙動不審な男がいた。

 怪しく思った俺は急いであいつのもとへ向かった。

 それが悪かったのか、その男は突如刃物を持ってあいつへ襲いかかった。

 咄嗟にあいつを庇うために、あいつを突き飛ばした。

 そして、ぶしゅっ、と柔らかいモノに鋭利な物が刺さる音がした。

 

 

「大丈夫か!?この声は聞こえてるか!?」

 

 

 そうしたら、唐突に視界が真っ白になったかと思うと、次の瞬間には目の前に地面が見えた。

 腹に熱さを感じながら、うつぶせに倒れていた。

 思考が追いつくまでに時間がかかったが、俺の傷は深くどうにもならないことはよくわかった。

 

 

(内臓、いかれてんだろうな・・・・・・・・・)

 

 

 背中の方にも熱さを感じるため、貫通しているのだろう。

 死にたくない。死ぬ瞬間ってそう思うもんだと思ったけど、何故か安堵感がする。

 よく考えたら、俺はあいつを縛り付けてたのかもな。

 あいつに、金持ちから縁談が来てることは、親から聞いていた。

 俺と今後付き合い続けると、あいつは裕福な生活を送ることはできないだろう。

 

 

「こーきぃ・・・・・・・・・!いやぁ・・・・・・・・・」

 

 

 もう、唇は動かないけど。動こうとしてくれないけど。一つだけ、伝えることが出来るとしたら、こう言いたい。

 

 

「幸せに・・・・・・、なれよ・・・・・・・・・?」

 

 

 神様ってのはよくわかんねぇな。

 慈悲深いんだろうよ。この言葉を伝えることは赦してくれたんだから。

 ああ、段々眠くなってきた。

 おやすみ、母さん、父さん。

 おやすみ、ゆーな。

 

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・、17時24分52秒、ご臨終です・・・・・・・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────────────

 

 

 

「ッ!」

 

 ここは、どこだ?

 建物の中・・・・・・・・・か?これは・・・・・・・・・ベッド?

 俺は死んだはずじゃ・・・・・・・・・。

 

「あっ、目が覚めたのね?」

 

 誰だ、この女性は・・・・・・・・・?

 

「私はエルザ。エルザ・マクシミリオンよ。貴方の名前は?」

 

「俺は、華宮昂希・・・・・・・・・」

 

「ハナミヤコーキ・・・・・・・・・?聞いたことないつくりの名前ね。ハナミヤ」

 

「いや、俺の名前は昂希だ。華宮は名字だ」

 

 外国なのか?その割に日本語が流暢な気もするが・・・・・・・・・。

 それにしても、ここはどこなんだ?何故俺は生きてる?

 

「コーキ・・・・・・、コーキね!」

 

「あ、ああ。・・・・・・・・・それより、ここはどこだ?」

 

「私の家だよ?あ、お母様とチルダさんを呼んでこなきゃ!」

 

 そう言って部屋から出ていった。

 エルザ・・・・・・・・・か。それと、今気付いたんだがこの家、かなり大きいな。

 俺の寝てるベッドからドアまで10mくらいある。

 そうこえ考えていると、こつこつ、とこちらに向かってくる音がする。

 そして、がちゃ、とドアが開かれた。

 

「お身体の様子はよろしいかしら?」

 

「ただいまお飲み物を御用意いたします」

 

 おっとりした雰囲気の中に妖艶さも持ち合わせた女性と、落ち着いた雰囲気の女性が入ってきた。

 おっとりした女性はドレスを着ていて、落ち着いている女性はメイド服を着ている。

 やはりこの家は大きいようだ。それにしても、このご時世にメイドなんかいるもんなのか?

 昂希が疑問に思っていると、二人の後ろから先ほどのエルザと名乗った少女が顔を見せた。

 

「コーキ!このドレスを着てる方が私のお母様だよ!」

 

「初めまして、エルザの母のミーシャ・マクシミリオンです」

 

「そして私はこのマクシミリオン家に仕えている、メイドのチルダ・リブローテです」

 

 二人にそう名乗られ、慌てて俺も自己紹介をする。

 

「えっと、華・・・・・・じゃなくて、コーキ・ハナミヤです」

 

 エルザに名乗ったときと同じ様に間違えられないように名前を先にして名字をあとから言った。

 

「コーキさん・・・・・・・・・ですか。聞いたことないわねぇ」

 

「はい、珍しい名前のつくりです。まるで、英雄様のような・・・・・・・・・」

 

 気になることを聞いた。

 英雄様・・・・・・・・・、そう言った。ここは外国ではないということか?

 英雄として称えられるくらいなら知ってて当たり前だろうが、外国で英雄と呼ばれてる日本人は知らない。

 ならばここはどこか。もしかして、あの世ってやつか?

 

「たしかに、英雄『オダ・ノブナガ』様と似ているわねぇ」

 

 なんだと?オダ・ノブナガ・・・・・・・・・、織田信長か?

 

「それ、どういうことですか?」

 

「え?どのことかしら・・・・・・・・・?」

 

「織田信長がどうこうって・・・・・・・・・」

 

 すると、一瞬訝しげな顔をした後、声を発する。

 

「今から432年前に突如として現れた男が、当時この世界を襲っていた未曾有の恐怖を瞬く間に排除した、という伝説があるのです」

 

 432年前・・・、織田信長が本能寺の変で死んだとされるのが天正10年、1582年だから丁度その時期か。

 つまり、死んだ人間がこの世界に訪れる。ここは異世界・・・・・・、そういうことなのか?

 些か信じられない話だが、だったら俺が生きていることの方が信じられない。

 

「何か知っているのですか?」

 

「ここはどこだ?何て言う街で、何て言う県で、何て言う国だ!?」

 

 つい言葉が強くなる。しかし、それほど頭の中が混乱してしまっている。

 エルザという少女は怯えているし、ミーシャという女性は目を丸くしている。

 唯一何ともない様子なのはチルダといメイドだけだ。

 

「落ち着いてください。ここはフルヴェリンという街で、県・・・・・・・・・、このマクシミリオン家の領土で、シェルダノート皇国という皇国です」

 

 聞いたことがない地名だ。フルヴェリンも、マクシミリオンという貴族も、シェルダノート皇国という国も。

 聞いたこともないから、知ってるはずもない。

 やはりここは異世界なのか・・・・・・・・・?

 

「あ、あのぅ・・・いいかしらぁ・・・・・・?」

 

 頭を整理させようと思考に全力を注いでいると、ミーシャがある提案をしてきた。

 

 

「お腹も減りましたし、御食事にしましょう?」

 

 

 ぐぅ・・・、と誰かのお腹が鳴る。

 すると、それまでの空気が嘘のように緩む。

 

「それでは、御用意いたします」

 

「ほら、コーキさん。詳しいことは御食事が終わってからにしましょう?」




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