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タンザニア南部 『元』ZAFT前線基地改め地球連合軍前線基地
「せっかく作戦が終わったというのに、終わればすぐ次の任務とはな……老体には応えるよ」
「申し訳ありません、私達がもっと強ければ大佐をこのような場所にお連れしなくても良かったのですが……」
ZAFTを排除し、今度は連合軍による整備が開始された基地の敷地内を1台のジープが走り抜ける。
後部座席に腰掛けるミヤムラの漏らした言葉に対しマリューは申し訳なさを感じた。既に戦場から退いた筈のヘンリー・ミヤムラがこうして再び戦場に出てくることになったのは、若者である自分達が不甲斐ないせいだと思ったからだ。
「すまない、当てつけのような形になってしまったな。君達のせいなどでは無いよ。ただ、時勢が悪かったということなのだろうさ」
「しかし……」
「なに、現役時代にも多忙の経験はある。むしろ良いリハビリになってるよ。それに、この歳で新感覚を味わうことになるとは思っていなかった」
「新感覚、ですか?」
ああ、とうなずきながらミヤムラは基地の敷地内を見渡す。
ミヤムラは軍に入隊してから今日まで宇宙軍一本で働いてきた。連合軍で採用されてそれなりに時間の経っている”リニア・ガンタンク”に現在の重力戦線を支える”ノイエ・ラーテ”を初めて見たのは先日だし、アニメーションの産物だと思っていた巨大人型ロボットが資材を担いで基地内を歩き回る光景など想像も出来なかった。
この戦争が終わるまで生き残っていれば今度こそ退役するのだろうが、家内への土産話としては十分に過ぎるだろう。
そのためにも、早く戦争が終わるように任務をこなさなければ。
やがてジープは、司令部として選ばれた建物の入り口に停車した。これからここで、”アークエンジェル”の行く末が話し合われることになるのだ。
「では、いこうか」
「はい」
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”アークエンジェル” 格納庫
「弾けろ、フレームっ!」
「飛び散れ、オイルっ!」
「これこそがTHE・肉体派、”ストライクガンダム”の神髄だ!」
「全員まとめて掛かってこんかい!」
『”コマンドー・ガンダム”っ!!!』
でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!
……と書かれたプラカードを掲げながら盛り上がる技術スタッフ達。若干ドン引きしているMSパイロット達を尻目に話は進んでいく。
「はい、というわけで”ストライク”の新装備に関する打ち合わせのお時間です。後ろの人達は気にしないでください。連日の
「は、はぁ……」
アリアはそう言うが、後ろでクラッカーを鳴らしたり「うぇwwwうぇwww」と奇声を挙げるなどする整備士達を気にするな、というのは無理がある。
整備班の副リーダーのような立場にあるコジローはというと、顔に隈が出来てはいたものの平然としていた。本人曰く「”マウス隊”にいた頃にもう慣れた」とのことだ。
修羅場をくぐり抜けてきたのはパイロットだけではないということか。
「”コマンドー・ガンダム”。正式名称を”重装パワードストライクガンダム”と呼ぶこの形態は、見ての通りパワードストライカーに更なる重装備を施した形態です」
背中に背負った2丁のバズーカ、腕部の側面を覆い隠すように取り付けられた12連装ミサイルポッド、一見して前面をカバーするための増加装甲……に見えるマイクロミサイルポッド。
明らかに1機のMSに備わる火力としては過剰なそれらを、アリアは明るい表情で解説していく。
キラはその姿に若干の違和感を覚えるが、今は茶々を入れるべき時ではないと自制し、解説を聞き続けることにした。
「この強化プランのコンセプトは『単機でも敵基地の戦力を壊滅させうる装備』というもので、概算ではありますがおよそ単機でMS
「1ついいか?」
手を挙げたのはスノウ。アリアに促されて、彼女は自身の疑問を述べ始める。
「コンセプトは分かった。問題は、『そもそも必要なのか?』ということだ」
MSに積められるだけの火力を積む、それはいい。機動力に関しても元がパワードストライカー装備なだけに、最低限は確保されているのだろう。
しかし、それを用意することの意味があるのか?というのが問題だった。
『
それを連合軍で用いる意味を、スノウは問うている。
「仰ることは分かります。この装備を運用するくらいなら、そもそもMS10機揃えた方が戦略の幅も広がりますし、不確定要素も潰せますからね。ですが、こう考えてみてください」
「?」
「───MS10機分の火力を発揮出来るこの装備を、複数の“ダガー”に施したなら? 過剰と思える程の火力でも、それによって部隊全体の火力を底上げすることが出来れば、その分他のMSには異なる役割を担わせることが出来るとは思いませんか?」
つまりアリアは、「3機分の火力が必要な場面でこの装備があれば、他の2機に異なる役割を担わせられる」と言いたいのである。
そもそもこの部隊の任務は「特殊なストライカーの運用試験」であり、実際に役に立つかどうかを考えるのは彼らの試験結果を見た上層部なのだ。スノウの意見は真っ当なものだったが、彼女が発言するには不適切な内容であった。
「次の作戦、ソード1はこの装備で出撃してもらうことになります。また、シミュレーションでは火力を存分に発揮するためには単機であることが望ましいという結論が出ていますので……」
「ちょ、ちょーっと待った! いくらなんでもキラ君だけを戦わせるのは見過ごせないっていうか!」
「勿論、不慮の事態を想定してバックアップの用意はしてもらうつもりですよ。あくまで一番前に出て貰うってだけですから」
ヒルデガルダが危険を訴えるが、アリアは支援はすると言って耳を貸さない。
言っていることは間違ってはいないのだが、キラは違和感を捨てられなかった。必要なのは認めるが、たった1機を敵陣に突撃させることに対してなんら呵責や迷いを持っていないようだったからだ。”コマンドー・ガンダム”やキラの実力に自信を持っている、というわけでもないだろう。
この数日、”ストライク”の整備や調整に参加している時にはそのような違和感を持つ場面は無く、キラの中では「少し風変わりな女の子」という印象に留まっていた。
この違和感を感じさせる姿こそが、彼女の本性ということなのか?
「隊長もなんか言ってやってよ、このままだとキラ君が……」
「……バックアップってのは、何をする予定なんだ?」
「上空に予備のストライカーを装備した”スカイグラスパー”を配置、装備に不具合が見られた場合に備えます。また、後方にランチャーストライカー装備の”ダガー”を2機、予備戦力としてソード2の”デュエルダガー・カスタム”を含む3機のMSを用意します。これで、大凡の状況には対応可能かと」
「そうか。……なら、俺は口を挟まん」
ムウは作戦に消極的反対の姿勢を見せていたが、反論材料が潰されているのでは口を挟むことは不適切と判断し、口を閉じる。
キラが危険だというのはたしかだが、そもそも危険性の無い戦闘など無い。ましてや”第31独立遊撃部隊”は実験部隊の要素もあるのだから、この程度のリスクは背負って当然だ。
それはそれとして、不慮の事態においてはためらい無く行動するつもりだが。
「隊長まで……マイケル、ベント。あんた達も何か……」
「───やります」
ヒルデガルダはなおも納得出来ない様子でいたが、キラは彼女の言葉を遮って決意表明をした。
「攻撃予定の敵拠点の規模は、見た限りではそう大きなものではありませんでした。”バクゥ”タイプに気を付ければ、この装備なら十分に任務をこなせると思います」
「でも……」
「後ろをお願いします、ヒルダさん」
キラがそう言うと、ヒルデガルダは溜息をついて「お手上げ」の姿勢を見せ、アリアに向き直る。
「何かあったら、すぐすっ飛んでくからね?」
「勿論、それをお願いしようと思ってました。それと……私も、難しいことを言ってることは自覚していますから」
では、と会釈をしてアリアは”ストライク”の方に去って行った。話すべきことは話したということだろう。
アリアの漏らした最後の一言がキラの心に少々引っかかったが、今の彼にはするべきことがある。
「───やると決まったからには成功のための準備をしようぜ。ほら、行くぞ」
「此処にこの戦力を配置する、後は好きに戦え」と言われただけで戦争に勝てる筈も無い。パイロット同士での綿密な打ち合わせがあってこそ、作戦を成功させることが出来る。
ミーティングルームに向かうパイロット達の後ろ姿をアリアは見つめ、程なくして機体に向き直った。
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中部アフリカ コンゴ民主共和国
”アークエンジェル” 艦橋
「中部アフリカに侵入しました。敵性反応は確認出来ません」
「うむ。しかし、また一匹狼に逆戻りとはな」
「致し方のないことだと思います。ここから先、通常の機甲戦力の出番は少なくならざるを得ませんから」
眼下に広がる険しい大地を見据えながらのミヤムラの言葉に、マリューはそう返す。
現在、”アークエンジェル”は前線基地から西の方角、中部アフリカ方面に向かって飛行していた。これは大気圏内で飛行可能かつ2個小隊規模のMS隊を有する”アークエンジェル”だからこそ担うことが出来て、なおかつ陸戦隊では不可能な任務が下されたからである。
「アフリカ大陸、特に中央部は険しい山脈が広がってますからね。戦車を持ってきてもマトモに使える地域の方が少ないですよ。先日の作戦は、たまたま戦車が使える地形だっただけで……」
「へー、エリリン詳しーんだ」
「エリクだ馬鹿もん。少し調べれば分かる」
艦長席の斜め後ろに位置するオペレーター席に座る2人、”マウス隊”からの移籍組であるエリクとアミカの漫才に、マリューはクスリと笑ってしまう。
これから”アークエンジェル”が担う任務の難易度を理解しても飄々としている胆力は流石と言うべきだろう。
加えて、エリクの言うことは正論だった。
アフリカ大陸の中央部は険しい地域が多く、”ノイエ・ラーテ”等の戦車隊は行動が大きく制限されてしまう。輸送機で運ぶにしても思うように動けず、結局砲台になるのが関の山だ。
それに対してMSはあらゆる地形をその2本の足で踏破することが可能であり、特に制限を受けることはない。基本的には装甲・火力で”ノイエ・ラーテ”に劣るMSの、陸戦兵器としての明確な利点だった。
「だからこそ、我々にしか出来ない役割なのだ。根気強さが求められるぞ」
”アークエンジェル”に下された新たな任務。それは、中部アフリカ地域における単艦での攪乱だった。
現在、アフリカ大陸の連合地上軍は、南アフリカ統一機構の首都であるナイロビ並びにビクトリア基地奪還作戦に向けて戦力の集結を始めていた。
ここでネックとなるのが、西アフリカ地方からのZAFTの侵攻である。
ナイロビとビクトリア基地はどちらも東アフリカに存在するため、そちらに戦力を集中させてしまうと西側が手薄になり、そこを起点として南アフリカに侵攻されかねないので、不用意に動くことは出来ない。
そこで白羽の矢が立ったのが”アークエンジェル”であり、元々宇宙用の戦艦であることも相まって現在の連合軍艦の中では最高の無補給継続航行能力を持っているこの艦が攪乱作戦実働艦に抜擢されたのだ。
「出来る限りの地形のインプットと
『了解』
そしてこの東西アフリカを分断する山岳地帯は、自由に飛び越えることの出来る”アークエンジェル”からすればある程度の広ささえあれば好きな場所に艦体を隠すことも出来る、絶好の潜伏地点と化すのだ。
Nジャマーの影響で通信能力が制限されるというのも追い風になっている。正に怪我の功名といったところか。
そして、”第31独立遊撃部隊”の記念すべき初めての単独任務の攻略目標となっているZAFT軍基地は、どんどん近づいていた。
「では諸君、大胆にいこうじゃないか」
ZAFT地上軍第28物資集積所
その姿を最初に認めたZAFT兵は、果たして幸運だったのか不幸だったのか。
彼はこの拠点に配属されているMSパイロットだが、やることと言えばこうやって愛機である“長距離偵察型ジン”のコクピットから周りを適当に見渡すくらい。
太平洋やヨーロッパ、そして宇宙では今も同胞達が命を賭けて戦っているのに、自分達は敵の影も見えない辺鄙な物資集積所で、日がな一日暇を持て余している。
勿論、これも立派な任務だということは分かっている。だが、それでも気が抜けるのは仕方無いだろうとも思っていた。
だって、どこから敵が来るというのだ?
南方には南アフリカ制圧のための前線基地、北はプラントへ協力しているアフリカ共同体。西の大西洋はジブラルタルの精鋭が網を張っている。そして東には険しい山脈。
楽観的思考のままで、彼はその日も複座型の愛機の操縦を担当する相方と駄弁っていた。
そして、その時は訪れた。
「ん……あれなんだ?」
「あれって、どれだよ?」
「だーかーら、あっちの空に、なに、か……」
目を向けた方向には、翼を広げた鳥のような影が浮かんでいた。
いや、鳥ではない。鳥はあんなに大きく無いし、伸び伸びと飛ぶものだ。
あれは、まるで。
「───っ! 敵襲、敵襲ーーーーーーー!!!」
暇を持て余しているとはいえ、軍人としての自負がある基地のZAFT兵達は直ちに戦闘準備を始める。
しかし、そんな彼ら目がけて突っ走る機影が1つ。
機体のあらゆる箇所に火器を満載し、全身火薬庫と化した”ストライク”、もとい”コマンドー・ガンダム”がZAFT兵達に襲いかかった。
「こちらソード1、これより攻撃とデータ収集を開始します!」
キラが最初に行なったアクションは、肩部に装備した12連装ミサイルポッドの一斉射。
パワードストライカーのホバー機能によって補われているとはいえ、それでも重量の大幅増加は避けられない。それにNジャマーの影響で
敵拠点のMSの数は先の戦闘とは比べるべくもなく、片手で数えられるかどうか、といった程度しか確認出来ない。
「……これならっ」
ミサイルを撃ち尽くしたキラは即座にミサイルポッドをパージすると、左手に固定する形で装備されたガトリング砲『ハーゲル』を敵MS部隊に向けて発射し始める。
まだ多少の距離はあるが、それでも通常のMSの装甲を容易に貫通する90mm弾頭が高速で襲い来るのだから、ZAFTからしたらたまったものではない。
ミサイルとガトリングの乱れ打ちによって”ジン”───”バクゥ”や”ゲイツ”の存在は確認出来なかった───は数をどんどん減らしていき、ついに残り3機にまで追い込まれる。
誰から見ても既に勝敗は付いていたが、それでもキラは攻撃の手を緩めない。
彼が撃たないと誓っているのは投降した兵だけであり、戦闘の意思がある者、あるいは逃げ延びて別の場所で戦おうという意思が残っている者を逃すつもりはさらさら無かった。
戦争に参加するとはそういうことであり、キラはその覚悟を既に終えている。
『ハーゲル』の残弾が僅かになると、更にそれすらもパージし、後背部に懸架している2丁のバズーカを両手に保持して発射する。放たれた砲弾は1機の”ザウート”とその周辺の物資を吹き飛ばし、生み出された爆炎が生身の兵士達を焼いていった。
肉の焼ける匂いと意味を為さない呻き声がその場に満ちるが、攻撃は止まらない。
「残り、2つ!」
バズーカを放り捨てた”ストライク”の更なる1手は、胴体や膝に取り付けられたマイクロミサイルの全弾発射。
止まらない。
止まらない止まらない止まらない。
───
全身でマイクロミサイルの雨あられを受け止めた”ジン”が崩れ落ちる。残りは、”強行偵察型ジン”のみ。
装備のほとんどを使い果たし、身軽になった”ストライク”。ホバー走行による高い機動性を完全に引き出した”ストライク”は、そのまま”強行偵察型ジン”の懐に飛び込み。
がぎぃんっ!!!
腰から抜き放ったアーマーシュナイダーを”強行偵察型ジン”のコクピットに突き刺す。先ほどまで呑気に駄弁っていたパイロット達は、何が起こっているのかも分からないままに頭から胸元までを引き裂かれ、死んだ。
キラは目をつむり、何かを堪えるような素振りを見せるも、頭を振って思考を切り替える。
───自分で、選んだ道だ。
「……敵性MSの反応、確認出来ず。これより帰投します」
<お疲れ様です、ソード1。フラガ少佐、お願いします>
<ったく、まさか本当に1人で片付けちまうなんてな……それはそれとして、ポンポンと武器を捨てんな!拾うの誰だと思ってんだ!>
後方からムウとヒルデガルダの”ダガー”と、”デュエルダガー・カスタム”がやってくる。
生存者がいた場合、投降勧告を出すためというのと、小規模ではあるが物資集積所だったようなので、何か持ち帰れる物が無いかを捜索するため。そしてムウの言うように、”ストライク”がパージした武装を回収するためである。
(もっとも、この有様じゃあ
破壊し尽くされた、ZAFTの拠点
この中を生きているとなれば、それは相当な幸運を持っているか、あるいはかなりの不運に見舞われた人間だ。
こんな有様では、生き延びていてもきっと大けがをしているか、トラウマを抱えるか、あるいはその両方に見舞われるに違いない。
これを、あの少年が、キラ・ヤマトが為したという事実に、ヒルデガルダは悲しげに顔を歪める。
(キラ君……こんなことをしてまで、成し遂げたいことなの?)
実際に触れ合った時間は短くとも、ヒルデガルダにとってキラは大切な友人であり仲間だ。だから、断言出来る。
───あの少年は、けして人殺しにはなりきれない。
これからも彼は戦い続け、その度に心を痛めていくのだろう。
『自分で選んだことだから』と、『こんな悲しみを抱く権利など自分には無い』と。
(だったら、それを支えるのが仲間ってもんよね)
戦場で心が傷つくことが避けられないとしても、何時いかなる時も安らぎを得てはいけない、などということは無い筈だ。
一緒に笑い合える努力をしよう。せめて、MSから降りている時くらいは。
≪”ストライク”の強化プラン、通称”重装パワードストライク”の試験運用結果について≫
記述者 キラ・ヤマト少尉
:武装の過剰搭載、本装備について論じる場合この言葉が真っ先に出なければならないだろう。
個々の装備はどれもが高品質であり、特にアームガトリング『ハーゲル』は”ストライク”に限定せず、他のMSにも装備可能かつ高い攻撃力を持っており、一定数生産する価値があると思われる。
問題はそれを含む多数の兵装を扱うことが困難だということだ。それぞれの装備ごとに有効射程距離がバラバラで、パイロットには高い情報処理能力と判断力が求められる。
加えて、使用に値するシチュエーションも限定されることが予想される。
現在の連合軍では最低単位3機で1小隊を組むことが推奨されており、よほどのことが無ければその定石が崩されることは無い。
本装備の開発目的の1つに『単機に火力を集中させることで部隊の取りうる戦術の幅を広げる』というものがあるが、実際に運用した結果、逆に戦術の幅が狭くなりかねないという私見を表明する。
また、全身に実弾火器を装備することによって被弾時の誘爆の危険性があるのも大きな問題だ。運用したのがPS装甲を備えた”ストライク”であるから問題は無かったが、”ダガー”がこれを装備する場合、それだけで大きなリスクを伴う。
本装備を有効活用する最適解は機動性を活かして敵陣に強行突入することである。汎用性においてはランチャーストライカー装備に劣り、拠点防衛においてもファランクス装備の”ダガー”で事足りる。
だが、前述した操縦難易度の高さと誘爆の危険性を鑑みると、やはり量産するだけの価値は無い。
本装備の使用が積極的に求められるシチュエーションがあるとすれば、『使用可能なMSが1機だけしか存在せず、最後に一花咲かせるくらいしか出来ない』ような状況であり、やはり現実的では無いし、そもそもそのような状況に陥った時点で戦術的敗北を喫しているのは疑いようもない。
なお、けしてこの装備が無価値と言いたいのではなく、価値を認めた上で量産の必要は無いのだということを述べておきたい。
有用では無いが有力。
無力ではないが無用。
まるで、ペーパーテストにおける難題の尽くを正解しておきながら、基本的な問題を間違えるような歪さが感じられる。
以上の分析を以て、本装備に関する結論を述べるとすれば次の一言に尽きる。
───『残念』と。
≪この報告書に関する、運用試験責任者であるアリア・トラスト少尉からのコメント≫
:ヤマト少尉の試用結果と実際の戦果が余りにも上等すぎるため、生産価値が無いと断言することが困難。更なるデータ収集が必要と判断される。
もう2回くらいこれで戦ってください。
次回は”マウス隊”もといユージ視点です。
以下、コマンドー・ガンダムのステータス。
コマンドー・ガンダム
移動:7
索敵:C
限界:180%
耐久:300
運動:32
PS装甲
武装
アームガトリング:160 命中 65
バズーカ:200 命中 60 間接攻撃可能
ミサイル:170 命中 50 間接攻撃可能
マイクロミサイル:70 命中 45
バルカン砲:30 命中 50
:”ストライク”の強襲用装備。正式名称は”重装パワードストライク”。
ホバー走行による高機動性と大幅に増加した火力を併せ持っているが、如何せん操縦難易度が高く、有効活用出来る者はコーディネイターであっても限られる。
しかし十全に性能を発揮した場合は本編のような無双や単機での敵拠点壊滅が可能という、ある種のロマン装備。
イメージとしてはガンダムヘビーアームズ(EW)のイーゲル装備に近い。
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。