3/29
”ゴンドワナ” 司令室
「”第9警邏隊”より入電!『セフィロト』方面より接近する艦隊を確認したとのことです」
「ほう、1週間足らずで行動に移るか。流石だな」
ZAFTが決戦用に建造していた超大型空母“ゴンドワナ”、現在は衛星軌道上の移動要塞として運用されているそれの司令室は下手な拠点の司令室よりも広々としており、数多くのスタッフが務めている。
そんな場所の1番高い場所、この巨大な『怪物』の中でもっとも大きな権力を持つ人間が座るべき場所。
そこに座っていたのは……年端もいかぬ少女。
斯くも異常な光景だったが、他のスタッフがそのことを咎めることは無い。なぜなら、それが正しい光景だから。
少女、クロエ・スプレイグが、もっともその場所に相応しいということを理解しているからだ。
「敵戦力は”コーネリアス”級が1、”ドレイク”級が2!”コーネリアス”、”ドレイク”共に火器が増設されているとのことです」
「───陽動だな」
オペレーター達からの報告を受け、クロエは即断する。
真正面からの攻略は論外として、威力偵察というにも戦力が少ない。あんな戦力ではこの艦隊の1割ほども実力を引き出せまい。
であれば、こちらの目を引く陽動が目的。囮だ。
となると『本命』は何か?
パナマ、カオシュン共に監視部隊から動きがあるという報告はされていない。
宇宙艦隊での作戦となれば、やはりやることは限られる。
「”第11警邏隊”にWエリアに向かわせろ。おそらく本命はそちらからやってくる」
「了解しました」
大艦隊での”ゴンドワナ”攻略作戦、その可能性もあるにはあるが、低いとクロエは見ていた。
あの襲撃から1週間も経っていないにも関わらずそれだけの作戦行動が起こせるとは思えなかった。
あと考えられる可能性は、宇宙から地上へ、何かしらの物資なりを降下させること。
「司令、”第11警邏隊”より入電!Wエリアに接近する艦あり!分析の結果、連合軍”アークエンジェル”級の可能性大とのことです」
「『足つき』か……。降下カプセルか何かを牽引しているか?」
「確認できません」
クロエの予測通り、敵はそこにいた。
たった1隻でやってくる、しかも降下カプセルも無いということは、おそらくだが”アークエンジェル”級には大気圏降下能力があるという可能性もある。
どちらにせよ、無視するつもりは無い。
「”第11警邏隊”は後退させ、”第4遊撃艦隊”を向かわせろ」
「第4……”ナスカ”級を3隻もですか?」
1人のオペレーターはクロエの指示に疑問を抱くが、クロエは淡々と言葉を紡ぐ。
「『1円を笑う者は1円に泣く』……だったか。所詮小銭とバカにする人間は、その小銭を理由として痛い目を見るという意味の、東アジアの
「はぁ……」
「私は硬貨1枚、ましてたった1隻とて軽んじるつもりはないということだ。いいから向かわせろ」
「了解しました」
「ああ、それと陽動艦隊の方だが……」
勿論、囮の方への注意も忘れてはいない。むしろ数としてはそちらの方が多いのだから、無視する理由がないのだ。
どちらも叩き潰す。それがクロエの結論である。
そうして”ゴンドワナ”を旗艦とする衛星軌道上制圧艦隊の脅威を大きく見せつけてやれば敵は”ゴンドワナ”攻略のために長大な準備時間を用意しなければならない。───ZAFT上層部、否、パトリックの目論見通りに。
(本当に、これでいいのか?パトリック隊長……)
彼女はZAFT結成よりも更に前、「黄道同盟」だったころからの古株でもある。だからかつてのパトリックのことも知ってるし、現在のパトリックに違和感も持っていた。
彼女は両親から真に愛されて生まれてきたコーディネイターだった。
両親は彼女が健やかに育つようにと、「
彼女自身も、両親のことが大好きだった。両親が施してくれたたった1つの遺伝子操作の恩恵───健康な体のおかげで、病気に罹るということもなく健やかに育った。
だが、そんな彼女の人生は、たしかに祝福されていた筈の人生は、たった1人の医者の好奇心によって狂わされていた。
「平均よりも長い寿命に遺伝子を操作出来る」とうそぶいた医者に両親が騙された結果、彼女の体の成長は幼年期で止まってしまった。
皮肉にも、
(思春期には周囲からのいじめ、高校卒業間近に両親はブルーコスモスのテロで死亡、ハイエナのような親戚に財産はむしり取られ……絵に描いたような『不幸な人生』だな)
ここまで来ると笑えてくるが、何の因果か自分はこうして生き続けている。
金が無くても入学出来る士官学校にクロエが入学したのは必然だが、自分なんぞに目を付けた奇特な人間の推薦で軍大学に入学して艦隊運用術を修めることとなった。
だが、やはり神は彼女のことが嫌いのようだった。
ハンデ付きの自分なんぞに目を掛けてくれた恩師は学歴の低さを理由に冷遇、挙げ句自分はプラントなんて僻地に飛ばされる始末。
───まあ、それでも、そうだとしても悪いことばかりではなかった。
両親には愛された、恩師と呼べる人物に出会えた、そしてその理想に賭けてみたいと思える同志に恵まれた。
「コーディネイターが安心して暮らせる国」「遺伝子操作を理由に差別されない国」。
シーゲルらが唱えたのはただの理想論だったが、当時世界の全てを呪っていた自分には効果覿面だったのだ。
(青臭いけれども、無性に輝いて見えた。ああいう風に足掻いてみたかった)
そう思って黄道同盟、そしてZAFTにも参加した。シーゲルらは、心の底から歓迎してくれた。
祖国に対する未練はまったく無かった。持つ理由が無かった。
そこからは苦労の日々であった。……いや、本当に。
士官学校での経験を活かして
まぁMSに関しては技術者の熱心なプレゼンと、「どうせマトモにやりあっても連合とは戦えない」という理由もあって受け入れたが、傾倒するのはどうかとクロエは思った。
宇宙ではいい、新たな技術が世に出るときは常に懐疑の目にさらされるものだから。
地上戦に持ち込むと聞いた時には呆けてしまったが。
(しかも『コーディネイター優生論』なんぞを大真面目に信じる奴らの多さといったら!)
だったらなんで「健康」以外は持たされてない自分がこうやって司令なんぞ出来る?
思春期だから調子に乗りやすいのは分かるけど、限度があるだろ!戦争やってんだぞ!?
若さ故の過ちにも程があるだろうが!
挙げ句の果てにパトリックとシーゲルは決裂、『あんなもの』を大真面目に切り札にする始末。
本当に、どうしてこうなった?
「あの、司令?」
オペレーターから掛けられた声にハッとなるクロエ。
急に黙り込んでしまった自分の姿を訝かしむ視線に囲まれていたことに気付いたクロエは、コホン、と咳をして意識を切り替える。
そうだ、どれだけ現状がおかしくなっても自分の仕事を忘れてはいけない。
この宙域で不埒なことをさせない、それが使命だ。
「いや、すまない。───陽動艦隊の方には”第5”と”第6”の遊撃艦隊を向かわせろ。両サイドから挟みこむように。それと、後方に”第9警邏隊”を控えさせろ。寡兵で攻めるということは何かしらの企てはあるのだろう、後詰めだ」
「了解しました」
衛星軌道上において遊撃艦隊は機動力に優れた“ナスカ”級3隻、警邏隊は”ローラシア”級2隻で構成されている。当然、MSは可能なだけ積んだ状態でだ。
3隻の敵に対して自軍から8隻、しめて48機を投入する。普通ならこれだけの戦力差があれば勝利は確定したようなものだ。
クロエはけして油断していない。盤石を期している。
だが、神はまたしても彼女に試練を与えていた。ここまで来るとむしろ「神様、好きな子に意地悪したくなる男子説」まで浮上しそうである。
彼女に与えられた試練、それは。
───囮となったのが、とんだ『毒ネズミ』だということだ。
「さあ来い、半端に我らに挑むとどうなるのかを教えてやる!」
(───どうしよう、真剣な場面なんだけど和むわ)
(わかりみに溢れる。ちっちゃい女の子が頑張って声張ってる感が素晴らしい)
(合法ロリ可愛いよ合法ロリ)
何人かのオペレーターから注がれる生暖かい視線にクロエが気付くことは無かった。
”ナスカ”級 艦橋
「敵艦隊、接近!間もなく射程距離に入ります」
「ふん、たった3隻でちょっかいくらいは出せると思っているのか?甘く見られたものだ」
”第5遊撃艦隊”の”ナスカ”級の内1隻、その艦長を務める男は鼻を鳴らす。
命令の内容に不服は無い。倍の数で囲んで数の暴力で叩き潰す、それだけだ。
シンプルだが確実で、現場としては有り難いくらいである。
気に入らないのは、敵の少なさだ。
陽動とはいえたった3隻で自分達の領域に足を踏み入れることがどれだけ愚かなことか教えてやる、そういった意気込みに溢れていた艦長だったが、オペレーターからの報告に眉をひそめる。
「敵艦隊より”コーネリアス”級が突出しています」
「なに?」
たしかに、モニターに映る敵艦隊の中から1隻、改装された”コーネリアス”級が1歩先に出るのが見える。
何をするつもりだ?男が訝かしんでいると、”コーネリアス”級の左舷艦首、おそらく艦載機の発進口と思われる部分が開いていく。
MSを発進させるのかと思ったが、MSが出てくることは無く、代わりに何かがせり出してくる。
猛烈に嫌な予感がした男は、操舵士に回避運動を命じようとした。
残念ながら、それをするのには一拍遅かったが。
「敵艦より、高エネルギー反応!これは……」
「───回避だ!」
操舵士が舵を切る。直後、敵艦から放たれた光がこちらに向かって伸び、右舷を掠めていった。
「右舷に命中、第3エンジン停止!」
「ダメージコントロール!───陽電子砲だとぉ!?」
敵艦から放たれたのは、間違い無く最近になってZAFTで実用化された陽電子砲だった。
たしかに『足つき』に搭載されていたという情報はあるが、連合軍はあれを”コーネリアス”級にまで積めるのか!?
とにかく、今は自分達の安全を確保することが先決だ。次弾が発射されては満足に動けないこの艦は足手まといでしかない。
「艦を後退させろ、足を引っ張るだけになる!第2射に備えるんだ!」
”コロンブスⅡ”艦橋
「───とか、考えてくれていると良いんだが」
ユージはぽつりと呟いた。
若干にやけたカルロスがそんなユージに声を掛ける。
「いやぁ、聞いていたよりも素晴らしいものですな陽電子砲!こうやって敵艦の射程外から圧倒する、まさに大艦巨砲斯くあるべし!といった心持ちであります!」
「満足していただけたようで何よりだよ。コストは高くつくだろうが、これからの艦隊戦において陽電子砲は重要な存在になるに違いない」
”コロンブスⅡ”に施された改装プランの中に陽電子砲『ローエングリン』の実装は含まれていない。これはひとえに、ユージの思いつきの結果である。
ユージがこの陽電子砲を見つけたのは、単なる偶然であった。
最近になって開発された新型陽電子砲───環境への負荷が低いとされている───に換装した”アークエンジェル”から取り外された、従来のローエングリン。ユージはこれを”コロンブスⅡ”に取り付けることを考えついた。
『原作』の時点で”コーネリアス”級の改造艦である”リ・ホーム”に陽電子砲が搭載されていたことを思い出したことがきっかけであったが、それを2日足らずという短時間で運用可能にしたのは、流石”マウス隊”の誇る変態技術者といったところか。
しかし、問題が何も無いわけではない。
<フハハハ!36時間でポン付け出来るとはフハハハハー!……あれ、ちょっと待って?なんか集積回路焼け付いてない?>
<しかもエネルギー負荷が艦体に流れ込んでますね、これ。……すいませーん、ローエングリンどころか主砲もしばらく使えそうにないです!>
元々運用を想定していない艦に突貫工事で取り付けた陽電子砲である。無理矢理に使用したその代償は大きかった。
無理矢理”コロンブスⅡ”のエネルギー回路を繋げて発射したことで、なんと主砲であるゴッドフリートの使用も制限されてしまったのだ。
「如何いたします?流石に主砲の使えない状態でなんとかしろと言われても困りますが」
「ま、心配するな。考えはある」
先ほどまでの上機嫌はどこへやら、顔を顰めながら尋ねてくるカルロス。
不安になる気持ちは分かるが、とりあえず
”マウス隊”でやっていく以上、こんなのは別にピンチでもなんでもなく、ただの平常運転だ。
「”ヴァスコ・ダ・ガマ”、”アバークロンビー”の両艦は敵艦隊Aに対して砲撃を開始、押し込めろ。カシン、頼む」
<了解しました、隊長。アイク、セシルも気を付けて>
<そっちこそ、無理はしないでね>
<ご武運を、ですぅ>
そうしたやり取りの後、カシンの駆る”バスター改”が発進し、後方に控えていた2隻の駆逐艦と合流する。
ユージの取った作戦は、もはや昨今のジャイアントキリング定番戦法となった『分断して叩く』というものである。先の月面基地攻防戦でZAFT艦が取ったのと同じだ。
敵はまさか”コーネリアス”級に陽電子砲が搭載されているとは思わず、ほぼ無警戒の状態で接近してくるとユージは予測した。
そこに痛打を浴びせることで敵の戦列を乱し、そこにMS隊を派手に暴れさせることで敵の目を引く……というのが当初の想定だった。
しかし敵は手堅く、こちらと同数の艦隊をそれぞれ2方向から挟撃させるという戦術を採った。
最初から分断されてこそいるが、これでは痛打を浴びせたところでもう片方の体勢を崩すことは出来ない。
そう考えたユージは仕方なく、陽電子砲を撃ち込んだ側には僚艦2隻とカシンを付け、徹底した遠距離攻撃による時間稼ぎをさせることにした。
幸いにも“ナスカ”級は実弾兵器に乏しく、アンチビーム爆雷の多用でその火力を大幅に制限出来る。
それに対して”ドレイク改”級は全ての火器が実弾で統一されているため、何も制限されることはない。多少は時間を稼げるだろう。
問題は、無傷なもう片方の艦隊だ。
「さてさてさてさて……どうするかな」
「向こうは無傷の駆逐艦3隻とMS隊、対するこちらは主砲の使えない巡洋艦1隻とMS2機……毎回こんな戦いばかりしていたんですか、この部隊は?」
「うーん……今までの中でも結構キツい盤面かな」
これだけの戦力差を強いられるのはあの時、初めてクルーゼ隊と戦闘し、全滅一歩手前の事態に陥った時くらいだ。
あの時はハルバートンらが救援に駆けつけてくれたが、今はそんなものは望めない。
こちらが優位に立ち回れるデブリ帯どころか、障害物もほとんど無い。
「だが……やれないわけじゃないさ。MS隊を発進させろ」
まったく、やってくれるものだ。”ゲイツA型”に搭乗する男は舌打ち混じりにそう考える。
ナチュラルというだけでバカにするというような若気は無いが、それでも敵部隊のしでかした事には悪態を吐かざるを得なかった。
まさか”コーネリアス”級に陽電子砲を搭載するとは。最近になって本国で建造態勢が整いだした”アテナイ”級が欲しいところだ。
陽電子砲は威力、射程距離共に現状最強の武器だ。持っているだけで戦場の主導権争いに大きく有利に立てる。
だが、いくら最強の武器を持っているとはいえ数ではこちらの方が圧倒的に上だ。
<ぐあっ!?>
<ガンマ3、ロスト!これは……ビームによる長距離狙撃だ!>
<各機散開!>
射程距離の暴力は艦艇に留まらず、MSも同様だった。
光学センサーを最大稼働させて敵艦の存在する方向を見ると、敵艦上に1機のMSが、狙撃用のライフルらしき物をこちらに向けているのが見えた。
奇妙な機体だった。
鋼鉄のマントに見えるパ-ツで全身を覆っており、機体形状を正確に図ることは難しい。隠されていない頭部には特徴的なV字アンテナとツインアイが見えるので、連合の『G』タイプなのは間違い無いが。
狙撃銃はマントの一部が展開して隙間を作っており、そこから腕を出して構えている。
それに加えて、未だに艦砲でやり合うような距離にも関わらず当ててくる狙撃能力。
間違い無い、エースだ。
「数はともかく、腕は良いのを揃えてきたとでもいうか?各機、狙撃に警戒しつつ前進───」
<上方より、高熱源体接近!>
その報告を聞いて、男は敵の狙いを悟った。
狙撃によってこちらの注意を引き、その隙に別働隊が近づいて奇襲……ありふれた戦法だ。
しかし、しかしだ。
<この機体、速いぞ!?>
ありふれた戦法だからこそ、地力が見えてくる。
最適なタイミングかつ最速で接近してくるその敵に気付いた時には、既に遅かった。
上方を見上げた”ゲイツA型”、そのメインカメラが捉えたのは。
青い装甲が特徴的な『G』と───その両手が構えた大型ガトリングガン、その銃身が回転を開始している姿だった。
”コロンブスⅡ” 甲板
「うわぁ、派手に暴れてますねぇアイクさん」
同僚にして想い人、そして連合軍屈指のエースでもあるアイザックの戦い振りを見て、セシルは呑気に呟く。
なお呑気なのは口調のみであり、その手は機敏に動き、初めてお披露目する愛機をなめらかに操縦している。
”アストレイ・ヒドゥンフレーム”。それが彼女の駆る機体の名前だ。
『ヘリオポリス』で回収した2機の”プロトアストレイ”、その内”グレーフレーム”を改造して作り上げた本機は、実験機でありかつセシル専用機として調整されている。
その最たる変化は、やはり機体を覆うコートのような装備と新設計の頭部だろう。
機体を覆うこの装備の名称は「試作防御兵装 ナーク=ティト」、耐ビーム、耐実弾の両方を兼ね備えるという触れ込みの装備だ。
『フェイズシフトコアアーマー』という新技術の理論が元に使われており、曰く、
「装甲の破壊とはつまり装甲が変形するということなんだから、装甲内部に格子状のPS
とのことだ。
ナーク=ティトはそのPSCアーマーを内蔵した装甲で出来ており、また、内部に埋め込むことで今までPS装甲と相性の悪いとされていたラミネートコーティングを併用することが可能となっている。
外面はラミネート装甲、内部にはPSCのハイブリッド装備ということだ。
あくまで試作装備ということもあって実戦でどのように働くかは分からないが、”アストレイ”の低めの防御力は十分に補うだろう。
ちなみに構造的にはバックパックから伸びる2本のアームにシールドが取り付けられており、状況に応じてアームが動作して防御形態と近接戦形態を使い分けることになる。
防御形態時でも一部装甲が展開して腕を動作させることは出来るが、近接戦では流石に邪魔になるので装甲を展開する必要があるというわけだ。
ついでに防御形態ならば機体の前面が覆われるので、「連合が”アストレイ”の技術を有している」ということが露見するのを防ぐ効果もあるとか。
まだ、あの国には
「それじゃ、もう一発!……左腕、命中するも有効打ならず」
そしてもう一つ。
新しく開発された新型頭部には高性能センサーと新型通信装置を始めとする電子戦装備が満載されており、セシルの能力である高い指揮能力と射撃能力をサポートしている。
特徴的なのは後頭部に縦に収まった円形パーツだが、今この装備が活かされることはない。
今必要なのは、遠くを捉えることの出来る目だ。
「頑張ってください、アイクさん……」
貴方の背中は私が守ります。だから。
───絶対、帰ってきて。
「ナイスな援護だよ、セシル!」
セシルの狙撃はたしかに有効打にはならなかったが、”ゲイツ”の左腕に命中してその体勢を崩すことに成功していた。
アイザックはその隙を見逃さずにガトリングガンを発射。”ゲイツ”は上手くコクピットを庇ったものの他の箇所が75mm弾で吹き飛ばされていき、行動出来無くされる。
本当ならそのまま止めを刺すところだが、今は大多数の敵に囲まれてそれどころではないので放置する。
「”デュエル”、仕上がってるな……!」
現在アイザックが操縦している”デュエル”も、『フォルテストラ』とは別の仕様に変更されていた。
といっても、通常の”デュエル”からバックパックを変更しただけのことである。
便宜上”デュエル改”と呼称されるこの改装は、素の”デュエル”から約15%の推力強化に成功した。更に予備の推進材を搭載したプロペラントタンク、そしてパワーエクステンダーをも内蔵しているため、全体的に継戦能力が向上している。
『フォルテストラ』と違って見た目では分かりづらいが、確実な強化だ。そして、低めの火力についても現在装備しているガトリングガン『クルージーン』で補われている。
より白兵戦仕様として完成度が高まった本機、しかし未だに敵MSの数は10を下回っていない。
既に5は敵機を撃墜、あるいは戦闘不能状態に追い込んでいるから残りは多くても13機の筈だが、それを援護ありとはいえたった1機で捌ききれというのも中々に酷い話だ。
「やってみるさ……!」
幸い、敵に”アイアース”タイプは確認されていない。
こちらを舐めているのか、あるいは数が揃っていないのか……とにかく、ビーム兵器を標準搭載しているというあれらがいないなら、PS装甲の堅さを活かして多少の無理は通せる。
それに何より。
「無謀な戦いなんのその!───”マウス隊”だぞ、僕達は!」
良くも悪くも、ユージはエース部隊の指揮官として仕上がってます。
つまり、自分の持ち札が多少の無理が利くと分かっているからこそこんなギャンブル性の高い戦法が採れてしまうということなんですね。
たぶん普通の艦隊を任せても、並かそれ以下の指揮しか出来ないと思います。
ちなみに裏話として、アストレイをネタに大西洋連邦はオーブにゆすりを掛けて、結果として新型ローエングリンやパワーエクステンダーを手に入れていたりします。
今回、新たにオリジナルキャラクターとして1名、採用いたしました。
「モントゴメリー」様リクエスト、『クロエ・スプレイグ』です!
まさか書き始めた当初はZAFT艦隊司令に合法ロリを宛がうとは思っていませんでしたよ……(遠い目)。
これから、活躍させていきたいと思います!
それと「オリジナル兵器・武装リクエスト」からも、採用したものがあります。
「蒼翼の雫」様作、『PSC』です!
色々と原案からカットされた描写もありますが、採用いたしました。
素敵なリクエスト、ありがとうございます!
それと最近になって影の薄くなってきた野望シリーズ風ステータスですが、近日改めて記載したいと思います。
少々お待ちください。
今回登場した”デュエル改”と”アストレイ・ヒドゥンフレーム”のイメージですが、
○デュエル改
→ガンダム5号機のバックパックとガトリングを装備
○ヒドゥンフレーム
→ガンダムデュナメスのGNフルシールドとスナイパーライフルを装備した灰色のプロトアストレイ
みたいな感じになってます。
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。