機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
『光あれ』


第65話「破滅の種子」

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『セフィロト』周辺宙域

 

そこでは、いくつもの光条が飛び交っていた。ビームが、ミサイルの引く発射炎が、レールガンの軌跡が、『戦場』を彩っていた。

それらは互いに目標を捉えることを叶えられず、どこかへ飛んでいくかデブリに命中して粉砕していく。

驚くべきは、並のMSが10機集まってで作れるか、といったその光景を作り出しているのがたった3機のMSであり。

2対1という差がありながらも、不利な側が有利な側を手玉に取っているということである。

 

「カシン、右から回り込んでくれ!」

 

<やってる!>

 

デブリを盾にして射線を遮りながらも、アイザックの駆る”デュエルF”は『純白の仇敵』へライフルを撃ち返す。

しかしその敵はそれをすれすれで───ギリギリにというよりは、完全に射線を見切ったように───回避、アイザックの射撃を囮とした”バスター改”の放ったビームと徹甲弾の連射をも避けていく。

流石にここまで避けられると、連合軍のトップエースという自信も薄れていくというものだ。隔絶的な操縦技術を見たアイザックは顔を引きつらせてしまう。

先ほどZAFT艦隊から発進してきたこのMSは、機体色が白であるということや各所の造形が異なっていたものの、”ヘリオポリス”で奪取されたという”イージス”、あるいはその発展機だということが分かっていた。

第5司令室に到着したというユージ達の情報もあるが、何度か変形機構を駆使した回避を見せられれば分かる。

アイザックはその光景に怒りを覚えた。

 

「それは、僕達のだろう……!」

 

敵の機体を奪うこと、それ自体は別にあり得ない話ではない。強力な敵が現れれば鹵獲して研究するのは当たり前だし、そうしなければ味方の被害が増えていくというならためらう必要など無い。元を辿れば“テスター”を始めとする連合のMSも鹵獲した”ジン”を研究して完成したのだから。

だが、なるほど。言葉で聞くのと実際に目にするのでは話が違うものだ。

味方が、友軍が、仲間が心血を注いで作り上げた機体、その後継機を勝手に作られるというのは。

───非常に腹が立つ!

 

<アイク、このままじゃ埒が明かないよ!?>

 

「このままだ、カシン!倒せなくっても、こいつが他にいかせるわけにはいかない!」

 

<だけど、それじゃあ……!>

 

「信じるしか、ない……!」

 

自分達しか目の前の敵を食い止められないなら、他の味方が救援に来てくれることを祈るしか無い。

しかし、目の前の敵の戦闘能力は並のパイロットでは対処出来ず、足手まといになるだけだ。

セシルとスノウの2人であれば問題無いが、あの2人は別の敵と戦闘中。

わずかに思案するアイザックだが、目の前の敵、”ズィージス”を駆るラウ・ル・クルーゼは見逃さなかった。

 

『隙を見せるとは迂闊なことだな、<アヴェンジャー>!』

 

”ズィージス”の腹部から、MS形態でも発射出来るようになった580mm複列位相エネルギー砲『スキュラ』が放たれ、”デュエルF”に突き進む。

アイザックは咄嗟にシールドを構えてそれを防ぐが、既に”ズィージス”の攻撃を何度も受け止めていたシールドに、ついに限界が訪れたのか、シールドは破砕され、”デュエルF”本体にも余波が襲いかかる。

 

<アイク!>

 

「だい……じょうぶ!外装だけだよ」

 

アイザックの言うように、増加装甲である”フォルテストラ”はボロボロだが、本体への被害は少なく、精々が左側のブレードアンテナが折れた程度のものだった。

役目を果たした増加装甲を排除して素体状態の”デュエル”が現れるが、装甲を外して少しは身軽になったところで、”ズィージス”をどうにか出来るようになる訳でもない。

むしろ盾と増加装甲を失ったことで、防御面に更に気を遣わなければいけなくなった。

絶体絶命、その言葉がアイザックの脳裏によぎる。

 

『ふふふ……この際、1人くらいは脱落させておくというのも……!?』

 

余裕のある態勢でビームライフルを構えていた”ズィージス”だが、何かを感じ取ったかのようにその場から飛び退く。その直後、”ズィージス”のいた空間を数条のビームが横切っていく。

増援の部隊が来たのかと考えたアイザックはレーダーを確認するが、接近してくる反応の数は1つ。味方なのは間違い無い、しかしあれはMS1機による弾幕だとは考えづらかった。

いや、1機だけ存在する。単機でありながら1個小隊規模の火力と弾幕を張ることが出来るMSが。

 

<また貴様か、クルーゼ!>

 

『お前もMSに乗るようになったのかね?ムウ・ラ・フラガ』

 

「フラガ少佐!?」

 

”メビウス・ゼロ”をそのまま背中に接着したような奇妙な機体、”ガンバレル・ダガー”に乗ったムウ・ラ・フラガが救援に駆けつけたのだ。

司令室でその光景を見ているユージの目には、ステータスが表示される。

 

ガンバレル・ダガー

移動:7

索敵:C

限界:175%

耐久:200

運動:32

シールド装備

ラミネート装甲

 

武装

ビームライフル:120 命中 70

ガンバレル:180 命中 75 (要空間認識能力)

バルカン:25 命中 40

ビームサーベル:150 命中 70

 

ムウ・ラ・フラガ(ランクA)

指揮 10 魅力 11

射撃 12(+2) 格闘 10

耐久 18 反応 11(+2)

空間認識能力

 

得意分野 ・耐久

 

<少佐、下がってください!MSに乗り換えて間もない貴方では……>

 

<リー中尉か!なーに、心配するなこれでもそれなりにはやれる>

 

カシンの言うとおり、ムウがMSパイロットとして正式に転向したのは1週間前、3月16日のことだ。

ムウが如何に歴戦の兵士だとしても、そんな状態でクルーゼと戦わせるなんてことは出来ない。

しかしムウは言う。

 

<それに……あいつの動き、俺にはなんとなく分かる。お前らよりも多く戦ってきたからかな?とにかく、俺が落とされる前に3機で落とせばいい。だろ?>

 

理由は定かではないが、ムウはラウの攻撃を防ぐ手立てを持っているようだ。

それに加えて、ムウは”メビウス・ゼロ”のパイロットの中で唯一生き残ったパイロット。ガンバレルを用いたオールレンジ攻撃は頼もしいのも事実だ。

 

「……わかりました。自分が前衛を務めますので、少佐はカシンと援護をお願いします」

 

<ああ、任せろ。今日こそあいつとの因縁を絶ってやる!>

 

心強い味方の参戦は、アイザックとカシンに光明となった。

しかし、彼らは知らない。クルーゼの目的はあくまで()()()()であるということを。

何の時間を稼いでいるのか?それは当然。

───味方の脱出の、である。

 

 

 

 

 

『セフィロト』 第2研究エリア

 

「誰か、いませんか!?無事な方は返事をしてください!」

 

”マウス隊”副隊長のジョン・ブエラは、生存者に向けて呼びかけを続けていた。

彼がユージから与えられた使命は”マウス隊”の残留人員の統率。しかし彼は1人でこの場を進んでいた。

既に”マウス隊”の非戦闘員のほとんどは安全なシェルタールームに待避済みだが、数人はこちら側に来て『ある機体』の調整に参加していたために、安否の確認が取れていないのだ。

通信で確認しようにも内部に潜入してきた工作兵によって設備の一部を破壊されてしまい、ジョンを始めとする複数人が捜索を始めたというのが、彼が現在この場所にいる理由である。

油断なく拳銃を構えるジョンだが、肩の力は抜けている。

というのも、既に潜入してきた敵部隊の多くは『セフィロト』の警備部隊によって排除されており、このエリアでの戦闘は終息している。今ジョンがしているのは、どこかに隠れたままの研究員が残っていないか、単なる確認作業である。

その筈だった。

T字路を曲がると、その場には凄惨な光景が広がっていた。

仰向けに倒れた白衣の男性、辺り一面に飛び散る血痕。

そして、()()()()()()()

肩ほどまで伸びた黒髪に白いブラウスとスカートを着たその少女は、死体に向けて呆然とした顔を見せている。

 

「なっ、これは、いったい……」

 

「……はぁ、あっ?」

 

少女は凄惨な場面を見たためか、それとも拳銃を構える男性兵士が現れたためか、わずかに震えている。

それを見たジョンは、拳銃を下ろして少女に問いかける。

 

「落ち着いてください。私は”第08機械化試験部隊”のジョン・ブエラ大尉、この基地に所属する兵です。何があったんですか?」

 

「あの……あたし……ここにいるパパに会いたくて……それで、”コペルニクス”から……」

 

「密航、したと?」

 

「だけど、そろそろ着いたかなってなって、外に出たら、こうなって、て……」

 

どうやら少女は”コペルニクス”から密航してこの基地に勤めているという父親に会いにきた、らしい。たどたどしく少女が話した内容を要約するとそうなる。

それを聞いたジョンは、スッと目を細めると、少女にゆっくりと近づいていく。

 

「そうでしたか……それは大変でしたね。立ち上がれますか?安全なところまで案内しますから、そこで話を聞かせてもらいます」

 

少女はコクリとうなずくと立ち上がり、ジョンに追従する姿勢を見せる。

しかしジョンは、少女から5mほど離れた場所で立ち止まり、問いかける。

 

「ところで、1つ良いですか?」

 

「……?」

 

 

 

 

 

「懐に隠した武器を、床に置いてもらいます」

 

 

 

 

 

「……えっ」

 

何を言っているのか分からないという顔を少女は見せるが、ジョンは更に言葉を続ける。

 

「父親に会いたくて密航?しかもZAFTにこれまで見つからなかった?……嘘にしたってもっと吐きようがあるでしょう。現実にそんな少女が存在するわけがない。それともZAFTではそんなやり方を教えているんですか?」

 

銃を少女に向けるジョン。

少女は俯いて、しばらく沈黙する。少女が武器を抜いても即座に射殺出来るように、ジョンは一挙一動見逃さずに銃を構え続ける。

唐突に少女の肩が震え始める。……なるほど、そういうタイプだったか。ジョンは目の前の少女がどのような人物か得心した。

 

「───アハハハハっ!だよね、そうだよね!こんな雑~な嘘が通じるわけ無いもんねぇ?」

 

「なるほど。貴方、愉快犯ですね?」

 

顔を上げて満面の笑みを見せる少女に、ジョンは素直な感想をぶつける。

良くも悪くも、”マウス隊”という環境は奇人変人の巣窟だ。変態4博士を始め常識では測れない性格の人間がそれなりにいる。そんな場所にいれば、相対する相手がどんな人物なのか、表面的なことくらいは読み取れるようにもなる。

目の前の少女は()()だ。”マウス隊”の変態共とはベクトルが違う。

彼女は、最初からこの嘘が通じるとは思っていなかった。必ず失敗すると分かっていた。

でもやった。

面白そうだから、『いきなり基地に現れた少女』を前にした基地の人間が、どのような反応を見せるかが気になるから。自分の命の掛かった状況でそんなことをする人間は、正に異端と呼ぶしかあるまい。

それとも。

───絶対に生き残る自信があるからそんなことが出来るのか?

 

「愉快犯~?そう見える?見えちゃう?」

 

「ええ。今まで何人か変人を見てきましたが、彼らとは比べたくも無いほどに。……貴方は異常だ」

 

「何を以て異常と言うやら……ま、いいや。それなりに楽しめたし、もう帰るね」

 

「動かないでください。まさかこれが目に入らないわけじゃないでしょう?」

 

ジョンは銃を見せつけるが、少女はそれを鼻で笑う。少しも脅威に感じていないようだ。

理解が出来ない。いったいなんだというのか。───自分は今、何に銃を向けている?

 

「うんうん、分かるよ?およそ5mという距離、私が何かやる前にその指を引くだけで対処出来る。私は詰み……なのに、()()()()()。そう考えてるんでしょ?」

 

「っ、動くな!両手を頭の上で組んで膝をつくんだ!」

 

図星を言い当てられ動揺するジョン。普段は誰に対しても付けている敬語が外れるくらいには動揺している姿を見て、少女は嘲笑う。

 

「ああ、そうそう。そういえばそこでこんなもの拾ったんだ~。おじさん、”第08機械化試験部隊”ってところの人なんだよね?」

 

まるで道ばたに落ちていた小銭を見せびらかすように、少女は懐からある物を取り出し、ジョンに見せつける。

それをジョンが見間違えるはずがない。ジョンでなくたって見間違えることは無いだろう。

それは連合軍に所属する兵士の誰もが持つもの。つまり身分証。

そして、少女が見せつける身分証に張られている顔写真。ジョンには見覚えがあった。

 

「この人も、”第08機械化試験部隊”の人らしいんだよね~。あっちで死んでたよ?」

 

少女は太ももに取り付けていたナイフホルダーからナイフを抜き。

()()()()()()()()を見せつけながら、ジョンに告げる。

 

「まあ、私が殺したんだけどね?」

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

ダァンっ!

 

 

 

 

 

『セフィロト』第5司令室

 

「残存する潜入部隊は第6格納庫に立てこもって、抵抗を続けているようです」

 

「第6格納庫?あそこには“ミストラル”が置いてあったな。それで脱出するつもりか?……いや、俺達の考えることじゃないな。とりあえず、内部の敵は一掃されたと思っておくに留めよう」

 

ユージは次々と飛び込む情報の数々を自分達で対処出来るか否かを判断しながら、現れたイレギュラーについて考えていた。

 

シグ-・カストール

移動:8

索敵:B

限界:160%(リーシャ搭乗時210%)

耐久:150

運動:34

 

武装

ロングビームライフル:175 命中 80 間接攻撃可能

マシンピストル:70 命中 50

ナイフ:80 命中 40

 

リーシャ・グリマ(ランクA)

指揮 11 魅力 14

射撃 16 格闘 11

耐久 7 反応 14

SEED 1

 

シグ-・ポリデュクス

移動:8

索敵:C

限界:170%(ネイアム搭乗時220%)

耐久:160

運動:36

シールド装備

 

武装

マシンピストル:70 命中 50

レーザー重斬刀:180 命中 70

スパークナックル:150 命中 35

 

ネイアム・ウィルコックス(ランクA)

指揮 4 魅力 11

射撃 5(+2) 格闘 14

耐久 11 反応 14(+2)

SEED 2

 

ユージの知識の中に、あのような人物や機体の情報は存在しない。

それだけならまだしも、キラやアスラン、それにアイザック達と同様にSEED因子の保持者であるということがユージを困惑させている。

 

(またしても、SEED……アイク、カシンに出会った時もそうだが、意外とSEEDに目覚めうる人物は存在するということか?なら何故『原作』では……この世界だけの話なのか?それとも、描写されなかっただけなのか……。いや、今考えることじゃないな)

 

問題はSEED因子を保持、片方は既に覚醒までしている2人が、スノウ&セシルのコンビを苦戦させているということだ。

純粋な機体性能では互角だが、パイロットの技量、そして連携能力では完全に上をいかれている2人は大苦戦しており、何かしらの手を打たなければいずれは撃墜されてしまうのは明らかだ。

幸い、ムウがアイザックとカシンに合流してクルーゼと戦い始めていた。流石にクルーゼといえど、高性能機に搭乗したエースパイロット3人と同時に戦うことは難しい。

早急にクルーゼを追い払い、3人の内の誰かがセシル達に合流してくれれば逆転出来る筈だと考える。

更に戦場全体で、奇襲から立ち直った『セフィロト』の部隊が次々と戦闘に参加しつつある。

 

「はぁっ!?」

 

このまま何事もなく終わればいいのだが……。そう考えていたユージだが、アミカが突如として焦りの声を挙げる。

 

「どうした?」

 

「第2研究エリアに格納されていたMSが起動して第6格納庫に侵入、潜入部隊の乗り込んだ”ミストラル”を抱えて逃げ出したって!司令部大混乱です!」

 

「嘘だろ!?第2格納庫……まさかあれか!?」

 

これはつまり、敵に第2格納庫内のMSが盗まれた、と見て間違い無い。そして、ユージにはその機体に心あたりがあった。

第2研究エリアには、自分達と同じく実験部隊として活動する”第12機械化試験部隊”で運用されるはずだった、()()()()が格納されている。

 

「第6格納庫からMSが発進!これは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”ストライク”!?」

 

そう、”ストライク”である。

現在はセシルが乗り込み、キラをパイロットとして地上での試験に使われる予定の機体は”ヘリオポリス”で開発された1号機。

そして奪われたのは最近生産され、『宇宙空間専用ストライカーを試験する』予定だった、いうなれば『”ストライク”2号機』と呼ばれる機体だったのである。

 

(2号機は奪われる……お約束(ジンクス)といえばお約束だがなぁ……!)

 

よりにもよって”ストライク”が奪われるというのは、結構致命的だ。何と言っても、現在の大西洋連邦の主力MSの原型となった機体である。

しかもこれで傑作と名高い『X-100型フレーム』の技術がZAFTに渡ることになるし、なんならZAFT製”ストライク”と名高い”テスタメント”の開発が早まる可能性もある。

色々な意味で、逃がすわけにはいかない。無力化あるいは撃墜を命じようとしたユージ。

 

「奪取されたのは”ストライク”の2号機だ!絶対に逃が……ぁがっ!?」

 

それは、唐突にして理不尽な頭痛によって中断される。

なんだこれは?こんなもの知らない。

例えようの無い違和感。脳をかき回すような痛み。

そして、吐き気のするほどの殺意が、自分の中から湧き上がってくる。

敵なのは間違い無い。しかし、これほどの殺意を抱くような理由はないはずだ。

そもそも自分は何に対してこんな衝動を抱いている?

 

「隊長!?どうしたんですか!?」

 

「ヒューイ中尉、MSを奪われました!そ機体は敵です、無力化を試みてください!」

 

こちらを気遣うマヤ、アイザック達へ呼びかけるリサの声が正確に聞き取れない。

グワングァンと、音自体が揺れているような感覚と共に、ユージの意識は急速に遠のいていく。

完全に意識が消失するその時まで、見慣れた筈のステータス表示が異常を指し示し続けていた。

 

(お前、は。いったい、何者───?)

 

 

 

 

 

ストライクガンダム

移動:6

索敵:C

限界:170%

耐久:290

運動:30

シールド装備

PS装甲

 

武装

ビームライフル:130 命中 70

バルカン:30 命中 50

アーマーシュナイダー:100 命中 50

武装変更可能

 

 

SCX-Type666(ランクB)

指揮 10 魅力 4

射撃 12(+2) 格闘 14

耐久 11 反応 13(+2)

SEED 1

空間認識能力

 

unknown unknown unknown unknown unknown unknown

danger danger danger

unknown unknown unknown unknown unknown unknown

danger danger danger

unknown unknown unknown unknown unknown unknown

danger danger danger

 

 

 

 

 

『ラウ、お待たせ~』

 

ビームライフルが、対装甲散弾砲が、ガンバレルが”ズィージス”を追い込みつつあったその最中。

突如として横合いから射かけられたビームを避けたアイザックは、ビームを発射した機体を確認して驚愕する。

 

「”ストライク”……!?」

 

<ヒューイ中尉、MSを奪われました!その機体は敵です、無力化を試みてください!>

 

司令室からリサが目の前のMSに関する情報を伝えてくる。向こう側が騒がしいが、何か起きたのだろうか?

いや、そんなことよりも奪われたという”ストライク”に対処しなければ!アイザックは優先順位を設定し、味方にオーダーを飛ばす。

 

「カシン、フラガ少佐!僕があの”ストライク”を抑え……!?」

 

しかし、それを遮ったのはやはり”ズィージス”の射撃だった。そして、敵艦隊の方角から信号弾が打ち上げられる。

どうやら敵は目的を達成したようで、先ほどの”ストライク”の射撃は”ズィージス”を集中砲火から解放するための牽制であったらしい。

 

『ところで、その機体はどうしたんだね?』

 

『へっへ~、かっこいいでしょ?武器も一緒に置いてたから貰ってきちゃった』

 

『……軽挙妄動でそれを実現出来るのは、世界広しといえど君くらいかな?』

 

『いいじゃん、別に。どうせ何か盗ってくるのは予定通りなんだし』

 

『まあいい、帰投したまえ。君用に調整されていないその機体では満足に動けまい』

 

『はーい!』

 

”ストライク”は役目は果たしたと言わんばかりに敵艦隊に向けて進み出す。”ズィージス”は無防備な背中を守るようにその前に立ち塞がった。

 

「やらせるか!カシン、狙撃で落とせるか!?」

 

<やってみる!>

 

<俺達は、あいつの相手だな!>

 

”デュエル”と”ガンバレル・ダガー”が”ズィージス”の相手をしている間に”バスター改”の狙撃によって”ストライク”を撃墜する、アイザックの立てた作戦はそういうものだった。

邪魔者のほとんどいない状況での狙撃、カシンの射撃能力があれば、それは問題無く遂行出来るはずだった。

 

<ダメ、避けられる!後ろに目が付いてるっていうの……!?>

 

しかし、当たらない。必中を期してカシン(エースパイロット)が放つ一撃が、掠りもしない。

カシンは自分の中から湧き上がってくる違和感、あるいは嫌悪感を抑えることが出来ない。

───自分は今、何と戦っている?あの機体を操縦しているのは、本当に自分と同じ人間か?

 

『アハハハ!鬼さんこちら~』

 

通信が繋がっているわけではないが、何故か”ストライク”のパイロットから煽られた気がする。というより、その不規則な挙動から悪意が感じられるのだ。

MSによる戦闘機動セオリー、その枠をギリギリ超えるか超えないか。“ストライク”の機動を例えるならそれが近い。

 

(この動き……なんで?なんで……()()()()()()()って思うの!?)

 

経験は無いが知識と能力がある。その2つが他を圧倒しているために、キラは初の実戦でミゲル・アイマン駆る”ジン”を撃退することが出来た。

結局”バスター改”の砲撃が”ストライク”に当たることは無く、”ズィージス”を落としきることも出来ず。

 

『あ~、楽しかった!じゃあね、ネズミの人達!……次は、もっと楽しませてね?』

 

『セフィロト』の態勢が立ち直る直前まで戦い続けた艦隊、鮮やかな引き際を見せつけて、悠々と帰って行く。戦闘し続けたアイザック達にそれを追撃する余力もなかった。

完敗である。基地を守り切りはしたが、敵の目的はそうではなかった。

 

「くそっ……!」

 

アイザックに出来たのは、拳を自分の太ももに打ち付けて、悔しさを痛みで誤魔化すことだけだった。

 

 

 

 

 

<落ちろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!>

 

”デュエルダガー”が鬼気迫る気勢で赤い”シグー”に斬りかかるが、”シグー”はそれを左手の盾で受け止め、右手に持ったレーザー重斬刀で反撃する。

セシルの駆る”ストライク”も狙撃機らしき青い”シグー”に迫るものの、赤い”シグー”が横合いから阻み、青い”シグー”との距離を詰められない。

味方を庇った隙に”デュエルダガー”が赤い”シグー”に斬りかかるが、今度は守られている青い”シグー”が的確に援護射撃をして”デュエルダガー”を寄せ付けない。

性能にそこまでの開きは無いが、連携力では完全に上をいかれていた。同じ能力を持つ者達が同数に別れて争うならば、勝負を決めるのは連携だ。

その点、セシル達は始まる前から敗北していた。

 

「バアル少尉、これではじり貧ですぅ!」

 

<ならばどうすると!ここから巻き返すには、ここでどちらかを落としておくしか無い!>

 

だから具体的にどうやって落とすかという話をしたいんだ、私は!

セシル・ノマという人物は軍人にしては極めて温厚な人物だが、今ばかりは怒鳴りつけたい気分だった。それをしないのは、単純にしてる暇がないだけである。

スノウは完全に頭に血が昇ってしまっている。おまけに、PS装甲を用いている”ストライク”はバッテリー残量がそろそろ危険域に到達しつつあった。

かといって補給に戻る隙も無いし、第一そんなことをしてしまったら『イノシシムシャ』となったスノウが突っ込んで、あの2機に殺されるだけだ。ユージがスノウの戦い方を見て呟いた言葉だったが、実に的確だと思う。

救いと言えば、2機の”シグー”が積極的攻勢に出てこないことだ。やはり敵の狙いは、時間稼ぎらしい。

セシルが狙撃に対する回避行動をしながら思案していた時のことだった。

敵艦隊から信号弾が打ち上げられ、それを見た2機の”シグー”が後退を始めたのだ。

どうやら、耐久戦が終わった(敵が目的を達成した)らしい。ほっと息をつく間もなく、追撃しようとするスノウの前に出て諫める。

 

<何故邪魔をする、ノマ少尉!奴らは……>

 

「はいはい、今は敵の追撃よりもやるべきことがあるんですよぉ?ボロボロの基地の復旧と、補給ですぅ」

 

<ぐっ……だが!>

 

「だがもしかしも無しですぅ!」

 

頭に血が昇ったスノウ1人を行かせるわけがない。セシルはそう続けようとする。

 

<奴らを逃がせば、この先、どこかでまた死ぬんだ、殺されるんだ!それはダメなんだよ!許しちゃいけないことなんですよ!それ、をぉ……!?>

 

……どうやら、タイムリミットが来たらしい。普段はいつ()()なるか、それこそ先ほども懸念していたことだったが、今はベストタイミングで来てくれたことが有り難い。

パイロットが気を失ったことで動かなくなった”デュエルダガー”を掴んで、”ストライク”はボロボロの『セフィロト』に向かって進み始めた。

痛々しい『セフィロト』、自分達の戻る場所を痛ましそうに眺めるセシル。

 

「そういえば、パパは無事ですかねぇ……?」

 

セシルはふと、父のことを思い出した。

自分の命を守ることに精一杯で、プトレマイオス基地で戦っている父を案じることを忘れてしまっていた。

それだけギリギリの戦いだった。昔の自分なら、きっとこの後泣いて部屋に閉じこもってしまうだろう程に。

変わってしまった自分と世界に、セシルは震える声で呟くしかなかった。

 

「この世界は、どうなってしまうんでしょうねぇ……」




次回、『禍戦』の終息。
ムウさんは新たな部隊への配属をきっかけに少佐に昇進しています。

個人的嗜好で言わせてもらうと、キラもオリ主も曇らせてこその『ガンダムSEED2次創作』だと思う。
何が言いたいかというと、今回のオリキャラがユージの宿敵です。

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております!

p.s 活動報告を更新しました。

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