機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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ついにオリジナルMSお披露目じゃい!




第4話「上手にできました?そして、悪夢」

C.E 8/4

プトレマイオス基地

 

「ムラマツ少佐、ついに我が軍初のMSが完成したというのは本当かね?」

 

「開発チームからは、そう聞いております。『これで本格的に本題に取り組める』、と開発主任は言っていましたから、目標のラインは超えた仕上がりになっていることでしょう」

 

ハルバートンの質問にそう返答するユージ。

彼らは今、第08部隊が使用している第4開発実験室に向けて歩を進めていた。なお、会話には参加していないがハルバートンの副官であるホフマン大佐もそれに追従している。

そう、ついに第08部隊はMSの駆体を完成させることに成功したのだ。今ハルバートン達がそれを見に行こうとしているのは、その経過報告を受けたハルバートンがそれを一目見ておこうと考えたからである。

 

「結成から2週間ほどで、よもやここまで進むとはな・・・・素晴らしいものだ」

 

「准将閣下が、先行して研究を始めてくださっていたからここまで早く完成させられたのです。現在組み上がっているのは1機のみですが、次いで2・3号機もロールアウト予定となっております」

 

「それは朗報だ。これで、戦争の終結に近づけば良いのだが・・・・」

 

「まったくです」

 

そのように話している内に、彼らは第4開発実験室の扉の前に到着する。この中に、MSが存在するのだ。ユージがカードキーをドアのロックにかざすと、扉のロックが解除され、部屋の中に入れるようになる。

 

「お待ちしていました、ハルバートン閣下、そしてホフマン大佐。隊長もご苦労様です」

 

そういって出迎えるのは、チームリーダーのマヤ・ノズウェル。事前にハルバートン達の訪問は伝えられていたので、取り乱すようなことはない。

 

「君もご苦労、ノズウェル中尉。早速だが、完成したMSとやらを見せてくれるかね?」

 

彼らがいるのは開発室の中の通信室。まずはここを通って、実験スペースへと移っていくのだ。マヤは、実験スペース内をのぞけるガラスの前へと案内する。

 

「はい、それでは、万が一の安全性も考えてこちらからご覧ください」

 

「うむ。・・・・おおっ、これが!」

 

ハルバートンが歓喜の声を挙げる。その視線の先には、一機のMSが完成状態で鎮座していた。

全体的なフォルムは正史での『ストライクダガー』に近いが、頭部だけはツインアイ式になっている。さしづめ、「アンテナのないガンダムタイプ」といったところだろうか。また実験機ゆえそんなものを積む余裕はないとして、頭部に武装が内蔵されている様子は見られない。

全身をライトグレーに染めたその機体について、マヤが解説を始める。

 

「GAT-X0『テスター』。文字通り『試作品』ですね。しかし、今までの研究、G計画、そして鹵獲したジンから得られたデータを元にMSとしての基本性能は、OSの質が高まればジンと互角に渡り合えるほどになっています。装甲材には、チタン・セラミック複合材を用いています。これはジンのものと同等の強度を有しており、安価で調達することができたので採用しました。武装には75mm突撃機関銃を採用しており、この武装はイーゲルシュテルンの弾薬規格を応用したものですが良好な性能を獲得していることが先日の試射実験の結果から判明しています」

 

「壁に架けられている、あれかね?」

 

ハルバートンの質問に、マヤが返答する。

 

「はい。続きまして、近接武装。こちらも、ジンが使用しているデータがあったことから対装甲コンバットナイフ『アーマーシュナイダー』を採用しました。普段は左腕に装備される予定のシールドの裏に懸架する予定です」

 

それを聞くと、ハルバートンは改めてテスターをじっと見る。全身をライトグレーに染めたこの機体は、一見華やかさに欠けた地味なものだ。

しかし、その中に秘められた力は疑いようもなく、これまで何度も苦渋を飲まされてきたジンから感じたものと同じだ。

 

「この1号機に加え、2・3号機も3日以内には・・・・准将?」

 

その様子を訝かしんだマヤが、ハルバートンに声を掛ける。

 

「・・・・君たちのおかげで、ここまでたどり着けた。前もっての研究では実現できなかった、MSの実機開発が、ついに成ったのだ。ムラマツ少佐、ノズウェル中尉、そして、第08部隊のメンバー諸君。君たちは偉業を為したのだよ」

 

ハルバートンは、感極まったといった表情で、第08部隊を讃える。その様子を見てユージやマヤも顔をほころばせるが、ユージはこう返事した。

 

「いえ、閣下。我々はまだ一歩踏み出しただけなのです。我々の目的はあくまでOS開発。それに必要な道具がようやく調達できた、というだけなのですよ」

 

「そうか・・・・そうだったな。だが、その一歩は大いなる一歩だ。これからも、任務に励んでくれ。期待しているよ」

 

それを聞いてユージとマヤは、敬礼をもって返答する。

彼らの使命は、始まったばかりなのだ・・・・!

 

 

 

C.E 8/8

 

『うわああああああっ!なんでここでローリングさせてるんですかあああああああ!?』

『俺は、軽くペダルを踏んだだけ、だぞおおおお!?』

 

『ち、ちくしょう!なんでこんなよちよち歩きしかできねえんだよ!』

『も、モーガン中尉!そこでスロットルを押し出したら、きゃああああああっ!』

『うおおおおおおお!?』

 

『発射!・・・・どうかしら?』

『ちょっと待ってください・・・・ああ、ダメですね。5メートルほどずれてます。動かない的、こちらも棒立ちで撃ったのにこれだけの誤差は実戦では使い物になりませんよぉ、たぶん』

『くっ・・・・!』

『ひょえっ・・・・』

 

以上、上から

 

・エド操縦・アイク複座での宙間活動テスト。

・モーガン操縦・カシン複座での歩行テスト。

・レナ操縦・セシル複座での射撃プログラムテスト。

 

の様子である。以前(第3話)と組み合わせが違うのは、それぞれのパイロット候補生が様々な役割を担えるように組み合わせを何度も変えており、この日はこの組み合わせだったというだけの話だ。実際、候補生全員が一応ジンの操縦自体は経験している。もっとも宇宙空間をまともに動き回らせられたのは、コーディネーターの2人と卓越した情報処理能力を持つセシルだけだったが。

そんな彼らでも、テスターの操縦には苦心しているようだ。それも当然だろう。扱いが難しいとはいっても『完成品』であるジンと、『試供品』であるテスターでは、文字通り完成度が違うのだ。メタ的な視点で解説すると、原作でキラが乗り込む前のストライクガンダムみたいなものだ。PS装甲を展開してジンの攻撃は防げても、ろくな機動をとれない。今彼らが動かしているのはそれよりも更に酷い、そんな機体なのだ。

ちなみに詳しく解説すると、エド達の1号機はスラスターの設定ミスにより過剰出力を出してしまい、胴体を軸に宇宙空間でクルクル360度回転している状態。あれでは姿勢制御に成功しても、口からリバースコース間違い無しだ。

モーガン達の2号機はのろのろとした動作に業を煮やしたモーガンがスロットルを押しすぎたせいで、バランスを崩して前方に倒れ込む状態。気持ちはわかるが装甲が傷ついてしまうからやめて欲しい。あと、内部の配線も崩れる。開発者達と、MS整備兵見習いとして新たに配属されたコジロー・マードック軍曹ら5名はそう思った。

レナ達の3号機は、戦闘においてトップクラスに重要になる射撃プログラムの調整作業。特に問題は発生しておらず地道に進行しているが、上手くいかないことに少し苛立ったレナを見て、複座で観測・プログラム修正をしているセシルはおびえ、胃痛が悪化するのであった。

マヤが言うには、きちんとデータは収集できている。あと2週間もすればOSの骨格となる部分はできあがり、そこに随時必要なものを付け加えていくだけになる、とのことだった。

現状を見る限りでは、とてもそうとは思えないんだがな。

ユージは自室のデスクに座りながら独りごちる。あの様からたった2週間で?なかなか信じられるものではない。しかし、ユージはあくまでMS試験部隊の隊長をやっているだけの一般士官だ。技術畑出身ではない以上、スタッフの言を信じる他はなかった。

それに、他隊の士官からのからかいも少し鼻につく。『マウス隊』。それが今、自分達に付けられているあだ名だ。実験用小動物としてメジャーなマウスから取ったのだろうが、冗談半分でも実験動物扱いされてはたまったものではない。といっても、宇宙空間でのあの姿を見られたなら仕方ないかもしれないが・・・・。

そこまで考えたところで、ユージは自分が眠気に襲われていることに気づいた。時計を見てみれば、現在夜の12時。起床予定が朝7時であることを考えると、これ以上は睡眠不足になってしまう可能性があった。軍人は体が資本である。

そう考えたユージは、作成途中の報告書を保存してからパソコンをシャットダウンし、寝間着に着替えてからベッドに潜り込む。彼の意識は、急速に眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

「第14メビウス小隊、出撃!行くぞお前達!」

「はっ!」

「了解です!」

「ZAFTのやつらに、一泡吹かせてやりましょう!」

 

ああ、これは夢だ。しかもご丁寧なことに、ほんの2ヶ月ほど前の新鮮な記憶がもたらす、とびっきりの悪夢だ。

6月2日のあのとき、ユージ・ムラマツ大尉は自身の率いる小隊とともに、MAメビウスで出撃していた。そう、エンデュミオン・クレーターでの戦いへ向かっていった。

あのとき自分達は、敵を撃墜できないでも、今までの戦いでなんとか生き残ってきたのだ。今日も同じ、いや、今日こそジンを倒してみせる。などと考えていた。

今ではユージの元で副官をやっているジョンも、元はこの部隊にいたのだ。

ダニエル曹長。そして、ラナン軍曹。彼らもまだ、この時は生きていた。今でも考えている。今までどおり逃げの戦術を打っていれば、彼らは死なずに済んだのではないかと。

ユージの目には、自身や味方の乗るメビウスのステータスが映っていた。

 

メビウス

移動:6

索敵:D

限界:150%

耐久:20

運動:16

 

武装

レールガン:45 命中45

ミサイル:35 命中40

武装・変更可能

 

ジンに比べれば貧弱と言うしかなかったが、それでも自信があったのは、開戦以来、蓄積されてきたジンのデータからユージが構築した『対MS戦術』があったからだ。他の隊員も、MSとの戦いに対する慣れがあったからか、賛同してくれた。

 

彼らは母艦から発艦後しばらく飛行し、目標を見つける。ジンだ。先行して行われた非誘導ミサイルの弾幕によって散開したのだろう、おあつらえ向きに近くに他のジンは見えない。武装も、

マシンガン:32 命中50

重斬刀:50 命中70

と、オーソドックスなものだ。

 

「よし、あのジンをやるぞ!フォーメーション・ダブルクロス!」

 

ユージのかけ声に対応して、小隊が陣形を変える。

フォーメーション・ダブルクロス。前衛と後衛で隊を分け、前衛が攻撃、後衛はそのカバーと追撃を担当し、二組の前衛と後衛が2方向から挟撃する作戦だ。

メビウスは腐ってもMAと呼ばれる類いの兵器であり、正面からの攻撃にはある程度の耐性を持つ。そんなメビウスの撃墜のほとんどは、背後を取られての重斬刀による一撃によるものだ。メビウスはMSほど機敏に動き回る事はできず、あっさりと背後を取られて脆い場所に攻撃を受けてしまうということが多発していた。

ユージは、その弱点を補うためにこの作戦を考案した。2方向からの攻撃によってジンのパイロットの判断を遅らせ、その隙に4機で集中砲火を浴びせる。万が一前衛が攻撃されても、後衛がカバーに入り、攻撃を妨害する。そうすれば、少なくとも一撃で落とされることはない。

 

「喰らえ、一つ目の巨人め!」

 

そういってジンに突撃するのは、ダニエル曹長。前衛らしく豪快に突き進む姿は、普段の彼らしさを感じさせる。ユージもまた同じく前衛として、ジンに向かう。

ジンは一瞬迷ったそぶりを見せ、その隙にユージとダニエル、2人の攻撃が命中し、次いでジョンとラナンの攻撃がジンの破損箇所に追い打ちを掛ける。ジンは一拍の後に、爆散。ついに、ユージ達はジンを撃墜したのだ。

 

「やった、やりましたよ大尉!ジンを!」

 

「ダニエル曹長、まだ戦いは続いてますよ!気を抜かないでください」

 

「そういうな軍曹、自分もダニエルみたいに喜んでいるのがわかる。口が緩んでな」

 

冷静沈着なラナンの声も、今のダニエルには馬耳東風といったところだろう。なにせ、自分達の部隊で初めての戦果なのだから。

 

「隊長、次が来ます!」

 

ジョンの声につられモニターに目を向けると、こちらに接近する機体が1機。おなじくジンだ。

 

「もう一度だ、ダブルクロス!」

 

同じように、挟撃を仕掛けるが、今度の敵は少しやり手だったようで、前衛の攻撃をかわした後に、攻撃に転じようとしてくる。狙われたのはダニエルだ。

しかし、ダニエル機の後ろからたたき斬ろうとしたジンは、後ろについていたジョンの攻撃を受けて体勢を崩す。その隙にユージ達は陣形を組み直して、再度攻撃。今度のジンも、同じように撃破成功した。

 

「へへ、二機目!さすが隊長の戦術です!どんどんジンを落とせてる!」

 

「よせ、お前達が居なければ、というよりこちらの方が数が多いからできる戦法だ。大したものじゃない」

 

「しかし、その数を見事に活かしています。お見事ですよ」

 

普段は客観的な姿勢を崩さないラナンも、賞賛の声を浴びせてくる。彼らは今、劇的な成功に酔っていた。

 

しかし、これは悪夢だ。その所以が、今から現れる。

 

「お、今度は白いやつですよ。きっと隊長機か何かですよ。ちょうど一機だし、あれをやりましょう!」

 

そういってダニエルは機をそちらに向ける。本来なら独断先行になりかねないが、このときだけはユージも少しばかり、調子に乗っていた。ダニエルと間隔を保ちながら、白い敵に向かっていく。

このとき、踏みとどまっていれば。少しでも慎重にあろうとすれば、そして、ステータスが表示されるのがもう少し早ければ。何かが変わったのだろうか?

 

シグー

移動:7

索敵:C

限界:170%

耐久:90

運動:27

シールド装備

 

武装

マシンガン:60 命中 60

機銃:30 命中 50

重斬刀:75 命中 80

 

パイロット

ラウ・ル・クルーゼ(ランクC)

指揮 11 魅力 5

射撃 12(+2) 格闘 12

耐久 4 反応 13(+2)

空間認識能力

 

ユージが、誰に対して銃を向けたのか理解したのは、既にメビウスからミサイルを発射させた後だった。

シグーはこちらからの攻撃を素早くかわした後に、こちらに斬りかかろうとしてくる。恐ろしく速い挙動でありユージはかわしきることもできず、とっさに操作してもコクピットの左側に直撃を受けてしまった。ユージはそのときにコクピット内に起きた爆発を受け傷を負い、頭も打ち付けてしまう。

シグーはその後、流れるようにカバーに入ろうとしていたラナン機を重斬刀で断ち切る。悲鳴は、聞こえなかった。その間もなく潰されて肉塊となったのだろう。戦場に、花火が一つ増えた。

 

「隊長、ラナン!ちっ、ちくしょー!」

 

「待て、早まるな曹長!」

 

ジョンの制止も意味をなさず、シグーに向かっていくダニエル。シグーはその攻撃をかわし、マシンガンを向ける。

そして、花火がまた一つ。

 

その有様を、ユージは生き残ったモニターから見ているしかできなかった。その後シグーは、何かを感じたかのように別の方向へと向かっていく。

悔しい、憎い、よくも、よくも、よくも・・・・。

そう思いながらも、意識は薄れていく。意識を失う瞬間、ユージは一つの考えを浮かべていた。それは、重傷故に思考が定まらなかったからか、それとも一瞬のうちに仲間を2人殺されてしまったことにより現実逃避していたからか。とにかく、思ったのだ。

 

 

 

 

 

(やっぱ、そうそう上手くはいかないんだよなぁ……)

 

 

 

 

 

はっと目を覚ます。映るのは、自室の天井。汗をかいているのが、見なくてもわかる。うなされていたのだ。

時刻は朝5時。再度眠るには、時間的にも、精神的にも無理そうだった。

ユージは起き上がり、タオルで汗を拭きながら、思う。

二度とあんな、部下をみすみす死なせるような真似はしない。そのために、自分はMSという新たな力を生み出す部隊にいるのだ。

ひとまず、トレーニングルームに行こう。早朝トレーニングと思えば良い。

そう考えてユージは部屋を出る。まるで憎しみを振り払おうと、思考をクリアにしようとするかのように、その足は早足だった。




今回登場した、チタン・セラミック複合材は、ジムに使われているものと同名になります。なんかダガーに使われてる装甲の記述が、見当たらないんですよね・・・・。
ちな、これがテスターの性能になります。

テスター
移動:6
索敵:D
限界:120%
耐久:65
運動:14
シールド装備

武器
マシンガン:40 命中55
アーマーシュナイダー:45 命中60


それともう一つ、感想欄でも時々言われるのですが。
自分はミリタリー初心者かつ、ガンダム知識もそこそこあってもガチとは呼べません。ですから、自分の考えと読者の考えが異なるという場合も多々あると思います。
納得できる意見は参考にしますが、あまりにも自分の考えと違う感想・指摘などが届いた場合は、もうしわけありませんが・・・・。
こちらも、自分のssがどういう方向性でいくべきか悩んでいる途中です。感想への対応をぶん投げていると捉えられるかもしれませんが、どうか、ご理解いただけるよう頑張りたいと思います。

誤字・記述ミスの指摘は随時受け付けております。

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