機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
ユージ君!まずは生活物資の分配を考えてくれ!その次は避難民への事情説明と物資の貯蔵量チェック、終わったらアストレイの調査報告をまとめて!ストライクのOS解析についても進展があるかもだから、変態のところに聞きに行ってくれ!あとそれから……。



思い返してみると、「目的達成のためにとにかく優秀な人材をかき集めた」って、まんま「機動戦艦ナデシコ」ですね。意識したことは無かったんですけど、なんかパクったみたいで恥ずかしい……。


第27話「N or C?」

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”アークエンジェル” レストルーム

 

「つ、疲れた……」

 

「お、お疲れキラ……」

 

キラがベンチでうなだれている姿を見て、トールは苦笑いしながら労いの言葉を掛ける。無理も無い、作業の疲れだけでなく、奇妙なコミュニケーションを取らなければならないからだ。こうして友人達と一緒でいられる時間が、これほど癒やされるものだとは思ってもいなかった。

現在、”アークエンジェル”と”マウス隊”は地球連合軍の宇宙拠点『セフィロト』へと向かっていた。”マウス隊”の本拠地のような場所であると同時に、比較的、月のプトレマイオス基地よりも近い場所にあるからだ。まずはそこまで移動してから、次の計画を考えるらしい。

キラ達はなりゆき上ではあるが軍人となってしまい、そこにたどり着くまでは軍人として働かなければならない。もっとも、戦闘に関しては問題なかった。どういうわけかここに至るまで、まったく敵と遭遇しなかったからだ(ユージはZAFTが”マウス隊”の存在を警戒して、うかつに仕掛けられずにいると考えている)。比較的安全な航海の途上で、サイ達の仕事は艦橋でのオペレーター業が主だが、キラはMSデッキで、”ストライク”のパイロットを務めた人間としてデータ収集の手伝いなどをしていた。今は休憩中なのだが。

 

「なんなんだ、あの人達……。”ストライク”のOSについて聞きたいことがあるから来てくれってのはともかく、ストライクの各種武装についてどう思うとか、機体形状はどうとか、挙げ句の果てには好きなアニメはないかとか……。しかも全部答えないと解放してくれないし……」

 

「個性的な人達だったんだな……」

 

サイが言及したのはアキラとブロームのことであり、”ストライク”のOSを見た変態達は、案の定暴走した。

キラのくみ上げた、驚くほど緻密で難解、それでありながら現存するどのOSよりも出来ることが多いOSを見たアキラとブロームは、これでもかと言わんばかりにキラに質問を投げかけた。その勢いと熱量はキラが今まで経験したことがない類いのエネルギーであり、キラは辟易しながらそれをくぐり抜けてきたのだった。しかも、所々”ストライク”と関係のない質問まで混ざってくる。「少年!チェーンソーをぶん回してみたくないか!?」とか、「ほう、お前もナイトか。ならばこのぐらっトンソードを使わrよ」とか、キラには理解が出来ない次元の言葉を使ってくるのだ。特に、銀髪の方。最初はPDAを使って理性的に会話していたのに、段々熱が入ってきたかのように珍妙な言葉で話すようになった。

 

「本当に軍人なのかな、あの人達……」

 

「気持ちはわかるよ、キラ君」

 

「うわっ!?」

 

いつの間にか背後に立っていたユージに驚いてキラは飛び退くが、更に驚愕することになる。

 

「あの、大丈夫ですか?目とか、隈が酷いことになってますけど……」

 

「はっはっは、気にするな。ちょっと3徹したくらいだ、気にすることはない」

 

そう言いながらも足取りは覚束無く、不安を感じさせながら自販機に向かっていき、コーヒーを購入する。無糖・無乳のブラックを買うあたり、更に働くつもりなのだろう。

ミリアリアは不安に思い、声を掛けてしまう。

 

「あの、そんなにお仕事大変なんですか?」

 

「ん?ああ、それなりにな。ほら、こちらの不手際で生活物資が不足してしまっただろう?特に水の使用制限とかで苦労をかけてしまったりとかね。先ほども赤い髪のお嬢さんに文句を言われてしまったりもしたし、あとMSや各艦の稼働状況の報告、”ヘリオポリス”の調査報告書、本来の任務を放棄したことへの書類作成、今後の方針エトセトラ……」

 

淡々と話しながらコーヒーを飲み干し、2つ目の缶を開ける。素人目にもわかるが、このままだと彼は過労死してしまうのではないか?と思わせる疲労度だ。

 

「あの、コーヒーの飲み過ぎは良くないと思いますよ……?」

 

「大丈夫、コーヒー以外にも飲んでるさ。モ○スターエナジーとか」

 

ダメだこれ。とりあえず他の人、マリューでもムウでもいいからこの事を話しておかなければ。その場にいた全員がそう決意した。

カズイも内心で水を自由に使えないことに不満を抱えていたが、この有様を見てもユージに言えるほど鬼ではない。

 

「まったく、ただでさえやらなければいけない仕事が多いというのに、更に仕事を増やすようなことを……。いちいちナチュラルだコーディネイターだで対応を変えたりしていられるか、まったく……」

 

ドキリ、とした。

キラはここに至るまで、コーディネイターだという理由で面倒事に巻き込まれてきたのだ。16歳の少年は、コーディネイターであるかどうかという話題に過敏になっていた。

 

「えっと、それって……」

 

「いや、な。『一部の避難民』が、コーディネイターは1カ所にまとめておけとかなんとか言ってくるものだから、つい愚痴をこぼしてしまって。まったく、馬鹿馬鹿しい話だ」

 

「……」

 

軍人の意見だというなら、まだ理解できた。だが、ユージ曰くその意見は、元は自分達と同じ避難民から出てきたモノなのだという。

中立国であり、コーディネイターの受け入れもしているオーブでは、ほとんどコーディネイターに対する差別はない。だが、戦争に巻き込まれたことでコーディネイターへの悪感情を持ってしまった人もいるのだろう。

キラは悲しかった。戦争や差別が嫌で中立国であるオーブの”ヘリオポリス”に住んでいたはずなのに。つい1週間ほど前まで、皆そのようなモノとは無縁でいられたはずなのに。

戦争とは、穏やかだった人達も変えてしまうのだろうか?アスランが、やさしかった彼が、人を殺せるようになってしまうほどに……。

 

「元は同じ国、同じ場所で過ごしていた同胞だというのに、嘆かわしいと思わんかね?」

 

「……ムラマツ中佐は、違うんですか?」

 

そう、だからこそこの人間が風変わりに見えるのだ。キラが思わず問いかけてしまうくらいに。

ユージ・ムラマツ。”ヘリオポリス”崩壊後に救援に駆けつけてくれた部隊の隊長で、現在のこの艦隊で一番階級の高い人間。だが、敵であるはずのコーディネイター相手にも態度を変えることのない彼の姿は、奇異に捉えられる。

 

「んー……。まあ、休憩がてらに持論でも語るとしようかな。君たちは、この戦争が『何処と何処の戦争』だと思う?」

 

「何って、プラントと地球連合じゃないんですか?」

 

「正解だ、アーガイル君。じゃあ次の問題。地球に住む()()()()()()()()は何人でしょう?」

 

「え!?えーっと……」

 

「あ、俺知ってます。たしか、5億人でしたよね。……あれ?」

 

「惜しいな、ケーニヒ君。開戦前だったらそれで合っていた。現在の人数は凡そ3億3千万人ほど、およそこの1年ほどで3分の1が死亡している。ちなみに、プラントの人口はおよそ6千万人ほどらしい」

 

「それって……」

 

「『コーディネイター=プラント』の図式は成立しないよ。プラントにだって、第1世代コーディネイターの親であるナチュラルが住んでいるだろうしね。なのに、奴らはいかにも自分達がコーディネイターの代表であるかのように振る舞っている。それを多くの人が真に受けた結果、現在の反コーディネイター感情ないし反ナチュラル感情を生み出しているというわけだ」

 

「……」

 

キラ達は、何も言えなかった。

今までそこまで考えたことは無かったし、学ぶ機会も無かった。目を背けていた戦争に、そんな事情があったことなど。

 

「もちろん、地球側にも問題はある。”ブルーコスモス”、聞いたことくらいはあるだろう?」

 

「ええ、まぁ……」

 

「あれも、元々は地球環境の保全を目的として活動する、ありふれた組織だったはずだ。それがいまや、コーディネイター憎しで暴走している。コーディネイターもそれを見て、ブルーコスモスをナチュラルの代表であるかのように誤解する。お互いに悪いところばかり見ているから、憎み合うしかない。まぁ、戦争に至るにはもっと色々な理由があると思うがね」

 

また何も言えなくなってしまう。それが本当なら、人間とはどうしようもない生き物なのではないだろうか?争う必要のないことで争い、命を散らしていく。取り合える手をお互いに振り払う。

少なくとも今の自分達には、『人間はそんなものではない』と否定することは出来なかった。

 

「もしも私がおかしく見えるなら、それは私が、いや、私達がその枠から多少外れているからだろう」

 

()()、ですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

そこまで話したところで、一度ユージはコーヒーに口を付ける。

 

「『第08機械化試験部隊』には、4人に1人ほどの割合でコーディネイターが所属している」

 

「えぇ!?連合にコーディネイターですか!?」

 

カズイが驚きの声を挙げるが、それは全員にとって共通の驚きであった。

 

「そんなに驚くことでもない。連合にもコーディネイターはそれなりに所属している。たしか、5万人ほどだったかな?」

 

連合軍全体から見ればそれほどの数ではないのだろうが、けして少ないとは言えない数だ。キラ達の場合、この戦争は「ナチュラル対コーディネイター」だという先入観が存在していたため、なおさら意外に感じられる。

 

「まあ、戦争が始まってから増えたということもあるのだが……今はいいか。話を戻そうか。私はかつて、MAに乗って前線で戦う兵士だった。運良く生き延びてきたが、ある戦いで部下を失ってしまってね……」

 

かつての記憶を語るのが辛いのか、暗い影を落とす。この軍人にも、そういう失敗の歴史があったらしい。

 

「どうにかしてMSを連合でも、と思ったんだが……。知っていると思うが、当時の連合ではMSの技術なんて無いに等しかった。特にOSだ。コーディネイター用に調整されたOSは複雑過ぎて、ナチュラルに扱えるものではなかった。そのことを理解した私は、上司であり、唯一MSの研究に積極的だったハルバートン提督に直訴しにいった。そしたら、OS開発のための部隊の隊長に任命されてね。それが、『第08機械化試験部隊』、“マウス隊”の始まりだ」

 

「そんなことが……」

 

「ナチュラルに使えるOSを開発する必要がある、だが、作ろうと思って簡単に作れる代物ではない。ハルバートン提督はOSを開発するために、あらゆる部署から優秀な人材を集めた。人種・性別・性格を問わずに。キラ君、あんなアホ共でも連合でトップクラスに優秀な人材なんだ。性格に難がなければ”マウス隊”ではなく、本部の快適なオフィスで仕事が出来るくらいにはね」

 

「あの人達が、ですか?」

 

たしかに思い返してみれば、彼らの質問内容は非常に高レベルなものだった。ただ、テンションが異常だっただけで。

 

「ああ。ちなみにあの二人、うるさい方はナチュラルで、言語がおかしいやつはコーディネーターだ。お互いに仲は良いがね……つまり、なりふり構って居られなかったんだよ。目的を達成するために、とにかく人材をかき集めた。その結果、比較的コーディネイターの割合が大きくなっただけさ」

 

「問題は、起きなかったんですか?」

 

「起きたとも。だが、共に同じ仕事をしていたり食事でも採っていれば、お互いを知っていける。そうして、今の”マウス隊”があるというわけだ。キラ君。”マウス隊”の隊員に会ったら、『自分はコーディネイターだ』と試しに言ってみるといい。『だから何?』としか言われん。……そろそろ時間だな」

 

ユージはベンチから立ち上がった。また、仕事に向かうのだろう。先ほどよりはしっかりとした足取りだが、本当に大丈夫だろうか?

 

「つまり、だ。ナチュラルだコーディネイターだとかで争うのは馬鹿馬鹿しい、ということだよ。もちろん、これは私の意見であって、他にも様々な意見がある。もっと知りたいというなら、他の人にも聞いてみるといい」

 

ああ、そうそう。ユージはそういって、キラに向き直る。

 

「キラ君。時間があったら、アイクやカシンと話してみるといい。彼らもコーディネイターだからね」

 

「───え?」

 

最後に『爆弾』を残して、ユージは去っていった。

彼らもコーディネイター?自分と同じ?

どうともし難い空気がその場を支配し、いつの間にか全員、それぞれの持ち場に戻っていった───キラを除いて。彼はしばらく、立ち尽くした。

 

「あの人達も、コーディネイター……」

 

だとしたら。

なぜ彼らは、連合で戦っているのだろうか。

同じコーディネイターと、殺し合っているのだろうか。

 

 

 

 

 

”アークエンジェル” MSデッキ

 

「え?連合で戦う理由?」

 

悩んだ末にキラは、直接問いかけることにした。ちょうどPCで作業していた彼女を見つけ、声を掛ける。

カシン・リー。ヘリオポリスに戻ってきた時に、”アークエンジェル”と合流した別働隊にいた女性パイロット。セシルのような女性がパイロットをしていることも驚いたが、カシンはセシルよりも物静かな雰囲気を漂わせているだけに、衝撃はセシルよりも大きかった。しかし、これでも『機人婦好』と呼ばれる連合のトップエースの一人であるとコジローから聞いた。世の中、見た目では判断できないということだろう。

初めて会った時は端正な顔立ちが浮かべる微笑みにドキリとしたが、今は別の理由でドキドキしていた。

 

「はい。……コーディネイター、なのに」

 

困ったように苦笑すると、PCを閉じてキラに向き直る。

 

「ひょっとして、何か嫌な思いをしたの?コーディネイターだってことで」

 

「……はい」

 

「わかるよ。私も、同じような経験があるから」

 

やはり、この女性も『コーディネイターだから』という理由で差別を受けたことがあるのだ。だが、それでも戦い続けている。

 

「じゃあ、どうして?戦わなければいけない理由でも、あるんですか?」

 

「……うん、あるよ」

 

周りを見渡した後に俯いたカシンは、小さく話し始める。

 

「私ね、家族を人質に取られてるの」

 

「え……!?」

 

「お前は高い能力があるから、コーディネイターだからって。ここだけの話だよ?」

 

どうりで、周りを見渡した後に話し始めたわけだ。こんなことを聞かれたら、どう飛び火するかわかったものではない。

 

「幸い、入隊直後の上司は優しい人でね。できるだけ前線から離れた場所に配属してくれたの。”マウス隊”にいるのも、テストパイロットなら実戦に出る機会は少ないだろうって。まぁ結局実戦に出て、いつの間にか異名で呼ばれるようになってるけど」

 

「そんな……じゃあ、無理矢理に戦わせられてるってことじゃないですか!?」

 

「そうだね……」

 

和らいでいた連合軍の印象が、再び拒絶的なものに変わっていく。

この数日で2・3回しか話したことは無いが、それでもこの女性が進んで戦うような人間ではないことはわかる。だのに、無理矢理にこの女性を戦わせるなど、それは外道の所業ではないか。

そんな組織を信じられるものか。

 

「始まりは、最悪だった。なんで戦わなければいけないのかって。人質を取られたりしなかったら、たぶん今こうして軍艦に乗ることもなかったと思う。……でも」

 

「でも?」

 

「私は、戦うよ。たとえ家族が解放されて、戦わなくても良くなっても」

 

それを聞いたキラは、大きな衝撃を受けた。

この女性は、自分の意思で戦うと言ったのだ。たとえ義務でなくとも、ZAFTと。

 

「なんで、ですか。殺し合うんですよ?同じ、コーディネイターと……」

 

「殺したいってわけじゃない。憎んでいるわけでもない。戦わなければいけないってわけでもない。ねぇ、キラ君。私の知り合いに、レナ・イメリアって人が居るんです。その人は最初、私をコーディネイターだって理由で敵視していたの」

 

「……」

 

黙って話を聞くキラ。

この女性は、自分に何を伝えようとしているのだろうか?

 

「”マウス隊”だって今では皆仲良しだけど、最初はそうでもなかった。でも、皆で同じ任務に取り組む内にそういう(わだかま)りは無くなっていった。ナチュラルでも使えるOSが完成した時は、皆でお祝いしたの。ほら」

 

そういって、携帯端末を見せてくるカシン。のぞき込むと、色々な写真が表示されている。

そこに映っている全員が、笑顔だった。ハンバーガーを頬張る黒人男性、勝ち気そうな女性、ボトルを片手にアイザックと肩を組む壮年の男……。果てには、自分よりも年下に見える少女の姿も見える。この少女も、”マウス隊”の一員なのだろうか?

 

「本当に楽しかった。だけど、終わってからこう思ったの。戦争なんてなければって。戦争なんか関係ないことでお祝いしたかったって」

 

「カシンさん……」

 

「だから決めたの、戦うって。戦いを終わらせて、皆と一緒にお祝いしたい。皆と一緒に笑い合いたい。だから、私は皆を守るために、そして戦争を終わらせるために戦う。人が人を殺すなんて許されない行いだけど、何もしなかったら何も変わらないから。皆と笑顔でいられる世界は、ただ待ってるだけでは訪れないから」

 

それを聞いたキラは、納得する。

ああ、この人は強いんだ。腕力とかMSを動かす能力とかではなく、『心』が。

おそらくこの女性は、戦って人を殺す度に心を痛めている。

それでも、受け止めている。痛みを受け止めて、罪を背負って、それでも手に入れたいモノ(未来)があるから、戦える。

 

「キラ君。君が戦ったのはなんで?」

 

「え?」

 

「君も、戦った。言いたくは無いし聞きたくないだろうけど、人を殺した。それでもあなたは、4回も戦ったんでしょう。それはなんで?」

 

「……僕しか、戦えなかったから、です。僕が戦わないと、皆が……」

 

「それだって、立派だよ」

 

カシンはキラと目を合わせる。改めて、綺麗な目だ、と思う。

 

「戦うっていうのは、覚悟が必要なんだよ。それも、人を殺すような戦いは特にね。怖くて、恐ろしくて、それでも剣を取ることができたあなたはすごいと思う。力が有るからじゃない、誰かの命を背負えたあなたの『勇気』を認めているだけ。それだけなんだよ」

 

「───っ!やめてください!僕は、僕は……うぅっ!」

 

「あっ……」

 

キラは、その場から逃げるように走り去った。いや、実際に逃げたのだ。彼女の『瞳』から。

 

(そんなものじゃ、ない。そんな立派なものなんかじゃない!僕は、あなた達のようには……)

 

これ以上、彼女と話していることに耐えられなかった。今まで『戦争』から逃げて生きていたキラには、彼女の覚悟を直視出来なかった。

そうだ、自分は何も受け止めていなかった。あの時打ち抜いた”ジン”の中に、命があったことも、親友にビームライフルを向けたことも。覚悟などせずに人を殺していたのだ、自分は。仕方ないのだと、守るためだと目を背けていたのだ!

誰かに認められるようなことなど、自分は……。

 

 

 

 

 

16歳の少年が現実を直視するには、時間が必要だった。自分のやったことを振り返り、受け止めるための時間が。

だが、世界が彼に余暇を与えることは無い。

『それ』は、世界を正しい筋書きへと戻そうとするかのように、着実に近づいていた。

水の量は残り3日分。ユージ達士官が、デブリ帯の中から水を得ることを決めたのは、キラとカシンの会話の翌日のことだった。

『歌姫』との邂逅は、まもなく。




お待たせしました!続きです!
いやー、原作キャラ視点でも描写って疲れます。オリキャラだったら自分で好きに描写出来るんですけど……。

それと、活動報告での「機体・武装案リクエスト」の募集を打ち切りました。
リクエストの数、ざっと見て40超!メッセージ数はもっとあったのですが、補足メッセージもあったので40超としました。暇だったら数えてみてください(丸投げ)。
全てを出せるかどうかわかりませんし、いくつかは内容が重複しているようなアイデアも見られました。ですが、皆さんの熱意がこもった最高のアイデアがたくさん来て嬉しいです!全部を出すとは確言しませんが、集まったアイデアの中から採用した場合は必ず提案者様のペンネームを載せたいと思います!
本当に、ありがとうございました!好評だったら、またいつか第2回を開催したいと思います!

次回は皆さんご存じ(?)デブリ帯での水ゲット回です。
ネタバレすると、『桃色髪の歌姫』は最初から登場させるつもりでした。ただ、どんな形で登場させようか、活躍させようか悩んだ結果、とりあえず原作通りに出しちゃえ、となったわけです。
賛否両論の多い彼女ですが、この世界ではどのように行動するのでしょうか?
悩めるキラ君の、心の行方は?
そしてユージは過労死するのか、しないのか?
次回に続きます。

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。

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