機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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前回のあらすじ
邪神「頑張ってるから、アークエンジェル発見させてやるよwwwおまけ付きでなwww」
ユージ「くたばれ」


第24話「イザークの屈辱」

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軍事要塞”アルテミス”付近 “EWACテスター”コクピット

 

「隊長、アイクさんが”アークエンジェル”と合流しましたぁ!それと敵戦力を確認、”ジン”タイプが6、”ローラシア”級が2ですぅ!」

 

<間一髪というやつかな。流石にあの戦力では、”アークエンジェル”だけでは耐え切れまい。さっさと追い払うぞ!>

 

通信先から、了解、という声が4人分響く。

ここに至るまで1日と半日、鬱憤を晴らしてやろうという思いもあるのだろう。気勢は十分のようだ。

 

「ここまで長かったですからねぇ……。まあ、アイクさんがいるんだからもう勝ったようなものですけど」

 

セシルは現在の戦況を分析した上で、そのように述べる。しかしそれは、驕りでもなんでもない事実だ。『アベンジャー』と呼ばれる彼が、”デュエル”と共にいるのだ。あの程度の戦力で抑えられるものではない。

それにしても、あの機体。たしか、”ストライク”といっただろうか?背中に翼が生えたようなブースターを背負っているが、あれは奪取を免れていたようだ。アイクと一緒に”アークエンジェル”を守って戦っている。

 

「なんですかあの動きぃ……。子供みたいに戸惑っていると思えば、とんでも反応速度で戦闘機動……。超反応はアイクさんみたいにコーディネイターだっていうならまだ納得できますけど、新兵以下の立ち回りの方は……まさか、素人を乗せているってわけじゃないですよねぇ?」

 

そう呟きながらも、機体を戦闘モードに切り替えていく。もう少しで、自身と”ヴァスコ・ダ・ガマ”も戦闘に突入するのだ。もう慣れたと言えば悲しくなるが、この隊では突発的戦闘など珍しくもない。戦闘準備を終えるのは片手間でも出来るようになっている。

ユージからの通信が入る。

 

<セシル、いけるか?いけるようならお前も参戦してくれ。そちらでも確認しているだろうが、今アイクが1機落とした。この調子なら、お前が加わればアイクが敵艦を落としにいける>

 

「了解ですぅ」

 

そう言って、彼女もまた戦場に向かって飛んでいく。

しかし、彼女はまだ知らない。

”ストライク”を現在操縦しているのが、まさかまさかの素人であったことを。

 

 

 

 

 

「ちぃっ、なんなんだよ、こいつ!どこから湧いてきた!?」

 

”アークエンジェル”を攻撃していたイザーク・ジュールは、怒りながら困惑していた。

元々この攻撃は、彼の発案によるものだった。もしも『足つき』を見逃せば、”アルテミス”に逃げ込まれる。

『あれだけの被害と屈辱』を受けて落とせなかったとあれば、彼としてはなんとしても見逃すわけにはいかなかった。幸い敵は先の戦闘で消耗しており、迎撃に出てきたのは白いMSだけ。PS装甲を用いているらしいそいつには実弾は効かないだろうが、母艦を先に落としてしまえば、いずれは実弾だけのこちらよりも先に、エネルギーが切れるだろう。そうなれば、あとはどうとでも出来る。もし上手く捕獲などできれば、自分がパイロットとなることも出来るだろう。そうなれば、現在地上で暴れているというあの『赤い奴』など楽勝だ。

やつにやられてから、自分のプライドはズタズタなままだ。初陣でほとんど何も出来ずにやられ、今回の作戦でもおいしいところはいけ好かないアスランの独り占め。

そんなことが認められるものか。だというのに!

 

「いきなりしゃしゃり出て来やがって!落ちろ、落ちろよお!」

 

彼の乗る”ジン”は、突如現れた青いMSに、マシンガンによる攻撃を加えていく。しかし、そのことごとくが装甲に阻まれ決定打にならない。おそらく、先ほどまで自分が相手をしていた白いMSやアスランが奪取した機体と同じく、PS装甲の機体なのだろう。

よくよく見れば、その機体の盾にはネズミのようなマークがペイントされているのがわかる。今のZAFTに、その意味がわからない兵はいない。

 

「”マウス隊”だと!?なんで、こいつらがここに?」

 

忘れもしない、屈辱の初陣。あの時自分をコケにした機体が所属する部隊のマークを見たイザークは、頭に血が昇る。

何もかもこいつらのせいだ。今ZAFTが窮地に追い込まれているのも、”ジン・ブースター”などというMSもどきを戦線に配置せざるを得なくなっているのも。

そして何より、今でも自分があのときの悪夢を時折見るのも!

───なんでこいつらは、ここぞというタイミングで自分達の前に立ち塞がるのか!?

また1機、青いMSによって味方が落とされた。

 

「このぉ、このぉ……!」

 

<イザーク、撤退信号です!帰還しましょう!>

 

激情に支配されて突撃しようとしたタイミングで、味方からの通信が入る。

ニコル・アマルフィからの声だ。彼は今、重装甲の『”ジン・アサルト”』に乗って、前衛の自分達を支援しているはずだった。

 

「撤退だと!?貴様、わかっているのか!今ここで『足つき』を逃してしまえば……!」

 

<これ以上の戦いは、こちらにとって不毛です!もっと周りを見てください!>

 

「なんだと……!?」

 

むしろ残りの4機全員でかからなければ、1機抑えることすら出来ないやもしれない強敵なのだ。

ここに来てイザークは理解した。

───自分は、自分達は。またしても敗北したのだ。よりにもよって、”マウス隊”の援軍によって。

 

<おいおいおい、流石にやばいんじゃないの!?イザーク!>

 

「ディアッカ……!ちくしょうが、ちくしょうがぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 

もはや、勝敗は決した。いまここで引かねば、母艦もまとめて全滅させられる。それだけの能力を持っているのが、”マウス隊”なのだ。

屈辱にまみれながらも、イザークは撤退することを決めた。

本来の彼であればこのような状況でも戦い続けただろうが、”マウス隊”の活躍や”テスター”タイプがこの世界で配備されていることもあって、彼の意識を少しばかり変えていた。

たとえナチュラルといえども、慢心して勝てる相手ではない。引くべき時は引かねばならない。それを彼は、エドワードに瞬殺されたあの経験から学んだのだ。

───それに自分で納得出来るかというところまでは、成長できていなかったが。

 

「覚えていろ『足つき』、そして”マウス隊”……いつか絶対に、貴様らを俺の前に跪かせてみせる」

 

憎悪を募らせながらイザークは帰投していき、それに続いてディアッカ達も引いていく。

それが、この戦いの終焉だった。

 

 

 

 

 

「敵MS隊、撤退していきます。敵艦も既に撤退態勢を取っていますし、戦闘終了とみてもいいでしょう」

 

「よし……アイクとセシルに、”アークエンジェル”に着艦するように伝えろ。こちらに戻すよりもそちらの方が効率がいい。それと、スペースランチを用意してくれ。私があちらに出向く」

 

「了解でーす」

 

そこまで言って、一度息をつく。

先ほどの戦闘は、ユージの目にはっきり映っていた。それは他の者のように、ただの画像ではない。

ユージの目にしか映っていない、敵パイロット達のデータも映っていた。

 

イザーク・ジュール(Cランク)

指揮 9 魅力 9

射撃 11 格闘 10

耐久 11 反応 9

 

ディアッカ・エルスマン(Cランク)

指揮 6 魅力 9

射撃 11 格闘 7

耐久 10 反応 9

 

ニコル・アマルフィ(Cランク)

指揮 7 魅力 11

射撃 8 格闘 9

耐久 8 反応 9

 

以前戦った時よりも、成長しているのがわかる。特にイザークは、「指揮」「射撃」「格闘」の数値がそれぞれ2つずつ上昇している。最終的には、SEED値を持たない者達のなかでは最強クラスにまで成長することだろう。

後々のことを考えて、正直ここで落としておきたかったところだが、最優先は”アークエンジェル”の安全確保だ。撤退してくれるというなら、それにこしたことはない。

そこまで考えたところでシートから立ち上がり、スペースランチのある格納庫まで移動を始める。とにもかくにも、今は情報が欲しいのだ。

“ヘリオポリス”で何が起きたのか。なぜキラが原作通り”ストライク”のパイロットになっているのか。ムウの姿が見られないのはなぜなのか。

───原作とどう、変化したのか。

通信で話すより直接聞いた方がいいと判断したユージは、様々な思惑を抱えながら”アークエンジェル”へと向かうのだった。

 

(そういえば、”ブリッツ”の姿が見えなかったな……。奪取したなら、あれを投入しない理由はない。クルーゼ隊ならなおさらだ。おそらく奪取されただろう”イージス”と同じく、既にプラント本国に持ち帰られたのか?それとも、()()()がうまくいったのか?)

 

 

 

 

 

”アークエンジェル” 格納庫内

 

「今回もお疲れ、坊主。よく守ってくれたよ」

 

「い、いえ……」

 

”ストライク”のコクピットを出たキラに、一人の整備兵が話しかけてくる。たしか、マードック曹長といっただろうか?あまり話をしたことはないが、”ヘリオポリス”で自分がコーディネイターとバレた時にかばってくれた人間だったことは覚えている。

戦ったことを褒められるのはまったく嬉しくないが、このように自分をねぎらう言葉を掛けてくれるのは、多少なりともありがたい。

 

「あの、”デュエル”っていうのは……?」

 

「ああ、アイクのことか?大丈夫、味方さ。……おっ、噂をすれば」

 

言われて格納庫のカタパルトデッキにつながるハッチの方を見てみると、先ほどの機体、現在の”ストライク”のように灰色になっているが、”デュエル”が搬入されてくる。もう一つのハッチからは、先ほどの戦闘では結局参戦する前に敵が撤退してしまった故に、あまり観察できなかった機体が搬入されてくるのが見える。

 

「ああ、セシルの嬢ちゃんも来てたのか。これで安心だな」

 

「マードックさんは、あの人達と知り合いなんですか?」

 

「ん?ああ、知ってるぜ。”ヘリオポリス”に来る前は、同じ部隊で働いていたからな」

 

そんな会話をしていると、”ストライク”の隣に収まった”デュエル”のコクピットが開き、中から誰かが出てくる。

ヘルメットを取って露わになるのは、先ほどの戦闘での戦いぶりからは想像しづらい、柔和そうな顔。こちらに気付いたらしく、そのまま向かってくる。

 

「コジローさん、無事だったんですね!良かった……」

 

「そっちも息災だったみてえだな。聞いたぜ?この前の戦いで、10機近くMSを落としたらしいじゃねえか。いやー、鼻が高いねえ」

 

「ははっ、やめてくださいよ。あれは”デュエル”の性能があったからです。それと……君が、”ストライク”の?」

 

「あっ、はい。キラ・ヤマトです……」

 

こちらに注意がシフトしたことに、少しの驚きと警戒を抱きながら返答する。

 

「アイザック・ヒューイ中尉です。君がここまで、”アークエンジェル”を守ってくれたんだよね?おかげで、救援を間に合わせることが出来たよ。ありがとう」

 

「いえ、そんな……」

 

キラはそう返答しながら、内心でわずかな憤りを感じる。

救援に来てくれたのはありがたいが、それならもっと早く来てくれなかったものか。先ほどの戦いぶりから見ると、彼が居てくれれば、自分がここに至るまで戦いに出ることもなかったのではないかと思う。

子供染みた『たられば』だが、そう思わざるを得ない。これまで周りの大人達をアテにできることが少なかったこともあり、キラは地球連合軍という組織に対して不信感を持ち始めていた。

 

「……うーん、僕が言うのもなんだけど、若いね。新兵かな?」

 

「えと、その、僕は……」

 

「あー、アイク。これには、色々と面倒な事情があってな……」

 

「新兵どころかたぶん素人ですよぉ、その子」

 

別方向から、間延びした女性の声が聞こえてくる。

キラがそちらを見てみると、やや小柄な女性が、慣性に身を任せてこちらに向かってくるのが見える。パイロットスーツを着ているということは、彼女があの背中に何かを背負ったMSのパイロットということなのだろうか?

 

「セシルの嬢ちゃんも、久しぶりだなぁ」

 

「ご無事で何よりですよぉ、コジローさん。アキラさん達も、心配していましたぁ。今は”ヘリオポリス”で、お宝探しに夢中ですけどねぇ」

 

「相変わらずだな、あの連中も……」

 

「それよりセシル、キラ君が素人って……」

 

アイザックの問いかけに、そうそう、と言わんばかりにキラの方へ向き直る。

 

「初めましてぇ、セシル・ノマ曹長ですぅ。さっそくですけどぉ、あなた軍人さんではありませんねぇ?」

 

「えっと……はい」

 

「えぇ!?」

 

アイザックが困惑した声を挙げる。

それも当然だろう、連合軍の最高機密と言って良いMSを、まさか軍人ではない子供が操縦しているのだ。困惑しない方が不自然というものだ。

 

「どうして、それを?」

 

「私のMSは、情報収集に特化していますからぁ。あなたの動きも記録していたんですけどぉ、セオリーから外れまくった動きなんですもん。高い反応速度や”ストライク”の性能があるからわかりづらかったですけど、新兵以下の動きがところどころ見えましたぁ」

 

「気付かなかった……」

 

「その……僕は」

 

キラは弁解しようとするが、上手く言葉が出てこない。

なんと言えばいいのだ?コーディネイターの自分には、”ストライク”を動かせるだけの能力があったから乗っていましたと言えばいいのか。そんなことを言ったら、またこの船に乗り込んだ時のように銃を向けられるのではないか?

しどろもどろになるキラを見て、セシルはため息をつく。

 

「まあ、ここまで色々と大変だったでしょうし、問い詰めるのは後回しでもいいですかねぇ」

 

「ああ、そうしてやってくれや。坊主にも、この艦にも、色々と複雑な事情があるんだよ……」

 

「でしょうねぇ。ごめんなさいですぅ、キラ・ヤマト君」

 

「いや、すいません、うまく説明出来なくて……」

 

「そうだね、今はキラ君を休ませてあげよう。事情なら……あっ、来た」

 

そう言われてアイザックが指差す方を見ると、スペースランチが格納庫の中に入ってくるのが見える。

着艦したそこから出てくるのは、20代後半くらいの男性。実直そうな外見だ。

 

「隊長さんまで来てたのか……」

 

「マードックさん、あの人は……」

 

「ああ、坊主は知らなかったんだな」

 

「あの人が僕たち、『第08機械化試験部隊』の隊長、ユージ・ムラマツ中佐だよ。同時に、現在連合が投入しているMSに使われているOS開発の必要性を説いた人でもある

 

ムラマツ中佐が、こちらに視線を向けてくる。

その視線から、特に邪なものを感じることは出来なかった。しかし、キラは違和感を覚えたのだった。

───なぜ、彼が自分を見る視線の中に、『哀れみ』のようなものを感じるのだろうか?彼は自分と話すどころか、会ったことすらないというのに。

 

 

 

 

 

”アークエンジェル” 艦長室

 

「初めまして、ムラマツ中佐。現在この艦の艦長を務めております、マリュー・ラミアス大尉です。かの高名な『第08機械化試験部隊』の隊長とお会いできて光栄です」

 

「副長を務めています、ナタル・バジルール少尉であります」

 

「第7艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉です。本来の乗艦が撃沈したため、こちらの艦に乗り込ませてもらってます」

 

「改めて、ユージ・ムラマツ中佐だ。よろしく頼む。……これで、この艦の士官は全てか?」

 

「……はい」

 

ここには現在、アイザックを除く士官が集合していた。目的は言わずもがな、状況把握と今後の方針設定のためである。

ユージの目に、彼らのステータスが表示される。

 

 

 

マリュー・ラミアス(Dランク)

指揮 8 魅力 12

射撃 8 格闘 6

耐久 10 反応 6

 

得意分野 ・指揮 ・魅力 ・射撃

 

 

 

ナタル・バジルール(Dランク)

指揮 9 魅力 5

射撃 10 格闘 4

耐久 7 反応 7

 

得意分野 ・指揮 ・射撃

 

 

 

ムウ・ラ・フラガ(Bランク)

指揮 9 魅力 10

射撃 11(+2) 格闘 9

耐久 16 反応 10(+2)

空間認識能力

 

得意分野 ・耐久

 

 

 

「中佐、よろしいでしょうか?」

 

「何かね、ラミアス大尉?」

 

「その、本当に”アルテミス”に入港しなくて良かったのですか?それどころか、”ヘリオポリス”へUターンしてしまうなど……」

 

現在”アークエンジェル”と”ヴァスコ・ダ・ガマ”は、並走して”ヘリオポリス跡”方面に向かっていた。せっかくもう少しというところで『安全な』場所に逃げ込めるというタイミングでの、突然の方針転換に、疑問を隠せないのだろう。ナタルやムウも、同じような表情を浮かべている。

 

「たしかに、君の疑問はもっともだ。一度”アルテミス”に入港して補給を受けてから、という方向で活動する方が安全策だ」

 

「では、なぜ?」

 

「まず、私達は”ヴァスコ・ダ・ガマ”だけで来たワケじゃない。”ヘリオポリス”跡に待機している別働隊がいる。一定の時間がたっても君たちが見つからない場合は、一度戻る予定だった。その別働隊と合流するためだ。私達からの連絡が無い場合は、独自判断するように言いつけてある。早く連絡を取りたいんだ」

 

「では、補給は?」

 

「我々は元々、新兵の長期遠征訓練のためにこちらまで来ていた。たまたま“ヘリオポリス”襲撃を聞きつけて来たのだが、訓練の内容が内容だからな。何かあってもいいように、物資の類いは多めに持ってきてある」

 

「なるほど……」

 

「お待ちください、中佐。それでしたら、一度我々が”アルテミス”に入港するのを確認してから、その別働隊と共にもう一度”アルテミス”に戻ってくるという方が、時間はかかりますが安全で確実です。違いますか?」

 

「……なるほど、たしかにそういう方法も有りだなバジルール少尉」

 

ナタルの指摘を否定せずに、受け止めるユージ。

ナタルの言っていることも、たしかに有りといえば有りな方法だ。優先すべきは”アークエンジェル”の安全確保であり、そのためには一度安全圏に”アークエンジェル”を置いておいた方がいいということもある。

だが、ユージにはそれをする気はなかった。

 

「だが、忘れていないか少尉?”アルテミス”は、『ユーラシア連邦の要塞』だ。あちらからしたらこの艦と”ストライク”は、さぞかし魅力的だろうな?なにせ、次期主力量産型MSの原型機だ」

 

「……!たしかにそうですが、今は戦時中です。同じ連合内でそのような……」

 

ナタルは、こちらが何を言いたいかを理解したようだ。

だが、それはまさしく『仲間割れ』だ。そんな不毛なことをする軍人など、という思いがあるのだろう。

 

「認識が違っているようだな、少尉。いいか?連合の上層部は既に、この戦争が終わった後のことを考えている。先日の『カオシュン攻防戦』での勝利が、更に助長したようでな。やつらにとって肝心なのは、『戦後』だ」

 

「そんな、バカな!」

 

「はっきり言おうか?今の連合上層部は、その『バカ』だ」

 

徹底的に、自分の所属する組織の上層部をこき下ろしていくユージ。にわかには信じがたいのだろう、ナタルだけでなく、マリューも困惑した表情を浮かべている。

だが、ムウだけは少しばかり心あたりが有るようだ。

 

「たしかに自分も、『せっかくの”ゼロ”を扱えるパイロットなのだから』という理由で、MS転向を受ける間もほとんどなかった時期がありますね。今はそうでもないんですが」

 

「『MA主流派』のことだろうな。なんとか戦場の主役をMSから取り戻したいという連中だが、最近はおとなしくなってきたそうだぞ?……余裕があるから、あーだこーだと騒げているんだ。理解したか、少尉?」

 

「……はい」

 

理解はしたが、納得は出来ないといったところか。ナタルのような軍人家系出身の士官からしてみれば、味方同士で腹の探り合いをしているというのが不可解なのだろう。

だが、ユージは彼女が納得するまでの時間を余裕を与えるつもりはなかった。

 

「それでは、話してもらおうか。

ここに至るまで、何があったのか。『G』兵器はどうなったのか、なぜ君たちがこの艦の責任者を務めることになったのか。───なぜ、民間人が”ストライク”を操縦することになったのか。

なに、ここから”ヘリオポリス”跡まで1日は最低でもかかる。時間はあるから、正確に頼むよ?」




次回、ついに”ヘリオポリス”からここまでの謎が明かされます!

なぜキラがストライクを動かしているのか、ムウはなぜ出撃していなかったのか。
そして、”ブリッツ”はどうなってしまったのか!?
次回、「あの日、あの時、あの場所で」。
お楽しみに!


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