ユージ&作者「ガンダム、ばんざーい!」
20話近く使ってから原作パート突入するやつ、おりゅ?
第22話「『種』芽吹く時、『邪道』との邂逅」
最初は、とても小さな変化。
決められた定めを動かすことなど、到底不可能なほど小さなそれは、いつの間にか大きなうねりとなっていた。
『運命』という猫に噛みついたネズミたちは、どのような軌跡を描くのか。その結末を知るものは、まだどこにもいない。
全ての物語は、終わった時にこそ評されるべきものなれば。
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デブリ帯 ”コロンブス” ハンガー内
「まさか僕達にこういう任務が回ってくるとはね……」
「しかも聞きましたぁ?噂だとこの任務、隊長が提督に直談判して下されたらしいですよぉ?」
「あの隊長が?」
そこでは、アイザックとカシン、セシルが各々のMSを眺めながら会話していた。
今回の”マウス隊”の任務は、デブリ帯における新兵のMS訓練だ。そこまではいい。
最近は”セフィロト”の周辺などで試作武装の実戦テストなどを行うような任務が中心だったが、『植樹戦役』以前にもMS操縦の教導はやっていた。MS運用の経験が最も蓄積されている自分達の部隊で教導を行うというのは、新兵を安全に育成するという意味では最善手と言えるだろう。
問題は、なぜ『セフィロト』の近隣ではなく、地球を挟んだ反対側で行うのか、ということだった。ユージに質問したところ、『新兵の長期間任務への耐性強化も目的としている』という答えが返ってきたが、それならそれで別にスケジュールを組めば良いはずだ。
およそ一週間ほど前の『カオシュン攻防戦』から、ZAFTの動きは沈静化した。それもそのはず、あの戦いでZAFTが受けた損害は、地上に限らず宇宙でも甚大だった。
4つの戦艦を失い、更に2つの戦艦に少なくない損害を受けている。加えて、MSの損失も甚大だったことだろう。
つまり、今は比較的こちらに『余裕がある』状況なのだ。新兵の育成だって、一度に複数の経験を積ませてまで行うべきものなのか?アイザックが新兵の時でさえ、きちんと長期にわたる訓練であっても、いっぺんにまとめて行おうとしたものはなかった。いや、もしかしたら自分達の訓練過程と異なっている可能性もあるが……。
『もう一つの可能性』も、無視できなかった。
「隊長にしては強行スケジュールな気が……」
「……隊長って、何者なんでしょうねぇ」
「セシル?」
「だって、そうじゃないですかぁ。”メビウス”で”ジン”を撃破……これは小隊での連携を基本戦術にしたとして、MSを運用するためのOSの重要性を、わざわざハルバートン提督のところに直接言いに行ったんですよぉ?今になって思うんですけど、流石に先見性があり過ぎるような、って」
そう、それだ。アイザックが懸念しているのが、それだった。
自分達の隊長、ユージ・ムラマツは優秀な軍人だ。自分達という色々と癖のある部下を率いてみせる手腕もだが、自分の部下一人一人とのコミュニケーションもきちんと取る。御陰で、”マウス隊”最初期の不穏な様子は早々に見られなくなり、自分達は周りからエース部隊と言われるまでに成長を遂げた。尊敬できる人物なのは間違いないだろう。先日の”バスター”をシャトルに乗せて降下させる案など、既存の型に捕らわれない柔軟な考えも出来る。
だが、時折不思議な様子を見せるのだ。
セシルが言ったように、OSの重要性を説く先見性。『ガンダム』という単語を聞いた時の、どこか『懐かしげ』な様子(アイザックはそう感じていた)。
まるで未来がわかっているような、いや、それとも既に経験していたかのような……。
「じゃあ、今回も隊長は何かが起こると考えている、だから今回みたいに普通とは違う形式で任務を始めたってことかい?」
「だって、そうとしか考えられないじゃないですかぉ。今の我々の位置、考えて見てくださいよぉ」
アイザックの疑問に、セシルは自分の見解の根拠を述べる。
「───ここから比較的近い宙域に、あるんですよぉ?”ヘリオポリス”。あそこでは今でも、たしか試作MSが3機は製造されています。先日の戦いで”デュエル”、”バスター”をZAFTに晒している以上、あちらも情報網をフルに稼働させているはずです。あれから一週間と少し、優秀な諜報部やスパイでもいれば、”ヘリオポリス”の情報をキャッチしていてもおかしくないと思いますぅ」
「じゃあ隊長が今回の任務を不自然に調整したのは、”ヘリオポリス”に何か起きて、それを事前に知っているからってこと?」
「いやぁ、ただの憶測なんですけどね?正直、”ヘリオポリス”に何か起きるかもってことならハルバートン提督も考えていてもおかしくないことですしぃ」
「ふぅん……アイクは、どう思う?」
カシンからの質問に、アイザックはこう返す。
「僕は……あの人を信じるよ。たしかに怪しいところがあるっていうのは本当だけど、それでも今に至るまで僕たちを導いてくれたのはあの人だ。もしあの人がZAFTのスパイだったとしたら、僕達は最初の戦いの時点で皆死んでる。そうした方が、連合上層部のMSへの信用を落として、結果的にMS配備が遅れる、あるいはなくなっていたかもしれない。あまりにも、連合に対して有益な行動ばかり取っているんだ。実利面でも心情面でも、隊長は信じられる人だよ。いや、信じたい」
「ですよねぇ……今回は流石に、深読みしすぎただけですよねぇ」
「だけど、セシルの考えは大切なものだと思うよ。私はそういうのは苦手だから、余計にそう思う」
「そ、そう褒められると照れますねぇ」
すると、談笑を続ける彼らの元へ近づいてくる集団が現れた。
今回、彼らが教導を行う新兵達3人だ。
「リー中尉!狙撃のコツとかってありますか?さっきからシミュレーターで訓練してたんですけど、中々上手くいかなくて……」
「ちょっとマイク!先にあたしよ。リー中尉、デブリ帯ってどんなことに気を付ければいいとかってありますか?一応教本は全部見たんですけど、まだ不安で……」
どうやら彼らは、カシンにMS操縦のコツを聞きに来たようだった。
無理も無い、カシンは『カオシュン攻防戦』での大活躍以来、その容姿も相まって高い人気を誇っているのだ。既に『機人婦好』として知られているカシンだが、その活躍振りから『カオシュンの戦女神』などと言われているとか。
新兵からしたら雲の上のエースオブエース。そんな人間が自分達の教導をしてくれるというのだから、できる限り話を聞きたいというのは、まあ、理解できる。
だが、そんな中で一人だけカシンではなく、こちらに向かってくる者がいる。
「ヒューイ中尉、よろしいですか?敵MSとの近接戦についてお聞きしたいことがあるのですが」
「えっ、ああ。いいよ」
アイザックは、質問してきた男性のことを思い返す。たしか、ベント・ディード伍長といったはずだ。肌の黒い彼は、あまり口を開かない無口な印象を周囲に与えるアイザックよりも若い新兵だ。
彼の質問に答えた後、ふと、疑問に思ったことを聞く。
「君は、カシンに何か聞かなくていいのかい?」
「もちろん、後で射撃分野について色々訪ねようと思っています。何か?」
「ああ、いや。マイケルやヒルダみたいに、カシンに真っ先に聞きに行くかと思っただけだよ。ほら、彼女は有名だから……」
「たしかにリー中尉は尊敬出来る人物ですが、今自分が必要としている情報、近接戦の情報はあなたから聞いた方がいいかと思いまして。あなたの近接戦データは、私の目標としている動きにもっとも近かったのです」
「そうなのかい?」
「はい。私はあなたの動きを一番参考にしておりますから」
「め、面と向かって言われると照れるね」
今までこのように手放しで讃えてくれる人間は少なかったため、少し赤面してしまうアイザック。
実質『囮』として宣伝されたようなものだが、それでもコーディネイターという理由で妬みを陰ながらぶつけてくる人間も、いないわけではなかった。だから、”マウス隊”以外でこういう経験は少ないのだ。
そこまで考えたところで、気付く。何か、忘れているような……?
「……ふふふぅ。私には誰も聞きに来ない。そりゃお二人の方が強いのはわかりますけど、レーダーシステムや電子戦ならお二人にも負けないつもりなんですけどねぇ……」
「せ、セシルの良さは……。えーっと、そう。ちょっとわかりづらいだけだよ」
誰もアドバイスなどを聞きに来ないことから自嘲を始めたセシルを慰め始めるアイザック。カシンは二人の相手をするのに手一杯で、こちらをフォローできそうにない。
ベントも微かに何かしらのフォローをしようとしているが、付き合いの短い自分がなんといってフォローしたらよいのかがわからないようで、目を泳がせている。そういうところは新兵らしい。
しかし、その時間が長く続くことはなかった。突如として、艦内に警報が鳴り響いたからだ。そして、たどたどしくアイザック達を艦橋に呼ぶアナウンスが行われる。現在”コロンブス”は、新兵訓練艦としても機能している。それゆえに、どこか艦全隊の動きが緩慢になっているのだろう。
「なんだ!?」
「これは……ブリッジに急ぐよ、カシン、セシル!」
「うん!」
「新兵の皆さんは、パイロットルームで待機ですよぉ!いざという時は、でてもらいますからねぇ!」
「りょ、了解!」
的確に新兵に指示を下した後、迅速に艦橋を目指して駆けていくアイザック達。それを見て、新兵組の紅一点ヒルダは呟いた。
「かっこいー……」
”ヴァスコ・ダ・ガマ” 艦橋
<ジョン大尉、これは何の警報ですか!?>
<落ち着いてください、アイク中尉。隊長、お願いします>
そう、警報を出したのは、”コロンブス”と並走する”ヴァスコ・ダ・ガマ”にいるユージだった。
今までずっと、彼が危惧していたこと。それが、運命通りに起こってしまった。しかし、まだ何か出来ることはあるはずだと思い、次の行動を開始するために”マウス隊”の主要メンバーを集めたのだった。
「来たか、お前達。早速だが結論から述べていこう。先ほど、国際救難チャンネルを通じて、”ヘリオポリス”の襲撃が知らされた」
<───なっ!?>
<嘘でしょぉ!?>
<”ヘリオポリス”は中立コロニーなのに……>
パイロット達からの動揺が聞こえてくるが、ユージはつらつらと自分達の計画を述べていく。
「中立云々は、我々が話し合うことではない。今話すべきは、我々がどう行動するかだ。
いいか?現在我々は、最もヘリオポリスに近い場所に位置している部隊だ。そして、“ヘリオポリス”には連合軍の開発した試作MSと、それらを運用するための母艦の完成品が存在するはずだ。連合軍は、一刻も早くそれらの安否をつかむ必要がある。そしてそれは迅速に行われるべきだ。何が言いたいかはわかるな?
───我々は新兵の教導任務を中断し、”ヘリオポリス”に向かう!」
<了解しました。進路変更、目標、”ヘリオポリス”>
<待ってください、新兵も乗せてですか!?>
「事は一刻を争う。ここで彼らを離脱させるために戦力を分散させるのは悪手だと判断した。……当てにしているぞ」
<隊長……わかりました>
「なお、この判断は全て私の独断であり、他の誰にも責任はないことを断っておく。
”ヘリオポリス”まではわずか半日の距離だ、各員、しっかりとスタンバっておけ」
そこまで言って、通信を終了させるユージ。シートに体を沈めると、息を吐き出す。
ついに、始まってしまった。『機動戦士ガンダムSEED』という物語が、始まってしまったのだ。ユージはここまで、少しはうぬぼれていいと自分で思っていた。
”テスター”やMS用のOSを開発したことで、だいぶ本来の筋書きからは外れているはずだ、運命は変わっているはずだ。現に、早期に開発が完了した”バスター”の活躍もあって、”カオシュン宇宙港”の防衛にも成功した。なんなら、『セフィロト』の建造に成功している時点でこの世界は変わっているはずなのだ。
なのに、それでも。こうして、『ヘリオポリス襲撃』は起こってしまった。変わらない運命というものを、突きつけられた気分だった。それとも、他に何かしていれば、この運命を変えられたのだろうか?
そんなことはわからない。だが、それでもわかっていることはある。
───関わることを決めた以上、もはや傍観は許されないということだ。
軍に入ることを決めたその時から、そんなことはわかっている。だから、やれることをやっていこう。
ユージは、慌ただしくなる艦橋内で指示を飛ばしていく。それが、今の『やれること』だった。
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”ヘリオポリス”跡 ”ヴァスコ・ダ・ガマ” 艦橋
「これ……は」
「酷い……」
モニターが映す惨状に、艦橋内で戦慄する声が響き出す。おそらく、”コロンブス”の艦橋でも同様だろう。
そこには、かつてそこにコロニーがあったという名残だけが残っていた。
そう、そこにもはや”ヘリオポリス”というコロニーは存在していないのだ。壊れたシャフト、打ち抜かれた外郭、宇宙に散乱する車や破壊された建物ばかりが、存在している。これが、この光景が、今から24時間以内に作り上げられた。誰が、そんなことを信じられるだろうか?
ユージも、これほどの光景を見たのは初めてだった。だが、同時に納得もしていた。
やはり、来ていたのだ。『ラウ・ル・クルーゼ』が。
全ての命に怒り、嘲笑う彼ならば、この光景を生み出すことに何のためらいもないだろう。他のZAFT兵なら、コロニーを破壊しないように配慮するはずだ。なぜなら、彼らが戦争を始めた理由こそ、自分達のコロニーを破壊された事に起因しているのだから。
もしかしたら自分が運命に介入した時点で、『かの船』の人事に変化を生じさせ、その人物が陽電子砲をコロニーにぶっ放したのかもしれない。そう、恐ろしいのは、ZAFTが原因で崩壊したわけでもないかもしれないということだ。物語が決められた通りに進んでいるようで、実は所々予定と違う箇所があるなんて、珍しくもないのだから。
とにかく、情報収集が必要だ。そう考えて指示を出そうとしたところで、リサがレーダーに何か捉えたようだ。
「これは……隊長、前方に熱源を確認しました。映像に出します」
そういってモニターに映し出されたのは、数機のMSと、”コロンブス”と同じマルセイユ3世級の工作艦。
特徴的なのは、船体に『ジャンク屋組合』のマークが張られていることだろうか。そして、その船の周りには。
特徴的な、『赤と青』のMSが存在していた。ついでにもう1機、”ジン”も青いMSの近くにいる。
なるほど、ちょうど
願わくば、
「こちらは、地球連合軍第8艦隊所属の”ヴァスコ・ダ・ガマ”だ。そこの船とMS、所属と目的を明かせ」
程なくして、通信が帰ってくる。ユージには予想が出来ていたことだが、モニターに映し出された顔を見てそれぞれの艦橋で驚愕が生まれる。
<こちら傭兵部隊『サーペントテール』、リーダーの叢雲劾だ。久しぶりだな、”マウス隊”>
<”マウス隊”ってーと……おいおいおい、連合のトップエース部隊じゃねえか!なんでこんなとこに……じゃない!劾、あんた知り合いかよ?>
<黙っていろ、ジャンク屋。今劾が話している>
ユージの想像通り、そこに映し出された顔は「叢雲劾」その人。このタイミングで乗っているMSということは、つまり『そういうこと』だろう。
そして劾側で通信を開いているのは、どこか陽気さを感じさせる男。
ユージの目には、彼らのステータスがありありと映し出されていた。
アストレイ ブルーフレーム
移動:7
索敵:C
限界:180%
耐久:220
運動:40
シールド装備
武装
ビームライフル:130 命中 70
バルカン:30 命中 50
ビームサーベル:150 命中 75
叢雲劾(Bランク)
指揮 10 魅力 12
射撃 14(+2) 格闘 16
耐久 11 反応 14(+2)
空間認識能力
アストレイ レッドフレーム
移動:7
索敵:C
限界:180%
耐久:220
運動:40
シールド装備
武装
ビームライフル:130 命中 70
バルカン:30 命中 50
ビームサーベル:150 命中 75
ロウ・ギュール(Eランク)
指揮 1 魅力 8
射撃 0 格闘 10
耐久 8 反応 4
イライジャ専用ジン
移動:6
索敵:C
限界:150%(イライジャ搭乗時200%)
耐久:100
運動:18
武装
マシンガン:40 命中 65
重斬刀:70 命中 70
頭部バスターソード:100 命中 50
イライジャ・キール(Cランク)
指揮 4 魅力 7
射撃 6 格闘 6
耐久 9 反応 7
なんだ、『運動40』って。
いや、たしかにPS装甲を盗用出来なかったから、装甲を軽くして機動力を上げたということは知ってる。だが、40?現状の連合で一番運動性の高い”デュエル”が32だぞ?いくらなんでもやり過ぎだろう。いるかどうかもわからない神に何かを言うなら、「調整しっかりしろ」だ。
そんなことを考えていたユージだが、今はそれどころじゃない、と気づき、劾との会話を始める。
「およそ、一ヶ月と少しか。さて、とりあえずこちらで話を聞かせてもらってもいいかな?我々も駆けつけたばかりでね、事情が知りたいんだ。そのMSのことも含めて、ね」
<……申し訳ないが、断る。次の依頼まで、そう余裕があるわけでは無いのでな>
この時点で、ユージの選択肢は二つある。
一つは、このまま劾達を見逃すこと。
そしてもう一つ。劾達から
考え込む素振りを見せながら、密かにアイザックと通信を開く。言葉は交わさず、文字だけでの密談だ。
(アイク、劾君達相手の勝算は?)
<(間違いなく、少なくない犠牲が出ます。あのMSの能力次第ですが、おとなしく引き下がるべきだと、僕は思います)>
(了解)
自分の切れるカードの中で最も高い能力を持つアイザックがそう言うなら、ユージとしては反論する必要は無い。
「そうか、わかった。こちらもこれから仕事なのでね、スマートにいこうか」
<即応、感謝する。行くぞ、イライジャ>
<ああ、わかった。じゃあなジャンク屋>
そう言って、『サーペントテール』は離脱していく。あの部隊を敵に回してまで得たい物など、存在するだろうか?今は、見逃すのがベストだ。
問題は、まだ残っている。
「そこのジャンク屋!お前達は別だ、こっちに来い」
<いいっ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!俺達はたまたまここに来ただけで、なんも悪いことはしてないぞ!>
そう、ジャンク屋御一行だ。今のところ、彼らを見逃す理由は何一つ無かった。ほとんど戦闘経験のないロウなど、アイザック達なら余裕で生け捕りに出来るだろうという概算もある。
「お前達の仕事については、特に言うことはない。だがな、そのMSは別だ」
<こいつが、何だってんだよ?>
「それに我が軍の機密情報が眠っている可能性もある。見過ごすわけにはいかないな」
<だったら劾にもそれを言えよ!?>
「民間人が持って良いものではないと言っている!アイク、発進だ。『ジャンク屋組合』には、後で言っておく」
<あー、待って、待ってくれ!こいつは、そう!”モルゲンレーテ”の秘密工場みたいな場所で、見つけたんだ!>
「……ほう?」
やはり、力の振りかざし所だったようだ。ロウも、流石にこちらと戦って勝てる見込みはないと判断したのだろう。べらべらと話し始めた。
<ちゃんと探してないから、多分まだデータとかも残っていると思う!頼む、見逃してくれぇ!>
「……どうしますー、たいちょー?」
「はん、論外だ。わざわざそんなところを調べなくても、目の前に実物があるんだ。捕まえて情報を吐かせたほうが良い。ですよね、隊長?」
アミカとエリクは、そう言ってくる。まあ、普通はそうだ。そうするのがベストだ。
───
「なるほど、わかった。くれぐれも、その機体の情報を漏洩するなよ?組合でも、情報漏洩は認められていないだろう」
「隊長!?」
<いいのか?ふいー、良かったぜ、話のわかる奴で>
そう言って、ロウと工作艦、たぶん”ホーム”だろう、が離脱していく。
「隊長、どういうことですか!データにはありませんが、あれは明らかに『ガンダム』です!見逃していいはずがありません!」
「落ち着けエリク。何も、考え無しにあいつらを見逃したわけじゃあない」
「ならなぜ……」
「まず一つ、『ジャンク屋組合』は参加しているジャンク屋が、戦闘行為の後にそこに残された物を回収することを認められている。これに従えば、彼らへ武力を行使することは我々の条約違反ということになる」
「ですが、あれには」
「もう一つある。……あの程度のやつら、後からいくらでも捕まえられる。長距離通信を使い、奴らのことを宇宙軍に周知させろ。そうすれば奴らがこちらの不利益になることをしようとしても、早急に対処できる。我々が今すべきことは、試作MSと試作艦の所在確認だ。それも忘れるな」
「……了解」
渋々、という様子でエリクは引き下がる。
ユージ自身でも、大分無理があるとはわかっている。いくら『ジャンク屋組合』が認可していても、限界という物はある。何かしらの理由を付けて、拿捕するのがベストだ。軍人である以上、そうするべきだ。
そうしなかったのは、後からいくらでも対処出来ること。そして、彼を放っておいた方が、色々と都合がいいからだ。
いくつか利点を挙げていくと、まず『ロンド・ギナ・サハク』を葬ってくれること。密かにオーブの世界制覇を目論む危険分子は、早々のご退場を願いたい。
更に、ZAFTが製造し、海に落としたレアメタルを回収し、『150ガーベラ』という形にしてくれること。ロマン云々を抜きにすれば、PS装甲以上の装甲になりかねない代物を、使いどころが限られすぎる形にして、盛大に「無駄遣い」してくれるのだ。連合が回収できるのがベストだが、それが叶わない場合の保険といったところだ。
他にも、メリットはいくつもある。デメリットになることもあるが、大局的に見れば世界のためと言える行為をしてくれるのだ。この場では見逃すのがベスト、ユージはそう判断した。
「とりあえずは目前の問題が解決したところで、次、だな」
ロウが見つけた”モルゲンレーテ”秘密工場の捜索、”アークエンジェル”や『ガンダム』の行方。更には、未だに救援が到着していないためにそこかしこに漂っている“ヘリオポリス”の救難ポッド。
それらにどう対処していくか、ユージは熟考を始めるのだった。
提督、緊急事態です!
試作兵器を製造していた中立コロニー”ヘリオポリス”がZAFTによって襲撃されたとのことです。
近隣を航行していた”マウス隊”が現在、調査に赴いています。報告をお待ちください!
ついに、ついに原作パートです!
ここから、更に物語が加速していきますよ!(たぶん)
あと、アストレイ組もちょこちょこ登場させていこうと思います。
実はカオシュン攻防戦の後、アイザックを除く『マウス隊パイロット宇宙組』は1階級昇進してます。
つまり、アイザックとカシンは中尉、セシルが曹長ですね。
それと今更ですが、PS装甲のアビリティ的説明をしますね。
PS装甲
毎ターン10%のENを消費する代わりに、実体攻撃のダメージを80%軽減させる。
もちろん本編での扱いはこれに限りませんけど、『もし』ゲームだったら、こういうアビリティになるだろうな、私ならする、という妄想です。
ていうか、ほんとにPS装甲を設定通りにすると、ZAFTをハードモードにしすぎる気がするんですよね。まあ、二次創作で何言ってんだって話ですけど。
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。