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『セフィロト』 ”マウス隊”オフィス
「ん、酸味が強いな……だが癖になる味だ」
「お気に召しましたか?」
「あぁ。流石だな、フィー少尉」
目の隈が殊更に目立つようになってきたユージ・ムラマツはホッと息を吐き、コーヒーを煎れてくれた女性、長い黒髪が特徴的なフィー・マンハッタンに礼を述べた。
本来の任務は以前スパイ行為が発覚したアグネスの監視役という彼女だが、意外なことに曲者揃いの”マウス隊”の空気にも自然に溶け込んでいた。
空気の読み方、あるいは距離感の見極めの能力が長けている彼女は、時に親身に、時に事務的に隊員達と接することが出来る。流石に専門的なことでは話に混ざれないことも多いが、十分にコミュニケーションが取れていると言えよう。
そんな彼女だがコーヒーには拘りを持つらしく、ガブガブと得用コーヒーをかっ喰らうユージの姿は気に障ったらしく、こうして私物のコーヒーメーカーを用いて煎れたコーヒーをユージに馳走していたのだ。
「今回はグアテマラに比重をおいて配合してみました……」
「なるほど、どうりでフレッシュな甘みも感じるわけだ。デスクワークにうってつけだな」
「隊長はコーヒーの知識をお持ちなのですか?」
「最近は余裕が無いからやっていないが、凝った時期があってね。最低限の知識は身についたよ」
「そういえば、長期休暇で世界を巡る美食家な面もあるのでしたね……」
和やかに会話を続けるユージとフィー。───だが、ユージは心の中の僅か1%で彼女に警戒を抱いていた。
フィーのコミュニケーション能力は極めて優れている。
単純な人柄や性格では済まない、明らかに訓練を積んだ者の
証左として、先ほどフィーが述べたユージの趣味に関して、実際に話したことのある人間は少ない。彼女は類い希なる会話術で”マウス隊”各員から情報を引き出し続けているのだ。
(今は世間話のネタ程度で済んでいるが……アグネスの監視ついでにこちらの情報を引き出したいのか?)
連合軍も、けして一枚岩ではない。連合軍のトップエース部隊である”マウス隊”から情報を引き出したがっている勢力は数知れずだ。
フィーのバックに付いている勢力が何処かは知らないが、このような搦め手を使ってくる時点で一物抱えていることは明らかである。
信用と信頼のバランスが難しい曲者、それがフィー・マンハッタン特務少尉という女性だ。
(とは言え、露骨に損得勘定をしだすような人間でもないし、今のところは下手を打たないよう気を付けるくらいか)
少しの思案の後、ユージは現状維持を選択した。
隊員達の中にもフィーの特異性に勘づいている者はおり、彼らは各々のやり方でフィーとのコミュニケーションを成立させている。
万全に管理された爆弾、というのが現段階のフィーの扱いだ。間違いを犯さなければ爆発はしないが、それでも油断は出来ない。
今は、ただ仲間として接するのが最適解だ。
「美食家というほどではないが……フィー少尉のコーヒーは美味い。こんなコーヒーを飲みながら平和に仕事が出来ているのは、前線の兵士に申し訳ないくらいだ」
「平和……ですか」
チラリと、フィーはユージから視線を外す。
「ふはははははっ!見よ、これこそがC.Eに誕生した初のアーマード・トルーパー、”聖帝印のスコープ・ドッグ”である!」
「すげぇぇぇぇぇぇっ!かなりスコタコ*1だよこれ!」
「あ”あ”あ”あ”あ”、ローラーダッシュの音ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
「まぁ戦闘とかは流石にさせられないですけどねー」
「聖帝は引かぬ、媚びぬ、顧みぬ!そんな些事は知らんな、ふはははっ!」
「……ん、なんか焦げ臭くね?」
「おい、エンジンから火ぃ吹いてんぞ!?」
「煙ってやがる、安物使いすぎたんだ……!」
「皆下がれ、聖帝擬きが爆発する!」
「───ほぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「それ銀河万丈じゃなくて玄田哲章───あ、資材置き場に突っ込んだ」
「ビーム砲だ!」
「ドリルだ!」
「今の技術力で『ゲッター』を名乗れるドリルが作れるわけないでしょ、いい加減に現実を受け入れなさい!」
「やだぃやだぃ、絶対”CG-02”にはぶっといドリルを積むんだぃ!」
「実用性って言葉はご存じ?」
「うるせー、知らねー!大体実用性とか言い出したら『MSって本当に人型で良いの?』とかに発展するから無しってこないだ決めただろうが!」
「……どうやら、私達は相容れないようね」
「ふん、そんなもの最初から分かっていたことだろう。こうなったら決着の方法は1つ……」
『───
「アグネス・T・パレルカ、貴様、盛ったな!?」
「体がなんかポリゴンショックみたいなことになってるじゃねぇか!───いやホントに何飲ませた!?」
「発光するだけならまだマシでしょ!あたしなんか、髪を自在に動かせるようになったわよ!」
「あーっはっはっはっは!徹夜テンションで作ったものだから覚えてないねぇ!」
『ザッケンナコラー!』
「……へい、わ?」
「平和だろ?」
「……一度、精神科に罹ることをオススメします。それではごゆっくり、私はアグネスさんを制裁してきますので」
「あぁ」
その後、ユージは電流を流される女性の悲鳴をBGMに心ゆくまでコーヒーを堪能し、そして。
───”マウス隊”管轄各所の惨状に頭を抱えるのだった。
『セフィロト』通路
「まったくあいつらは……思わず現実逃避してしまったじゃないか」
「慣れとは恐ろしいものね」
「君も先ほどノリノリで騒動の中心に立っていたような気がするんだが」
「しょうがないじゃない、物わかりが悪いんだもの」
悪びれない恋人に「泣けるぜ」と何処ぞの合衆国エージェントのように頭を振り、ユージは歩みを進める。
オフィスのゴタゴタを片付けた彼は、マヤを伴って『セフィロト』の第1ポートに向かっていた。
「しかし、ようやく第1艦隊が復活するのか。多少は胸が熱くなるな」
「第4、第8以外の艦隊は軒並み機能停止状態にあったわけだからね。これでようやく、宇宙でも打って出ることが出来る」
現在、連合軍はZAFTに対する大規模反攻作戦の準備に勤しんでいる。
『セフィロト』も地球衛星軌道上を制圧しているZAFT艦隊を撃滅するための最前線として機能しており、今日も、月での再編成を終えた第1艦隊を受け入れるための作業の真っ最中だ。
連合宇宙軍の主力である第1から第3までの艦隊は戦争初期にZAFTによって大損害を負わされており、実質名前だけ残った壊滅的有様となっていた。第1だけとはいえ復活したのは、連合宇宙軍にとって朗報と言う以外に無い。
「腹が立つほど要領良いんだよな、あいつら……」
「好き放題やってるように見えて自分達で負える責任の範疇で事を済ませるようにするのは、技術屋にとって必修よ」
先ほどの騒動を思い出しながら、ユージは溜息を吐いた。
盛大に資材置き場に突っ込んだ“スコープドッグ”に似せた人型作業用機械も、一部の隊員が小休止の合間に趣味で作っていた物だが、これについて出費はほぼ存在しない。
何故なら、制作を主導している研究員のヴェイクの「ジャンク品から作り出せてこそ”スコープドッグ”よ!ふはははははっ!」という拘りによって、本来の研究の過程で生み出されたジャンク品ばかりを使っているからだ。
余り物の野菜を分けてもらう感覚で軍の備品を使わせるのは問題ではあるのだが、如何せん許可が降りている以上は認めざるを得ない。
「どや顔を決めてる所を悪いが、君も騒動の渦中にいた側だということを忘れるなよ。……まだ決まっていないのか?」
「いえ、その……既に決まってはいるのだけど、拘りの強い一部のメンバーが、ね。発作のようなものだから気にしないで」
「そういうものか……」
マトモに考えるだけ時間の損だと悟ったユージは、適当に会話を打ち切った。
彼らが言及しているのは『CG計画』で開発されている2号機の装備についてだ。
2号機は”真ゲッター2”、ご存じ片腕がドリルとなっている高速戦闘に適正があるスーパーロボットをモチーフとしているのだが、現実的に考えてしまうとどうしてもドリル要素が脚を引っ張ってしまうのだ。
百歩譲って真面目に搭載する価値があるドリルの開発に成功したとしても、物理攻撃を無効化してしまうPS装甲を相手に役に立たない程度の性能が求められる。
やたらと長い議論の果てにたどり着いた結論は、「ドリルのように高い貫通力を持つビーム兵器を搭載しよう」というものだった。
「威力は十分な筈なんだけど……やっぱり消費電力が、ね」
「難しいか……」
「えぇ。いっそのこと武器自体にバッテリーを付けようかって話にもなっているんだけど、今度はかさばって……」
このように、開発は難航しているのだった。
一応の完成を見ている1号機”ファルコン・ガンダム”は勿論のこと、3号機に相当する機体ですら既に完成しているというのに、である。
もっとも、3号機に関してはそこまでエネルギー消費を気にする必要が無かったということもあり、実は”ファルコン・ガンダム”よりも早くに完成していたりする。首尾良く進めば、次の戦いの時にはお披露目できるだろうとユージは踏んでいた。
「……どうにか、手に入れられたりしないかしら、『Nジャマーキャンセラー』」
「出来たらとっくにやってるさ」
「そうよね……はぁ」
ユージの持つ『原作』の知識に縋ってみるマヤだが、このやり取りも既に何度も行なわれたものであり、不毛とわかりきった問いだった。
可能性があるとすれば、既に開発に成功している筈のZAFTから奪取するくらいのものだが、最高機密であろうNJCを奪取するのも無謀な試みである。
ままならない現実に揃って肩を落としつつ、ユージは腕時計に目を向けた。
「ん……そろそろか。急ぐぞマヤ、もう少しで第1艦隊が到着する」
「余所に見せられない隊員達に代わってイベントに出席……中間管理職の辛さが少し分かってきたかも」
「ご理解いただけて何よりだ。さ、ペース上げていくぞ」
『セフィロト』第1ポート
ユージ達が到着して間もなく、ゲートを通過してその艦は姿を現した。第1艦隊旗艦の”ペンドラゴン”だ。
ペンドラゴン
移動:7
索敵:A
限界:180%
耐久:900
運動:9
搭載:6
アンチB爆雷
ラミネート装甲(ビームダメージ25%軽減)
武装
主砲:350 命中 60
副砲:200 命中 55
ミサイル:120 命中 50
機関砲:80 命中 40
陽電子砲:500 命中 50(砲撃武装)
全長500mを超える”ペンドラゴン”は西暦1900年代初頭に登場したドレッドノート級戦艦を思わせる縦長の艦体に合計6基の『ゴッドフリートMk.71』を備え付けており、連合軍が保有する艦艇の最大火力を大きく更新している新型宇宙戦艦である。
他にも多数のミサイル発射管や対空機銃を備える、新型のラミネート装甲を用いる等々、開発を主導した大西洋連邦の威信を賭けた本艦の最大の特徴は、なんといっても艦首に備わった陽電子砲『コールブランド』だろう。
”アークエンジェル”に搭載された『ローエングリン』で得られたデータを基に開発されており、ただでさえ強力な陽電子砲を更にパワーアップさせたこの装備は、今後の大規模艦隊戦で大いに活躍することを期待されている。
「正に、宇宙戦艦だな」
「1隻だけでも十分勇壮ですが、本来なら3隻あったかと思うと溜息が出ますね」
「まったくだ」
本来は同時期に建造が進められていた2番艦”ガウェイン”と3番艦”ランスロット”も就航している筈だったが、『三月禍戦』の折に拠点に潜入したZAFTの破壊工作を受けてしまっていた。
”ペンドラゴン”は建造スタッフ達の奮闘によって守られたが、この2隻は本戦争中には間に合わないだろうと見られている。
完成していれば大きな戦力となるのは確実だっただけに、残念に思う兵士は多い。
「───本っ当にそう思いますよ。クソッタレ共のせいでケチが付きました」
「おおぅ、いつの間に」
2人の背後からカルロス・デヨーが忍び寄り、ZAFTに対する怒りを露わにする。
本格的な艦隊運用の術を学んでいないユージに代わって”マウス隊”の3隻の艦艇を取りまとめる彼は、MSによる機動戦全盛期に艦隊戦を挑みたがる変わり者だ。
しかし、以前に”デュエル改”と”バスター改”が鹵獲されかけた一件では艦隊を見事に運用して事態を乗り切ることに貢献しており、能力の高さは疑いようもない。
「ああ、思い出すだけでムカムカしてきます。”ガウェイン”と”ランスロット”、完成していれば3隻による一斉射でZAFT艦隊など一捻り……いや、粉砕する素晴らしい光景が見れたのに」
「合計18基の『ゴッドフリート』の一斉射か、たしかに要塞とかでなければ大抵のものは粉砕出来そうだ」
「でしょう!?MSの戦場における役割の重要性は重々理解していますが、火力を発揮する要因として戦艦を充実させないなど愚の骨頂!何より敵を物ともせず悠々と宇宙を進む戦艦の姿は友軍を鼓舞する意味でも……」
「分かった、分かったから。ほら、停泊してしばらく経ったからそろそろ提督がお見えになるぞ」
カルロスがこの調子で話し出すとキリがないことを理解していたユージは適当に話を切り上げつつ、”ペンドラゴン”以外の艦艇に目を向けた。
連合軍の主力艦である”アガメムノン”級は確認出来た限りでも6隻は存在しており、その全てがMS発進用カタパルトを前方に備えた後期型となっている。
”ドレイク”級、”ネルソン”級といった旧式艦も軒並み改修されており、“ドレイク”級は”マウス隊”で運用されている”ヴァスコ・ダ・ガマ”、”バーナード”の2隻同様に『バリアントMark9』を増設して火力を向上させている。
”ネルソン”級は連合軍の主力戦艦でありながら旧式化してしまっていたものの、大型ビーム砲や単装副砲といった主立った火力要因を大型化するなどのアップデートが施されており、火力だけは戦艦の名に恥じないものとなった。
以前にカルロスが解説していたが、MSどころかMAの運用能力さえ取り払い、その容量を使って武装のアップデートが進められたらしい。
MS全盛期とは思えない、大艦巨砲への回帰を”ネルソン”級は果たしたのだ。
(『原作』だと、どの艦艇もMSを運用出来るよう改装されていたっけな……これも俺の行動の影響ってことか?)
”ドレイク”級も”ネルソン”級も、『原作』の『destiny』時代においては本来運用出来ないMSを運用出来るようにする改造が施されていた。艦自体の能力が向上してはおらず、『原作』の地球連合軍はMSやMAの数に物を言わせる物量戦に舵を切ったのだと考えられる。
しかしこの世界ではZAFTの快進撃が早々にストップしてしまい、連合軍も冷静に自軍の戦力を整理することが出来た。
このおかげで『原作』同様にZAFTを物量で上回りつつ、多様な戦力を揃えることにも成功しているのだ。
(まぁ、一番驚いたのは
ユージが次に視線を向けたのは、”ペンドラゴン”に並んで入港してきた、
ドミニオン
移動:8
索敵:A
限界:170%
耐久:600
運動:12
搭載:8
アンチB爆雷
ラミネート装甲(ビームダメージ25%軽減)
武装
主砲:180 命中 60
レール砲:120 命中 50
ミサイル:80 命中 40
機関砲:50 命中 40
陽電子砲:300 命中 40(砲撃武装)
メタトロン
移動:8
索敵:A
限界:170%
耐久:600
運動:12
搭載:8
アンチB爆雷
ラミネート装甲(ビームダメージ25%軽減)
武装
主砲:180 命中 60
レール砲:120 命中 50
ミサイル:80 命中 40
機関砲:50 命中 40
陽電子砲:300 命中 40(砲撃武装)
2番艦”ドミニオン”、そして3番艦”メタトロン”。
『原作』にも”ドミニオン”は登場しているが、ネームシップである”アークエンジェル”が連合軍から離反した上に”ドミニオン”も撃沈されるなどの理由があり、以降の同型艦は開発されていない。
しかしこの世界で”アークエンジェル”は離反するどころか各地で戦果を挙げ続けており、なおかつ実験艦として性能の高さを証明し続けてもいるため、3番艦以降の同型艦も建造が決定している。
”メタトロン”は”アークエンジェル”では赤く塗装されていた箇所を蒼く染めており、なおかつ”ドミニオン”と艦橋が同じ形状をしている。
センサー類の能力が”アークエンジェル”より強化されているという設定に従ってか、”アークエンジェル”ではBだった索敵能力がAとなっているのが明確な差別点か。
「いいなぁ、”アークエンジェル”級……」
「”マウス隊”には配備されたりしないんですかね?」
「ただでさえ予算取りまくってるのに”アークエンジェル”級まで回されたら、却って申し訳ないくらいだよ。カルロスはどう思う?」
「自分は”コロンブスⅡ”でも構いませんよ。なんというか、個人的にあの見た目は気取ってる気がしてあまり好みではないので」
あの2隻は次の作戦に参加した後に、アフリカでの”アークエンジェル”と同じように宇宙で敵補給線への攻撃などの任務に就くことになっている。
単艦で出来る事の幅が広い”アークエンジェル”の運用法としては最善だろう。
ユージ達がそのようなことを話していると、“ペンドラゴン”の乗降口が開いて中から老人と年若い少女がタラップを使って降りてきた。
第1艦隊司令のウィリアム・B・オルデンドルフ中将と、その弟子であるリーフ・W・ウォーレス少尉だ。
ウィリアムはリーフの才能を高く評価しているらしく、18にもならない彼女に”ペンドラゴン”の艦長を任せようとしていたのは連合軍内でも物議を醸しているらしい。
ウィリアム・B・オルデンドルフ(ランクS)
指揮 18 魅力 16
射撃 7 格闘 0
耐久 7 反応 5
得意分野 ・指揮 ・魅力
不得意分野 ・格闘
リーフ・W・ウォーレス(ランクC)
指揮 14 魅力 10
射撃 7(+2) 格闘 5
耐久 7 反応 7(+2)
空間認識能力
得意分野 ・指揮 ・魅力 ・射撃
「1月ぶりだな、ハルバートン君」
「久しぶり、というには短すぎますかな。月はどうでした中将?」
軍大学でウィリアムから教えを受けたハルバートンが一歩前に出て握手を交わす。
仲が悪いどころか良い方ではあるが、スタンダードな艦隊を主軸とするウィリアムと、MSによる機動戦を主軸とするハルバートンは議論を白熱させやすいため、周りの士官が咄嗟に諫められるように待機しているのがユージには少し可笑しく思えた。
「まぁ、悪くは無かった。兵士達の士気は旺盛で周辺施設も拡充している、何より質の良い紅茶を安定して手に入れられるのが良い。───おかげで、納得いく艦隊に仕上げられたとも」
「それは良かった。次の作戦は大物取りとなりますが、覚悟はよろしいですかな?」
「望むところだ。”ゴンドワナ”と言ったか?」
「えぇ。ZAFT側の司令官はクロエ・スプレイグ……かつてあなたの愛弟子だった者です」
「くっくっく……まさか
クロエ・スプレイグは戦争初期のZAFTの攻撃作戦の多くを成功させてきた名将と言われている女性将校だ。ハルバートンが言うには、彼女もウィリアムの愛弟子らしい。
つまりウィリアムは次の戦いで、弟子と共闘して別の弟子と戦うという奇妙な体験をすることになるのだ。そのことに気付いて笑っているのだろう。
「提督、そろそろ……」
「ん、そうだな。それではこちらへ、オルデンドルフ中将」
「うむ」
ハルバートンの副官であるホフマンが耳打ちをする。時間が押しているということだ。
そう、時間が無いのだ。
本来であれば、第1艦隊の再編計画には第8艦隊との演習も予定に含まれていた。それを短縮してまで”ゴンドワナ”撃破のために動き出したのは、ZAFTの一大作戦を察知したためである。
(ようやく連合軍も『ジェネシス』の存在と恐ろしさを理解したということだな……)
刻一刻と世界の危機が迫っていることを、ついに世界が認識し始めた。
大きな時代の
提督、司令部より『オペレーション・ブルースフィア』への参加を要請されました!
この作戦は、ZAFTに支配されたハワイの奪還と、衛星軌道上を制圧しているZAFT艦隊を撃滅することを目的としています。
作戦が成功すれば、地球上におけるZAFTの勢力を大きく削ぐことが出来るでしょう。
参加を検討してください!
『オペレーション・ブルースフィア』 必要資金 5000
参加しますか?
Yes ←
No
大変お待たせしました。
ようやく、『パトリックの野望』当初のコンセプトに沿った大規模作戦を書けそうです。
色々な兵器や人物が出てくるターニングポイントとなる予定ですので、楽しみに次回をお待ちください!
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。