機動戦士ガンダムSEED パトリックの野望   作:UMA大佐

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明けましておめでとうございます!(遅)
今年も「パトリックの野望」をよろしくお願いします!

今回の話には原作アストレイシリーズにおける独自解釈が多大に含まれておりますのでご注意ください。
あくまで、私個人の解釈です。


第120話「太陽の鋼」

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『セフィロト』通路

 

「……今度は暗号化した回覧板か」

 

「まさかアナログに紙面でやり取りするとは予想外だったわね……」

 

気怠げな顔で通路を進むユージとマヤ。

突如として舞い込んだ、『ロウ・ギュールから何かが届いた』という報せを受け、その『贈り物』とやらを調べるために彼らは歩いているのだが、その過程で技術者達が勝手に独自の通信網を、それも一度潰したにも関わらず再度作り上げていたことが発覚したために頭を抱えているのだった。

追従するエドワード達は、『また敵より味方の行動に悩まされてんな』と、何処か諦観を感じさせる表情でユージを見つめていた。

 

「何気ない日常的やり取りの合間に暗号を挟めるやり口、発案者はイギリスエリア出身の可能性が大ね。皮肉とか考えさせたら右に出る人種はいないもの」

 

「言葉遊びの腕を磨くより先に、昼食と晩食をマトモにする努力を奴らはだな……」

 

「───ん、勇治(ユージ)か」

 

曲がり角から姿を現したのは、動きやすさを重視した和服に身を包んだ老人だった。

連合軍の制服を着ていないことはともかく、どう見ても軍属とは見えないその老人はユージに気付くと親しげに声を掛ける。

 

「おう。『ピュアーライト』の調子はどうだ?」

 

「所詮は『ガーベラストレート』の焼き直し、道具が揃っている以上は滞るものか。もうほぼ完成しとるよ」

 

「流石だな」

 

「あの……隊長?そちらのご老人は……」

 

おずおずと尋ねるレナ。

地上から帰還したばかりの3人は初対面だったことに気付いたユージは、苦笑しながら紹介する。

 

「そういえば、お前達は初対面か。村松清十郎(むらまつせいじゅうろう)、4月から“マウス隊”で協力してもらってる民間協力者であり、俺の祖父だ」

 

「うむ、世話になっておるぞ」

 

老人の正体は、ユージの祖父であり、この世界においては()()『ガーベラストレート』の原作者でもある清十郎だ。

連合軍とZAFTが休戦していたユージが、東アジアに隠居していた彼を連れてくることに成功していたのである。

当初は戦争に自分の技術が使われることを恐れて乗り気ではなかった清十郎だが、ZAFTが『三月禍戦』を起こしたことを知り、『このままでは今以上に取り返しが付かない事態になる』と奮起してユージの誘いに乗ったのだ。

 

「公的な扱いとしては、実体刀剣製造のプロフェッショナルということになっているな」

 

「所詮は微力の老いぼれだが、よろしく頼む」

 

「よろしくお願いします。ところで、『ピュアーライト』とは?」

 

レナの疑問にユージが説明を始める。

『ピュアーライト』とは清十郎の能力と実績を示すサンプルとして作られた、二振り目の『ガーベラストレート』のことだ。命名の由来は『加州清光』からきている。

名前が違う以外の差異はほとんど存在しない、言うなれば『原作者』直々に作った『ガーベラストレート』のコピー。

連合軍勝利のために役立つことは間違い無いだろうと、ユージは考えていた。

ちなみに、この『ピュアーライト』を製造する過程で得られた技術の一部が流出し、後期GATシリーズのとある武装の開発に用いられていることをユージが知るのはもう少し後のことである。

 

「実体剣か……なあ隊長、俺に試しに使わせてみてくれよ」

 

『切り裂きエド』として名を馳せるエドワードが目を輝かせながら言うが、ユージの答えは「NO」だった。

 

「残念ながら、お前の思っているものとは違うと思うぞ。日本刀は、重さで断ち切るようなものじゃないからな」

 

「十全に扱うには特殊な技術が必要なのよ。試しにモーションデータを組んでるけれど……エドの適正には合ってないわね」

 

エドワードが好んで使う対艦刀、そして斬艦刀は、それぞれに多少の差異はあれども敵機を質量で叩き潰すための武装だ。

大胆なように見えて細やかなテクニックが感じられるエドワードの剣だが、向いている武装ではないのは間違い無い。

それを説明されて肩を竦めるエドワードを脇目に、話を続けるユージ。

 

「モーションデータの方はどうだ?」

 

蘊・奥(ウン・ノウ)氏の協力もあって進んではいるけれど……奥氏も言っているとおり、パイロット自身が刀を使えなければ思ったものにはならないでしょうね」

 

今回の『ピュアーライト』開発には、『グレイブヤード』の番人である蘊・奥も協力している。

宇宙に上がった後に清十郎が『グレイブヤード』に向かい、旧知の2人は再会していた。

そしてかつての仲間達の墓に線香をあげた後に、奥を説得した。

 

『儂はこの戦争を終わらせたい。頼む、力を貸してくれ』

 

そう言って深々と頭を下げた清十郎の頼みを、奥は承諾した。奥も、今の世界を放置していいものでは無いと思っていたのだ。

とは言え、奥の協力があっても簡単に習得出来るようなものでもないのが、刀を振る、ということだった。

───前途多難、だな。

ユージは肩を竦めた。

 

「ところで、爺さんは何処に行くんだ?」

 

「ん、技術者同士の秘密回覧板に載ってた『贈り物』とやらを見に行く途中だが」

 

「……爺さん、あんたもか」

 

 

 

 

 

『セフィロト』 第8格納庫

 

「おっ、隊長。遅かったな?」

 

「誰のせいだと思ってるんだ貴様ら……」

 

怒りと疲れが混ぜこぜになった表情で、変態四天王筆頭ことアキラ・サオトメを睨むユージ。

既に”マウス隊”に所属する技術者のほぼ全員が、ロウ・ギュールからの『贈り物』と思しきコンテナを取り囲んで中身について議論していた。

 

「貴様らには後でたっぷりと話を聞かせて貰うが……今は、こっちが先だな。危険物ではないのか?」

 

「金属反応は出てますけど、それ以外はなんとも……でも、流石に危険なものを送ってくるとは思えませんがね」

 

たしかに危険なものではないかもしれないが、とユージは頬を掻く。

ロウ・ギュールが技術者達と仲が良いことは知っていたが、わざわざ軍事基地に送ってくるような代物となると、警戒せざるを得ない。

 

(参った……『アストレイ』シリーズは『ときた版』しか読んでないから、イマイチ知識が穴抜けなんだよな)

 

前世ではそれなりのガンダムオタクだった自負はあるユージだが、それでもカバーしきれないのが、長い歴史を誇るガンダムシリーズである。

とりわけ『アストレイ』シリーズは媒体が複数存在しているために、一番メジャーな『ときた洸一』による漫画シリーズしかユージは読んでいなかった。

よって、何の手がかりも無しに中身を推察することは難しかった。

 

「そもそも、ロウ・ギュールは何処からこれを送って来たんだ?」

 

「『ギガフロート』からですね」

 

更に顔を顰めるユージ。

『ギガフロート』とは全長10㎞に及ぶ移動可能な人口島であり、民間マスドライバー施設を保有している重要拠点だ。

マルキオ導師と呼ばれる有力者が主導して『ジャンク屋組合』が作ったこの施設だが、戦略的価値の高さからZAFT、そして地球連合の両軍から襲撃を受けていることがユージの顔を顰めた原因である。

 

というのもこの『ギガフロート』、当然ながらマルキオ導師や『ジャンク屋組合』の資金力だけで建造出来るものではない。

数々のスポンサーが付いて計画が開始したものであり、その中には最大勢力である地球連合軍も参加しているのだ。

つまり、地球連合軍の視点で言ってしまえば、金だけ払って『ジャンク屋組合』に『ギガフロート』を持ち逃げされてしまったということになる。

 

「まあ、地球にいるなら一番安全に宇宙に物を送れるのは彼処だけでしょうし、そもそも彼も『ジャンク屋組合』の一員です。都合が良かったんでしょうね」

 

「うーん……連合軍人としてはなんとも言えんな」

 

「『ギガフロート』のことなら、上層部の自業自得だろう。いくら金を出してようが、計画の主導者はマルキオ導師だ。その彼の意向に背いて軍事力で接収なんてしようとするから、あんな事になるんだ」

 

肩を竦めるアキラ。

どんな背景があったとしても、結局連合軍がやろうとしたことは『武力を用いた民間施設の強制接収』でしかない。

その結果が『ジャンク屋組合』の態度硬化と国際世論悪化であり、これを簡単に解決する方法は存在しないのだ。

取り消せない上層部の失態に溜息を吐くも、本題からずれていることに気がついたユージに、アキラが何かを手渡す。

 

「そういえば、ロウ・ギュールからの手紙が付属していたぞ」

 

「……見せてくれ」

 

 

 

 

 

久しぶりだな、”マウス隊”の皆!

隊長さんは今も胃薬欲しくなる顔してんのか?

人も機械も同じで、無茶し過ぎ、させ過ぎは良くないぜ!

 

俺は今『ギガフロート』を拠点に色々と活動してるんだが、面白いものが手に入ったんだ!

たぶんZAFTが事故って宇宙から落とした物なんだろうが、紆余曲折あって今も俺が持ってる。

 

で、これを使って、見た奴の度肝を抜く代物を作ってやろうと思って設計してたら、少しだけ余ることが分かったんだ。

倉庫の隅で保存しておいても良かったんだが、せっかくだからお裾分けしようと思ってよ……余った分は全部そっちに送った。

そんなに量は無いから大丈夫だと思うが、念のため言っておくと軍事利用とかは止めてくれよ?

 

それじゃ、出来上がったら見せに行くぜ!

その時はよろしくな!

 

ロウ・ギュールより

 

 

 

 

 

「これはまた……厄ネタか?」

 

「紆余曲折ってことは、たぶんZAFTとやりあった可能性あるよな……流石の悪運だな」

 

「”レッドフレーム”を手に入れた時も、僕達が他のことに手一杯だったって幸運に恵まれてるしな……」

 

技術者達が手紙に書かれていた内容について思い思いの感想を述べていく中、ユージは1人だけ得心していた。

宇宙からZAFTが落とした代物となればある程度内容は絞り込めてくるし、ユージの想像が当たっていればの話だが、彼の知りうる『知識』の中にも該当する物が1つあった。

 

「……よし、開けてみよう」

 

「いいんですか?」

 

「勘でしかないが、たぶん安全なものだ」

 

普段ならば念に念を重ねたチェックをしようとする筈のユージが軽い態度でいるのを、訝かしむ技術者も数人いた。

だがこの場では好奇心が勝ったこと、そしてユージに対しては全幅の信頼を置いていたこともあり、コンテナを開封する。

果たして、そこに収まっていたものは、何かの金属の塊だった。

それは、ユージの想像に合致するものでもある。

 

(……やはり、レアメタルか)

 

『原作』において、ロウ・ギュールはZAFTが紛失した何かしらのレアメタルを取得している。

そのレアメタルを使って150mサイズの日本刀『150(ワンフィフティ)ガーベラ』を作り出したのだ。

手紙の中に記されていた『見た奴の度肝を抜く代物』とは、ほぼ間違い無く『150ガーベラ』のことだろう。

ユージが頷いていると、金属を調べていた技術者の1人が奇声を挙げる。

 

「こ、れ、は!?」

 

「どうしたウィルソン?」

 

変態四天王の1人であり、密かに他の3人と比べれば影が薄いことを気にしている彼。

ウィルソン・A・ティブリスは尋常ならざる様子で、金属の正体を告げた。

 

「これは……『ソル・チタニウム』じゃないか!?」

 

 

 

 

 

「『なぜなに”マウス隊”』のお時間ですゴラァ!」

 

急遽運び込まれたホワイトボードに手を叩きつけつつ、ウィルソンが叫ぶ。

普段は物静かなウィルソンの変貌は、その場を()()()()会議多発地帯へと変貌させた。

 

「ウィルソンの奴、なんか変なものでも食ったのか?キャラ崩壊してるじゃないか」

 

「きっと影が薄いことを気にして、はっちゃけちゃったんだよ。高校デビュー失敗みたいな感じになってるけど」

 

「でも、なんだかんだあいつも目立つ奴の影でできる限り好き勝手する側だったろ?なんで今更キャラ変する必要があるんだ?」

 

「そこぉ!話は黙って聞け!それと影の薄さは別に気にしてない!してないったらない!」

 

一喝して周囲を静めるウィルソン。

ごほん、と一息吐いてから彼は話し始めた。

 

「失礼、テンションが上がりすぎてしまいました。ただ、このレアメタルがそれだけヤバいものだということは察して貰えたかと」

 

「『ソル・チタニウム』とか言ってたよな?聞き馴染みが無いんだが、何が凄いんだ?」

 

『原作』ではレアメタルとして表記されておらず、この金属の具体的内容についてユージが知ることは少ない。

分かっているのはZAFTが製造したものだということ、そしてMSの装甲に使われた場合は、撃破が極めて困難な機体が出来るということだけである。

ユージの疑問に、ウィルソンは説明を始める。

 

「『ソル・チタニウム』は、近年になって宇宙空間で発見されたレアメタルです。一つの隕石から採れる量は少なく、サンプル数の少なさから具体的性質も判明していませんでした。しかし、太陽に近ければ近いほど、隕石から採れる量も質も上がっていくということが分かったんですよ」

 

「太陽の近くで……だから、『ソル(太陽)・チタニウム』か」

 

「はい。まだ仮説段階ですが、太陽風の影響を受けて変質したのではないかと言われています」

 

続けて、ウィルソンは『ソル・チタニウム』の更なる性質について話し始めた。

太陽の名を持つこのレアメタルは別名『適応金属』と呼ばれており、与えられた衝撃に応じて自らを構成する分子構造を変化させる性質をも兼ねていた。

衝撃を与えればその衝撃に適応して硬度を増し、熱を加えれば熱に強くなる。

熱については元から太陽風の影響を受けているのだから当然と言えるかもしれないが、低温環境下ですら適応して分子構造を変化させた時、実験していた技術者は、掛けていた眼鏡が体の震えで落ちたことにも気がつかなかったほどのショックを受けたという。

 

「……ちなみに、もしもMSや戦車の装甲に使われた場合はどうなる?」

 

「そうですね……内部機器の摩耗だとか、搭乗するパイロットの問題を考慮しなければ……極めて破壊困難、一見して『無敵』のMSが出来上がるかと」

 

ユージは『ソル・チタニウム』の特性が明かされていくほどに、自分の心胆が冷えていくのを実感していた。

予め、知ってはいた。

”ロードアストレイΩ”。支配者の遺伝子を持った男が設計した、『王道(ロード)』の名を持つ異端の”アストレイ”。

『ソル・チタニウム』を用いた装甲を搭載したこの機体は、それ1機で戦争の抑止力になりうるとさえ言われていたのだ。

もしもロウがこれを取得して150ガーベラという形で盛大に『無駄遣い』していなければ、この合金を装甲にしたMSがZAFT側に登場していたかもしれないと思えば、ユージの恐怖は当然のものと言えよう。

 

「万が一、これを用いたMSが量産などされてしまえば……」

 

「同士ロウ、もしかしなくとも超絶ファインプレーしてた?」

 

「おいおいおい無法すぎんだろ、汚いなZAFT流石ZAFT汚い」

 

技術者達の中でも動揺が広がっていく。

それを見たウィルソンは、至って冷静な態度で説明を再開した。

 

「先にも言いましたが、完全ではありません。いくら装甲が固かったとしても、その内側の機械やパイロットは消耗していきます。それに、装甲が破壊されなくても衝撃まで殺しきれるかは別の話です」

 

「と、言うと?」

 

「地上でエドさんが試験していた『ミョルニル』、覚えてますか?PS装甲対策に作られたあれみたいに、内部への衝撃ダメージを優先した武装で殴り続ければ、いずれ内部が限界を迎えます」

 

「なるほど……」

 

「もっと言うなら、出来る人は限られますが鎧通し(アーマースルー)……装甲の継ぎ目や関節部を狙い撃つことでも対処は可能です」

 

もっとシンプルな方法もある、とウィルソンは言った。

それは、『ソル・チタニウム』同士を()()()()()()()

与えられた衝撃に応じて適応する『ソル・チタニウム』同士を衝突した場合、互いに適応し合おうとした結果なのか、本来は一瞬で完了する筈の分子構造の変化が一瞬で終わらず、繰り返され続けるという性質があるというのだ。

無論そのタイムラグも短い時間ではあるのだが、その一瞬だけ必要破壊係数が下がり、破壊しやすくなるのだという。

 

「そうなれば後は、質量と速度で勝る方が衝突に打ち勝つだけです」

 

「なるほど……」

 

頷くユージ。

『原作』において、完全体の”ロードアストレイΩ”を倒すには倍のレアメタルを有している必要があると描写されているが、それはこういうことだったのだろう。

レアメタルの質量差でぶん殴る。最高に頭が悪い最適解であった。

他に考えられる方法は、『原作』で『150ガーベラ』が破壊された時のように規格外の負荷を掛けて無理矢理に破壊するくらいだろうか。

 

「ところで、ZAFTは『ソル・チタニウム』をどこで手に入れたんだ?」

 

「それも簡単なことです。水星よりも更に太陽に近い場所、そこに『ソル・チタニウム』の精錬施設があるんですが、施設の管轄は『プラント』なんですよ」

 

「つまり、『プラント』を支配しているZAFTなら好きに出来る、ということか」

 

そこで、ユージはあることに気がついた。

太陽にほど近い場所にある精錬施設。───太陽の、近く。

 

(まさか、『太陽近辺に設置された砲台』というのもこの『ソル・チタニウム』に関連していたりするのか?)

 

『原作』において、その概要だけが明かされたエピソード『太陽砲台』。

太陽近くに設置された謎の砲台を破壊するために劾が”ブルーフレーム・フォース”で出撃するという話なのだが、何故太陽の近くに砲台が設置されているのかなど、細かい描写がされないままなのだ。

もしもその理由が『ソル・チタニウム』精錬施設防衛のためであるというなら、辻褄が合うのだ。

劾が破壊に向かったのも、死んでも構わない傭兵である劾にZAFTが依頼したのだとすれば、これもまた辻褄が合う。

何故破壊するに至ったのかは、何かしらの理由で制御不能に陥り、施設に近づく物を無差別に攻撃するようになってしまって破壊しなければならなくなったから、だろうか。

 

(所詮妄想に過ぎないと言えばそうなんだが……)

 

前世でも知ることの出来なかった謎の一端に触れられたような気がして、ユージは僅かに気分を良くした。

謎がひとまず解決したところで、意識を目の前の会議に戻す。

 

「安心して欲しいんですが、これほどの良質な『ソル・チタニウム』の精錬は相当の時間が掛かります。少なくとも今大戦でZAFTが『ソル・チタニウム』を用いたMSを大量投入、なんてことはたぶんないので安心してください」

 

ホッと息をなで下ろす一同。

『ソル・チタニウム』については周知された。ならば、次の話題に移るのは必然。

 

「で……これ、どうする?」

 

「……正直言うと、武装転用は難しいですね」

 

その場の全員が、今まで放置されている『ソル・チタニウム』を見る。

コンテナに収められているのだが、そのコンテナのサイズは軽自動車が2つ入るか入らないか程度しかない上に、そのコンテナに満杯でいるというわけでもない。

要するに、極めて少量しかないのだ。

本当に余ったものを送ってきただけ、といった様相であった。

 

「今のところサンプル送りが安定ですかね……薄くのばして盾の表面に貼り付けるとかも有りそうですけど、そうなると破壊係数が下がって、結果的に微妙なものになっちゃいますし」

 

一同の結論は、『放置安定』となった。

すぐに使い道の結論を出せるような物でもなければ、量もない。

だが、ロウ・ギュールが何かを作ろうとしているのを(ほぞ)を噛んで待つしかないという事実は、技術者集団のプライドに火を付けた。

 

「こうしちゃいられん、さっさと『CG計画』の方に戻るぞ!」

 

「自慢するだけ自慢しやがって!今に見てろよ……!」

 

「そういえばウィルソン、なんで『ソル・チタニウム』なんてもの知ってたんだ?」

 

「大学で金属について勉強していたのと、VF-1(バルキリー)の開発に役立つかと思いまして」

 

「お前まだ諦めてなかったのか……」

 

技術者達がやる気に満ちて各々の仕事場に戻っていく中、1人だけコンテナに再び収容される『ソル・チタニウム』を鋭い視線で見つめていた人物がいた。

清十郎である。

 

(あの量でも、刀身に混ぜ込む分には……くくっ、この老骨もまだ燃えられたか)

 

 

 

 

 

「そういえばユージ。貴方の『知識』には、ロウ・ギュールが『ソル・チタニウム』を使って作る物についても?」

 

「持ってる分全部使って150mの日本刀作るぞ」

 

「バカなんですか?」

 

「安心しろ、前世でも皆そう思ってたから」




新年明けて初の更新が作者の講釈垂れ流す回になってしまったのは申し訳ない……。
次回はもっとアクセル踏んでいくので、よろしくお願いします!
次回、「隼の名を持つガンダム」。
お楽しみに。

誤字・記述ミス指摘は随時受け付けて下ります。



追伸
「水星の魔女」の第一期最終話、皆さんは見ましたか?
凄かったですね!(^^)

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