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『セフィロト』 第3ポート
「待っていたぞ、3人共」
「通信でならそれなりに機会はあったけど、直接会うのは久しぶりだな隊長!この間はMAに乗って死にかけたって?」
久方ぶりの再会を喜び合うユージとエドワード。その後ろには、レナとモーガンの2人もいる。
地上に派遣されていた”マウス隊”パイロット達が、遂に役目を終えて帰還を果たしたのだ。
ユージの目に、彼らの成長した能力が数値となって表示される。
エドワード・ハレルソン(ランクS)
指揮 8 魅力 16
射撃 11 格闘 17
耐久 16 反応 12
レナ・イメリア(ランクS)
指揮 11 魅力 12
射撃 16 格闘 13
耐久 12 反応 16
モーガン・シュバリエ(ランクS)
指揮 15 魅力 12
射撃 15(+2) 格闘 12
耐久 10 反応 12(+2)
空間認識能力
流石『原作』でも名を馳せたエース達とでも言うべきか、戦闘に関するステータスはどれも高水準であり、相応しい機体さえ与えれば十二分に活躍してくれるだろうことが窺える。
本来はステータスの下に得意分野が表示される筈だが、それが無いのは、もう
今この場にはいないが、アイザック達のステータスは以下の通りとなる。
アイザック・ヒューイ(ランクS)
指揮 7 魅力 14
射撃 15(+4) 格闘 16
耐久 10 反応 12(+4)
SEED 2
カシン・リー(ランクS)
指揮 6 魅力 16
射撃 16(+2) 格闘 10
耐久 9 反応 16(+2)
SEED 1
セシル・ノマ(ランクS)
指揮 17 魅力 10
射撃 15 格闘 6
耐久 8 反応 18
やはりこちらも高水準、エースと名乗るに相応しいステータスだ。
特にアイザックとカシンの2人はSEED因子持ちらしく、
これならば、今”マウス隊”で開発が進められているMSが完成さえすれば、無双に相応しい活躍をしてくれるのは間違い無い。
(まあ、数値はあくまで参考だ)
逸る心を抑えるユージ。
たとえ彼らが優秀だとしても、相応しい機体を用意したり、適切に働かせられるかはユージ次第なのだ。
ゲームのような数字が見えても、これはけしてゲームではない。そのことをユージは再び胸に刻む。
「先の出撃の件は、あまり弄ってくれるな。最適解ではあったが、指揮官としてどうかしていたのは間違い無いからな」
「おいおい、俺はむしろ褒めたつもりなんだぜ?『流石俺達の隊長だ!』ってな」
「違いないわね。MAで敵MS隊に突撃するなんて、他にやる指揮官はきっといないわ」
「ふっ、まあ安心しろ隊長。俺達が戻ってきた以上、再び隊長に出撃させるまで追い込まれるようなことは無いも同然だ」
「頼もしいな、モーガン少佐。───3人とも、またよろしく頼む」
それぞれに挨拶を交わし、再会を喜ぶ一同。
しかし、エドワードは不思議そうに辺りを見渡した。
「だが……出迎えはあんただけか?」
周囲には作業員達の姿はあるものの、ユージ以外の”マウス隊”メンバーの姿は無い。
彼らの性格ならば揃って出迎えに来るものだとエドワードは思ったが、ユージは苦笑しながら事情を説明する。
「本当はその筈だったんだがな……」
ユージの言うところによれば、今の”マウス隊”は『CG計画』と『RX計画』という2つの案件を抱えており、手が空いている人間が非常に少ない。
そのために、代表してユージが出迎えに来たのだ。
「それに、お前達の帰還パーティの準備もあるからな」
「なるほどなぁ……」
「もう少し時間は掛かりそうだ。その前に、お前達の機体でも見ていくか?」
断る理由は無かった。
『セフィロト』 第3格納庫
「『第2世代型ストライカー開発計画』?」
「ああ。次の作戦ではそれを使って貰うことになる」
エドワードの疑問にユージが答えていく。
この計画自体は“マウス隊”発案のものではないのだが、実験部隊として高いポテンシャルを持つ”マウス隊”の、それもナチュラルのパイロットに使って欲しいとして実験装備が送られて来た。
「従来のストライカー、特にソードとランチャーの2つについてだが『肩部ハードポイントが必要かどうか』で議論が為されたらしくてな」
「たしかに、納得出来る話ですね」
レナが相づちを打ちながら頷く。
ソードとランチャー、この2つのストライカーを装備した場合、ソードなら左肩にビームブーメラン、ランチャ-なら右肩に
しかし、このように肩に装備すること前提のストライカーが増えてしまった場合、ある問題が生まれる。
今後開発されるストライカーシステム対応機も、肩部にハードポイントを備えなければならないということだ。
当然の話だがMSに機能が1つ増えれば、その分整備士の仕事は増える。
肩部にストライカー用のハードポイントがあることも例に漏れず、整備士の仕事量を増やしてしまうのだ。
その割に肩部の装備使用率が高いかと言うとそうでもない、というのが計画の発端である。
「ソードもランチャーも、極論を言えば対艦刀と『
「地上でストライカーを使ってる奴らも、メイン武器以外を使いこなせてる奴らは少なかったしなぁ。豪華な重りでしかないってのは道理だ」
「だろう?だから、『背中のコネクタだけで成立するストライカーで統一しよう』と生まれたのがこの計画だ。……と、着いたぞ」
ユージの視線の先には、それぞれ異なるストライカーを装備した2機の”ダガー”が佇んでいた。
周囲の整備士に声を掛けつつ、ユージは3人に説明を続ける。
「右が『エールソードストライカー』、左が『エールランチャーストライカー』だな。モーガン少佐の機体はまた別枠だ」
「エールと合体させたのか……頭が良いのか悪いのか」
「少なくとも、作った奴は頭が良い方だと思うよ」
エドワードの呆れ顔に、苦笑を返すユージ。
実際、開発コンセプトは子供のそれと本質が同じであるのは間違い無かった。
エールソードストライカーはエールとソードを合体させたものであり、「高い機動力を以て敵陣に切り込み、対艦刀で白兵戦を仕掛ける」ことをコンセプトとしている。
通常のエールストライカーではバッテリーが備わっている箇所*1に対艦刀が備え付けられており、見た目から言えば両側のスラスターで対艦刀を挟み込むような形になる。
勿論このままではストライカーの強みである『ストライカー内蔵バッテリーによる稼働時間延長』が無くなってしまうため、ビームサーベルを取り外して代わりにそこへ小型のバッテリーを1機ずつ取り付けることで問題は解消した。
ビームサーベルは無くなってしまったが、それよりも強力な対艦刀があることや、量産機の”ダガー”には腰にビームサーベルが元々備わっているため大きな問題にはなり得ない。
ビームブーメランはそもそも使い所が限られる装備であるために完全に廃された。
問題は、エールランチャーの方だ。
「なあ、隊長。……これ、ランチャーじゃなくね?」
「気付いてしまったか……」
そう、実はエールランチャーストライカーは、『エールとランチャーを合体させる』という意味では完全に失敗しているのだ。
主たる原因は、『アグニ』の取り回しの悪さだ。
『アグニ』はその絶大な火力と引き換えとして2つの難点を抱えている。
1つ目は、エネルギー消費の重さ。そして2つ目は、長大な砲身を扱うためにサブアームなどが必須ということだ。
「ランチャーばっかりは、『アグニ』を扱うために余計なものを合体させられないからな……仕方なく『アグニ』以外の射撃武器を搭載して、コンセプトだけは成立したという風にするしかなかったんだ」
「エールランチャーとは名ばかり、実体はエールストライカーの射撃戦仕様とでも言うべき代物ね」
「そういうことだ」
第1世代ストライカーの中でもランチャーだけはしばらく生産されるだろうというのが、”マウス隊”スタッフ内の見解だった。
実際、生産ラインが縮小しつつあるソードとエールとは異なり、ランチャーだけは生産ラインがそのままに維持されている。
「若干のケチは付いたが、ストライカーとしての性能は十分さ」
エールランチャーのコンセプトは「エールの機動性を以て前線機に追従しつつ火力支援を行なう」というものであり、いわば前線支援機とでも言うべき装備となっている。
ビームサーベルを取り外した代わりに、両肩の上から突き出すように小型のビームキャノンが配置されており、この『120㎜単装ビームキャノン』は威力こそ『アグニ』に及ばないが、ビームライフル以上の威力と連射性を両立させた優秀な武装だ。
また、主翼の中腹にはミサイルを取り付けられるように改造が行なわれており、状況に応じて更に火力を増すということも出来る。
「エールソードが切り込み、エールランチャーが支援。分かりやすいコンセプトだろう?」
「そうだな……1つツッコむなら」
「なんだ?」
「───やっぱ、ビームサーベル外すんだな」
「まあ……”ストライク”ならともかく”ダガー”はなぁ……」
4人はしみじみと頷いた。
腰にビームサーベルを備えている機体がエールストライカーを装備するとビームサーベルが4本になってしまう問題は、パイロットの誰もがどうにかならないかと考えていた点だったのである。
そういう意味でも、これら2種のストライカーの開発は大きな働きと言えよう。
「思ったんだが、こうして第2世代型が開発されているってことは、将来的には全部背中だけで対応出来る機体で揃えていくってことか?」
「それが問題でな……整備するのは手間だが、やはり肩を始めとして全身にハードポイントを備えている方が、取れる戦術は増えるだろう?」
現在地上で”アークエンジェル”が試験を行なっている”
これらの装備は背負い物だけでは到底コンセプトを実現出来ず、全身にハードポイントを備えていなければならない。
「だから、少数生産で第1世代ストライカーにも対応した機体を作り、それを特殊部隊などに使わせる方向でいくそうだ。そうすれば、生産ラインも全てが無駄にならずに済む」
「なるほど、効率化が進んでいるわけね」
「そういうことだ、レナ。話を戻すが、エールソードはエド、エールランチャーはレナに使って貰うことになる。機体は”ダガー”だ。モーガン少佐にはまた別に機体を用意しているが、調整中でな。待っていてくれ」
「ガンバレルストライカーとかいうのとは違うのか?『エンデュミオンの鷹』が一度使ったって聞いてたんだが」
「それとは違うな。一応、後々にモーガンにも使って貰うことになるが」
モーガンの疑問はもっともで、ユージ自身も『原作』通りガンバレルストライカーが任せられるものだと考えていたのだ。
しかし、『第2世代型ストライカー開発計画』とはまた別に”マウス隊”に任せられた試験計画がある。
モーガンの機体はその調整が済むまでお預けだ。
「しかし、久しぶりに量産機に乗るんだなぁ」
「地上では”陸戦型デュエル”と“陸戦型バスター”だったものね」
エドワードとレナは、地上において2機の『ガンダム』タイプに搭乗して各種武装の試験などを行なっていた。
どちらも地上でしか扱えないために地上の部隊に払い下げてきたのだが、基本性能では間違いなく”ダガー”以上。
”ダガー”が悪い機体というわけではないが、それでも久しぶりの宇宙戦で『ガンダム』に乗れないというのは、少なからずプレッシャーになるのだろうか。
(一応、『ガンダム』の手配はしているんだが……)
ユージが思案していると、格納庫内にアナウンスが響く。
『”G-3”、帰還します。スタッフ一同は受け入れをお願いします!』
格納庫の扉が開くと、そこから灰色の機体が姿を現す。
灰色といってもPS装甲のそれとは異なる明るめのライトグレーで塗装されているその機体は、エドワード達を僅かに驚愕させた。
機体色こそ違うが、その機体は間違い無く”ストライク”だったからだ。
「ありゃあ”ストライク”じゃねーか!新しく作られたのか?」
「ああ。とは言っても、実戦にはとても使えるものじゃない、実験用の機体だけどな」
「───”ストライク3号機”、通称”G-3”よ、エドワード中尉」
管制室の方向から飛んで来たマヤが降り立つ。
彼女は先ほどまで、”G-3”の機動データを分析していたのだ。
「マヤ、久しぶりね」
「そちらも壮健で何よりよ、レナ」
女性士官同士で再会を喜びつつ、マヤは説明を続けた。
「”G-3”は発泡金属装甲と、ある試験的技術の実証機として開発された機体よ」
「発泡金属?オーブ独自のマテリアルと聞いていたけれど、製造に成功したの?」
「そんなところね」
マヤが若干目を逸らしながら肯定する。
正確には一から製造したわけではなく、『ヘリオポリス』で手に入れた2機の”プロトアストレイ”を分析してコピーしたという方が正しく、単なるコピーでしかないためだ。
加えて品質もオーブが製造した物より悪い物も多く、今”G-3”に使われている発泡金属も、質の良い物を厳選しているのである。
「試験的技術の方は、アリアが”アークエンジェル”に乗り込む前に残していった理論が元になっているわ
その名も、『マグネット・コーティング』。関節部の可動摩擦面に磁力コーティングを施すことで抵抗を減らし、機体の反応速度を向上させるものよ」
『マグネット・コーティング』。その名をこの世界で初めて聞いた時、ユージは目を見開いてしまう程の衝撃を受けた。
それは本来『宇宙世紀』にて生み出される筈の技術だったからだ。
それが施されているかどうかで機体の評価が大きく変わるほどの代物であり、初代『ガンダム』に施されて以降、ほとんどのMSに施されたというこの技術は、なるほどC.Eでも生まれないというわけではないのだろう。
もしもこれが宇宙世紀同様の効果を発揮するなら、アリアはMS史に名を残してもおかしくない。
「今は試験段階だけど、完成すればMSの性能を飛躍的に伸ばせる筈よ」
「……なぁ、あれって実戦には」
「残念ながら、諦めてもらおうか」
エドワードが好奇心を多分に含んだ視線を”G-3”に向けるが、ユージはにべもなく否定した。
「話に聞いた限りだと、結構な高性能なんだろ?使わない手は無いと思うんだが───」
「なるほど、エドワード・ハレルソン中尉は、防御力の大半をPS装甲に依存していた”ストライク”の装甲を、
いやー困ったな、かすり傷1つでも致命傷になりかねないこの機体に乗って実戦に赴きたいとは!
エドワード中尉はたしか、致命傷になる攻撃を見極めて、耐えられる所は装甲で受けつつ切り込むスタイルだったと記憶しているが、相性最悪のこの機体に!
乗りたいと!」
「───いやー、やっぱり堅実・安心の量産機だよな!試作機なんて好んで乗るもんでもないぜ!」
あっはっは、と笑い合う2人。
”G-3”は”ストライク”をベースに開発しているため、たしかに機動力では現在の連合軍でもトップクラスと言って良い。
しかしユージの観点から、否、技術者ならば誰もが口を揃えて言うだろう。
「
そんなものに、自分の部下を乗せたくは無い。ユージはあくまで技術実証用に留めておくつもりだった。
エドワードも関心が多少ある程度だったために、すっぱりと諦めた。
彼がつい数日前まで乗っていた機体が何だったのかをツッコみたい気持ちに駆られたユージだが、特に問題はないだろう。
「まあ、実戦には使えないけど搭乗者のデータは多いほど良い物よ。いずれ3人にも試乗してもらうわ」
「うへぇ、マジかよ……」
「戦えというわけじゃないんだ、気楽にいけ。……そろそろパーティの準備も済んでいるころだろうし、会場に───」
「おい、聞いたか?」
「ああ。こうしちゃいられねぇ、行こうぜ!」
「全速前進だ!」
俄に騒がしくなっていく格納庫。
自分の作業を終わらせた技術者達が、機材を律儀に片付けた後にどこかへと去っていくではないか。
ユージがマヤの方を見るが、彼女は首を振って関知していないことを知らせる。
この時点で、ユージの脳はある結論を導き出していた。───変態技術者案件だ!
「おい、何があった?」
同じく何処かへ向かおうとしていた技術者の肩を掴んで止めるユージ。
僅かに興奮した様子のその技術者から話を聞きだそうとする。
「おっと、隊長。なんか、地上に滞在しているロウ・ギュールから贈り物が届いたらしくてですね。今、変態技術者四天王が緊急で招集を掛けているので見に行く途中ですよ」
「なんだと!?そんなこと、俺は知らんぞ!?」
「秘密連絡網によるものですから。じゃ、そういうことなんで」
そう言うと、その技術者も何処かへと向かって行ってしまう。
それを見送ったユージは、静かに崩れ落ちた。
「なんで、また隊長に秘密の連絡網とか築きあげてんだよぉ……」
「この間潰したばかりだったから、油断したわね。まさかここまでリカバリーが早いとは……」
実はこのような事態は以前にも発生しており、主に変態技術者達がユージやマヤの目を盗んで趣味に走るために、秘密の連絡網を作っていたことがあったのだ。
きちんと成果を出した上で行動しているのと、『”マウス隊”だから』と見逃されていなければ、部隊が解散されていてもおかしくない所業である。
先日に潰したばかりだったのに、既に復旧されているという事実が、ユージの精神に多大なダメージを与えていた。
「……なんか、うん。変わんなくて安心するよ」
「安心感すら覚えるわ。それと同じくらい、不安にもなるけど」
「こりゃ、前よりも騒がしいことを覚悟しておくべきかもな」
以前と変わらず、苦労するユージの姿を見て、帰還した3人は各々の感想を述べるのだった。
ということで、マウス隊視点の方に移って数話ほど更新してまいります。
はたして、ロウからの贈り物とは。
それと、テンポ重視で省いたG-3ストライクのステータスです。
長くなるので興味ない人はスキップ安定です。
G-3ストライク
移動:8
索敵:C
限界:220%
耐久:160
運動:52
シールド装備
武装
ビームライフル:130 命中 75
バルカン:30 命中 50
ビームサーベル:160 命中 80
アーマーシュナイダー:100 命中 55
特殊な機体であるためにストライカーは専用に調整したエールストライカー以外装着出来ない、出来ても能力を発揮出来ないという機体です。
比較用に通常ストライクのステータスも載せます。
ストライクガンダム(A装備)
移動:7
索敵:C
限界:175%
耐久:290
運動:35
シールド装備
PS装甲
武装
ビームライフル:130 命中 70
バルカン:30 命中 50
ビームサーベル:160 命中 75
アーマーシュナイダー:100 命中 50
武装変更可能
誤字・記述ミス指摘は随時受け付けております。