模型戦士ガンプラビルダーズビギニングR   作:級長

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 佐治晴香
 17歳女
 所属:私立天上高校模型部
 好きなガンダム作品:機動戦士ガンダム
 好きなモビルスーツ:砲撃機全般
 好きなガンダムキャラ:コズン・グラハム、ラーガン・ドレイス
 戦闘スタイル:砲撃戦。
 好きな色:紫
 性格:明るい。基本的に細かいことを考えない。
 趣味:ガンプラ制作、ファッション誌購読
 好きな食べ物:甘い物。柑橘類。
 嫌いな食べ物:辛い物
 好きな教科:家庭科
 嫌いな教科:残り全て


5.真・武力介入

 模型部 部室

 

 「さて、次の敵は誰かな?」

 平日の放課後、模型部の部室にはメンバー全員が待機していた。いつ生徒会の刺客が現れるともわからない状況だ。富士川は手ぐすねを引いて待っていた。椅子に座り、敵の到来を待つ。

 「敵が来るなり、このグリーンズゴックが撃墜してみせる!」

 「そうだ。今度の敵は私にやらせてよ」

 佐治が富士川に言った。雪菜も灰音も、佐治の実力は知らなかった。

 「先輩の実力見てみたい!」

 「俺もガンプラ作らなきゃいけないし、先輩に任せますよ」

 それなので、二人とも佐治に同意した。灰音も新しいガンプラを作っている最中だ。

 「佐治先輩のガンプラって、あの3ガンダム? 性能はどうなの?」

 「バトルまでお楽しみ」

 灰音の疑問は佐治の使うガンプラ。今のところ、佐治のガンプラの性能を知るのは富士川だけだろう。佐治は悪戯っぽく笑うだけで答えない。

 「へー、ガンプラバトルって今年始めて世界大会やるんだね。

 「そうだな。こんなご時世でもガンプラを認めない生徒会は時代遅れだな」

 雪菜は新聞を読んでガンプラバトルの開催を知る。富士川は生徒会が何故模型部を未だに潰したがるのか、わからなかった。

 「よし、俺はパーツ探してくる」

 灰音は立ち上がってガンプラを探しに行った。彼の望む可変機はあるだろうか。

 「頼もう! ここが模型部だな?」

 部室から出て行った灰音と入れ代わりに、一人の女子生徒が入ってきた。胴着に防具、どうやら剣道部みたいだ。ポニーテールが剣道部っぽい。

 凜とした空気が部室に張り詰める。文化部の部室には似つかない空気だ。

 「申し遅れた。私は山田凜。生徒会から頼まれて来た。ガンプラというもので、ガンプラバトルをする。それで勝てば、我々女子剣道部は廃部を免れると聞いた」

 「うわー、生徒会ないわー」

 佐治は事情を聞いて、生徒会に失望した。廃部寸前の部活同士を潰し合わせるとは卑劣な。

 「では、早速始めよう。近くの模型屋に行けばできるのだな?」

 凜は早速、戦いを始めようとした。

 

 模型屋『ネェルアーガマ』店内

 

 「武器と……、ジョイントとかと……」

 灰音は模型屋でパーツを探した。ビルダーパーツやコトブキヤのパーツを中心に漁っている。

 「グフの武装引っ付けて、ジルスペインをだな……」

 「何作る気だい?」

 店長が灰音に話しかける。だいたい、何が出来上がるかは想像が出来るのだが、恐怖以外の何物でもない機体に仕上がりそうだ。机に置かれたオレンジのゼイドラは、左手にグフカスタムのシールドガトリングを持っており、右腕の形状が少し変化していた。

 「せっかくだから、これ組み込まないか?」

 「何?」

 「ホワイトグリントさ!」

 店長が堂々と宣言する。それはガンプラですらない。他のゲームに出て来るプラモデルだ。高値なので、改造のパーツには使いたくない。

 「ホワイトグリント? 形状だけなら……」

 灰音は導かれるようにホワイトグリントの箱を手に取る。少なくとも形状だけならアイデアに取り込めそうだ。

 「そういえば、模型部に新しい刺客が現れたんだってな」

 「なんだって?」

 灰音は店長に促されて、レジの奥に備え付けられたテレビを見る。テレビには一体のガンプラが移る。ガンプラバトルの生中継だ。

 佐治と凜の戦いはネェルアーガマとは別の店で行われている。もっと学校の近くにバトルできる場所はある。ポッドを使うバトルではなく、プラスフキー粒子を使うガンプラバトルだ。

 「だが、素人のようだ」

 灰音はガンプラを見て判断した。ガンプラはミスターブシドー専用アヘッド。武器であるビームサーベルは透明で、素組であることがわかる。

 これなら安心だ、と思った灰音は驚愕の光景を目にした。恐らく佐治のものと判断される1.5ガンダムが、バスターライフルを捨てたのだ。

 「おいおい……」

 本来ならバスターライフルで撃てば簡単に勝てるものの、佐治はそれを捨てた。抜き放たれたビームサーベルはオレンジ色に発光している。

 「さ、お手並み拝見といこうか」

 店長がテレビ越しにライフルを捨てた1.5ガンダムを見る。模型部の存亡を賭けた戦いが始まる。

 ゲームセンター ガンプラバトルフィールド

 

 学校に近い小さなゲームセンターで、ガンプラバトルが始まった。生徒会は模型部の力を削ぐため、ガンプラが破損する可能性のあるプラスフキー粒子によるガンプラバトルを奨めた。凜は佐治に、ある質問を投げかけてみた。

 「なぜ、銃を捨てたのです?」

 「剣道にはビームサーベルでしょ! 敢えて相手の土俵で戦うのが好きなの」

 対岸から佐治の声が凜に届く。動きにくいと言う富士川のアドバイスをスルーして、彼女は胴着で戦いに臨んでいた。

 佐治の3ガンダムは左利き。右にシールド、左にサーベル。左利きの利点は活かせない相手だ。自身も左利きなのだから。

 凜の家は剣道の道場をしており、凜は幼い頃から稽古を積んだ。相手より少しでもアドバンテージをとるため、右利きから左利きに変えた。兄が初めから左利きなのが少し羨ましかった。

 ガンプラはガンプラバトルにおいて、刀みたいなものだと凜は聞いていた。それゆえ、他人から渡されたガンプラを使うことは良しとせず、自分で作った。工具が偶然、今は一人暮らしをしていて家にいない兄の部屋に有って助かった。

 「天上高校女子剣道部主将、山田凜。参る!」

 「3ガンダム、佐治晴香、作戦を開始する!」

 凜の踏み込みと同時に、佐治の3ガンダムの目が赤く光る。

 「1.5はホントなら、目を緑にするんだけどね。3ガンダムだからいーの」

 緊張感のない声で佐治が喋る。その間に凜はサーベルを振るった。それでも佐治は難無く受け止める。

 それを皮切りに殺陣が始まる。本来ならガンプラの性能が高い佐治の方が有利だが、凜は佐治に肉薄してみせた。操縦技術で性能をカバーしているようだ。

 「やるっ」

 佐治はなかなかスリルを楽しんでいるようにも思えたが、内心穏やかじゃなかった。ガンプラバトルで一番恐ろしい相手は、ガンプラ制作より操縦技術が優っている相手だ。

 素組に近いガンプラで無意識の油断を誘う。凜が意図してやったわけでないにしろ、厄介なのに変わりはない。

 二人の戦いはひたすらに激化した。3のビームサーベルとアヘッドのビームサーベルが煌めき、オレンジの閃光が宇宙に映える。

 一度離れ、再び斬り合おうとする二機。しかし、その間をビームが駆け抜けた。

 「ちょっと!」

 「水入りか!」

 凜はモニターでビームを撃った本人を確認した。佐治はちょうど、灰音とミスターブシドーを止めた時に似ていると思った。

 「フハハー! 助太刀申す!」

 「邪魔を……!」

 やって来たのは男子剣道部。大勢でプロモデラーの作ったガフランに乗り込んできた。ドラゴンの様な姿をしたモビルスーツが佐治の3に迫る。中にはゼタスも混じっている。生徒会が寄越した伏兵だろう。

 「ヤバいんですけど!」

 佐治もさすがに数が多くて対処できない。突出したゼタスが尻尾を分離したゼタスソードを振りかざす。ガフランもそれに続いて3ガンダムにビームサーベルを突き付ける。

 「俺が勝ったら付き合ってくれるよな!」

 「それは稽古だよな……」

 部長と思わしき男子の太い声に凜の顔が引き攣る。それと同時に、黄色の光が雨霰となってガフラン達を貫いた。

 「なんだと?」

 ガフランの群れを一つのオレンジが駆け抜ける。戻ってきては両手のアサルトライフルを放ち、ガフランを貫いた。

 「灰音ね……」

 佐治はその正体を既にわかっていた。オレンジ色の量産、灰音だ。ヴェイガンの機体がガフランに迫る。 その正体はオレンジ色のゼイドラ。正確にはジルスペインか。他の店のフィールドから出撃し、インターネットを通じたオンラインフィールドを通ってやってきたのだ。

 一斉に襲いかかるガフランを、両手のアサルトライフルで一掃する。これはホワイトグリントから着想を得たものだ。左右で地味に形状が違うのもホワイトグリントのオマージュである。ヴェイガン機にあるまじきメカメカしい背部ブースターも同じくか。

 「なんだと?」

 攻撃に加わらず、見ていた部長が驚いて言う。その時にはガフランは全滅していた。ジルスペインが右腕に内蔵されたヒートロッドを使い、すべてのガフランを切り裂いた。

 「やるではないか!」

 部長のゼタスが迫るも、ジルスペインは右手のアサルトライフルを腰に引っ掛け、尻尾のソードを手に取り迎撃する。ゼタスはあっという間に手足とゼタスソードを切り刻まれ、抵抗できなくなった。

 そして両断。男子剣道部が率いたガンプラは全滅した。

 

 天上高校付近 国道沿い

 

 灰音に全滅させられた男子剣道部はそそくさと逃げ帰った。灰音達は国道沿いを通って高校に帰る途中だった。

 「見たか! これがAGEシステムの出した答えだ!」

 「AGEシステム関係ないよな……」

 ハイテンションな灰音に富士川がもっともらしいことを言う。完全には完成してないため、まだまだ灰音は強くなる。

 凜は決着がついてないので、佐治に今後の事を聞いた。

 「先輩、決着がついてませんが……」

 「なら同盟組まない? 倒さなきゃいけない敵は同じだし」

 なにげに味方を増やそうという算段だ。まあ、味方は多いに限る。

 「じゃあそうしよう! 打倒生徒会だね! それじゃまずは核弾頭持ってこよう!」

 「お前は天上高校を町ごと吹き飛ばす気か!」

 凜は自らの手を取った雪菜の言葉にツッコミを入れた。最近見たガンダムのOVAの影響らしい。

 「模型部と女子剣道部存続のため、生徒会滅亡のため。天上高校よ、私は帰ってきた!」

 「その寸法だと、一度出たことになる」

 「ほら、模型屋行く時に一度出てる」

 「なん……だと……?」

 雪菜に突っ込もうとしたら、凜は真理を突き付けられた。ようするに、今の雪菜達の状況でもガトーさんの名言は使えるというわけだ。

 その時、国道を明らかな暴走族が走り去った。

 「あ、確かバイクの艦隊がザンスカール帝国にあったよな」

 「あ、あいつらは!」

 Vガンダムを思い出した灰音の横で、富士川が叫ぶ。知った顔が暴走族にあったのだ。

 「知り合いか?」

 「ああ、あいつらは俺が手を焼いてる不良だ! あいつらはジオン水泳部を侮辱した! 今度こそイノベイター製モビルスーツから足を洗わせてやる!」

 「手を焼いてる内容がおかしいだろ……」

 「ヘイズゴックタクシー!」

 富士川は灰音の愚痴も聞かず、緑のタクシーを呼んで飛び乗った。ズゴックがあしらわれた変わったデザインのタクシーだ。

 「お客さんどちらへ?」

 「前の車を追ってくれ!」

 刑事みたいな言葉と共に、富士川はタクシーで走りさった。




 世界解説
 この世界は、2種類のガンプラバトルが流行している。まず、Gポッドを利用した所謂『ビルダーズ型』バトル。そしてプラスフキー粒子でガンプラを動かして行うバトルだ。
 前者は作品を壊したくないけど動かしたい。コクピットに乗ってる感覚で戦いたい人向け。後者の方が世界大会もあり、メジャー。
 バトル装置は六角形のテーブル状で、これを使い実際に対面して行うバトルと、GPベースをセットする場所とガンプラを置く場所しかない小型装置でインターネットを使うオンラインバトルが出来るフィールドがある。
 オンラインバトルでは、乱入も可能。佐治と凜はウッカリ乱入無しに設定し忘れた模様。

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