魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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仮面ライダーシード&仮面ライダークウガ 繋がる絆【第十二章】

ホルダーによって水中に引きずり込まれた俺は、何とかして四肢の拘束を外そうともがくが、いっこうとして緩む気配すらない。

 

ちなみに俺の四肢を拘束している帯状の物体についてなのだが、これはホルダーの全身に巻きついている、包帯の様な部分が本体から伸びている事が、水中に入った事により分かった。

 

しかし相手の能力に気づいても、現状を打破出来なければ意味が無い。

 

それに今は、このホルダーの相手をする時間すら惜しいのが現状だ。

 

「早く陸に上がらないと、はやてちゃんが危ないっていうのに……」

 

俺がこうしている間にも陸には、はやてちゃんを連れて行くと公言したオーバーが居るのだ。

 

戦いの中において、冷静でいなければならないとは分かっていても、どうしても気持ちばかりが焦ってしまう。

 

『少し落ち着けマスター!』

 

ただがむしゃらに、四肢を動かそうとしてもがく俺に対して、メカ犬が叫ぶ。

 

「……メカ犬?」

 

『焦る気持ちはワタシも理解出来る……しかし今は目の前に迫る脅威を排除しなくては、誰も助ける事など出来ないぞ!』

 

メカ犬は焦る俺に、諭す様に語り掛けてくる。

 

でも俺は……

 

「分かってる……分かってるけど俺は!」

 

メカ犬の言いたい事は、俺にだって分かっているのだ。

 

しかし分かっているという事と、納得しているという事は別の話なのである。

 

ここでホルダーと戦う事に集中すれば、勝つ可能性は飛躍的に跳ね上がるだろう。

 

でもそれを選択すれば、その間にオーバーがはやてちゃんを連れ攫うという暴挙を、黙認してしまう事に他ならない。

 

『マスターの言いたい事は分かる。だがここでマスターが戦いに敗北する様な事があれば、はやて嬢を救い出せる可能性も確実に低下するのだぞ!?』

 

「……」

 

『オーバーは、はやて嬢の事を【巫女】と言っていた。それがどういう意味を持つかは分からないが、態々そんな言い回しをすると言う事と、ここまでの強い能力有したホルダーを素体無しで作り出したという特別な夢……今までの奴らの行動からワタシが推測する限りでは、未だ憶測の域を出ないが、何かしらの特殊な段階を踏む可能性が高い』

 

「それって……」

 

『少なくても奴らの計画には時間的なインターバルが発生する筈だ。残念だが既にオーバーの反応がワタシのレーダーからも消えている事から考えて、はやて嬢は連れ去られたと断定するしかないだろう。ならばワタシ達がすべき事は決まっているのではないか!?』

 

メカ犬から出た言葉は、半ば俺も予想していた言葉だった。

 

既にはやてちゃんが連れ去られてしまっているという可能性が高い事は、気づいていたが認めたくなかったのである。

 

その可能性を認めてしまえば、俺は友達を助けられなかったという事実を肯定してしまう事に他ならなかったから……

 

もしかしたら俺は、その事実に心が耐えられないかもしれない。

 

だから俺は無意識の内に、気づかない振りをする為に、ただがむしゃらに動こうとして、自身の思考を曖昧な状態にしようとしていたのではないだろうか……

 

でもそんな俺に、メカ犬事実を告げた。

 

……そして同時に、はやてちゃんを救い出せるかもしれないという希望も同時に示してくれたのである。

 

それは根拠の無い、そうであって欲しいという、楽観的な考え方だ。

 

だけど……それを誰が言ったのか、俺にとってそれが最も大切な事だった。

 

メカ犬が……俺の信じる相棒がそう言うのであれば、例えそれを他の誰が否定したとしても、相棒の言葉を俺だけは最後まで信じられる。

 

俺は手足に無理やり加え続けていた力を一旦緩めて、熱く火照った頭を、水の流れを感じる事で、冷やすと同時に研ぎ澄ませていく。

 

「……そうだな。今は……はやてちゃんを助ける為にも、ホルダーを倒す事に集中しよう!」

 

そうする事で冷静さを取り戻した俺は、ゆっくりとした口調で言葉を紡いだ。

 

『それでこそマスターだ』

 

今の自分の状態を、当然とでも言う様な、メカ犬の少し砕けた言い方が、今の俺にとっては何よりも心強い。

 

「それでどうする?このままじゃ、何も出来ない事に変わり無いだろ?」

 

『うむ……』

 

適度に冷却された頭で、俺とメカ犬は現状をもう一度現状見直す。

 

今の俺は完全に四肢の動きを封じられている上に、どれだけ力を入れても、多少動く事は出来ても、振り解く事が出来そうに無いという事だ。

 

水中に引きずり込まれてホルダーとの距離が縮まり、その際に生まれた包帯の様な帯の余裕分で、腕をベルトの辺りまで持ってこれる程度には、動かす事が出来る。

 

「パワーフォルムになれば、この拘束から脱出出来そうだけど、また近づく前に捕まっての繰り返しになりそうだし……」

 

『……ならば、元となる部分を根絶するのが、手っ取り早いのではないか?』

 

「……そうか。なら一度に、広範囲を攻撃して全部潰してみるか!」

 

『うむ!』

 

これからの行動指針を決定した俺は、拘束されて不自由な腕を、少しずつ動かしてベルトからタッチノートを取り出して、操作を開始する。

 

『ダイバー・コール』

 

タッチノートから音声が流れると、僅かな間を置いて、水中に戦場とは場違いな陽気な歌が聞こえてきた。

 

『アタイは~海の~妖精さ~ん♪』

 

女性特有の高い声質の歌の聞こえる方向を振り向けば、其処には水中を優雅に泳ぐメタルブルーのボディーを持つイルカ的な物体が、俺の視界へと飛び込んで来る。

 

『アタイを呼ぶってことは~マスターはピンチなのだわさ~?』

 

俺に近づくなり、メカ海は相変わらずの緊張感を無視した、のほほんとした口調でマイペースに周りを回転する様に泳ぎ回る。

 

『ふざけるのは後だ!』

 

『了解だわさ~』

 

メカ犬の注意にも、メカ海はそのマイペースな態度を崩す素振りを、一欠けらとして見せようとしないが、一応は肯定の返事を返す。

 

「それじゃあ……行くぞ!」

 

俺はメカ犬とメカ海の掛け合いを聞きながらも、タッチノートの操作を進めていく。

 

『スタンディングモード』

 

再びタッチノートから、音声が流れると同時に、メカ海がアタッチメントパーツへと変形する。

 

その間に俺は、タッチノートをベルトに差込んでから、続いてベルトの左側をスライドさせて、逆転への布石を準備していった。

 

『超ファンタスチック☆合体なんだわさ~』

 

其処にアタッチメントパーツへと変形したメカ海が、どういった原理で水中を泳いでいるのか、頭の部分に昭和の魔法少女みたいな台詞を付けた言葉を、その独特なのほほんボイスで言いながら、直接ベルトの左側の差込み口へと突っ込んだ。

 

『サーチ・ダイバー』

 

その経緯はどうあれ、無事にアタッチメントパーツが差し込まれた事により、サーチフォルムのスカイブルーのボディーに、メタルブルーの装甲が展開して、次々と全身に装着されていく。

 

何処となく、イルカを彷彿とさせる頭部に、重厚な装甲と、全身に取り付けられたスクリュー、それにパンチンググローブを彷彿とさせる腕部という、水中戦を想定されたダイバーモードとなった俺は、自身も回転しながら全身のスクリューを全開で回す事で、俺を拘束するホルダーの包帯をスクリューへと巻き込んで引き千切り、身体の自由を取り戻す。

 

『反撃が来る前に、此方から攻めるぞマスター!』

 

「OK!」

 

ホルダーの能力から逃れた俺は、メカ犬の指示に頷きながら、アタッチメントパーツのレバー下に存在するボタンを押した。

 

『サーチランチャー』

 

ボタンを押すと即座に、俺の両肩にはミサイルポットが生成され、複眼の上には、薄い青のバイザーが装着される。

 

そして急いで攻撃準備を整えた俺は続けざまに、先程押したアタッチメントパーツの、ボタン上にあるレバーを下に引く。

 

『マックスチャージ』

 

ベルトから発生した光は両腕のラインを通じて肩まで伸び、両肩のサーチランチャーへと集約される。

 

「狙いはホルダーの全身から触手みたいに伸びている、包帯部分全部で頼むよウミちゃん!!!」

 

『合点承知だわさ~』

 

俺の言葉にメカ海は意気揚々と答えた。

 

『ターゲット指定ロック。命中精度補正、全システムオールクリアだわさ~』

 

メカ海の語尾を抜かしては真面目となった口調を聞きながら、バイザーに次々と映し出される光の点が、これ以上増えない事を確認して、俺は必殺の一撃を放つ。

 

「ダイバーフルバーニング」

 

俺の声を合図に、両肩のサーチランチャーから大量の小型ミサイルが発射されて、ホルダーの触手状に伸びる包帯を、次々と爆撃していく。

 

「うをおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

更に俺は、サーチランチャーからミサイルを発射し続けた状態で自らを鼓舞するために叫びながら、背部のスクリューを全力で回転させつつ、ホルダーへと一気に接近する。

 

最初から俺の狙いは、ホルダーへと近付く事にあった。

 

遠距離からの攻撃だけでは、あの自在に操る触手の様な包帯が邪魔で、決定的なダメージを与えられるか分からなかった事と、そのまま近付こうにも、ダイバーモードの機動力だけでは、やはりあの包帯の突破は無理だと考えたのである。

 

だから俺は、その邪魔な包帯全てを攻撃しながら、一気に距離を縮めるという作戦を取ったのだ。

 

その作戦は見事に成功して、俺はホルダーが放つ大量の包帯が、ミサイルによって次々と爆ぜていく爆発地点を掻い潜り、ホルダーの懐へと飛び込んだのである。

 

「この距離なら確実に行ける!!!」

 

俺は絶対なる確信を持ちながら、ベルトの右側をスライドさせて、黒いボタンを押す。

 

『ベーシック・ダイバー』

 

ボタンを押した直後、スカイブルーのボディーはメタルブラックへと染まり、両肩のサーチランチャーと複眼の上に装着されていたバイザーが光に戻り消えていく。

 

「はあああ!!!」

 

ベーシック・ダイバーへとフォルムチェンジした俺は、気合を込めた叫びと共に、四肢のスクリューを回転させながら威力の上乗せされた拳と蹴りの嵐を叩き込む。

 

スクリューの恩恵によって繰り出される連続攻撃に怯むホルダーを目にして、俺は決着をつける為に、再びアタッチメントパーツのレバーを下に引いた。

 

『マックスチャージ』

 

サーチ・ダイバーと同じように、ベルトから発生した光が、今度は右拳へと集約して行き、ベーシック・ダイバーの分身体が、四体が生成される。

 

「こいつで決めるぜ」

 

四体の分身体が四方に散った事を確認した俺は、全てのスクリューを回転させて、光が集約された右拳を強く握り込む。

 

「ダイバーチェーンブロー」

 

次々と分身体が右拳をホルダーに叩き込み、最後に俺の右拳が、ホルダーの胸部を貫き、大きな爆発を引き起こした。

 

オーバーが素体が無いと言っていた事から、ホルダーが爆発して無へと帰った事を確認した俺は、川の中から上がる為に、薄っすらと月明かりが照らす水面を目指して、上昇を始めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やはりはやて嬢は、オーバーに連れ去られた様だな』

 

「……ああ」

 

ホルダーとの戦いを終えた俺達は、川から出てすぐに周囲を捜索したのだが、はやてちゃんが連れ去られたという事実を確認する事しか出来なかった。

 

『アタイも、水辺を中心に探してみるんだわさ~』

 

ある程度の捜索を終えて、俺とメカ犬が話し合っていると、アタッチメントパーツとして装備され続けていたメカ海がそう言って、分離して通常のイルカ形態に戻ると、川へと潜って行った。

 

『探そうにも現状では、情報が少なすぎるからな……今はメカ海に任せて、マスターは少し休んだ方が良いだろう』

 

川の中に潜って行くメカ海を見送った後に、メカ犬がそんな事を口にする。

 

「はやてちゃんが危ないかもしれないのに、休んでられないだろ!俺も……」

 

其処まで言ったところで、俺は急に立ち眩みを起こして、地面に片膝を着いてしまう。

 

「……あれ?」

 

今もまだ、ベーシックフォルムに変身している状態だというのにも関わらず、身体に力が入らなくなっている事に、俺は今更ながらに気づく。

 

『今日の夕方からここまで続く連戦もそうだが、スピード・ライガーの反動が、マスターの予想以上に、身体に残っている筈だ。メカ海だけでなく、ワタシ達も捜索するから、マスターは身体を休めておけ。肝心な時にマスターがそんな状態では、はやて嬢を助ける事など出来ないぞ?』

 

俺の身体の疲労と比べれば、はやてちゃんを探したいと思う気持ちが上回るのが、正直なところではあるが、確かにメカ犬の言っている事の方が正しいし、変身している状態で立ち眩みを起こす今の状態では、逆に足手まといになりかねないのがおちである。

 

「……分かった。今は休む事にするよ」

 

一度大きく深呼吸をして、身体の疲労を押して先走ろうとする気持ちを落ち着けながら、メカ犬の提案を受け入れると、タッチノートをベルトから外して、変身を解除した。

 

『……む!待てマスター今変身を解除するのは……』

 

変身を解除する途中にメカ犬が、何かを言おうとするが、その言葉は間に合わず俺は変身を解除してしまう。

 

その直後に背後から、河川敷に落ちている砂利を踏みつける靴の音が、俺の耳に届き急いで音のした方向に振り返ると、一人の人物が驚愕の表情を浮かべながら、俺とメカ犬をその視界に映していた。

 

「……五代さん」

 

数瞬の沈黙の後、俺はその人物の名前を、静かに呟いた。


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