魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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仮面ライダーシード&仮面ライダークウガ 繋がる絆【第三章】

クウガは飛び掛ってきたホルダーモドキを、側転で避けると、起き様に鳩尾へと蹴りを叩き込む。

 

生身の時よりは多少の効果があり、仰け反るが本来の力をクウガが出し切れていない為か、思った以上のダメージを与える事が出来なかった。

 

「うをおおおお!」

 

それを理解したクウガは一撃の弱さを補う為に、ホルダーモドキが態勢を整え直す前に、気合の篭った叫びと共に、拳の連打を叩き込んでいく。

 

確かに今のクウガは、全力を出せずにいるが、相手のホルダーモドキは、過去にクウガが戦ってきた未確認生命体に比べて動きも鈍く、明確な意思が存在しない為か動きは単調であり、今のクウガでも戦えない相手ではなかった。

 

「ふん!」

 

横から繰り出されるホルダーモドキの拳の逆襲に対して、間に腕を割り込ませる事で、防御したクウガは逆にカウンターとなる一撃をホルダーモドキの胸に喰らわせる。

 

クウガの攻撃は確実に通るのだが……

 

ホルダーモドキはクウガの攻撃を受けて、仰け反りはするものの、すぐに態勢を整えて反撃に転じてくる。

 

「くっ!?」

 

クウガはその思ったよりも早く繰り出された反撃を何とか裁きながら、更に拳と蹴りによる打撃をホルダーモドキに何度も浴びせかけるのだが、現在の本来持っている力を出し切れていない地力が低い攻撃の為か、ホルダーモドキに対して、決定打となるダメージを与えられない。

 

「こうなったら……」

 

このままでは埒が明かないと判断したクウガは、一旦ホルダーモドキとの距離を取る為に、右拳を繰り出してきたホルダーの腕を掴み、自身を軸に時計回りに回転させて、その反動を利用する事により、約十メートル程の距離にある瓦礫へと、投げ飛ばす。

 

「いまだ!」

 

ホルダーモドキが、瓦礫の中に突っ込んで行ったのを確認したクウガは、腰を低く構えながら両腕を開き、右足に力を収束させていく。

 

瓦礫の中からホルダーモドキが這い出てくるのを見計らい、クウガは右足に炎の様なエネルギーを纏った状態で走り出した。

 

通常の一撃が効かないのであれば、それ以上の威力を持つ攻撃を繰り出さなければならない。

 

そう判断したクウガは、今の力で出来る最大威力の攻撃を相手に叩き込もうと考えたのである。

 

ホルダーモドキに駆け寄るクウガは、十メートル程開いていた距離を、半分程に狭めた辺りで、思い切り跳躍して、五代雄介の107番目の技である空中回転を加えて、その回転エネルギーを推進力としながら、右足を突き出し、跳び蹴りを放つ。

 

「うをおうりゃあああ!!!」

 

気合の込められた叫びと共に繰り出された必殺の一撃は、見事にホルダーモドキの胸の中央を捉えて、様々な未確認に刻んできたものよりも、多少造形の欠けた刻印を刻み付ける。

 

その刻印を中心に、ホルダーモドキに皹が入りだし、その皹が全身に到達すると同時に小爆発を引き起こして、粉々に砕け散ってしまった。

 

「……はあ~」

 

ホルダーモドキの爆発を見届けたクウガは、一年振りとなる戦いが無事に終わった事を確信して、安堵の溜息を吐く。

 

しかしクウガに訪れた安息の時は、すぐに終わり全身に緊張が走る事となった。

 

クウガとホルダーモドキが来た方角から、ライトグリーンのボディーと赤い複眼を持つ、何処かクウガと共通した容姿を持つ人物が、目の前に突如として現れた為だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は何処かで、確信していたのかもしれない。

 

そして目の前に起こった現実により、その確信は揺るぎ無い真実へと変わった。

 

商店街で暴れていたホルダーモドキ達を倒した後、変身前の俺を助ける為に、一人で戦いを挑んでいった男性が一体のホルダーモドキにしがみ付きながら消えていった方向に走り、行き着いた先に居たのは、俺が良く知る一人の偉大な戦士だった。

 

クワガタを模した、小さな金色の二本角に、赤く大きな複眼と、筋肉の形に似た白いプロテクターを思わせるボディーは見間違う筈も無い。

 

「……クウガ」

 

俺は彼を目の前に、その名を呟いた。

 

仮面ライダークウガ。

 

前世の俺が今の俺と同じ年齢の時に、リアルタイムで初めて見たライダー番組の主人公。

 

つまり俺が初めて知る事となった、仮面ライダーである。

 

周囲を見渡してもクウガ以外の姿は見当たらない。

 

クウガのすぐ傍の地面が焦げている事から、クウガがホルダーモドキを倒したと考えるのが自然に思える。

 

どうしてクウガがこの世界に居るのか気になるが、俺にはまずやらなければいけない事がある様だ。

 

シードに変身している俺を見たクウガが、警戒して戦う構えを取っているのである。

 

これまでに起こった流れから推測すると、あのグローイングフォームのクウガの正体は先程の男性である可能性が高い。

 

そうするとあの男性は、俺の知る五代雄介本人だと考えるのが妥当だ。

 

彼……五代さんは平成ライダーの中ではかなり珍しく、番組本編で警察等の力を借りる事はあっても、他の仮面ライダーと共闘する事無く、単身で戦い続けた存在なのである。

 

もしも考えている通り、目の前にいるクウガが、俺の知る五代さん本人であるのだとしたら、俺に限らず自分以外の仮面ライダーの姿を見たら、警戒してしまうと考えてもおかしく無いだろう。

 

だから俺が最初にしなければ行けない事は、警戒体勢で俺に対して身構えているクウガをどうにかして落ち着かせせて、自分が敵では無いと理解してもらうのが先決だ。

 

「あの……」

 

その為にはまず話をして説得してみるのが確実だと考えた俺が、警戒し続けるクウガに離し掛けようとしたその時である。

 

「み~つけた!」

 

俺とメカ犬、勿論クウガでもない、陽気な男の声が、俺の耳に届いた。

 

その声は俺とクウガを挟んだ位置の瓦礫の裏から聞こえて来る。

 

俺とクウガ、二人の仮面ライダーがその瓦礫に意識を向けると、瓦礫の裏側から十代後半と思われる青年が姿を現した。

 

青年は茶色に染まった短い髪を、ワックスか何かを付けて乱雑に固めたツンツンヘアーをしており、黒い白地のシャツの上に、黒のジャケットとを羽織り、下は同色のジーンズと靴という服装で、指や胸元にはシルバー製のアクセサリーを身に着けているという、一言で表すのであれば、自分のファッションに独特な拘りを持つ、最近の若者の様に見える姿だった。

 

だが、その見た目とは裏腹に、ホルダーモドキ達が破壊した商店街の瓦礫の中を、悠然と笑いながら、此方に向かって歩いて来る。

 

仮にこの青年が、逃げ遅れた一般人だとしてこの様な行動を取るだろうか?

 

それに先程、青年が瓦礫の裏から俺達の前に姿を現す直前に言った言葉……

 

何故か妙に引っ掛かる。

 

青年の動向を探ろうとする俺の視線に気付いたのか、青年は立ち止まり、俺を指差して口元に笑みを浮かべながら喋りだした。

 

「俺さ。あんたを知ってるぜ。仮面ライダーって言えば、この街じゃ有名だからな」

 

「……仮面ライダー?」

 

青年の言葉を聞き、クウガが俺を見ながら呟く。

 

「確か二人居る内の、あんたの名前はシードで良いんだよな?雑誌の特集記事に載ってたぜ」

 

青年が言う仮面ライダーは、恐らくシードである俺と、もう一人は今この場に居ない、長谷川さんが装着するESシステム、E2の事を言っているのだろう。

 

「それとさ。あんたも……仮面ライダーって事で良いのか?」

 

俺からクウガへと視線を移した青年は、続けて世間話をするかの様にして質問をする。

 

仮面ライダーという言葉を初めて聞いたのであろうか。

 

クウガは、俺と青年を交互に見やりながら、若干の動揺を見せる。

 

「まあ……二人だろうが三人だろうが、やる事に変わりは無いから、別に良いんだけどさ……」

 

青年は俺とクウガをまるで値踏みする様に見ながら、質問の答えを待つ事無く自己完結させると、中心に野球ボール程大きさをした丸い窪みが存在する、黒いバックルを取り出して腹部に宛がう。

 

するとバックルの両脇から、白い光が青年の腹部を包む様に紐状に伸びて、ベルトへと変わってしまった。

 

更に青年はバックルの窪みと同程度の大きさをした、黄色い球体を取り出して胸元で握りこみながら叫ぶ。

 

「変身!」

 

叫びと共に、青年は黄色い球体をバックルの窪みへと嵌め込む。

 

『マスター!あの青年からホルダー反応だ!!!』

 

「なに!?」

 

「ぐっ!?」

 

メカ犬が叫んだ直後、青年の全身はベルトを中心に黄色い光に包み込まれた。

 

俺とクウガは突然放たれた眩い光に、ほんの数秒程ではあったが視界を奪われてしまう。

 

数秒後、光が晴れて、視界を取り戻した俺達が見た先に居たのは、先程までの茶髪の青年ではなく、一人の異形の戦士だった。

 

全身がブラウンを基調としたカラーリングに対して、上半身を覆う肩に丸みを帯びた銀のプロテクター。

 

頭部には顔よりも大きいと思われる燃え盛る炎を彷彿とさせる赤茶けた角飾りに、その下で楕円の複眼が二つ、ベルトに嵌め込まれた球体と同じ、黄色い光を放っている。

 

「仮面ライダー……なのか?」

 

俺は青年が姿を変えた、その異形を見て無意識に呟いてしまう。

 

俺が前世で見た原作にはいなかったが、その姿の特徴は、まさに仮面ライダーという名を冠する事を良しとしていたのである。

 

『マスター。奴はホルダーではない』

 

しかし俺の呟いた言葉に対して、メカ犬が否定の言葉を口にした。

 

そう言えば、メカ犬はあの茶髪の青年が変身する瞬間、ホルダー反応がすると叫んでいた事を思い出す。

 

「あれは仮面ライダーとは、違うのか?」

 

『うむ。奴は多少の差異はあるが、確かにホルダー反応を発している。マスターも奴と近い存在と、過去に二回は戦っている筈だぞ』

 

俺はメカ犬の言葉をヒントに、過去の戦いを思い出す。

 

思考を巡らせた果てに、俺は過去に戦った中で、その存在は確かに居た事を思い出した。

 

「……もしかして、デビルとサイファーか?」

 

『うむ。奴からは通常のホルダー反応に加えて、過去にワタシ達が戦った彼等のエネルギー反応を蓄積した様な、混ざり気を感じる』

 

俺の行き着いた答えに、メカ犬が頷き肯定しながら、説明をした。

 

「それじゃあ、早速お仕事開始と行きますかね!」

 

青年が変身した異形の戦士は、肩を揺らしながらそう言うと、一気に俺の方向に走り出しで拳を繰り出してきた。

 

『マスター!!!』

 

「ふん!?」

 

俺はメカ犬の声に反応して、考えるよりも早く動いた。

 

手にしたスピードロッドを、眼前に迫る拳の間に、防御用の盾として割り込ませる。

 

「うわっ!?」

 

その拳は目論見通り、スピードロッドで防ぐ事で、直撃を免れる事に成功するのだが、その力は予想以上に強く、俺は相手の繰り出した拳による、単純な力のみで身体ごと後ろに吹き飛ばされてしまう。

 

俺が後ろに吹き飛ばされるのを一瞥した後、異形の戦士はすぐさま踵を返して、今度はクウガへと襲い掛かる。

 

「あんたは俺の仕事に含まれてなかったが、特別サービスだ!」

 

「ぐっ!?」

 

叫びと共に、俺に繰り出されたのと同じ、驚異的な攻撃力を秘めた拳が、クウガを襲うが、その攻撃をクウガは最小限の動きで裁き切る。

 

単純な動きだけを見れば、異形の戦士とクウガでは、前者の力任せな戦い方に対して、後者の方が戦いを経験した者と分かる洗練された無駄の少ない動きを見せているのだが、徐々にクウガの方が、防戦一方となって行く。

 

俺は漸く拳の反動が弱まった事により、足が地に着く。

 

「メカ犬!あの白い方の仮面ライダーを助けるぞ!!!」

 

『了解した!』

 

更にスピードロッドを地面に押し付ける事によって何とか、勢いを完全に相殺した俺は、メカ犬にクウガの助っ人に行く事を明言しながら、開いてしまった距離を、スピードフォルムの素早さを駆使して、一気に詰める。

 

しかし俺がクウガの助けに入るには、少しだけ遅かった。

 

「これでフェニッシュだあああ!!!」

 

異形の戦士の叫びと共に繰り出された蹴りが、クウガの防御の上から容赦無く叩き込まれてしまったのだ。

 

「ぐうああああ!?」

 

防御の上からではあったが、本来の力を半分も発揮出来ない、グローイングフォームでは、その攻撃を受け切る事が出来ず、吹き飛ばされてしまい、クウガは瓦礫となった建物の壁にぶつかり、地面に崩れ落ちるのと同時に、変身が解けて、五代さんの姿へと戻ってしまった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

俺はすぐに五代さんに駆け寄り、その安否を確認する。

 

『マスター。この男性は、強い衝撃を後頭部に受けて気絶している様だが、命に別状は無いぞ』

 

「そうか……良かった……本当に」

 

メカ犬の言葉に俺は心から安堵した。

 

だが命に別状は無いとは言っても、頭に強い衝撃を受けているというのならば、少しでも早く、病院に運んで診てもらった方が良い事には変わり無い。

 

出来ればすぐにでも、この場を離れたいが、それは目の前に居るあの存在が許しはしないだろう。

 

『お前は一体、何者だ!?』

 

気絶した五代さんを、戦いに巻き込まれない様に瓦礫の影に、置いてから立ち上がると、メカ犬が目の前に立ち塞がる異形の戦士へと問い掛けた。

 

「はははは。そう言えば自己紹介もしてなかったか?」

 

メカ犬の質問に対して、異形の戦士は思い出した様に笑い出してから、暫くして若干笑いを抑えながら、揚々と答え始める。

 

「俺は仮面ライダーを倒す為に雇われたのさ。そうだな……仮面ライダーハンターとでも呼んでくれ」

 

俺に自身の名を告げた異形の戦士、ハンターは自己紹介はここまでとばかりに、再びその拳を振るう為に、猛然と俺に向かって駆け出した。


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