魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第23話 仮面ライダーシード・ハイパー解説タイム【後編】

『マスター。ボク達の説明も、勿論してくれるんですよね』

 

足元に居たメカ竜はそう言うと、店内で俺達の席を誰も見ていない瞬間を瞬間を見計らい、テーブルの上に飛び乗ってきた。

 

DVDプレイヤーの画面に映し出されている映像も、それに呼応するかの様に、場面が切り替わる。

 

そのあまりのタイミングの良さに、俺は何か大きな意思でも働いているのではないかと、勘ぐってしまう。

 

「はあ……しょうがないな」

 

この状況で説明しない訳にもいかないと思い、俺は溜息を一つ吐き出してから、メカ竜の要望に従い、解説の続きを再開する。

 

「メカ竜は、一言で言うならシードの強化ツールになるんだ」

 

『その通りです!ボクをアタッチメントパーツとして使用する事で、大幅な攻撃力増加が出来るガイアシステムは、シードの切り札と言っても過言じゃありません!!!』

 

俺の説明に続き、メカ竜本人が自慢げにガイアシステムについての説明をする。

 

DVDプレイヤーの画面に流れる映像に目をやれば、丁度ベーシックフォルムのシードが、自身の周囲に展開させたメタルレッドの装甲を纏う瞬間が流れていた。

 

『このガイアシステムの特徴は、先程説明した各種フォルムの攻撃面の特化を目的としている。今流れている映像は、ベーシックフォルムを素体にしたベーシック・ガイアという具合だな』

 

更にメカ犬が流れている映像を教材にして、ガイアシステムを説明していく。

 

「専用武器は、遠近両用武器のガイアブレイガン。戦う状況に合わせて、接近戦用のブレイドモードと、遠距離用のガンモードに切り替える変形機構を持っている上に、他のフォルムの専用武器に組み込む事で、新しい武器にする事が出来るんだ」

 

『スピード・ガイアなら、ガイアロッド。サーチ・ガイアならばガイアバレットに、パワー・ガイアになればガイア・ブレードと言った具合にな』

 

「必殺技は四体の分身体を推進力に利用した、ガイアチェーンスマッシュや、強化した武器を使用した強力なものが多いかな」

 

『どうですか?ボクはまさに、シード最大の切り札なんですよ!!!』

 

俺とメカ犬が説明を終えた後に、メカ竜がそう言って締め括った。

 

その声は何処か誇らしげであったが、メカ竜の天下はその直後、同じ同郷の者の下克上により、呆気無く終わりを告げる事となる。

 

『何時までも自慢げに話してるんじゃ無いんだわさ~』

 

『べぶ!?』

 

誇らしげに自分の優秀さを皆に披露するメカ竜に対して、メカ海が飛び込み様にボディープレスを喰らわせて、メカ竜を吹き飛ばしてしまったのだ。

 

『そういう訳で、今度はアタイの番なんだわさ~』

 

メカ竜という邪魔者の排除に成功したメカ海は、今度は自分の番だと、意気揚々に鼻歌を口ずさむ。

 

「あれ?私が編集した映像には、確か竜君までしか映ってなかったと思うんだけど……」

 

しかしここで恵理さんが、衝撃の事実を口にした。

 

言われてみればそれも当然だろう。

 

この話が出て、製作を開始したのが去年のクリスマス前の話なのだから、その後に出会ったメカ海の情報が無いのは当然と言える。

 

『無問題なんだわさ~』

 

しかしメカ海は何故か嬉々として、口を開くと、赤い光を全て映像再生を終えて、再び青い画面に戻っていたDVDプレイヤーに照射したのだ。

 

するとまるで息を吹き返した様に、青い画面だった筈のディスプレイに映像が流れ始める。

 

其処に流れる映像は、周囲に展開させたメタルブルーの装甲を装着していくシードの姿だった。

 

『やっぱりアタイの方が、何処かの赤い恐竜よりも、ずっと格好良いんだわさ~』

 

『……』

 

『それじゃあマスター。続きをお願いするんだわさ~』

 

そしてメカ海は、吹き飛ばされてテーブルの下で、沈黙しているメカ竜を一瞥した後に、この一連の流れ等最初から無かったかの様に振る舞いつつ、俺に続きの解説をする様に促してきた。

 

何時もの俺であれば、ここで突っ込みの一つでもしているところだろう。

 

だが俺はここで心を鬼にして、この出来事を華麗にスルーしようと考えた。

 

正直に言えば、既に突っ込む気力も無かったのである。

 

「……それで最後はダイバーシステム。一応ガイアシステムと同じ系統になるんだけど、こっちはかなり特殊な仕様になるかな?」

 

『……』

 

俺はメカ海の態度に便乗して、沈黙し続けるメカ竜を無視しながら、解説を再開させる。

 

『ダイバーは水中戦を想定された特性を持っている為に、深海の水圧にも耐えられる装甲を有している』

 

『……』

 

解説を再開させた俺に続いて、メカ犬も同じように補足説明を付け足してくるが、その間も翠屋の床で、静かに沈黙を保っているメカ竜を見ていると、とても居た堪れない気持ちが込み上げてくる。

 

まあ、だからと言って、それをどうする気も無いので、俺は構わず説明を続行する事にしようと思う。

 

画面に映るダイバーは丁度、シルバーライト島で戦っていた時の水中戦が映し出されていた。

 

今更に思うのだが、この映像は誰が映した映像なのだろうか?

 

他の映像はチェイサーさんや、メカ竜がその場に居合わせていたので、まだ分かるのだが、確か初めてダイバーになった時は、周囲に俺達とホルダー意外には居なかった気がするんだが……

 

『マスター』

 

俺のそんな疑問を理解してなのか、メカ海が俺にある種の魔法の言葉と言えるであろう、一言を口にする。

 

『それは乙女のナ・イ・ショ!なんだわさ~』

 

「……」

 

その言葉を聞いて俺は一瞬全てを忘れて、大声で叫びたい衝動に駆られたが、どうにか限界ギリギリのところで堪え切った自分を、素直に褒めてやりたいと思った。

 

『ダイバーシステムもガイアシステムと同じ様に、其々にベーシックを始めとするシードの全フォルムへの対応が出来る設計となっているぞ。ちなみに専用武器には、スピードアンカー、サーチランチャー、パワーアックス等の多彩な装備が充実している。無論の事ダイバーの真価を発揮出来るのは水中だが、地上でもその多彩な装備と硬い装甲を活かして、充分な戦闘能力を発揮する事が可能だ』

 

俺がそんな事を思っている間に、メカ犬が俺に代わって殆どの説明を終えてしまった。

 

『必殺技も華麗に優雅に決まってるんだわさ~』

 

そしてメカ海が、画面に流れる映像を皆に見せながら、ホルダー達を倒す瞬間を自我自賛していた。

 

もう何が何やら収拾がつかなくなってきたが、取り敢えずこの話題は、これで終わりという事で良いのだろうか?

 

「あれ、純君にメー君?」

 

俺が漸くこの場から開放されるのだと安堵した直後である。

 

店の扉が開くのと、ほぼ時を同じくして、俺とメカ犬を呼ぶ、とても聞き慣れた女の子の声が聞こえて来た。

 

その声が誰なのか。

 

あまりにも普段から常日頃聴き慣れているその声を、俺が分からない訳が無い。

 

「なのはちゃん!?」

 

俺は後ろに振り向くと同時に、床に沈黙しているメカ竜を、なのはちゃんの視界に映らない様に蹴り飛ばし、奇跡的にも瞬時に場の空気を読んでくれたメカ海も、咄嗟にその身をテーブルの影に隠した。

 

「何なの?そのDVDプレイヤー」

 

更になのはちゃんの後ろからは、アリサちゃんが俺達の座る席に置かれたプレイヤーに興味を持ったのか指差してきた。

 

「皆で映画か何か見てたんですか?」

 

続いてすずかちゃんもアリサちゃん同様に、DVDプレイヤーに興味を持った様である。

 

「何や面白そうやな!私達にも見せてくれへん?」

 

そして何時の間にかテーブルの前にまで接近していたはやてちゃんが、DVDプレイヤーの再生ボタンを勝手に押そうとしている。

 

何時もの美少女四人組の登場に、内心焦りまくる俺だったが、今回の乱入者はそれだけではなかった。

 

「約束通り持ってきたわよ。お姉ちゃん」

 

「……何か人が沢山来てませんか?」

 

その人物達は二名。

 

セーラー服に身を包んだ、一見すると女子中学生に見えるであろう女子に、ビジネススーツ姿の男性。

 

その正体は、海鳴警察署のホルダー対策特務課に勤務している恵美さんと、長谷川さんである。

 

しかも恵美さんの手には、俺が先程まで持っていたCDケースと同様のものを持っていた。

 

「ありがとう。待ってたわよ恵美」

 

其処で恵美さんの実のお姉さんである恵理さんが、何か意味ありげな言葉を口走る。

 

その言葉が何を意味しているのか……

 

ここまでの話の流れから恵美さんが持っているCDケースの正体を、何となく想像出来るが、己の精神的な安定を求め、俺はあえて考えない様に心掛ける。

 

しかしそんな俺の意思は他所に、恵美さんが持っていたCDケースを受け取った恵理さんは、先程まで挿入されていたDVDをプレイヤーから取り出して、代わりに受け取ったCDケースの中身を挿入してから、再生ボタンを押した。

 

次の瞬間ディスプレイに映されたのは、白と黒のツートンカラーのバイクに跨り、海鳴の街を疾走するメタルイエローのボディーを持つ、仮面ライダーE2の姿……

 

その映像を見て、E2の装着員である長谷川さんの顔が、文字通り驚愕していますという形に変わった。

 

どうやら俺と同様長谷川さんも、恵美さんから何も説明をされずに、ここまで連れて来られたらしい。

 

「あ!これって仮面ライダーや!?」

 

E2の映像が流れた直後、DVDプレイヤーの一番近くに陣取っていたはやてちゃんが声を上げる。

 

「それって本当に!?」

 

「ちょっと!!私にも見せなさいよ!!!」

 

「ちょ、ちょっと、すずかちゃんにアリサちゃん!少し落ち着いてよ!私も見たいんだから!」

 

はやてちゃんの声に反応した他の三人も、一斉にしてDVDプレイヤーの前に群がり出す。

 

「はいはい!皆少し画面から離れなさい!あんまり近くで見ると目が悪くなるわよ?」

 

「そうですよ皆さん」

 

「はははは。やっぱり子供は元気なのが一番だな」

 

その光景を見て、恵理さんと瞳さんが、なのはちゃん達を窘めて、それを横目に見ながらヤスが豪快に笑う。

 

この三人の声を聞き、我に返ったのか、なのはちゃん達は四人とも、恥ずかしそうにしながら、一歩後ろに下がった。

 

「ふふ。皆E2に興味があるみたいね」

 

なのはちゃん達の反応を見て、恵美さんが得意満面の笑みを浮かべる。

 

そう言えば恵美さんは、常に着ているセーラー服という見た目からは、全く想像出来ないが、世界屈指の天才であり、このE2の開発設計者でもあるのだ。

 

自分が作ったものに、目の前で興味を持たれた事が嬉しかったのだろう。

 

恵美さんは誰に頼まれるでもなく、画面に映像として流れるE2についての解説を始めた。

 

「E2は私が設計開発した特殊強化服よ。従来のパワードスーツとは、根本から違う多目的用途に柔軟に対応可能な上に、強靭な人工外骨格と人工筋肉が、装着者の限界を大幅に超えた力を発揮してくれるわ。勿論ホルダー何て人外の相手と戦っても引けを取らないわよ」

 

E2について雄弁と語った恵美さんは、今尚唖然と佇んでいる長谷川さんの脇腹を小突き、正気に戻すと、装着者の長谷川君からも、何か言いなさいと言って、発言を促す。

 

「は、はい!?え~と、E2には対ホルダー用に幾つもの特殊な装備が存在しています。その中でも一番僕が使っている装備は、やっぱり標準装備とされている、ESM01というE2専用銃ですね」

 

年下でありながらも、直接の上司である恵美さんに小突かれて、何とか正気を取り戻した長谷川さんは、慌てながらも俺達に聞こえる様に説明をしてくれた。

 

丁度DVDプレイヤーから流れている映像にも、E2が先程長谷川さんの言っていたESM01を射撃場で構えて、射撃練習に打ち込んでいる姿が映っている。

 

「E2の装備はこれだけじゃないわよ!常に高温を帯びて硬い鉄板だって問答無用で切り裂く近接装備のESM02に、先端にマシンアームを取り付けた強化ワイヤーを射出する多目的装備のESM04。まだ実践配備していないけど、他にも多数の装備があるんだからね!」

 

「まだまだ僕には使いこなせない装備も多いんですけどね」

 

自慢げに語る恵美さんの横で、長谷川さんは申し訳無さそうに呟く。

 

幸いにもその声は、恵美さんの語りとDVDプレイヤーに流れる映像に、皆して集中していたので、俺以外の人には聞こえなかった様である。

 

……長谷川さんも、俺とは別の苦労が多いらしい。

 

「そしてこれがE2がホルダー対策特務課に、起用された最大の特徴!ホルダーブレイクよ!!!」

 

俺がそんな長谷川さんに何処か共感を覚えている間に、恵美さんの解説は更に白熱していく。

 

「ホルダーブレイクは、E2の対ホルダー用の必殺技よ!この海鳴市に現れた最初の仮面ライダー、シードに協力してもらって、ホルダーに対抗出来る特殊なプログラムを解析する事で、E2は本当の完成に至る事が出来たわ」

 

恵美さんの説明を聞きながら、俺はそう言えばそんな事もあったなと、感慨に耽る。

 

最初はダイヤモンド製のカッターを持ち出してきて、身体の一部を削り取らせろと、かなり猟奇的な発言をしてきたものだから、かなり焦ったのは、今となっては良い思い出と……言えたら良いな。

 

結局はホルダーを倒す手段を入手する事が目的だという事が、話し合いの結果明らかとなったので、その場でポイントチャージして、その光を採取してもらい、研究資料として渡してあげたのである。

 

『まさかあの恵美嬢が、この短期間でワタシのプログラムの一部を解析して、完成させるとは思ってもいなかったがな』

 

E2が必殺技である回し蹴りを放つ瞬間の映像を眺めながら、メカ犬が呟いていた。

 

初めて出会った日から、何処か変わった人だと思ってはいたが、恵美さんが正真正銘の天才だと言う事は嫌でも理解する事が出来た気がする。

 

「そして最後に、私が設計開発したE2に並ぶ超自信作のマシンドレッサーを紹介するわ!!!!」

 

「……今日の恵美さんは何時も以上に輝いてますね」

 

高々と宣言する恵美さんを見ながら、長谷川さんが苦笑いを浮かべながら言う。

 

その恵美さんのハッスル振りを見た俺は、数秒前にこの人を正真正銘の天才だと、思ってしまった自分自身に対して疑問を覚えてしまう。

 

『マスター』

 

そんな俺に対してメカ犬が話しかけてくる。

 

その声が何処か震えている様な気がするのは、俺の気のせいだろうか……

 

「何だ?メカ犬」

 

『先程ワタシが呟いた言葉なのだが……』

 

「……何か言っていたのか?俺には全く聞こえなかったけど」

 

俺は嘘をついた。

 

でもこの嘘は何よりも優しい嘘だと俺は思う。

 

偽善でも構わない。

 

それが今のメカ犬にとって必要な事ならば、俺は喜んで偽善者となってやる。

 

『……すまないな。マスター』

 

「良いって事よ」

 

この瞬間俺とメカ犬の間に、新たな絆が生まれた様な気がした。

 

そうして俺とメカ犬が静かに友情を育む間にも、恵美さんの解説は進んでいく。

 

「マシンドレッサーは、ESシステム換装機構を搭載した、E2のサポートバイクよ!通常のバイクモードに、E2をその場で装着する為のドレッサーモード。更にホルダーブレイクを強化アシストするカタパルトモード。この変形の全てを、Eブレスから遠隔操作出来るんだから!!!」

 

恵美さんの解説が終わるのと、ほぼ時を同じくして、DVDに流れていた映像も終了する。

 

「仮面ライダーって凄いんですね」

 

全ての解説を聞き終えた、なのはちゃんが拍手を送る。

 

それに続いて、すずかちゃんに、ありさちゃんと、はやてちゃん。

 

恵理さん、瞳さん、ヤスに、長谷川さん。

 

それだけではない。

 

翠屋に居た他のお客さん達も、何時の間にか恵美さんの熱弁を聞いていた様で、店内に居る全ての人から盛大な拍手が送られたのだ。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

しかしその拍手の中、俺の耳にタッチノートから発せられる警告音が確かに聞こえて来た。

 

幸いにもタッチノートから発せられた警告音は、店内で今尚行われている盛大な拍手のおかげで、俺以外には聞こえていない様だ。

 

『『『マスター!』』』

 

メカ犬達もホルダーの反応を感知したのだろう。

 

テーブルの上に居たメカ犬に、足元に先程まで隠れていたメカ竜とメカ海までもが、俺に呼び掛ける。

 

「ホルダーが出たんだな?」

 

『うむ!』

 

『急ぎましょうマスター』

 

『ホルダー何てアタイがいれば、モーニングコーヒー前に片付けられるんだわさ~』

 

俺の言葉にメカ犬達が肯定の返事を返す。

 

「それじゃあ、行くぞ!」

 

頼もしい仲間達を連れて、俺は拍手で溢れかえる店内を、出来るだけ目立たない様に移動して、翠屋の外に出た。

 

翠屋を後にした俺は人通りの少ない路地まで走ると、周囲に誰も居ない事を確認してから、タッチノートを取り出して開いて、ボタンを押す。

 

『チェイサー』

 

タッチノートから音声が響いた直後に、何処からかエンジン音が唸りを上げて、此方へと接近して来る。

 

『お待たせマスター!!!』

 

そう言いながらやって来たのは、全身黒いボディーの乙女口調なオッサンボイスの、新宿二丁目系ライダーバイクのチェイサーさんだ。

 

「お願いします!チェイサーさん!!!」

 

『OKマスター。アタシが超特急で運んであげるわよん』

 

チェイサーさんは俺の頼みに快く返事を返してくれた。

 

「それじゃあ何時もの行くぞ!メカ犬!」

 

『うむ!』

 

続いて俺はメカ犬の了解を取りながら、タッチノートのボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

タッチノートから流れる音声と共に、俺の隣に居たメカ犬が、ベルトに変形して、自動的に俺の腹部へと巻きつく。

 

其処までの過程を確認した俺は、タッチノートを閉じて、音声キーワードを口にする。

 

「変身」

 

その言葉は俺にとって特別な言葉。

 

その言葉は何時だって俺に勇気を与えてくれた。

 

昔も今も……そしてこれから先の未来でも、きっとそれは変わらないだろう。

 

俺はタッチノートを閉じて、ベルトの溝に差し込む。

 

『アップロード』

 

タッチノートを差し込むと同時に、白銀の光が俺の全身を包み込んで、その姿を一人の戦士へと変えていく。

 

そして白銀の光が、飛散する事で現れたのは、メタルブラックにその身体を輝かせる、一人の戦士の姿だった。

 

ベルトから四肢へと伸びる銀のラインと、同色の額に取り付けられたV字型の角飾り。

 

そして二つの赤く大きな複眼が、絶大な存在感を放つ。

 

この海鳴市に住む人達は、俺のこの姿をこう呼ぶ。

 

仮面ライダー……

 

仮面ライダーシード!!!

 

それがこの姿の俺の……いや、俺達の名前である。

 

『準備が出来たなら乗ってねん!マスター!』

 

『今日はボクが活躍する日ですよね』

 

『何言ってるんだわさ~。何時だってアタイのオンステージなんだわさ~』

 

シードへと変身した俺に、チェイサーさんを始めとして、メカ竜とメカ海までもが口々に言ってくる。

 

俺は何時だって一人で戦ってきた訳じゃない。

 

支えてくれる仲間達が居たから、どんな相手とでも戦ってこれたんだ……

 

そしてその中でも、一番俺の身近で共に戦ってくれたのは、異世界からやって来たフルメタルボディーの犬型ロボットだった。

 

「今日も頼むぜ相棒!」

 

『うむ!』

 

そして俺はチェイサーさんに跨り、風の如く駆け抜ける。

 

今日も海鳴市の平和を守る為に、誰かにとって大切な何かを守るとその心に誓いを立てて……

 

だって俺は……俺達は仮面ライダーなのだから!!!!


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