魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第22話 新年・元旦・初バトル【前編】

「明けましておめでとうございます」

 

早朝の板橋家、起き抜けにリビングにやって来た俺は、先に起床してリビングに来ていた父さんと母さん、そしてメカ犬に深々とお辞儀をしながら、新年の挨拶をした。

 

最近は妙に疲れが溜まっていた上に、慣れない飛行機に乗った為だろうか。

 

今朝は俺が一番遅い起床となった。

 

クリスマスの当日にシルバーライト島に旅立ってから一週間。

 

何とか年が明ける直前に海鳴市に戻る事が出来た俺は、どうにか無事に、家族と正月を迎える事が出来た。

 

「明けましておめでとう。純」

 

俺の新年の挨拶に、父さんが読んでいた新聞から目線を上げて返事を返す。

 

「おはよう純。明けましておめでとう。もうすぐお雑煮が出来るから、座って待っててね」

 

続いてキッチンからは、醤油ベースの、何とも食欲を掻き立てる香りと共に、母さんの声が聞こえてくる。

 

俺は分かったと一言返事を返してから、父さんの向かい側の椅子に腰を下ろした。

 

『明けましておめでとうマスター』

 

最後に父さんが読んでいる新聞に挟まっていた、正月特有の大量のチラシを読んでいたメカ犬が、俺に声を掛ける。

 

その横にはゴールドメッキの塗装がされた乾電池が二本置いてあった。

 

どうやら今日のメカ犬の朝食も、特別正月仕様らしい。

 

「ああ、今年も宜しくな」

 

年が明けても相変わらずマイペース相棒と、言葉を交わしてから暫くして、お雑煮を完成させた母さんが、俺とメカ犬を呼んできたので、一緒に食卓の準備を整えた後、板橋家の年が明けて最初の朝食が幕を開けた。

 

「そう言えば純。今年の初詣はどうする?」

 

カツオの出汁と醤油の風味に彩られたお雑煮の餅に舌鼓を打ちながら、俺がこれぞ日本の正月だと実感していたところで、父さんが話しかけてきた。

 

喉を詰まらせない様に、充分に租借してから、口の中の餅を飲み込んだ俺は、父さんの質問に答える為に口を開く。

 

「今年はなのはちゃん達と約束してるから、何時もの神社まで行ったら、父さん達とは別行動をするよ」

 

昨日の帰りの飛行機の中で、なのはちゃん達と話し合って決めた事なのだが、皆で時間帯を合わせて同じ神社に初詣に行く事を計画したのである。

 

家に帰ってから寝る前に、一応は父さん達にも説明はしておいたので、先程の質問は確認の為に聞いてきたのであろう。

 

板橋家と高町家は毎年お正月の初詣には、海鳴市内にある八束神社という場所に行くので、そこで集合する事になっている。

 

他の三人もそれで問題無いと言っていたので、時間に遅れなければ大丈夫な筈だ。

 

初詣は人も多いので、時間も掛かるだろう事も考慮して、大体朝の九時半から、十一時頃までを予定している。

 

周辺には結構な数の出店も出ている筈なので、そのお店を回る時間も考慮した上だ。

 

「それじゃあ、純にはこれをあげるわね」

 

今日のこれからの予定を、俺が脳内で思い出していると、父さんに続き母さんがそう言いながら、小さな封筒を俺に渡してくる。

 

「もう純も小学生だからね。心配はしてないけど、無駄遣いしない様にね」

 

俺が手渡された封筒の正体。

 

それは所謂お年玉というものだった。

 

今更ではあるが、転生してからこれまで、お年玉を貰った事が無かったので、恥ずかしながら俺は、その存在をすっかり忘れてしまっていたのである。

 

それに加えて、去年のゴールデンウィークが明けた辺りから、何かと忙しい日々を送っていた事もあり、余計に自分自身から離れていた習慣に対して、意識が向かっていなかったのだろう。

 

「ありがとう大切に使うよ。父さん。母さん」

 

俺は貰ったお年玉を、上着のポケットに入れながら、感謝の言葉を述べた。

 

ちなみに後で確認したら、新作のゲームソフトが一本買える程の、小学一年生にしては、かなりの金額が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴警察署の一室、ホルダー対策特務課で、一見すると場違いなセーラー服に身を包んだ少女だが、実はこの部署で最も高い地位の特別顧問を務める、風間恵美が一枚のB5サイズのコピー用紙に書かれた内容を確認していた。

 

「これで三日連続の犯行ね……」

 

書かれていた文章を読み終えた恵美は、苦々しい表情で呟いく。

 

「そうですね」

 

その隣ではもう一人の特務課勤務である長谷川が、恵美と同じ文面の書かれたコピー用紙に視線を合わせながら答えた。

 

今二人が見ている用紙はここ数日で連続して発生している、ホルダーが原因だと思われる事件の報告書である。

 

報告書に書かれている内容はこういったものだ。

 

海鳴市には幾つかの神社が存在しているのだが、その神社で樹齢数百年にも及ぶと言われている大木が、次々と薙ぎ倒されているのである。

 

その犯人の外的特徴は目撃情報によると、どれもが人外の怪物。

 

しかも薙ぎ倒した後はすぐに何処かに走り去ってしまうというので、警察側も対処が追いつかないでいた。

 

警察はこの目撃証言と現場の検証を経て、この一連の事件をホルダー対策特務課に持ってきたのである。

 

「しかしこのホルダーは、何で神社の大きな木だけを狙って倒しているんですかね?」

 

「それは私が聞きたいわよ。でもこの報告書を読んでみて、気づいた事が一つだけあるわ」

 

長谷川の疑問に対して、報告書を読み終えた恵美は、その手に持っていた報告書を机に投げ放つと、壁に貼り付けられた大きく拡大コピーされた海鳴市の地図の目の前まで歩いて行き、スカートから一本のマジックペンを取り出して、要所に書き込んでいく。

 

「……これって大木が折られた神社の場所ですか?」

 

恵美が全ての書き込みを終えた後、長谷川が印の書き込まれた地点を見ながら言う。

 

「ええ、その通りよ。そしてこの犯行にはある法則性があるのよ」

 

長谷川の言葉に恵美は頷きながら、更に印と印を線で繋ぐ。

 

「もしかしてこの犯行は……」

 

その線は海鳴市の外れから中心地に向けて、若干の偏りはあるものの、ほぼ一直線で伸び続けている。

 

「そしてこの犯行は、三日連続で起こっている。もし今日も同じようにホルダーが犯行に及ぶとするなら……」

 

恵美は新たに一つの印を地図に書き込んだ。

 

「次に狙われるとしたら、この神社の可能性が高いわね」

 

地図に新たに書き込まれた印の場所には、八束神社と記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「明けましておめでとうございます」」」」」

 

八束神社で合流した俺達は、改めて新年の挨拶を交わした。

 

「それにしても、皆は気合が入ってるね」

 

俺は新年の挨拶を交わした後に、改めてなのはちゃん達を眺めて、その皆の艶やかな振袖姿に正直な感想を零す。

 

既に去年からなのはちゃん達は振袖の準備をしていたのか、全員が同じデザインの色違いを着ている。

 

デザインは梅ノ木と中々に渋いチョイスではあるが、上手く若者向けにアレンジされており、なのはちゃん達が着ていても何ら違和感は無い。

 

なのはちゃんは桃色、すずかちゃんは群青色に、アリサちゃんは明るい黄色と、最後にはやてちゃんが緑色の振袖である。

 

何か皆して回りとは明らかに違う、凄まじいまでのオーラを放っていた。

 

ちなみに俺は特に代わり映えしない私服の上に防寒の為、厚手のジャンバーを羽織っているだけである。

 

傍から見れば、俺はなのはちゃん達の連れに見える事は無いだろう。

 

良くて通行人Aがのエキストラが妥当だなと思う……

 

そう考えたところで多少の虚しさを覚えるが、それが現実なのだから仕方が無い。

 

こんな考えをするのも今更だ。

 

『マスター』

 

「何だよメカ犬」

 

皆から振袖姿の感想を求められて、その返答をしていたら、足元のメカ犬が話しかけてきた。

 

『先日までのエミリー嬢の事もあるのだが、マスターは誰が本命なのだ?』

 

「ん、誰が本命って、何の話だよ突然?」

 

いきなり訳の分からない質問をしてきたメカ犬に、俺は更に質問で返答する。

 

『……いや、分からないなら良い。だがマスター。何時か決断しなければいけない日が来るという事だけは、その胸に留めて置いてくれ』

 

「はあ?」

 

しかしメカ犬は更に意味不明な発言を俺にした後、この話題を終わらせてしまう。

 

俺はどういう意味で言ったのか、メカ犬に追求しようとしたのだが、人込みの中で離れてはいけないと、なのはちゃん達に両腕を掴まれて引き摺られて、参拝へと向かう事になった。

 

その後無事に参拝も終わり、帰る時間までの間、皆で出店巡りをしていた時である。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

人込みの雑踏に混じりながらも、俺のズボンのポケットに忍ばせたタッチノートから警報が鳴り響く。

 

『マスター。この神社内にホルダー反応だ』

 

俺がそれに気づくのとほぼ同時に、足元に居たメカ犬が、俺だけに聞こえる音量で話しかけてくる。

 

というかこの神社内にホルダーって、かなり近いな。

 

「どの辺りか分かるか」

 

俺も出店の金魚すくいに夢中となっている、なのはちゃん達に聞こえない様に、出来るだけ小声で話す。

 

『ここから北に約400mだ。急ぐぞマスター!』

 

「ああ!」

 

「どうしたんや純君?」

 

メカ犬との会話を交わして、俺がこの場から走り去ろうとした直前に、はやてちゃんが車椅子を移動させながら此方にやって来た。

 

「な、何でも無いよ。ちょっとメカ犬と話してただけだからさ」

 

俺は出来るだけ自然に、取り繕いながら何でも無いと、はやてちゃんにアピールする。

 

「ふ~ん。何や怪しいなあ……」

 

しかし俺の演技力では、到底納得させる事は出来ず、はやてちゃんは悪戯する時に良く見せる小悪魔チックな笑顔で此方を見た。

 

このままでは不味いと、半ば本能的に感じた俺は、この場を逃れる為に、あまり使いたくは無かったが、確実に成功する手段を用いる事にした。

 

「実はちょっとお腹の調子が良くなくてさ。メカ犬にトイレの混み具合がどうなってるか聞いてたんだよ」

 

「な!?」

 

はやてちゃんは俺の言葉を聞いて、一瞬驚いた後に頬を少しだけ赤らめながら俯いてしまう。

 

「な、何や。それなら私達の事は良いから、早くトイレに行って来た方がええよ」

 

続いてはやてちゃんは早口でそう捲くし立てると、金魚すくいをしているなのはちゃん達の元に、逃げる様に車椅子を移動させた。

 

はやてちゃん相手だと、この手段が成功するかはちょっとした賭けだったが、どうやら成功した様である。

 

他の三人なら、絶対に恥ずかしがると確信していたが、はやてちゃんだけはこういうネタで、恥ずかしがるかは分からなかったからな。

 

「それじゃあ急ぐぞメカ犬!」

 

『うむ!』

 

後ではやてちゃんに何かフォローを入れておかなければ、と考えつつ俺はメカ犬と共に、ホルダー反応が出た地点を目指して、初詣に来た人達の雑踏を掻き分けながら、走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何だ!?」

 

ホルダー反応が出た地点に近づいた所で、轟音が辺りに響き渡る。

 

『あれが原因だマスター』

 

轟音に驚く俺に対して、メカ犬が冷静に言い放つと、前を見る様に俺を促す。

 

メカ犬の言う通りに、前方に視線を向けると、其処には異形の存在が居た。

 

その異形は一番近い表現をするのであれば、羆に特徴が酷似している。

 

こげ茶色のゴワゴワとした、全身を覆う体毛に、手には短いが鋭そうな鍵詰め。

 

更に首から下の胴回りには、西洋の甲冑を思わせる銀色のプレートが身体の一部かと思われる程に張り付いている。

 

タッチノートの反応を見ても分かる通り、あれがホルダーで間違い無いだろう。

 

「……それで、あのホルダーは何をやってるんだ?」

 

ホルダーは俺達が来た事にも気づかず、恐らくこの八束神社で御神木とされているであろう、樹齢数百年に及ぶ大木に、一心不乱に張り手を繰り出している。

 

先程の轟音の正体は、この張り手だったのは言うまでも無い。

 

『何をしようとしているのかは分からないが、被害が出る前に止めるぞマスター』

 

「ああ、そうだな」

 

確かに今は、人気の少ない場所で、罰当たりな張り手の稽古をしているだけに見えるホルダーだが、元旦で参拝客が多いこの場所で、何時大きな被害を出すか、分かったものじゃない。

 

俺はメカ犬の言葉に頷きながら、タッチノートを開き、ボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

音声が流れると同時に、俺の隣に居たメカ犬がベルトに変形して、俺の腹部に巻きつく。

 

「変身」

 

俺は音声キーワードを入力して、素早くタッチノートをベルトの溝に差し込む。

 

『アップロード』

 

白銀の光が俺の全身を包み込み、その姿を戦う戦士へと変えていく。

 

光が飛散して現れたその姿は、メタルブラックのボディーに、ベルトから四肢へと伸びる銀のラインと、額に輝くV字型の角飾り。

 

そして赤い二つの眼球が、凄まじい存在感を放つ。

 

「はああああああ!!!」

 

シードへの変身を完了させた俺は、飛躍的に強化された脚力で、一気にホルダーへ肉薄して拳を叩き込む。

 

繰り出した俺の拳は、見事にホルダーの左頬を捉えて、先程まで張り手を続けていた大木から、多少なりとも引き剥がす事に成功した。

 

「がああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

俺という乱入者に邪魔されたのが、気に食わなかったのか、ホルダーは雄たけびを上げながら、標的を大木から俺に変えて、突進して来る。

 

『来るぞマスター!』

 

「分かってる」

 

メカ犬の指摘に俺は短く返事を返しながら、ホルダーの突進をぶつかる直前に側転する事で避ける。

 

本来は俺に当たる筈だったホルダーの突進は、その進行方向上に鎮座していた大岩にぶつかり、跡形も無く粉砕されてしまう。

 

『あの攻撃はまともに受けると不味いぞマスター』

 

「……みたいだな」

 

一歩間違えば、先程の突進が俺にぶつかっていたのだと思うと、背筋に寒気が走る。

 

「があああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

粉砕する為の攻撃が、本来の目標に届かなかった事が悔しかったのか、ホルダーは再び雄たけびを上げて、俺に突進して来る。

 

その突進に対して、俺が再び身構えると、突進して来るホルダーの全身に突如として銃撃が連続で撃ち込まれて、火花を上げながら、バランスを崩して倒れてしまう。

 

銃撃が飛んできた方向の先に、俺が視線を向けると、メタルイエローのボディーに青い複眼を持つ、この海鳴市のもう一人の仮面ライダーであるE2が、専用の銃を倒れているホルダーに標準を合わせながら、此方に向かって走って来るのが見えた。

 

「やっぱり恵美さんの言う通り、ホルダーはここを狙って来たか」

 

E2は俺の横に辿り着くと、未だに倒れているホルダーを見ながら呟く。

 

その言い方から恵美さんがどうやってか、このホルダーの行動を予測して長谷川さんを近くに来させていた事が分かった。

 

それがどんな方法だったのか個人的にとても気になるが、今は素直に強力な増援が来た事に感謝である。

 

並び立つ俺とE2に対して、漸く立ち上がったホルダーが三度目の雄たけびを上げて、此方に突進して来るのを、俺とE2は左右に側転する事で避けつつ、俺はベルトの右側をスライドさせて、青いボタンと黄色いボタンを押す。

 

『サーチフォルム』

 

『サーチバレット』

 

メタルブラックからスカイブルーへと、自身のボディーカラーを染め上げ、新たに生成したサーチフォルムの専用武器であるサーチバレットを右手に握り込む。

 

「「は!」」

 

俺とE2は同時に其々が持つ銃の標準をホルダーの背中に合わせて、容赦無く引き金を引く。

 

同時に放たれる青い光弾と白い光を纏った弾丸が、ホルダーの背中で弾けて火花を散らす。

 

『今だマスター!』

 

メカ犬が今がホルダーを倒す勝機と見て、俺に指示を出す。

 

俺がその言葉に頷き、タッチノートをベルトから引き抜こうとしたところで、予想外の事態が発生する。

 

 

「ぎあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 

突如として俺とE2の死角から、目の前でダメージを受けているホルダーとは色違いの黒い体毛を持ったホルダーが凄まじい勢いで、俺達に突進して来たのである。

 

「がっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

突然の出来事に対処が追い着かなかった俺達は、その突進をまともに喰らってしまい、後方に吹き飛ばされてしまう。

 

『大丈夫かマスター!?』

 

「……ああ、何とかな」

 

ベルトから聞こえる、俺を心配するメカ犬の声に対して、俺は全身に伝わる痛みに耐えながらも、なるべく元気そうに答えて、立ち上がる。

 

その隣ではE2も大丈夫だと言いながら、立ち上がろうとしていた。

 

恐らくは通信機越しに、恵美さんと連絡を取り合っているのだろう。

 

多大なダメージを受けながらも、俺とE2は立ち上がり、目の前に居る色違いの二体のホルダーを見据えた。

 

先程とは逆に、此方が攻める番だと主張するかの如く、ホルダー達はゆっくりと此方に歩き始める。

 

未だに二人とも先程の突進のダメージが抜け切らず、自由に動けないこの状態で、もう一度先程の攻撃を受ければ本気で不味いかもしれない。

 

一歩ずつゆっくりとだが、確実に近づいてくる確かな危機をどうやって乗り切るべきか、俺が必死に思考を巡らしていると、再び唐突として乱入者がその姿を現す。

 

何やら黒い塊が二体のホルダーに、猛スピードで突っ込み、吹き飛ばしてしまったのである。

 

『うふふ。アタシの十八番を奪うなんて十年早いのよ』

 

その黒い塊の正体は、乙女口調なオッサンボイスが特徴的な、新宿二丁目系ライダーバイクのチェイサーさんだった。

 

どうして呼んでもいないのに、チェイサーさんがタイミング良く駆けつけたのか聞こうとしたところ、俺はチェイサーさんの座席の上にもう一人の乱入者が居た事に気づく。

 

それはメタルブルーに輝く手のリサイズなイルカ型ロボットのメカ海。

 

通称ウミちゃんである。

 

『ありがとうだわさサッちゃん。ここまで運んでくれて』

 

『あら、良いのよ御礼なんて。アタシとウミちゃんの仲じゃない』

 

何やら仲良さげに話している二人?の様子を見て、俺はこの場の戦いの緊張感が一気に削がれていくのを感じてしまう。

 

「……何でここに居るんですか?チェイサーさん」

 

結果的には助かったので、あまり追求する気は無いが、俺は取り敢えず理由を聞いておく事にした。

 

『あらマスター。居たのね』

 

チェイサーさんは、今やっと俺の存在に気づいた様に、此方にヘッドライトを向ける。

 

その言い方からして、俺達のピンチを知って駆けつけてくれた訳では無いらしい。

 

『あ!マスターなのだわさ。ちょうど良かったんだわさ』

 

チェイサーさんに続いてメカ海が、俺に気づくと、嬉々として話し始める。

 

『サッちゃんに頼んで、ここまで連れて来てもらっただけど、人が多すぎてお守りの売ってる場所が分からなかったんだわさ』

 

メカ海はそう言ってから俺に案内しろと言ってきた。

 

最早正月初日に何処から突っ込んで良いのか、俺は頭痛を起こす程に頭を悩ませたが、取り敢えずこの一言だけは言っておく。

 

「……取り敢えずあれをどうにかしてからな」

 

そう言って俺が視線を向けた先に居るのは、二体のホルダーである。

 

突然の出来事に、忘れている人も居るかもしれないが、今は本来緊張感が漂う戦闘中なのだ……


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